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【完結】 Novel〜Lord's Soul〜
story70 あなたと共に



「ああぁぁあぁぁぁあぁ!!!!俺のリオナァァァァァ!!!!!!!」


「マー兄・・・そんなに泣かないで。」


《そうだそうだ!!オイラがいなくなっても泣かないくせに!!》


「はぁ?リオナとお前を一緒にすんなッ!リオナァァァァァ〜!!!!」


このへんてこな穴に飛び込んで早五日。


マーシャたちが穴に落ちて
気が付いたときには底にリオナはすでにいなかった。


どれだけ深い穴なのか。


マーシャが気絶するくらいだからよっぽど深いのだろう。


とりあえず3人はリオナを探すべく
適当に歩き回っていた。


それにしても驚くべきは、
最年少のクロード。


行き止まりにきても
まるで道を知っているかのようにどんどん先に進んでいく。


「クロードはすごいな。B.B.と違って。まさか奇跡の天才児?B.B.と違って。」
《おい!!》


するとクロードはいつになく楽しそうな表情で振り返った。


「この穴ね、僕が大好きだった部屋にそっくりなの!」


「へぇ。楽しかったんだな。」


「うんッ」


マーシャはクロードの頭を撫でる。


するとB.B.が不貞腐れたようにマーシャの頭の上で暴れた。


《なんだいなんだーい!!!オイラはいつも殴られてばっかなのにぃ!》


「それはお前がイタズラばっかするからだ。でもリオナくんは心優しいからちゃんとなでなでしてやってるだろ?」


《そぉーだよぉー!!!リオナぁ〜!!オイラこんなボサボサ頭の上にはいたくないのだぁ〜!!!!早く帰ってきてよぉ!!》


3人は極力早足でリオナを探すが
なんだかんだでもう五日目。


いつも前向きなマーシャも
さすがにいやな予感が頭を横切る。


「ま・・まさか、穴から落ちたときに頭打って死んで、その死体を穴に潜んでたジャガーが自分の餌場に持ち帰っちゃって、そのまま食われたとか!!!」


《まさか。ジャガーはいないっしょ。》


「いや!!あり得る!!うぁぁ!!!リオナァァァァァァ!!!お前がいない人生なんていらねぇよぉぉぉぉぉ!!!!!!!だから今すぐ俺も死ぬぅぅぅ!!!!」


《ぇ!?おいマーシャ!!!早まらないで!!!!!!》


今にもナイフで自分の胸を刺そうとしているマーシャをB.B.は必死に止める。


しかしその時
クロードが暴れる2人を制止させた。


「待って!何か聞こえる!」


「え?」
《え?》


マーシャとB.B.は動きを止め
聞き耳を立てた。


確かにかすかにだがへんてこな歌が聞こえてくる。



"みーんなぁでぇ歩けば楽しいッチョ〜♪だぁから両足そろえてワン・ツー・ワン・ツー♪"



