D.C.UD.W.
Dream:31
―sakura view―
いつものように、いつもと同じ場所で。ボクは大きく息を吐き出した。木にもたれかかるようにして座る。冬の冷たい風が火照った身体に心地良かった。
さくら「……さっきのはひどかったな。」
さすがにどんよりとした気持ちになる。見ていたの夢。
恨み、妬み、蔑み。世の中への不満、憤り。普段は表に出てこない願望。純粋なまでの欲望。夢の中では叶う希望。じゃあ、夢が現実となったら?
見上げた先、夜の帳の下りたその先で、枯れない桜は今日もきれいに花を咲かせていた。
さくら「あたりまえ……だけどね。」
魔法の桜は今日も人々の夢を集めて、希望(ゆめ)をつくりだす。
人が人を大切に想うことが力になる、夢の世界。
昔、ひとりの魔法使いが夢見た世界。その世界はきっときれいなはずだ。
夜空にはきれいなお月様。月明かりにひらりひらりと桜の花弁が舞い落ちる。ほんと、きれいだなと思う。
゛ガサッ゛
さくら「!?」
茂みからなにか動いた音がした。この魔力の感じは悠我くん……?そんなわけないよね。今、この場所はボク以外は入れないようにしてあるはずなんだから……
さくら「誰?誰かいるの?」
ボクは恐る恐る音がした方に問いかける。だけど反応は無い。それにさっき一瞬だけ感じた魔力もきれいに無くなっていた。やっぱりボクの勘違いだったのかな?
さくら「さてと――」
もう一度、立ち上がると、桜の幹に手をついてボクは意識を集中させる。
きれいなものをちゃんときれいなまま残すために。
魔法(システム)に欠陥があったら、補えば良い。
まるで転轍手のように純粋な想いだけを選り分けて、困ってる人たちのために、ボクは今日も繰り返す。
手のひらから徐々に溶けていくような感覚。
意識はぼんやりと覚醒していく。
スイッチの切り替え。
ボクからボクではないものへと。
この瞬間は何度経験しても不安になる。自分が消えてしまいそうになるから。
さくら「おやすみなさい。」
神経を研ぎ澄ましながら、ボクは深くて浅い眠りへと落ちていった。
―sakura view end―
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