[携帯モード] [URL送信]

【完結】 Novel〜Lord's Soul〜
story69 おとぎ穴のピエロ



・・・・あれ・・・・・・


なんか眩しい・・・・・


俺・・・どうしたんだっけ・・・


・・・・ああ。


思い出した・・・


・・・俺、変な穴から落ちたんだ。


でもなんでこんなに眩しいんだ・・?


あー・・・もしかして・・・


俺死んだ・・?


「って・・・イタタタタタ・・・」


リオナは寝返りを打つと
背中に激痛が走るのを感じる。


でもこれで実感した。


「俺・・・・生きてる。」


痛みに顔を歪ませ
手で腰を押さえながら
ゆっくりと体を起こす。


それにしても驚くべきは
この穴の底だ。


気を失うほど深いこの穴の底は
暗いどころが光であふれている。


上を見上げれば空のように青色で染められていて
窮屈さを感じない。


そして地面は草や花が生え
穴のはずなのに、どこまでも道が続いていた。


「・・・なんなんだ?・・・ここは。」


まるで子供が好きなおもちゃ箱をひっくりがえしたような部屋だ。


天井をよく見れば
きれいな青空なのになぜか星もある。


壁はもう悪戯書きしたようにしかみえない。


一体この穴・・いやこの世界はなんなんだ。


と、
頭を悩ませていた時だった。


〈痛いッチョ!!!イタイッて言ってるッチョ〜!!!!!!〉


「・・・・・?」


どこからか声が聞こえる。


〈ボクちんはここだッチョ!!お前のオケツの下だッチョ!!!〉


「・・・・・うわ!!」


リオナは腰が痛むのも忘れて
勢いよく立ち上がった。


そして自分が今まで座っていた場所を振り返る。


「・・・ぇ・・・」


だがリオナは地面でつぶれているものを見て
思わず目を丸くした。


「・・人・・形・・?」


そこに横たわるのはボロボロの人形。


ピンク色の髪を右上で束ね
目はボタンで作られ
顔には星が刻まれている。


洋服はつぎはぎだらけで
ズボンはズタズタ。


それでも見た目はピエロみたいで
少し不気味だ。


でも人形がしゃべるはずがない。


人形はしゃべらな・・・


〈お前!!よくもボクちんをつぶしてくれたッチョ!!〉


・・・しゃべった・・・・。


でもよく考えてみろ・・。


B.B.だって人形みたいなものだ。


きっとこの人形も中に悪魔だか天使だか魂だかを宿してるんだろうな。


リオナは冷静に判断し、
目の前で騒ぎ立てる人形を一瞥した。


〈お前ちゃんとボクちんの話聞いてるッチョか!?!?〉


「・・・・潰して悪かったな。それじゃあ俺はこれで・・」
〈待つッチョ。〉
「・・・?」


リオナは今度は何だと言わんばかりの目線を人形になげかけた。


〈ここはボクちんの"おとぎ穴"ッチョ。ここから先は部外者は一歩も行かせないッチョ。〉


「・・・。」


〈な、何か言うッチョ。〉


「・・・いや。・・・俺出口探してるだけなんだけど。」


〈あー、出口ならここをまっすぐ行って・・って何言ってるッチョ!!だからここから先は通さないと言ってるッチョ!!!!〉


一人、いや、一体が目の前で暴れる中、
リオナは呆れたようにため息を吐いた。


・・・また面倒ごとに巻き込まれた。


馬鹿馬鹿しいと思いながらも
リオナは地面でわめき散らす人形と対等に話すために
しゃがんで顔を覗き込んだ。


「・・・じゃあ、どうすれば通してくれる?」


〈むっ。お前、ボクちんを倒せばいいッチョ。そしたら通してあげるッチョ。〉


「・・・へぇ。それ本気で言ってんのか・・・?」


こんなボロ人形相手など・・・


〈お前、こんなボロ人形なんてすぐ倒せるって思ったッチョ?〉


「・・・・ぇ。」


図星すぎて何も言えない。


ここは慰めるべきか。


それとも否定すべきか。


〈そんな事思ってられるのも今のうちッチョ。〉


「・・・な」


その瞬間、
ボンッという爆発音が響いた。


気が付けばボロボロの人形が爆音と共にピンクや青の煙に包まれている。


いや、爆発したのは人形自身。


リオナは思わず目が点になった。


「・・・自爆?」