マーシャは思わず顔をしかめる。


「誰だこんなヘッタクソな歌を歌ってるやつは。オエ。」


《うわぁ。気分悪くなってきた。オエ。》


マーシャとB.B.がわざとオエオエ言うなか、
クロード1人だけがじっと音痴な歌を聞いている。


「この声・・」


クロードは目をつむって考え込む。


「・・!!!!」


そして何か思い当たるところがあったのか、
突然顔をあげたかと思うと
全力で駆け出した。


「え!?クロード!?」


《何々!?何があったの!?》


「いやぁ迷子になっちゃうよ?クロードくーん!」


マーシャとB.B.も
のんきに後をおっていった。













「チョ〜♪イーイかーんじっ♪ナイスなかーんじっ♪ボクちんなんだかハーイテーンション♪はい!!!」


「・・チョー・・イイかんじ。ナイスなか・・んじ。ボ・・ボクち・・・ん・・・なんだかハイテンション・・・」


その頃、
リオナはクラッピーに無理やり歌わされていた。


あからさまに嫌そうな顔をしながら
リオナは呟くように歌う。


だがそれでもクラッピー的には嬉しいらしく
リオナと腕を無理やりくんで行進していた。


だからリオナも仕方なく歌ってしまう。


「あー。もう夕方ッチョ。夜ご飯にするッチョ〜!」
「・・ちょっと待て。」


リオナはのんきにご飯の支度をし始めたクラッピーの襟を思い切り引っ張る。


その表情は笑ってるが確実に怒っている。


それは五日も一緒にいるクラッピーにもわかったようで。


「な、なんだッチョ?」


「・・なんだッチョじゃないよなぁ。ぇえ?今日俺たち全っ然先に進んでないんだけど。歌ばっか歌ってたせいでな。」


「だって歌ってなきゃつまらないッチョ〜!!リオナにはわからないッチョかぁ?」


「・・わからない。」


「むぅ〜!」


「・・・・とにかく、今日は徹夜で歩く。嫌なら俺が引きずってやる。」


「えー!!」


「・・・・えーじゃない。ほらさっさと立て。」


イヤイヤ言うクラッピーを無理やり引きずりながら
リオナは先に進む。


「なんだッチョ?」


「・・は?」


すると今の今まで騒いでたクラッピーが
急にリオナに尋ねてきた。


「だからなんだッチョ?」


「いや・・・だから何?」


「それはこっちのセリフッチョ。」


「・・・?」


意味不明な会話が続く。


「だって今リオナがボクちんの名前を呼んだッチョ。だからボクちん聞いたんだッチョ。」


「・・は?・・・俺呼んでないし。」


「ぇえ!?」


「・・お前頭も悪いけど耳も悪くなったな。・・重傷。もう治る兆しなし。」


リオナはどうでもいいオーラを放ちながら
先に進もうとする。


しかし。


「クラッピー!」


確かにクラッピーを呼ぶ声がした。


2人は動きをピタリと止める。


「・・・?」


この声・・・


リオナとクラッピーはゆっくり振り返る。


その瞬間
地面で引きずられていたクラッピーに小さな影が激突してきた。


「うわぁ!!!!!」


クラッピーは悲鳴を上げながら
リオナの足にしがみついた。


「やめてッチョ〜!!!ボクちんまだ死にたくないッチョ!!!!!!!」


「クラッピー!僕だよ!」


「だからボクちん嫌だって!!!ってえ!?」


クラッピーは恐る恐る自分にまとわりつくものをみる。


そのまとわりつくものは茶色いくせっ毛の髪を揺らしながら
緑色の瞳を向けてくる。


クラッピーは小さく震えながら口を開いた。


「・・ク・・・・クロノスロード?」


なぜここにと言わんばかりに目を丸くする。


「そうだよ・・!!僕だよ!!!」


クロノスロードことクロードは
嬉しそうにクラッピーに抱きつく。


だがクラッピーは頭が混乱しているのか
茫然としている。


そんな彼を見て
リオナは苦笑しながらクラッピーに耳打ちした。


「・・・ほら。お前がずっと待ってた・・"弟"だ。」


「・・・!!!!」


その言葉にからだをビクッとさせ
しっかりとクロードを見つめた。


「クラッピーの歌が聞こえたから走ってきたんだ・・!」


「・・・クロノス」


「クラッピー・・・会いたかったよ」

「・・・・っ・・」


"ボクちんも会いたかった"


本当はこう言いたかったのだろう。


だがクラッピーはいつになく真面目な顔で
クロードから数歩離れた。


そしてそのまま片ひざをつき
頭を下げた。


「クロノスロード、この時をお待ちしておりました・・。長い間・・・お一人にさせてしまい申し訳ありませんでした・・。ボクち・・いや・・私は・・半身として大変な罪を犯しました。」


いつもの口調とは一変し
クラッピーは王に仕える者として話す。


「私を罰してください・・!!!クロノス!死罪でも何でも・・私は覚悟はできております!!!!!」


リオナは少し驚きながらクラッピーとクロードを交互に見た。


クロードは衝撃を受けた顔をして
茫然とたたずんでいる。


「私は・・」
「クラッピー、もう・・いいんだよ」


だがすぐにクロードはクラッピーに近づき
彼を抱き寄せた。


「ク・・・クロノス?」


「もう国はないんだよ・・・だから僕はもう王子でも何でもない。もちろんクラッピーももう僕の教育係じゃないんだよ?」


「・・・!!!」


その言葉にクラッピーは顔を上げ、目に涙をためた。


しかしその表情は喜びではなく、悲しみに満ちあふれていた。


だからクロードも心配そうに見つめた。


「ぼ・・・ボクちんは・・・!!」


「クラッピー・・・?」


「ボクちんはクロノスのお側にいたいッチョ・・・!!!どんな身分でも構わないッチョ・・・!!!だから・・だから!!!」


クラッピーはクロードの肩に顔を埋める。


「ボクちんを・・・・捨てないで・・・」


それは昔からあった不安。


いつか自分は捨てられてしまうのでは?


