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8.作戦変更!
 「ダメだったんだ」
 「そりゃダメだろ、相手はバンテラーだぜ」

 ダイチも肩を落としてダージングを見た。
 マサカズはダージングの足の上に陣取って、膝を抱えて海を見ている彼を見上げた。

 ガードエイダーも、ファイヤーエイダーも、レスキューエイダーも、もちろんバンテラーもダメ。
 きっとユタカでもダメだろう。かといって他に当たれる所もなく、「新しいお兄さんを探せ!作戦」は失敗に終わりそうだ。


 「じゃあ、作戦変更よ!」


 現場監督よろしく、アマネがつかつかと歩いてきて、ダージングを指差して言う。
 新しい兄弟が見つからないなら、今までの兄弟でいればいい。早い話、仲直りできれば万事解決なのだ。


 「どうするんだよ」
 「謝ればいいんでしょ? だったら会って言えばいいじゃないの」
 「男はそんなに単純じゃねーの!」
 「そうやって意地張ってるから終わんないのよ、好きも嫌いも言葉にしなきゃ伝わんないの!」


 あーあ、また始まった。
 いつもの言い争いが始まり、ダイチは止める気力もなく、ダージングを見上げた。
 マスクをしている分、黙っていると他のロボットよりも表情が分かりにくい。
 真面目に考えているのか、ショックで真っ白になっているのか、そんな彼に今度はアマネが噛みついた。


 「とにかく、ダージングはレッシングに謝ること!」
 「えっ!?」
 「うだうだ悩んだって仕方ないのよ、やりなさい!」


 何を言い出すんだこの子達は!
 しかしその意に反して話は少年少女の間でトントン拍子に進んでいき、作戦決行は明日になった。

 手順としては、まずユタカにレッシングを呼んでもらい、立之山公園の駐車場で会う。
 次に新しい兄を探したが、やはり一番はレッシングだということに気がついたということを伝え、最後に「ごめんなさい」を言う。
 レッシングなら揚げ足を取らないだろうという憶測込みでの手順だ。


 「出来るよな、ダージング!」
 「ほーんと、手がかかるわねー」
 「ボクは塾で行けないけど、応援してるからね」
 「が、頑張ります…」


 かくして、半ば強引に「兄弟仲直りごめんなさい作戦」が始まったのであった。





 次の日、予定通りに作戦は決行された。時間は子供達も帰り始める午後4時半過ぎ。
 マサカズとアマネは駐車場にある植木の裏でダージングの様子を見守ることにした。ユタカは仕事が終わり次第合流することになっている。


 「これで仲直りしなかったら来週の掃除当番はダージングにしてやる!」
 「サボったあんたが悪いんでしょ」
 「うるせ!あっ、レッシングが来た」


 レッシングもダージングも公園の駐車場には何となく不釣り合いだったが、日常的な風景といえばそんな気もしてくる。
 彼らは人目がないことを確認しながら、ぽつりぽつりと話を始めた。


 「何でお前がいるんだYo」
 「に、兄さんこそ何で来たんですか」
 「そりゃ、ユタカの奴がYo…」


 しん、と静まり返る公園。
 ダージングが咳払いにも似たような声を出して、ああ、とか、うう、とか言葉を濁した。

 早く言えよ!と、苛立ちで足を鳴らし始めるマサカズに、アマネがその太ももをつねる。
 痛いと言わなかったのは根性か、彼はアマネをきっと睨んで、また2人の様子を見た。


 「うう、ああ、だから」
 「だから何なんだ」


 レッシングの言葉が止まる。自分のタイヤの下が濡れていることに気づいたからだ。
 さっき来たとき地面は乾いていたし、雨も降っていない。
 不思議に思って隣を見れば、水漏れでもあったのかと言うほどの水が、クレーン車の下から溢れだしていた。


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