そんなバカな。


「そんなバカなだッチョ。」


「!?」


リオナは段々と消えていく煙に目をやった。


「はっはぁ〜。ボクちんが自爆するわけないッチョ。」


「・・・な!!!」


煙が消え
そこからでてきたのはボロボロの人形じゃなかった。


リオナは顔を引きつらせながらゆっくりと指を差す。


「・・ボ・・・・ボロボロの少年?」


「ボロボロ言うなッチョ!!!!!」


目の前に現われたのは
15歳くらいの少年。


だがあのウザイ口調といい
目立つピンク頭といい
ボロボロの服といい、
確実にさっきまでいた人形に見える。


「はっはっはぁ。どうだびびったッチョか?これでボクちんを倒そうだなんておもわな・・・ウギャァァアァァア!!!!」


胸を張って人間化した自分の姿を見せていたボロボロピエロ少年を
リオナは一瞬で羽交い締めにした。


「おい!離すッチョ!!!」


「・・嫌だ。これでおしまいじゃない?・・・俺の勝ち。」


「ま、まだ倒されてないッチョ!!」


「・・ふーん。じゃあ・・・はい。これでいい?」


「!!!」


リオナに軽々と地面に押し倒され
ボロボロピエロ少年は目を点にした。


「・・・じゃあ俺はこれで。」


リオナは手を払いながら立ち上がると
クルッと背中を向けて歩きだした。


「ちょ・・待つッチョ!!」


だがしつこいボロボロピエロ少年は
リオナの腕にしがみついてきた。


「はぁ・・・・何?」


「あんた強いッチョ!!!??」


「・・・は?」


「お願いがあるッチョ!!!」


「・・・断る。」


「んな!!」


リオナは心底いやそうな顔をしながら
このボロボロピエロ少年を放すために腕をブンブンふる。


「そんなこと言うなってぇ〜旦那ぁ〜!」


「・・・今更そんな態度とったって俺は嫌だからな。」


「じゃあ、お前、俺の言うこと聞けッチョ。」


「・・・ウザイ。」


「えー!!頼むッチョ!って痛!!!おい引きずるなッチョ!!!」


「・・だったら離れろ。」


「嫌だッチョ!!!」


リオナは少年をにらみ
ため息を吐く。


仕方なく
横で騒ぐ少年をズルズル引きずりながら
出口を捜す。


それにしても変な穴だ。


どこに行っても玩具やらお菓子が散らかっていて
本当におとぎの世界に来ているようだ。


というか・・・


「・・・行き止まりなんだけど。」


道は一本しかなかったはず。


だが目の前には巨大な木の"絵"がかかれているただの壁しかない。


リオナは無表情のまま
少年の首をつかみ自分の前まで持ち上げた。


「・・・おい。」


「ウェッ!」


「出口はどこだ?」


「さ・・さぁ?」


「・・・へぇ。死にたいんだな。」


「はぅっ!!!嘘です!!!嘘です!!!言うから殺さないでッチョ!!!」


その言葉にリオナはパッと手を離す。


少年はゲホゲホ言いながら
リオナから少し離れた。


だが少年はふと口元を引きつらせていた。


「教えるけど・・条件があるッチョ。」


「・・・ああ?願い事があるとか言ったらぶっ飛ばすぞ。」


「じゃあ教えないッチョ。」


「・・・・・。」


このクソヤロー・・・


あー・・・ウザイ・・・


リオナは眉をピクピクさせながら
いったん自分を落ち着かせ
少年を引っ張り立たせる。


「・・・わかった。お前のそのお願いとやらを聞いてやる・・。だけど内容によるからな。」


「ホントッチョか!?うあー嬉しいッチョ!!!」


すると少年は本当に嬉しそうにリオナに抱きつき
はしゃぎはじめた。


だがすぐに冷静さを取り戻し、
わざとだろうが不適な笑みを浮かべる。


「ボクちんについてくるッチョ。」


そう言って興奮を抑えるようにリオナの腕を引っ張って歩きだした。


「この穴はボクちんが十年もかけて作った穴だッチョ。」


「・・・10年?なんでまたこんな・・・」


「ボクちんはあるお方をずっとまってるッチョ。この"おとぎ穴"はイーストアイランドのいろんな森につながってるッチョ。合計五つあるッチョ。いつかあのお方がどこかの森に来ていつでもこの穴に落ちれるように作ったッチョ。」