ただの人形なんていらないと燃やされるのでは?


"孤独"が怖かった。


今も昔も。


だから初めてクロノスと離れた時

涙がなくなるくらい泣いた。


怖くて寂しくて辛くて苦しくて。


それでも昼になったら穴を掘り


夜になったら怖くないように大きな声で歌い続けた。


そうすれば
もしかしたらこの声を聞き付けていつかあなたが来てくれると思っていたから。


「バカだよ・・」


「・・・へ?」


「・・クラッピーはバカだ」


クロードは小さく笑いながら呟いた。


「僕らはもうそういう関係じゃない・・・だから今日からは友達だよ。」


「・・ク・・・ロノス・・・!!!」


「だから・・泣かないで。もう僕はどこにも行かないよ?」


「・・ぅっ・・あぁぁん!!!」


泣かないでと言われても涙が溢れるクラッピー。


クラッピーはクロードを抱きしめ
ワンワン泣いた。


「ボグぢん寂じがっだッヂョ〜!!!!!」


「な・・泣かないでよクラッピー・・・なんだか僕まで悲しくなってきちゃった・・・。」


「一緒に泣ぐッヂョ〜!!!!」


「・・うあぁぁあぁぁあん!」


挙げ句
互いに抱き合いながら泣きだした。





リオナは苦笑しながら二人を残して離れていく。


今夜は2人だけにしてやろうと思ったから。


でも途中で脚を止め、
振り返る。


リオナの目には
かつて双子であった兄弟たちが抱き合っている姿が映っていた。


「・・・・・・・」


気が付けばそれを自分とウィキで重ねていて。


「・・・・はは。どうかしてる・・・」


最近本当にどうかしてる・・。


気が付けばいつもウィキのことを考えている。


会いたい


でも


このままじゃいけない気がして。


また


わからなくなってきたんだ・・・


心はこんなに求めているのに


体がついていかない・・・


「・・・・っ・・・・!」


リオナは口を押さえて
その場に座り込む。


苦しそうに無い手で胸も押さえた。


「・・・グ・・・ッ・・・」


久しぶりだ・・・この感覚・・・


胸が・・焼けるように熱い・・・


「・・・ハッ・・・ハッ・・・・・・・」


・・・・怖い・・・


俺も・・・怖いんだ・・・


1人が・・・・孤独が・・・・


ウィキ・・・早く来てよ


不安なんだ・・・


・・・お前が本当に来てくれるのか


ねぇ・・俺たちは会うべきなんだよね

会えるんだよね・・?


怖いよ・・・・


また1人にされるのは・・・


嫌だ・・・イヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダ・・


コワイ


コワイ・・・・・!!!


