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【完結】 Novel〜Lord's Soul〜
story68 待ってて




"リオナ"











誰かが・・・・俺を呼んでる・・・・









"ふふっ・・誰だって?酷いなぁ・・・"










影・・・・いや・・・・人・・・?



・・・・俺の目の前にいる?











"そうだよリオナ。僕は君の目の前にいる。いや・・隣、かな。昔も今も・・・"










・・・昔も・・・?


俺はアンタを知らない・・・・


からかうなら・・・・










"からかってなんかいないよ。まぁ確かに見た目は変わったけど・・・。ねぇリオナ?リオナが呼んだんだよ?"











誰を・・・?











"もちろん、僕のことだよ。"











・・・俺が・・・・アンタを・・




まさか・・・・



まさか・・・!!!











"そのまさかだよ。"











ウィキ・・・!!!!!!












"よかったぁ。せっかく会いに来てあげたのに忘れられてたらどうしようかと思っちゃった。"











でもなんで・・・・


・・・・俺にはもう会わないんじゃ・・・










"そうだったね。もうリオナには会わないつもりだった。でもリオナは僕を求めてくれた・・・ムジカでもマーシャでもない、僕を・・・僕だけを。そうでしょう?"










・・そうだよ。


俺にはウィキがいれば・・・ウィキさえいれば・・・・










"泣かないでリオナ。もうどこにも行かないから・・・ね?ほらこっちきて・・・僕を抱き締めてよ・・・"











ああ・・・・・












"リオナだ・・・リオナリオナリオナ・・・会いたかった・・・"










でも・・・ウィキ・・・・











"なに?"











どうして・・・・体・・・大きいの・・・?


俺と同じ・・・











"ふふっ。ようやく気付いた?そりゃあ僕も成長したいからね。リオナと同じ位かな?ねぇ少しだけね、声変わりもしたんだ。でも・・・こんな僕はイヤ?"













イヤなわけない・・・


ウィキはウィキだ・・・・











"嬉しい・・・・ありがとう。ねぇリオナ?"











・・・・・・・・・?










"もう・・・・誰にもあげないでね?"









・・・何を・・・・?












"リオナの・・心"












・・・心・・・・・・











"リオナの心は僕だけのものだよ・・・"












・・・ああ


・・・・俺の心・・・ウィキにあげる・・・・・











"ホント?約束だよ?"











うん・・・でも・・・・・・その代わり・・・・











"・・・・?"











・・もう・・・どこにもいかないで・・・・











"リオナ・・・。うん、僕はリオナだけのものだよ?いつもそばにいるよ?"











・・・・よかった













"でも・・・もう夜が明けちゃうね・・・"











・・どういう・・・・・こと・・?












"夢から覚めるんだよ・・・リオナ。"










・・・いや・・・嫌だ嫌だ嫌だ・・・・・・


ずっとここにいたい・・


ウィキ・・・!!


嫌だ傍にいてよ・・!!!!


ウィキのいない世界なんていらない・・・!!!


夢でも・・俺はこの世界に・・・ウィキのいる世界にいたい・・!!!










"僕もだよ・・・・リオナ・・。リオナのいない世界なんてあってないようなものだもん・・・。でもリオナはこの世界には残れないよ・・・"










嫌だよ・・・・・ウィキ・・・











"だけど信じて・・・リオナ。リオナがこの世界に残れなくても・・・僕がリオナの世界に行くよ・・・すぐに。だから待ってて・・・今度は僕がリオナを追うから・・"










・・・ほん・・と・・・?











"約束、だよ。リオナ。時は満ちたんだ・・・・・"





















