7 「こわい」お兄さん(?)と、その後
次の日、マサカズ、ダイチ、アマネの三人が公園で遊んでいると、ロボットモードのレスキューエイダーが走っているのが見えた。その後ろからクレーン車が走っていて、どうやら彼を止めようと追いかけているようだった。恐らくレスキューエイダーの前には格好いいと称される若い男性が必死に逃げていることだろう。
「あらそこの可愛い子、待ってちょうだいよォ!」
「レスキューに、ね、姉さん! 人間にそんなことしたらダメです!」
「ダーちゃん、弟のクセにアタシの趣味にケチつけるっていうの?」
「うっ…、そ、それは……。」
兄弟関係を出されるとぐうの音も出ないのだろう。レスキューエイダーは鼻を鳴らしてダージングより優位にいることを示す。
世知辛い人間関係を見ているような気になりながらも、ブランコに座っていたアマネが紙パックのジュースを飲みながらぽつりと言う。
「苦労してんのねえ、ダーちゃんも。」
「なんつーか、ありゃジゴージトクってやつ?」
「ボクもそんな気がする……。」
三人が見ている間だけでも、二人は何度も目の前を行ったり来たりする。連れ回されてるなあ、と傍観者気分でそれを見ていた子どもたちは「あーあ。」という声しか出なかった。
その日の夕方、レスキューエイダーに振り回されへとへとになったダージングがビークルモードでいつもの場所にやってきた。
「ダージング!」
「大丈夫だったかー?」
「だいぶふりまわされたわねぇ。」
「み、みなさん……。」
ロボットモードになり、古倉庫の横に膝を抱えて座ったダージングは、深い溜息を吐いた。
レスキューエイダーは姉さんと呼ぶことで承諾してもらったのだが、結果としてはマサカズ達が見ていたとおり、一日中振り回されることになり、彼の地球での仕事――救急車としての任務にあたらせることに苦労したという。どっちが上なのだか分からない。
「バンテラーにも兄さんやってって頼むのかぁ?」
「あの黒いロボットさん?」
「そーそ、あいつ! あれでけっこう世話やくけどさあ、やめといたほうがいいと思うぜ……。」
「いえ、ここまで来たら当たった砕けろです。私も男、一度決めたことは最後までやり通します!」
そういうのを頑固というのではないだろうか、などと心配する子どもたちをよそに、一人盛り上がるダージング。直感ではあったが、一抹の不安を隠せない子どもたちであった。むしろ嫌な予感しかしない。
結局、バンテラーに当たるも見事に砕けて帰ってきた彼は、声の掛けようもないくらいに落ち込んでいたために、子どもたちは遠巻きにそっと見守っていることしかできなかった。
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