いつでもって・・・・


それは困るが
少年の顔は真剣で
思いが真摯に伝わる。


「・・・そうなのか。でもなんでこんな変な柄してんだ・・?」


「変な柄言うなッチョ。これはあの方が大好きだったお部屋をイメージしたんだッチョ。苦労したッチョ〜?」


こんなことしてるんなら自分の足であのお方とやらを探しに行けばいいのに。


なんて惨めすぎて口には出せないが。


「それで・・・ボクちんがお前に頼みたいのは・・・」


そうだ。


まだそれを聞いていなかった。


リオナは横で少しためらっている少年をひとにらみし
早く話せと催促した。


「このおとぎ穴には五つの穴があるって言ったッチョ?そのうちの4つは入り口だけで出口は1つだけだッチョ。んでその唯一の出口は"ボクちんのおうち"にあるッチョなんだけど・・・」


「・・・・?」


「実は数週間前から知らない男に占領されてしまったッチョ・・。」


「・・・は?」


「だから"ボクちんのおうち"が知らない男に奪われちゃってボクちんおうちに帰れないッチョ。」


少年はしょんぼりと肩を落とす。


だけどよく考えてみると


「・・・・それって、そいつ倒さなきゃ俺も帰れないって話?」


「そうだッチョ。」


・・・・うわぁ・・・・・・・・・


・・・・最悪だ。


リオナは一瞬固まるが
でもずっとこんな場所にいるのもごめんだとも思った。


「だから助けてほしいッチョ。"ボクちんのおうち"をとりかえしてくれたら地上に帰してやるッチョ。」


「・・・・だってこれしか方法ないんだろ?俺に選ぶ余地ないじゃん。」


そうは言ったものの
"その通りッチョ!!"と開きなおる少年にイラッときて、
ついつい拳骨を食らわせてしまった。


少年は痛そうに頭をさすりながら
リオナに必死についてくる。


普通なら少年が前に行くべきだろうに。


「・・・ところで。いつになったら"ボクち・・・"いや・・・お前の部屋にたどり着くんだ・・・?」


「"ボクちんのおうち"だッチョ。そうッチョねぇ〜。まぁ1週間もあれば着くッチョ。」


「・・・あー1週間ね・・・ってどんだけ遠いんだよ・・・!」


リオナは目をかっぴらく。


驚き、いや、ショックを隠せきれない。


・・い・・・1週間・・


こんな穴にあんなバカと1週間も・・・・


リオナは目頭が急に熱くなるのを感じる。


こんな奴といるくらいならB.B.といるほうがマシだ。


と言っても、もう皆に会えるかどうかもわからないが。


そう考えるとますますさみしくなってくる。


「大丈夫だッチョ!安心するッチョ!ボクちんが面倒みてやるッチョ。」


「・・・・・か・・帰りたい。」


リオナは切実な願いをつぶやきながら
おばかな少年に手を引かれていった。








「ッチョ〜♪ッチョチョチョ〜♪チョッチョォォ〜チョチョチョチョォ〜♪」


「・・・・。」


この今にも気が狂いそうになる下手くそな歌をもうどれくらい聞いただろうか。


途中途中
"一緒に歌うッチョ"とか"ノリが悪いッチョ"だとかちょいちょいリオナに話し掛けてきたが、
リオナは常に首を横に振ってきた。


だがそれももう限界。


リオナは楽しそうに前を歩く少年の襟を引っ張った。


「・・・おい。」
「どうしたッチョか?」
「・・・・・ちょっと静かにできないのか。」
「ああ!一緒に歌いたいッチョね!いいッチョ〜♪ボクちんのあとに歌うッチョ!」
「・・・いや、だからそういうことじゃなくてさ。お前のその変な歌がうるさ・・・」
「なるほど!もう眠たいッチョね!待ってるッチョ!今用意するッチョ!!」
「・・・。」


もうどうにでもなれ。


リオナは心であきらめの言葉をはく。


きっと自分は疲れてるんだ。


そう言い聞かせて
リオナはせわしく何かを準備しはじめる少年の姿を目でおった。


少年はひとしきし動き回ると飛びっきりの笑顔を向けてきた。


「さぁ寝るッチョ!」


リオナは少年の足元を見る。


どうやら布団を用意していたようだ。


「・・・なんでこんな所に」


でも一つしかない。


「・・・お前は?」


「ボクちんは寝ないッチョ。」


「・・・なんで?」


「眠くないッチョ。ホラホラ早く寝るッチョ!!」


若干強引に布団に入れられてしまう。


「電気消すッチョ〜」


そう言って少年はパチッと周りの照明を消した。


その瞬間に一気に静けさが広まる。


こんな通路みたいな場所で眠るなんてリオナ自身なにか変な感じだった。


布団から顔をのぞかせると
天井が見える。


さっきまでは真っ青な空が広がっていたが、
照明が消えた今は綺麗な星が輝いている。


一体どういう仕組みなのか。


なんて考えていたが、
そんなことよりもっと気になることが。


・・・コイツは本当に寝ないのか?