「ウィキィィィ・・・・・」


「リオナ!?」


遠くから声が聞こえる・・・


俺の大好きな声


いつも安心させてくれる・・・


「・・マー・・シャ?」


マーシャの顔・・・すごく心配してる・・・


俺にはこんな大事な人がいるのに・・・


それでも俺は・・ウィキを探してしまう・・・


「おい大丈夫か!?」


マーシャは俺の顔を両手で包む。


「はは・・全然平気。」


リオナは吐血して赤く染まった手を隠す。


そして小さく笑ってみせると
マーシャは訝しげな表情を浮かべるが
すぐにため息をつきながらリオナに抱きついた。


「超心配したんだぞ!!でも会えてよかったぁぁぁ!」


「大げさだな・・・。」


「そんなことないっ。俺はいつでもリオナに・・」
《リオナぁぁぁぁぁ!!!》


その瞬間
リオナの腹にB.B.が突っ込んできた。


マーシャはイイとこを取られたと、
B.B.をにらむ。


だがB.B.はお構いなしに
リオナの頬に顔をすりよせた。


《リオナぁ!!会いたかったよぉ!!!》


「・・・くすぐったい。ははっ・・!!B.B.やめ・・!!」


だか心なしかリオナも万更でもなさそうで。


マーシャは頬を膨らませながら
リオナの体を後ろから抱きしめた。


「なんかリオナ君、俺よりB.B.の方が嬉しそう。」


そんなマーシャを見て
リオナはクスクス笑った。


「・・どっちも嬉しいよ。もう会えないかと思ったんだ・・。だからすごく嬉しい。」


リオナが久々に笑うのを見て、
マーシャも少し安心した。


だんだんといつものリオナらしさを取り戻している気がして。


でも無理して笑っているのもわかってる。


でもそれは今に始まったことではないから・・。


「とにかく会えてよかったぜ。」


「・・・ああ。こっちもあの後色々あってさ・・・。」


「あ!ってかクロード見なかったか!?あいつ急に走りだしてよぉ。」


「・・ああ。クロードならあそこにいる。」


リオナが指差す方をマーシャとB.B.が覗くように見る。


そこには確かにクロードがいたが、
もう1人、見覚えのない少年がいた。


「誰だアレ?」


《なんかピエロみたーい。》


「・・・アレはだな。」


リオナは今までのいきさつと
クラッピーとクロードの関係をすべて話した。


「へぇ。クロードの半身ね。でもアレが人形だなんて信じらんねぇな。」


《なんかズルい!!オイラも人間になりたい!》


「・・B.B.はB.B.、クラッピーはクラッピーだろ?」


《そぉ〜だけど。》


不貞腐れるB.B.をよそに
マーシャは真剣な顔で話しだす。


「で?どうする?そのクラッピーの"ボクちんのおうち"とやらを敵から取り戻したら、クロードはクラッピーに預けるのか?」


「・・いや。クラッピーに任せるのはなんだか不安だ・・。」


弱そうだし。


「・・だからクラッピーを旅に連れていきたい。たぶんクラッピーがいればクロードも力を使えるようになるはず。それにクラッピーは結構色々知ってるんだ・・・バカだけど。だから仲間になってくれれば助かるんだけど。」


