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【連載中】Lord’s SoulーAnother Storyー
Short StoryC 強がりなキミ

「マーシャ、今日これ見たい。」

とある日の夕方。

キッチンで夕飯の準備をしていると、
リオナが1枚のディスクを持ってやってきた。

その表情はいつもとなんら変わりない無表情。

「んー・・・・これどこから持ってきたの。」

リオナの手にあったのはいわゆるホラー映画。
元々、映画やドラマはよく2人で観ているが、ホラー映画はあまり観たことがない。

以前観た時にリオナが眠れなくなったからあえて避けていたのだが、本人には言っていないし気付いてもいないだろう。

「これ、この前ラードが会いにきてくれた時にくれた。」

「へぇ。でもリオナこれ怖いやつだよ?」

「うん、すごく怖いって言ってた。でもすごく面白いとも言ってた。」

ラードの奴、また余計なことしやがって・・・・

リオナの表情は相変わらずだが、内心ワクワクしているのが俺にはわかる。

「怖いの嫌いだろー?夜また眠れなくなったらどうするのさ。」

「怖くない。子供扱いしないでよ。」

「ほう。じゃあ1人で観れるよな。俺今日は先に寝るから。」

「・・・・。」

素直じゃないリオナにはこれくらいが丁度良い。
頬を少し膨らませて不機嫌になって。
まったく・・・・可愛いやつめ。




夕食のあと、片付けも終わり風呂にでも入ろうとした時。

突如リオナに手を引かれて無理矢理ソファに座らされた。

「おいおい・・・・俺観ないよ?」

俺の言葉を聞いてか聞かずか、リオナは俺の横にピタッとくっついて座り、ブランケットに全身くるまった。

「マーシャは観なくていいよ。」

そう言いながらも手をギュッと握ってくるリオナ。

さすがの俺もお手上げだ。

「ったく・・・眠れなくなっても知らないからな。」

そうして始まったホラー映画。

途中途中、何かが出てくるたびにリオナの体がビクンと跳ねる。

握る手も強くなってきている。

「リオナ、怖い?」

「怖くないよ・・・・。」

今にも消えそうな声で答える。

「マーシャ・・・・」

「ん?」

「マーシャ、いっしょに入る・・・?」

今度はリオナが包まっているブランケットへのご招待ときた。

なんともまぁ・・・・可愛すぎて犯したい。

「・・・ったく、こっちおいで。」

俺も大概リオナに甘い。

リオナを膝に乗せて、一緒に包まる。

最後は殆ど目をつぶっていたようだが、
まぁリオナにしては頑張って見たんじゃないか。

「ふぅ・・・・面白かったね。」

「どの口が言う。」

ペシっと頭を叩くと、
リオナは俺を見てクスクス笑った。

「本当はちょっと怖かった。」

「知ってるよ。だから言わんこっちゃない。」

でも、こーゆー好奇心旺盛なところが好きなんだよなぁ、としみじみ思う。

見ていて可愛い。
たまに心配にもなるが。




その夜、案の定リオナは眠れないのか、
いつも以上に話しかけてきた。

「ねぇマーシャ。」

「んー」

「面白い話して?」

「そう言われて本当に面白い話できる奴なんているわけないだろ。」

「マーシャならできるよ。」

「できません。寝ろください。」

「眠れないから困ってる。」

「なんで眠れないの・・・・」

「なんでかな。」

「ホラー映画なんて見るからだよ。」

「そんなことないもん」

そう言いつつもギュッと俺の背中に抱きついてくる。

「マーシャ・・・・」

「・・・なぁに」

「マーシャは怖くなかったの?」

「あの映画?」

「うん」

「全然。」

「なんで?」

「ビックリするのは嫌だけど、怖いか怖くないかで言うと怖くない。」

「えー・・・・」

「幽霊なんて悪魔と似たようなもんだろ。悪魔怖かったか?」

「ううん。」

「な?幽霊なんて怖くねーよ。」

「そっかぁ・・・・」

「だから早く寝なさい。俺は寝る。」

「うん・・・・おやすみ」

そう言うと、リオナはスッと背中から離れて、寝返りをうった。

急に背中から温かい熱が無くなって。

本当にこいつは、甘え下手なのか甘え上手なのか・・・・

「リオナ・・・」

俺は寝返りをうち、リオナの体も再びこちらに向けさせ、真正面からギュウッと抱きしめた。

「こーゆーときは素直に『怖いから抱きしめて』って言うんだよ馬鹿。」

「・・・・イヤです」

「はい、だろ」

「・・・・あい」

リオナもぎゅぅっと抱きついてきた。

この生き物は・・・・ほんっとに・・・・

「面白い話じゃねーけど、昨日ウィキに会ったって話したっけ?」

「ううん、そうなの?」

「バルドに借りてた本返しに中央都市のマーケット歩いてたらウィキとバッタリ。」

「魔法医学の帰りかな?」

「さすがおにーちゃん。ウィキのやつ菓子屋の前で目キラキラさせて買いもしないのにウロウロしてたから・・・ついつい俺が買っちゃったよ。」

「・・・・ウィキ、可愛かった?」

「え?いつも通りだったけど。」

「いつも可愛い?」

「いつも?まぁ、世間一般からすると可愛い方なんじゃないか?」

「ふぅん・・・・」

「え、怒ってるの?」

「怒ってない。」

「へぇ・・・・あー、もしかして」

「・・・妬いてないよ。」

「あはは、かーわいー」

「妬いてないってば・・・・」

「またまた意地張っちゃってぇ。」

「・・・・・・・・」

頬をツンツンすれば、リオナの耳はほのかに赤く染まって。

なんとまぁ可愛い生き物なこった。

「たまには素直に言ってみたらどうだ?」

「・・・・」

「ほら、言ってごらん。」

「・・・・・・・・・・・・、・・・・ないで。」

「聞こえない。ちゃんと言って。」

「・・・・ウィキに物、買わないで。」

「なんで?」

「・・・・・・・・マーシャは・・・・俺だけに甘ければいいの。」

恥ずかしさからか顔を隠すようにギュッと抱きついてきて。

「お前・・・・可愛すぎるわバカ。」

「・・・・バカじゃない。可愛くもない。」

「可愛いよ。俺はリオナしか可愛いと思わないよ。」

「・・・・・・・・」

「まだ信じられない?」

「ううん・・・・いつも・・・・」

「うん」

「いつも・・・・素直になれなくて、ごめんね。」

不意に発せられた謝罪に、思わずポカンとしてしまう。

「何言ってんの。リオナのそーゆーところも含めて、全部可愛いし好きなんだよ。」

「なるべく・・・・ちゃんと言うようにする。」

「ん。適度に期待してるよ。」

リオナの精一杯の頑張りに、心が満たされる。

「マーシャ」

「はいな。」

「今度はもっと面白い映画観ようね。」

「そうだな。ホラー映画は当分おあずけな。」

お互いにクスクス笑い合う。

しばらくすると、すぅーっという静かな寝息が聞こえてきた。

ようやく、安心したか。

「おやすみリオナ。」

リオナの額にそっとキスを落とした。


End

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