俺より断然騒いで疲れているはずなのに、
コイツは眠くないのか?


だってよく見れば目の下にクマがあるし・・・。


・・やっぱり俺に気を遣ってるのか?


リオナはじっと少年を見つける。


少年は壁に寄り掛かるように座っていて
目をパチパチさせながら空のような天井を見上げていた。


「・・・おい。」


「おわっ。まだ寝てないッチョか?」


「・・お前本当に眠くないのか?」


「だから眠くないって言ってるッチョ。別にお前に気を使ってるわけでもないッチョ。」


少年はたんたんと述べると
早く寝るッチョと言わんばかりに手を払った。


「じゃあ・・・その目の下のクマは?」


だがリオナもリオナだ。

これでもかと言わんばかりにせめる。


その効果あってか、
少年は少しビクッとして両手でクマを触った。


「・・・・ほらな?本当は眠いんだろ。」

少年は少し顔をそらす。


「ち・・違うって言ってるッチョ。」


「じゃあなんでだよ・・・」


「・・・・・。」


何か眠れない理由でもあるのか?


リオナはなんだかウズウズして
布団から体を起こし
少年の腕を引っ張って引き寄せた。


そのまま少年はリオナの足元に膝をついた。


そしてリオナは少年をじっと見つめ
逃がさないようにする。


「・・言えよ。」


「言っても・・・お前には関係ないッチョ。」


「関係ならあるさ・・。」


「・・・?」


少年は怪訝そうな表情を浮かべると
リオナは逆にいやらしく笑った。


「・・・・俺が気になって眠れない。」


「お前・・・バカッチョ。」


「・・・・。」


気ぃ使ってやったのに・・・。


リオナは少し不貞腐れるが
その瞬間に
少年の顔に笑顔が戻った。


「ボクちん・・寝たくても眠れないんだッチョ。もうかれこれ10年は寝てないッチョ。」


「・・・は!?・・・なんで?」


リオナはまさかの答えに少し戸惑う。


「話・・・・少し長いッチョよ?」


「・・しょうがないなぁ。聞いてやるよ。」


そう言うと少年は静かに話をはじめた。


「ボクちんはね、とっても有名な人形技師に作ってもらったんだッチョ。人形技師って知ってるッチョか?」


「・・人形作る職人?」


「人形技師っていうのは、人形に魂を打ち込むことができるッチョ。そうすると人形は意志を持って動き出すッチョ。だけどボクちんみたいに人間化できるのはその有名な人形技師が作ってくれた人形だけだッチョ。」


へぇ、そんな者がいるのか。


・・世界って広い


そんな事を思ってしまう。


「その有名な人形技師はノースアイランドにある手芸国家のメイカーカウンティーにいるッチョ。今から話すのは十数年前の話ッチョ。」


少年は座りなおし
思い出すように上を向いた。


「人形技師の名前はダザーン。
ダザーンは25歳の若さで世界一の人形技師になったッチョ。
何がすごいかって、ダザーンは自分が作った人形に"人間の魂"を入れることができるッチョ。例えば死んだ父親の魂を父親に似せた人形に入れたり。だから世界中の貴族たちがダザーンに人形を注文しにやってきたッチョ。そんなある日ッチョ。世界中の国々を統率するあの五大帝国のある帝国の王が直々にダザーンを訪れたッチョ。
ダザーンは驚いて頭が上がらなかったッチョ。でもその帝国の王は意外に気さくで心が広い御方だったッチョ。
だからダザーンも気楽にその王の依頼を受けたッチョ。
だいたいダザーンに人形を頼むのは形見とか思い出とか色々だッチョ。
その王も息子が生まれたからその息子に人形をプレゼントしたいから来たッチョ。
でも他の依頼人とは少し違っていて、普通なら依頼人は人形をダザーンに作ってもらって、魂をダザーンに呼び戻してもらうッチョ。
でも王は人形も魂も持参してきたッチョ。実はその魂は先日生まれたばかりの息子の魂だったッチョ。
生まれてきた息子は双子だったけど兄は生まれてすぐに死んだッチョ。だから王は兄の魂を昔から馴染んできた人形に込めて弟である息子に送りたかったっチョな。その話を聞いてダザーンはもう大号泣。だから余計に力が入ったッチョ。それで完成したのがボクちん。設定年齢は15歳。予想外に人間化できてしまうことからボクちんは王の息子、まぁボクちんの弟に当たる王子のお世話係になったッチョ。ボクちんが初めて王子に会った時はまだ王子は生まれて1ヶ月。だから色々大変だったッチョ〜!人形化してる時は涎でベタベタだし。でもなんでかいやじゃなかったッチョ。どうしてかなぁ〜?」


