遭遇!黒いロボット 3
「でいやあッ!!!」
何かが走ってくる音と叫び声。
弾かれる岩の雨。
コツリと当たったのは小石程度の大きさの欠片。
「………?」
「大丈夫ですか。」
「え……。」
目の前に立つ黒いロボット。
鋭く光る剣の刃。
赤い瞳。
「わ、きっ、昨日の……ロボット!!」
「早くお逃げなさい、話も何も、全部後ですよ。」
機械的な電子音を含んだ冷静な声の調子は崩れない。
「う、うん…。」
マサは素直に従った。
巨大ポストはこの間にもゆっくりと体制を整えていて、意地を張っている場合ではないと判断したからだ。
「銀河警察機構隊長バンテラー、ただ今着任いたしました。」
黒いロボット、バンテラーが名乗りをあげた。
「来おったかボンクラーが!」
巨大ポストの上に立っていた大柄でマントを羽織った武者姿のロボットが叫んだ。
バンテラーは手にはめていた白い手袋を咥えて脱ぎ、それを投げつけた。
「あえて訂正はいたしませんが…今日こそ貴方を逮捕させていただきます。」
「貴ッ様……! このダイペイン様が直々にスクラップにしてくれる!」
ダイペインは何かを思い出したかのように手を後ろに回した。
取り出したのは日めくりカレンダー。
それを見た瞬間、堂々と言い直した。
「しかし今日は日が悪いのでな! このトーラポスが貴様の相手だ!」
「といいますと、口だけですか。」
「大安吉日に行動するのが俺様の流儀だ。今日の星は凶兆だったのでな! さらば!」
マントを翻したあと、ダイペインの姿は消え去っていた。
「逃げられましたか…。」
「トオオオオオオオオォォォォォォオオラアアアアアアアアアアアアアアアアア」
トーラポスの拳が再び振り下ろされた。
「させません!」
拳を受け止める。
細い腕はがっちりと相手を捕まえて離そうとしない。
「アレストフィールド、展開!」
アスファルトの地面に波紋が広がる。
オフィス街がテレビで見るような法廷へ変貌した。
裁判官も検事も被告人も見物人も、誰もいない恐ろしいほど広い法廷。
「フィールド形成完了、システムオールグリーン、チェック完了。」
作動状態のチェックをする独り言の声に、素っ頓狂な叫び声が重なった。
「な、なんだっ!? ここ、どこだよ!」
バンテラーから少し離れたところにマサが立っていた。
状況を把握できずきょろきょろと辺りを見回している。
「あなた、何故ここにいるんです。逃げなさいと言ったでしょう。」
「そんなに早く走れるわけないだろっ!」
「では早く私から離れなさい。」
「離れろったってどこに行きゃいいんだよぉっ!」
文句を言うマサがはっとし、そして叫んだ。
「後ろっ!!」
「トォラァアアアァアァアッ!」
振り下ろされた、もう片方の拳。
ガンッ!
バンテラーは掴んでいた手を離したが、横から殴りつけられた。
「ぐぁっ!」
傍聴席を巻き添えにして吹っ飛んだが、空中で体勢を整えて着地した。
しかし追い討ちをかけるように何かが飛んでくる。
ハガキのように四角い、薄型の爆弾だ。
ドン、ドドンッ!
直撃はしなかったが、バンテラーの周囲に着弾した。
爆弾の破片や砕けたコンクリートが飛び散る。
「いっ、いい加減にして、いただきたいものですね…、汚れるのは、好きじゃないんです。」
手袋をはき直してボディに付着した破片を払い落とす。
「そこの小さい生き物、部屋の隅に向かって走りなさい」
「でっ、でも!」
「でももしかしもありません。貴方はどう見ても戦力にはなりそうにありませんからね」
マサは何か言いかけたがそれを飲み込んだ。
バンテラーの言うことは正しい、ただそれだけのことなのに、それを認めたくないのも事実だ。
「負けんじゃねーぞ!」
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