「ウィキ・・・!!!!!!」
《ギャッ!!!!!!!!!!!》


リオナはベッドから飛び起きた。


両腕にB.B.を抱き締めながら。


「・・・・ゥッ・・・・」


しかし突如胸に痛みが走り
そのままベッドに倒れる。


「・・ウィ・・・キ・・・・!!」


《離してリオナぁ!!オイラはウィキじゃないのだぁ!》


「・・・ゥッ・・・・アァ・・・」


リオナはゆっくり腕を外すが
今度は頭が痛み
もがくこともできずに、ただシーツを握り締めた。


そこでようやくB.B.はリオナの異変に気付いた。


《り、リオナ!?え!?リオナ!!今マーシャ呼んで・・ンン!?》
「・・だ、いじょうぶ、だから・・・・・・」


リオナはB.B.の口をふさぎ
ゆっくりと起き上がる。


そして部屋をじっくり見回した。


・・・やっぱり・・・・いないか・・・・・


この部屋にはリオナとB.B.だけ。
ウィキはいない。


それを真摯に受けとめ
リオナは深くため息をついた。


・・・ウィキ・・・


でも・・絶対来てくれるんだよね・・


俺の目の前に・・・現われてくれるんだよね・・


だから


「・・・・待ってる」


《え?》


「・・・・・なんでもない。・・・・・・起きよう。」


リオナは部屋のカーテンをあけた。


朝の光が眩しすぎて
思わず目を細める。


・・・夜なんて明けなきゃ良いのに。


そんな事を思いながら寝室を出た。


リビングにはすでにマーシャがソファーに座っていた。


だが膝の上ではなぜだかクロードが眠っていた。


「・・・・・・おはよう」


「え、ああ。リオナか。おはよう。」


「・・・・・・・クロードどうしたんだ?」


「昨日怖くて眠れなかったみたいで。一晩中この状態。さっきようやく寝たの。」


あははと笑うマーシャの目の下はクマができている。


「・・・・まさかマーシャ寝てないのか?」


「あー・・まぁ、でも俺も考え事してたから眠れなかったんだ。だからクロードとここにいた。」


・・・マーシャが考え事・・・


・・・珍しいな


「なぁにリオナくん心配してくれてんの?だったら水持ってきてくれない?ああ、あと俺のカバンに薬入ってるからとってきてくれ。」


マーシャはニッと笑うが
どこかいつもと違う。


引きつっているというかなんというか。


「・・・まってて。」


リオナはマーシャの寝室に向かう。


マーシャの言う薬というのはビタミン剤。


戦いがあった次の日は、
彼は必ず飲んでいる。


だがあまり飲み過ぎるのも良くないのだが、
"元気に越したことはない。"といって服用することをやめない。


リオナはマーシャのカバンを開け
中をあさりはじめる。


・・・・これだっけ・・・


錠剤の入った真っ黒なケースを手にとる。


中にそれらしき錠剤を確認し
リオナはポケットにしまった。


そしてカバンを閉めようと手を伸ばす。


するとその時。


ぴら・・・


一枚の紙がカバンから落ちた。


リオナは慌ててそれを取り上げる。


その紙は四つ折りにされていた。


「・・・・・・・?」


なんだろう・・・?


少し気になって
リオナはそおっと開いてみた。


「・・・ぁ・・・・」


リオナは思わず声をもらしてしまった。


その紙は写真で、
そこには幼い頃のリオナとマーシャとB.B.が映っていた。


確かこの写真はリオナが8歳になった誕生日の時の写真。


その頃は丁度任務中でダーク・ホーム外にいたが
マーシャが夜にパブでささやかだが祝ってくれた。


誕生日の度に写真を撮るのを忘れず、
パブのママさんに撮ってもらったやつ。


・・・マーシャ・・・持ち歩いててくれたんだ・・・


思わず目頭が熱くなる。


だがすぐにそんな感覚は消え去った。


"もう・・・誰にもあげないでね・・・リオナの心"