どうかな・・・


クラッピーはクロードとこの穴に残りたがるだろうな・・。


リオナは悩むように目を閉じる。


だがすぐにマーシャが自信満々に声をだした。


「こーゆーときは俺の出番。脅しは十八番なの。」


脅し・・ね。


「・・クラッピーに通じればいいけど。」


「あいつそんなにバカなの?」


「・・ああ。B.B.とはまたジャンルが違うけど・・何ていうかな・・・なんか抜けてるんだよね。」


「うぁーそれ俺の苦手なタイプだわ。」


「・・・まぁやるだけやってみるかな。痛い目見せるのもありかも。」


そう言ってリオナとマーシャがニヤリと笑いながらクラッピーを遠くから眺めた。





「な・・なんだッチョ!?」


クラッピーは言い知れぬ嫌な予感に身を震わせる。


辺りを見回すが
何も見当たらない。


「あれ??」


「ねぇ、聞いてる?」


クロードは落ち着かないクラッピーの腕をひっぱり
こちらを向かせた。


「ゎっ!ごめんッチョ!なんだッチョか?」


「だからね、クラッピーのそのピンクの髪はどうしたの?前は綺麗なオレンジだったのに・・・」


「ああこれッチョか??これ頭からペンキかぶったッチョ。それから全然とれないッチョ〜。困った困った。」


「ふーん・・・・」


「あれ??嫌ッチョか?」


「だって・・あのオレンジ色・・綺麗だったのに・・・」


「ゔ・・・」


真面目に落ち込むクロードを見て
クラッピーも真面目に落ち込む。


どうにかならないかと何度も髪を洗ったが
色が落ちる様子はなかった。


さてどうするか。


クラッピーが真剣に考えていると
後ろから声をかけられた。


「・・・なぁ。」


振り返ればリオナがいて。


「あ。リオナッチョ。そこにいるのは??」


クラッピーはリオナの隣にいたマーシャと頭の上のB.B.を交互に見た。


「あー・・こいつはB.B.。一応悪魔。こっちはマーシャ。」
「リオナの恋人。今度結婚するんだ。」


「ホントッチョか!?」


「・・・マーシャばか。信じるだろ?」


「えー、俺本気なのに。」


悪ふざけ大好きなマーシャを除け
リオナはクラッピーに近寄る。


「・・・なぁ、取引しないか?」


「取引ッチョか?」


「そう・・。」


その瞬間
クラッピーはクロードを抱きよせ
リオナに警戒した目付きを向けた。


「内容はなんだッチョ?」


「俺たちの・・」


「嫌だッチョ。」


「・・まだ言ってない。」


リオナとクラッピーは睨み合う。


そんな二人を見かねてか
マーシャがリオナの前に出た。


そしてクラッピーの顎をつかんだ。


「な・・ななななんだッチョ!!!!」


マーシャはニヤリと笑う。


「お前見た目は悪くねぇなぁ。こりゃ売れば高くつくぜ。」


「ぇえ!?う・・売るッチョか!?このボクちんを!?」


クラッピーは完全に怯えきっていて
天に向かって伸びる髪の先まで震えている。


「まぁお前が俺たちの旅に参加するっていうなら考えなくもない。どうする?」


お前次第だけど
と言ってさらに口元をニヤつかせる。


だがクラッピーは首をブンブン横に振り
マーシャの手から逃れようとするのに必死だ。


「やだ!どうせクロノスを利用しようとしてるッチョ!!!!!!」


「利用だなんて聞き捨てならねぇ。俺たちは"協力"を目指してんの。」


「何が協力だッチョ!!!そんなこと言ったってクロノスは・・」
「僕・・行くよ。」
「ほらね。絶対クロノスは・・って、ぇえ!?」


まさかのクロードの返答にクラッピーは目を丸くする。


「なんでッチョか!?外は危険がいっぱいだッチョよ!?」


クラッピーはクロードの肩を揺する。


だがクロードは静かに立ち上がる
クラッピーの目を見つめる。


「僕ね・・・わかったんだ。お兄ちゃん達と世界を見て気が付いた・・・。戦わなきゃって。自分のためにも皆のためにも。僕にしかできない事ってたくさんあると思うんだ。」


「でも危ないッチョ!!クロノスは時を操る最高指揮者ッチョ!!もしクロノスに何かあったら"時"は行く道を失うッチョよ!?」


「わかってるよクラッピー。でもね、このままじゃいけないんだ。今までみたいに誰かに守られてばっかじゃだめなんだよ。」


真剣なクロードの表情に曇りはない。


だからクラッピーの胸に深く突き刺さった。


「クロノス・・・」


「だから僕は行くよ。」


「・・・・」


クラッピーはうっすらと目に涙を浮かべながら
下を向いてしまう。


さすがに惨めになってくる。


だがすぐにリオナが近づき
クラッピーの頭に手を乗せた。


「リオナ・・?」


「・・クロードは変わったんだよ。」


「そんなのわかってるッチョ・・・」


わかってるけど
・・・認めたくない。


昔みたいに頼られなきゃ自分の存在意義が無くなる気がするから・・・


「・・お前はここにいる。」


「・・・え?」


まるでクラッピーの心中を見たかのように話すリオナ。


「クラッピーがいるから・・クロードは強くなれる。もしいなかったら恐らくこんな事は言わない。」


「・・・・でも・・今のボクちんじゃ・・・」


・・・・クロノスを守れない・・・


「ならよぉ。」


すると今まで黙ってたマーシャが口を開く。


「次はお前が変わる番だろ?」


「・・・・・・!!」


「いつまでもこんな空気悪い穴に引きこもってないでよぉ、一緒に世界を見ないか?な?」


