7 勝てばいいのだ、と正義の味方
「ハァーッハッハッハ! どうだ、手も足も出ないだろう! 空を舞う翼を持たぬ貴様等など所詮この程度…私の敵ではないということだぁアーッハッハッハッハッハッハァ!!」
アレがなければまともな敵なのかもしれない。どことなくやる気を削がれた気もしたが、イルリッツが従えるシャトートレイルズに敵わないことは事実。
レッシングとダージングの協力をもってしても、飛んでくるカッターを防ぐだけで精一杯だ。
「このままでは街が…!」
「くそっ、防戦一方かYo!!」
第一陣が終わりかけた頃、全員の回線に声が響く。
『こちらファイヤーエイダー、消火活動を完了した。すぐにそちらへ向かう』
『はぁーい、レスキューちゃんも向かってるわよ!』
通信のすぐ後、瓦礫の積み重なる道路を救急車と消防車が猛スピードで駆けてきた!
急ブレーキを掛けて僅かにターンすると、シャトートレイルズに対峙するようにロボットモードへとチェンジした。
「エイダーズ、只今到着!」
立ちはだかる三体に、イルリッツはない青筋を立てる。忌々しいロボット共が!
「雑魚が集まったところで敵うと思うな! やれ、シャトートレイルズッ!」
「アレストフィールド、展開!」
声と共に風景が一変する。整然と建ち並ぶビル街の中心――ファイヤーエイダーのアレストフィールドが展開されたのだ!
これで心置きなく戦うことが出来る。顔を合わせ、アイコンタクトを取るエイダーズ。その後ろではレッシングとダージングが同じようにして頷いた。
「走れ!」
声に反応して駆け出したのはガードエイダー、続いてレッシング、ダージング。
しかし敵は空中高く。打撃武器が中心のガードエイダーでは不利なことは目に見えている。
「はあぁぁぁぁ!!」
「行くZe! YEAAAAAAAAAAAAAAAAAH!!!」
スピードの乗ったまま、ラダートンファーを地面に叩き付けた! 続いてレッシングのエレキギターから放たれた衝撃波が駆ける!
瓦礫を巻き上げて走る地割れを、衝撃波が包み込む。衝撃波によって砕かれた瓦礫が粉塵となり、周囲に広がった。
「この程度で撹乱したつもりか? 笑わせてくれる…吹き飛ばせ、シャトートレイルズ!」
「トレイ―――――ルズッ!」
シャトートレイルズの羽ばたきで、呆気なく吹き飛んだ粉塵。しかしそこには先程までいたロボットの姿は影も形もなかった。
割れた地面がその姿を残しているだけで、足跡ひとつない。
「どっ、どういうことだ…」
「「こういうことだああああああ!!!!」」
ズガンッ!
上空からライジングとバーンテイラーによるダブルキックをくらい、シャトートレイルズの背中が大きくしなる。衝撃と二体分の重量を支えきれず落下していく。
地面に直撃する寸前に、上に乗っていた二体は飛び退き、シャトートレイルズとイルリッツはあえなく地に着いた。
「アッ、今回はァ省エネで参上してやったってェーわけよぉ! かんらからから笑いが止まらねぇーぜぇ!」
「甘く見てもらっちゃ困るぜ!」
「くそっ…毎度毎度正々堂々戦えんのか貴様等は! 立ち上がれシャトートレイルズ、私達の正義を見せてやるのだ!!」
「ト……トレ〜〜〜イルズ…」
熱い声援に答えるように、ぎしぎしと鳴る身体を6本の細い足で持ち上げる。そして再度羽ばたき、先程よりも高く舞い上がる。
接近戦を得意とするバーンテイラーでは応戦不能、ライジングのプラズマバーンからも射程距離外。
「アッセコい真似しやがってぇ!」
「そうだ! 正々堂々はどうなったんだ!」
「それはどっちの台詞だと思っているんだ貴様等! こっちが言いたいわ!! 我々ダ・アークには貴様等と遊んでいるような時間はないのだ!」
「でもバンテラーはセコいよなぁー…」
バーンテイラーの中、しっかりとシートに固定されているマサカズが腕を組んで納得とばかりに頷いた。隣のライジングでさえ首を縦に振っている。
「おい坊主ゥ、今すぐ投げ出してやってもいいんだぜぇ」
「いっいやいやいや冗談冗談! あははははは…バーンテイラー、上!」
「ぬおおっ!?」
上空から飛来した巨大なカッターを間一髪で避ける。シャトートレイルズの巨大な4枚羽のうちの1枚が、ブーメランのように飛んできたのだ。
「オ――テンチュ――イ―――ッ!!」
「同じ手を二度も食らうかってんでェ!! 出番だぞてめぇらぁ!」
「「おう!」」「はぁーい!」
バーンテイラーとライジングは地面に拳を突き立て、それを支えに飛ばされまいと踏ん張る。
声と共に高いビルの上に3つの影――エイダーズである。
「行くぞ、ガードエイダー、レスキューエイダー!」
「ええ!」 「はいっ!」
「エイダーズ、スクランブルだ!」
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