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3 練習風景
 ――ドォンッ!
人気のない海岸に砂ぼこりが舞い上がり、その中からゆらりと立ち上がる影が一つ。砂に埋もれた脚を引きずり出しながら、体勢を立て直しているようだった。


 「もう一度だ!」


 砂を踏み締めてファイヤーエイダーが叫ぶ。

 「今日はもお止めましょうよォ、ファイヤーちゃあん」

 レスキューエイダーが座り込んだまま意見したが、彼は聞く耳を持たない様子である。諦め半分に溜め息を吐いて渋々立ち上がり、着いた砂を払う。

 「ンもぅ、変なトコ強情なんだからァ!」

 不満たらたらのまま歩み寄ると、先に起き上がっていたガードエイダーが頬を掻きながら苦笑い。

 「まあまあ、押さえてくださいレスキューエイダー。とりあえず、次で終わりにしませんか?」

 相変わらず仏頂面のファイヤーエイダーに意見すると、彼はその顔をさらに不機嫌そうに歪めた。

 「そんな気持ちでは何度やっても失敗するに決まっている!」

 ヒェッ、と声をあげて身を縮こまらせるガードエイダーを押し退けて、レスキューエイダーが前に出る。

 「急がば回れって言うじゃない、焦ったってできやしないわよォ」「次の戦闘までに出来なければ戦力外通告されても文句は言えんぞ」
 「そうですよ、ちょっと考えすぎです」

  次の瞬間、ガードエイダーの顔面目掛けて拳が飛んできた。
  ガンッ、と鉄がぶつかり合う音。砂に倒れ込む彼を見るカメラアイは怒りに揺れていて、2人は何も言えずに黙りこくるしかなかった。

 その近くのもう使われなくなった灯台の上から、ダイペインとイルリッツが眺め下ろしていた。灯台の飾りに寄りかかっているイルリッツがくつくつと笑いながら肩を震わせている。反面、ダイペインはさもつまらなそうに屋根の上に胡座をかき、頬杖をついていた。

 「正義の味方が仲間割れ! どうにもお涙頂戴の話じゃないか、ええダイペイン」
 「茶番だな」
 「貴様は少しディレッタンティズムの心を学んではどうだ、青大将。まあいい、これは我々にとって実に好都合なことこの上ないのだから! さあ支度に取りかかるとしよう、善は急げと先人は良く言ったものだ!」

 ばっと赤いマントを翻し、イルリッツは姿を消した。ダイペインはまた視線を向け、ぽつりとこぼす。

 「仲違いが善とは、呆れたものよ」

 そのまま青い海に視線をやり、短く息を吐いた。
 未だわなわなと震える拳を降り下ろせず、ファイヤーエイダーは口を真一文字に結んだまま立ち尽くしている。

 「今日は、解散だ」

 静かに言い放ち、車道に飛び上がりビークルモードにチェンジすると、街の方に向かって走っていった。ガードエイダーとレスキューエイダーは顔を合わせて、互いに首を横に振った。

 「ど、どうしましょう……」
 「アタシ面倒なのはヤぁよ。また明日考えましょ」

 じゃあね、とひらひら手を振る彼も車道に出て走り去ってしまった。1人砂浜に取り残されたガードエイダーはしばらくそのまま立っていたが、仕方なく車道に向かうと、のろのろ街に向けて発進した。


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