「っ・・・!!」


クラッピーの目からボタボタ涙が落ちる。


悲しいんじゃない


苦しいんじゃない


うれしいんだ・・・・



「うぅぅ〜・・・!!!ヒッグ!!」


クラッピーが泣きじゃくるのを見て
リオナは苦笑しながら自分の袖で涙を拭ってやった。


「・・・まずはこの泣き虫を治すべきだな。」


「ゥゥ・・・!無理ッチョ!!!」


「・・ったく。」


思わず笑いがこぼれる。


クラッピーはリオナの腕でゴシゴシ涙をふくと
いつもの笑顔で立ち上がった。


「わかったッチョよ。ボクちんはリオナ達についていくッチョ。だけどボクちんはクロノスを守るために行くんだッチョよ?」


「クラッピー!」


「おわ!」


クロードが勢いよくクラッピーに飛び掛かる。


クラッピーは照れながらもクロードの前では平静を保つのに必死だ。


「じゃあまずは"ボクちんの部屋"に行くッチョ!!!そんで部屋を奪った敵を倒すぞー!!おー!!」


「おー!」


そう言ってクラッピーとクロードは歌を歌いながら歩きだした。


その後ろ姿は本当に楽しそうで
残されたリオナ達も思わず笑ってしまう。


「あ〜あ。またバカが増えた。」


「・・まぁB.B.よりは役立つ」
《ねぇ。オイラ真面目に泣いちゃうよ。》


「・・嘘だよ。俺はB.B.がいなきゃ・・・ね。」


《リオナぁ〜!!どうせそんなこと思ってないくせに。》


「・・ふぅん。そう思うならそう思っておけば?行こマーシャ。」


「もちどこまでも。」


《ぇえ!?ちょっ・・ちょっと待ってよぉ!!!!》


3人もクラッピーたちを追って行った。











「ここだッチョ!」


マーシャ達と再会して三日目。


ようやく"ボクちんの部屋"にたどり着けた。


目の前にはとても大きな扉がある。


なかなか生活環境はいいようで。


だがここまでの道のりは大変なんてものじゃなかった。


「何が"ここだッチョ!"だ。」


着いて早々マーシャが悪態をつきはじめる。


「またマーシャッチョか!?いい加減ボクちんにばっかり文句言うのはやめてッチョ。」


「ぁあ!?あのなぁお前があの頭にくる音痴な歌を呑気に歌ってるせいで1日でつくところが3日もかかったんだ!」


「そんなことないッチョ!!!!」


2人は扉の前で睨み合う。


・・・また始まったよ。


この3日間
マーシャとクラッピーのケンカは半端無かった。


クラッピーが歌を歌うたびにケンカをして
もう聞き飽きた。


いつものトラブルメーカーのB.B.でさえ黙ってしまう。


《マーシャをあんなに怒らせるなんてオイラよりひどいっちょ。》


「む!!今あのエセウサギに真似されたッチョ!!!!」


《エセだと!?このボロボロピエロ!!》


「な!!!ひどいッチョ!!これはボクちんの努力の結晶だッチョ!!!」


《な〜んだっちょかぁ〜??オイラし〜らない!》


「もぉ怒ったッチョ!!」


今度はB.B.がクラッピーとケンカをはじめた。


さすがにまずいと
マーシャとクロードが止めに入るが
リオナは呆れて止める気もない。


むしろこの扉の向こうにいる"敵"が一体誰なのかが気になって
リオナはスタスタと扉の前に行った。


とりあえず扉に耳をくっつけて
中の音を聞き取る。


「・・・・・・」


・・・誰かいる?


小さくだが誰かが歩く音がする。


でもどうやって中に入るか。


こっそり入るか。


それとも何かのドラマみたいに押し入るか。


「いや・・・・・違う。」


やっぱりここは・・・


リオナは扉の前にまっすぐ立つ。


そして。


・・・・コンコンッ!!


「・・・すみません。どなたかいらっしゃいませんか?」


まさかの行動にケンカをしていた4人がバッと振り返った。


「お兄ちゃん!?」
「な!なななな!!!何してるッチョ!?!?!?」
《ちょっとリオナ!!?》
「リオナくん!?大丈夫!?」


4人の驚きの表情を見て
リオナは少し不機嫌そうに顔を歪めた。


「・・今更。」


「いや、あのねリオナ。普通"ピンポーン、敵さんいらっしゃいますかぁ?"って言って敵がノコノコ出てこないでしょ?」


「・・・わかんないよ。案外でてくるかも。」


そう言って真っ直ぐ扉に向き直り
期待に目を輝かせるリオナ。


「リオナって案外オチャメッチョね。ホント可愛くて今すぐ抱きたい。」


誰もがリオナを止めることができない。


もちろん出てくるなんて誰も思わない。


だが


予想は覆された。


突然扉がゆっくり開きだす。


ゴクン・・・


皆息を呑む。


まさか敵がノコノコと現われるなんて。


ゆっくりと開く扉から足が見える。


ボロボロの靴


薄汚れたズボン


長い真っ黒なローブ


そして血のように真っ赤な髪。


だが途中でリオナはふと気が付いた。


コイツは敵じゃないと。


なぜなら
見覚えがあったから。


もう最後に会ったのは一年前。


しかも彼がこんな所にいるなんて信じられない。


リオナは目を見開きながら目の前に現れたクラッピーの言う"敵"とやらに指を差した。


「・・・コール!?」


できれば彼とは会いたくなかった。


だって彼がここにいるってことは
悪い知らせに違いない。


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