10 二の舞の、二の舞、なんて!
「ファイヤーエイダー、アレストフィールドの使用を許可します」
「しかし隊長は」
「貴方が居るときくらい楽させてくださいよ」
「了解。……アレストフィールド、展開ッ!!」
キカンダーの足元を中心にフィールドが形成され、辺りは広い交差点を中央にしたビル街になった。
「シュポッ?」
「フン、小賢しい真似を。案ずるなキカンダー、如何なる場所であろうとも、我らが目的は変わらぬ!」
「シュポ――――ンッ!!」
「あら、奴さん元気ねぇ。一途な子ってキライじゃないわァ、アタシ」
「感心してる場合じゃないですよ、レスキューエイダー」
頬に手を当ててにこにこ笑っている彼の横で、ガードエイダーが呆れた声でツッコミを入れた。
「2人とも、おふざけは大概にしろ。……来るぞ!!」
黒煙を撒き散らしながら猛スピードで突進してきたキカンダーを左右に分かれて回避する。
「ワルイコにはお仕置きしなきゃなんないのよねェ」
レスキューエイダーは背中に手を回すと、バズーカを取り出し肩に乗せた。
「レスキューバズ!」
ドォンッ!
爆煙に包まれるキカンダーに、背中の放水器をセットしたファイヤーエイダーが照準を合わせる。
「バーストシュ――――ト!!」
炎を纏った赤い閃光が一直線に飛び、誘爆を伴いながら命中した!
しかし、その煙の中から何事もなかったようにキカンダーが飛び出し、突進してきたのである!
「芸のない戦法は関心いたしませんね!」
「正義面した卑怯な輩よりずっと潔いだろう」
ダイペインの言葉にバンテラーが素直に頷いた。
「それには同感ですね。ならばお見せしましょうか! 来なさいデインローダーッ!!」
だが、彼が指を鳴らすより早くキカンダーが後退した。
「ははははは! 残念だが俺様は奴の二の舞は踏まんぞ!!」
前々回、イルリッツとビルゲルビが一杯食わされた教訓から、一定な位置に留まらないことにしたのだ。
「甘いッ!」
デインローダーはキカンダーの横ではなく後ろから出現し、その膝めがけて低空で滑空した!
ガンッ!!
勢いに乗ったまま、まさに「膝かっくん」されたキカンダーはバランスを崩し、後方に吹っ飛んだ。
「キンキュ――テイシャ―――――ッ!!」
そのまま頭からビルに突っ込み、じたばたと足を動かした。
「そろそろ潮時……先負はやはり先負だったか」
吹っ飛ばされる直前にキカンダーから飛び降りて難を逃れたダイペインは、ビルの上から見下ろしながら呟いた。
「ならばどうする? まあどうしようがお叱りは免れんだろうな」
ヒュ、と小さく風を巻いてイルリッツが現れた。銀色の鎧に真っ赤なマントがよく映えている。ダイペインは忌々しげに彼を見、すぐに視線をキカンダーに戻した。
足をばたつかせて起き上がろうとするのを、ガードエイダーとファイヤーエイダーが阻止している。その間にも横転していたデインローダーがバーニアを点火させて起き上がろうとしていた。バンテラーが間合いを取ろうとその脇を走り抜けていく。
「今日はセンブとやらなのだろう? 大人しく尾を巻いて帰ってはどうだ、青大将」
「……まだ勝負は終わっておらん」
「どう見ても貴様の負けだ、なんと愚かしいことか! 年を取るとこれだからいかん、自分の非を認められなくなるからな!」
大袈裟に頭を振り、彼は呆れ果てたように溜め息を吐いた。
「奴はまだ戦える」
どうだか、と背を向けると下方から汽笛の音が聞こえたので、イルリッツはちらと視線を寄越す。
「シュッパツシンコォォォオオオオ―――――ッ!!!」
ガードエイダーとファイヤーエイダーを弾き飛ばし、体勢を立て直したキカンダーが黒煙を上げて走り出した。
「3人もいてろくな働きが出来ないんですか貴方達は!」
「隊長そっちに向かったわよ!」
直進してくるだけの戦法にうんざりしていたバンテラーはさっと間合いと取って避け、デインローダーと並んで走り出す。
素早くターンしたキカンダーは煙突を彼に向けて急停止した。
「ハクセンノッ!」
「ノウチガワマデッ!」
「オサガリクダサァア―――イッ!!」
ドンッ! ドンッ!! ドンッ!!!
煙突から黒い砲弾が3発打ち出される。
避けようとしたが間に合わず、バンテラーとデインローダーは爆発と砂埃に包まれた!
「よしっ!」
拳を握るダイペインが、思わず身を乗り出す。イルリッツも振り返り、まさか逆転するのではないかと思い目を丸くした。
「そのまま轢き潰せキカンダー!」
「ポッポ―――――ッ!!」
キカンダーは脚部の脹脛部分にあるブースターを点火させ、黒煙を突き抜けようとした。
だが、まさに黒煙の中に入ろうとしたその時、煙の中から腕が飛び出してきた!
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