7 これが私の最高傑作!
声とともに広がる景色は野球場。バンテラー達とシャトー・トレイルズはスタジアムの中央に立つ形になった。
一方、球場のライトの上ではダイペインとイルリッツが中央を眺めていた。腕を組み、見下すような視線のまま深緑の鎧は動かない。不満そうなその態度の揚げ足を取るように、銀色が得意気に目を細める。
「どうした青大将、最高の眺めではないか! どうやら作戦は順調に動いているようだし、我々はゆっくり見物に洒落込めそうだ」
「下らん」
何がだとイルリッツがヒステリックな叫びをあげる前に、彼は文字通り煙に巻かれて姿を消した。当て所のなくなった怒りを地団駄に込めて、電球が割れんばかりに踏みつけるも虚しくなるばかり。
ぶるぶると怒りに肩を震わせながら、前方右斜め下にわらっと固まっている正義面した悪魔達を指差すと、これでもかと言わんばかりに叫んだ。
「えぇい構わんッ!! やれ、シャトー・トレイルズ! その不細工なロボット共をスクラップにしてやれぇいっ!!!」
「お言葉ですが、そっちの方がよっぽど不細工ですよ!」
「トレッ、トレッ、ソレーイルズッ」
啖呵を切っても、傷一つつかない敵が相手では分が悪すぎる。
ノロノロと近付いてくる芋虫程度の相手にさえ全力を出さなければならないことは彼の美学に反していたが、この際手段を選んではいられない。
「デイィ――ンロォ―――ダァア―――ッ!!」
――ガァンッ!
シャトー・トレイルズの底から何かがぶつかるような音がした。驚いたのか僅かに身体を起こした隙にもう一撃。さすがに堪えたのか、ぐんと身を起こしたその間に最後の一撃を加えたのは、紛れもなくデインローダーだった。
「トレッ!!?」
ダダァ――…ンッ!!
派手な音を立て横倒しになった芋虫とともに巻き添えになったデインローダーは、勿論文句の一つも言わなかったがこの扱いをどう思っているのだろう。
「合体するなら今がチャンスです、いつまでも寝転がってないで早く起きなさいデインローダー!」
「こっ…こんな理不尽なことがあってたまるか! 立ち上がれ! お前の真の力を見せてやるのだ!!」
「トッ…トレ〜……」
イルリッツの声援も虚しく、左右にもがきはすれど、なかなか体勢を立て直せない。
今なら、とファイヤーエイダーがラダーライフルで連射しながら、後方で構えている2人に指示を飛ばした。
「レスキューエイダー、ガードエイダー、奴を立ち上がらせるな! 全力で撃ち込め!!」
「はいっ!」「分かってるわよォ!」
ビーム弾の飛び交う中、空中に跳ね上がる3体!
「ア合体ィッ! バァ――ンティイッルァアァァ―――ッ!!! 見ッ参ン!!」
「プラズマ合体ライジング、只今参上ッ!!」
2体はエイダーズの後方支援の中に降り立つと、横倒しのまま悶えているシャトー・トレイルズの両端に立ちはだかった!
「お天道様が許しても、テメェの悪事、このバーンテイラー様が許しゃあしねェ! アッ、神妙にィお縄に着きやがれェッてんでェい!!」
両側から掴まれ持ち上げられると、それを利用して手の中で暴れ、落ちると同時に体勢を立て直した。
思わずガッツポーズをとると、イルリッツは勢い任せに高笑いする。
やはり私の作った自慢の逸品だ!
「ハァーッハッハッハ見たかこれぞ頭脳戦! 幼虫は美しく変体するためのステージにすぎんのだ!! 見せてやれ、シャトー・トレイルズ!!」
「トットトレ―――イルズッ!!」
声に呼応するように鎌首を持ち上げると、口と思わしき部分から送電線のように太いワイヤーを吐き出した。高速とも言えるスピードでシャトー・トレイルズの周囲を覆っていくそれは、サナギを形作るように巻き上がっていく。
「ドォオオオリャアアァァアアアッ!!!」
出来かけのサナギに向かい、バーンテイラーがムラマサソードを降り下ろした!
――ガィイ…ンッ…!
惜しくも弾かれ、反動でふらつく身体を立て直しながら、完成していくサナギを睨む。
「アッ、小細工なんざァ使ってんじゃあねぇぞシャクトリムシめぇ!」
巨大で頑丈なサナギは、黙したまま異様な存在感を放っている。為す術もなく対峙する5体と、満足げに見下ろすイルリッツ。今や作戦は成功したと言っても過言ではない!
これは笑いが止まらんな、とニタリ目を細めたその時、ライジングが動いたのを見て舌打ちをした。お預けの出来ない犬には躾をしなければなるまい。
「だったら私が…プラズマァア…バァ――――ンッ!!!」
ライジングの両手の間から、バチバチと火花を上げる高エネルギーの球体が放たれる!
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