少年はアホヅラを浮かべながら少し考えていた。


「・・・それはお前の弟だからじゃないのか?」


それは自分にも思い当たるふしがある。


だからリオナは素直につぶやいた。


でも少年はそれを小さく笑ってすます。


「ははっ!そうッチョかねぇ〜。でもボクちん王には口どめされてるッチョ。王子にはボクちんが兄ってことを隠せって言われてるッチョ。」


「・・なんで?」


「それは・・今はボクちんは王族じゃないしただの使用人だからッチョ。別にこの世に未練があるわけじゃないけどね、勘違いしないためにもそうするのがいいってボクちんもわかってるッチョ。」


そう言って笑うが、
どこか違う。


・・・・泣いている


心が・・・


リオナは少し顔を歪める。


「それからボクちんはずっと王子のお側にいたッチョ。王子もボクちんと一緒にいることを喜んでくれたしボクちんもうれしかったッチョ。
それを王も喜んでくれたッチョ。そのおかげでボクちんは少し昇進したッチョ。お世話係から"半身"になったッチョ。」


「半身・・・?」


「半身って言うのはある特定の人間の一生にお供することッチョ。まぁ内容的にはお世話係とかわらないけど、王子の半身であるからには命にかえても王子を守らなきゃいけないッチョ。だから王子が死ねばボクちんも自然と消えてくッチョ。それが半身。でもボクちんには他にも仕事があるッチョ。それは王子の力の媒体になることッチョ。王子は生まれた時から何かが足りなかったッチョ。でもある日気づいたッチョ。王子の力をボクちんを介して使うと完璧なんだッチョ。」


・・・俺がB.B.と一体化するようなもんか


でもきっとそれは・・・


こいつが王子の双子の兄だから。


「だいぶ話がずれたッチョ。とにかくボクちんは王子にとって必要なものだッチョ。もちろんボクちんにも。だからボクちんはいつでもどこでもどんなに忙しくても王子のお側にいたッチョ。・・・・でも・・・・そんなことはすぐに終わった・・・。」


少年は首をがくっと落とし、
口調が一気に真面目になる。


「あれは王子が生まれて5年たった頃・・今からちょうど10年前。ボクちんは体に不備がないか点検するのに、数年に一度だけダザーンのもとを尋ねていたッチョ。その頃からだったッチョ。ある不審な噂が流れだしたのは。それは"光妖大帝国がローズ・ソウルを狙っている"っていう話ッチョ。」


「・・・・!」


リオナはその言葉に思わず反応する。


「ボクちんがその噂を聞いたのはダザーンの元に訪れていた旅人からだったッチョ。その旅人は昔からダザーンの友人で、その繋がりでボクちんのこともよく可愛がってくれたッチョ。でもその旅人はすごい不思議な力を持っていて、世界のことなら何でも知ってるし、いきなりボクちんの目の前に現われたりしてたッチョ。だからその噂も信じることができたッチョ。それでボクちんその旅人に冗談で言ったッチョ。もしボクちんの国に何かあったら王子だけでも助けに来てッチョって。そしたらそいつは笑って頷いたッチョ。とにかく早くこの事を知らせないとって思ってボクちんは急いで国に戻ったッチョ。でも・・・もうその時には遅かったッチョ。」


「・・・・・まさか」


まさか・・・この話・・・



リオナは息を呑む。



途中から変だとは思っていた。


その話が自分の知っている人物と重なるからだ。


「ボクちんが着いた時にはもう帝国はなかったッチョ・・・・。もちろんローズ・ソウルも・・・王子も・・・」


・・・ああ・・・やっぱりそうだ・・・


「でもボクちんがまだ消えてないってことは、王子も死んでないってことッチョ!だからボクちんは王子を探すことに決めたッチョ!王子は森が大好きだから絶対に森にくると思ったッチョ!だから色んな森に穴掘って今も待ってるッチョ!ボクちんが寝ないのは夜に王子が落っこちてこないか心配だからッチョ。」


少年の長い話は終わった。


だがこの穴にかけられた思いはとても大きいことがわかった。


それに・・・


「・・・おい」


「なんだッチョ?」


リオナは少しドキドキしながら口を開く。


「お前・・・・・・クラッピーか?」


少年は今まで笑顔だったのが信じられないくらい驚きの表情を表していた。


「な・・ななななななななななんっで!?!?!!!???なんで知ってるッチョか!?!?」


「・・・やっぱり。ついでに当ててやろうか?お前の知り合いの旅人っていうのは・・・更夜、だろ。」


「なぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!なんでだッチョォォォォ!!」


少年ことクラッピーは今までにないくらい乱れている。


これを半狂乱と言うのだろう。


でもそれがリオナの顔を弛ませた。


なんだか少しからかいたくなって。


リオナは少しニヤニヤしながらクラッピーの顎をつかむ。


「・・俺がさ、もしお前が探してる王子さまを知ってるって言ったら?」


「んなッ!!まさか!!お前まさかボクちんを脅す気ッチョか!?」


「クロノスロード」


「!?」


「クロノスロード。それがお前が探してる王子さまだろ・・?」


その言葉にクラッピーは驚いていた表情を一気に怒りに変えた。


「・・・貴様!!!クロノスに何したッチョ!!!」


クラッピーはリオナを押し倒し
首をつかんだ。


今にも絞め殺されそうなのにリオナは表情を変えない。


「何をしたか聞いてるッチョ!!!!!」


「・・旅をしてた。」


「旅!?」


「そう、旅。ローズ・ソウルを奪うためのな。・・・言っとくがクロードは・・いやクロノスロードは自分から俺たちについてきたんだ。別に俺たちが強要したわけじゃない。」


その言葉を聞いてか、
クラッピーは少し落ち着いてリオナの首から手を離した。


だが体はいまだにリオナの膝の上に跨ったまま。


クラッピーは震える手をリオナの胸に押しあてた。


「じゃ・・じゃあ・・・クロノスは・・・」


「ついさっきまで俺の近くにいた。この穴に落ちるまでな・・。つまりクロードが生きてるのは更夜がお前の冗談約束を守ったってことだな・・。」


ますますわからない更夜という男・・。


リオナは少し眉を寄せるが
今にも泣きだしそうなクラッピーを見て
少し緩んだ。


「・・っ・・・!!!」


まるでせきを切ったようにクラッピーの目から涙がこぼれる。


リオナの顔に降り注ぐが
悪い気がしない。


それはなんだか暖かくて
それでいてなんだか切なくて。


「・・・ウー・・ヒック!!!!ァアァ〜!!」


でも泣き方が豪快で。


リオナは苦笑しながら体を起こし
クラッピーの背中を撫でてやった。


「ボクちんが穴掘ったのは無駄じゃなかったッチョねぇ〜!!!うぁぁん!!!」


「そうだよ。あー・・もう泣くなって。」


「クロノスは無事ッチョね!?」


「ああ。・・今は俺の仲間が一緒にいるはずだ。だからさ・・」


リオナはそっとクラッピーを抱き締める。

「・・もう休んでいいんだ。クラッピー。」


もう待たなくていいんだ。


泣かなくていいんだ。


君はもう十分頑張ったんだから。


すると急にクラッピーの体が重くなった。


クラッピーは安心したのかリオナに体を預け
今にも眠りそうに目を半分閉じていた。


だけどまだ小さく何かを呟いている。


「・・・ッチョ」


「・・・?」


「お前の名前・・・」


「ああ・・名前はリオナだ」


「リオナ・・・ありがとうッチョ」


そう言ってクラッピーは静かに目を閉じ
寝息を聞かせた。


リオナはゆっくりクラッピーを布団に寝かせてやり
そのすっきりした寝顔を眺めた。


「・・・・・」


だがリオナはすぐに目を閉じ両手で顔を覆った。












・・彼らはいつか
会う運命だったんた・・・










会うべき運命だった・・・














こんなにも相手を思って・・・












・・・純粋に相手を愛していた











自分のことじゃないのに・・・
なぜか温かかった・・・










なんでかな・・・・












ねぇ・・・











ウィキ・・・?











俺たちは・・・











本当に会えるのかな・・・












会うべきなのかな・・・












俺・・・















わからなくなっちゃった・・・


[*前へ][次へ#]
[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!