そうだ・・・・俺はウィキの・・ウィキだけのものだよ・・・


でも・・・・・


「・・・・ありがとう、マーシャ」


少し頬を赤らめながら
リオナはそのまま写真をカバンに戻し部屋に戻った。


「お、あったか?」


「・・・・・うん、今水持ってくるから。」


「サンキューな。ってリオナ?お前顔赤いぜ?まさか風邪引いたんじゃないだろうな。」


リオナは思わず頬を両手で押さえ
マーシャを振り返る。


「ち・・・違う。・・・・そんなに赤い?」


「ああ。梅干し並にな。あ゙っ!!!リオナ嘘だよっ!やめてやめて!だから水はかけないで!!!」


「・・・あーあ。マーシャが騒ぐからクロード起きちゃったじゃん。」


「ひどいね。やぁクロード、おはよう。」


クロードは今にもまた閉じてしまいそうな目をこすりながら
マーシャに巻き付く。


まだ夜だと思っているのだろう。


「あはは。クロードもう朝だよ。よしよし。早くこんなとこでようなぁ。」


・・・確かに・・・・早く出たい・・・


こんな不気味なとこ・・・・


リオナは小さくため息をもらしながら
荷物をまとめに部屋へ戻った。










『もう・・・行かれてしまうのですか?』


リオナ達が出発すると聞き、
伯爵が屋敷の外まで見送りに来ていた。


「色々と世話んなったわ。ありがとな。」


『いいえ。私も楽しかったです。ですがよいのですか?』


「残り1つ情報聞けるんだっけ?」


『はい。』


「でも知りたいことねぇんだよなぁ。だからいいや。な?」


マーシャが同意を求めるようにリオナの顔を覗き込む。


だがリオナはただじっと伯爵を見つめていた。


まるで睨むように。


そんなリオナに気が付いたのか
伯爵は苦笑の表情を浮かべた。


『なら・・・最後に1つ。とっておきの情報を差し上げます。情報と言うより警告でしょうか・・』


伯爵はリオナの表情を伺いながら口を開く。


『フェイターのアシュールという男には気を付けてください。』


「アシュール?どっかで聞いた名だな。」


『彼は・・・・リオナくんを狙っています。』


「・・・・・・・。」


リオナは再び睨むように視線を向けた。

だが伯爵も負けじと話す。


『彼は数多くの人体実験を行っています。噂によれば・・・』
「・・・・いい加減に・・・・!!!!」
「もういいさ伯爵。」
「・・・・マーシャ!?」


話を遮ったのは意外にもマーシャだった。


マーシャは今にも飛び掛かりそうなリオナを押さえる。


だがリオナはそれがいただけなかった様で、
マーシャの腕を振り払ってスタスタと先に屋敷を出ていってしまった。


《あっ!!!リオナ!?》


そのあとをB.B.が追っていった。


「ったく、アイツは。」


マーシャは呆れてため息を吐きながら
伯爵に苦笑いを向けた。


「悪いね伯爵。いつもは優しい良い子なんだが。最近情緒不安定でね。アンタは本当に良い奴だ。俺たちを想って言ってくれたんだよな?」


『マーシャさん・・・』


「ありがとな。俺はアンタの話を信じるぜ?確かにアシュールって奴はヤバイって聞いたことがある。まぁ、でも気にしたところで仕方ないって話でさ。だから俺たちはこのままルナを探すよ。」


『はい。健闘をお祈りします。』


マーシャは半分寝ているクロードを抱き上げ
最後に伯爵に笑いかけた。


「なぁ、また助けてくれる?」


その言葉に伯爵は少し驚くが、
すぐに優しい笑みを浮かべた。


『残念ですが、これが最後です。』


「ぇえ!なんで?」


『私達には"帰る場所"がありますので。』


「"帰る場所"?ふーん。まぁいいや。じゃ、俺たちは行くわ。またな。」


『皆さんお元気で。』


マーシャはニッと笑い
手を振りながら屋敷をあとにした。


その様子を伯爵は穏やかな表情で見つめていた。


『なぁ、カリマ。』


『はい。』


『これで・・・よかったんだよな。』


『私はそう思います。』


『ならよかった・・・・』


伯爵は目を細めて笑った。


『どうか・・・世界を救ってください。』


伯爵はそう呟くと光の粉となり消え去った。


屋敷も
すべて。


空に帰るように飛んでいった。














「えーっと、あ、こっちか。」


「・・・・・だからあっちだって。もういい。俺が前行く。」


屋敷をでてから早半日。


リオナ達は伯爵からマーシャでもわかる地図をもらい、
早速ここから近いナンバーカウンティーに向っていた。


初めに向かっていたコットンカウンティーには
ルナはいないと親切にも伯爵が教えてくれたのだ。


「それにしてもあの伯爵は変わってるよなぁ。リオナに会いたかったなんてさ」


「・・・あの人、死んでるらしいよ。」


冷静に呟くリオナに
マーシャは思いっきり背中をたたいてやった。


「痛・・!!!」
「あのねぇリオナ。そんな縁起でもないことを言うもんじゃないよぉー、って何その顔。マジなの?ねぇ本当に死んでんのあの伯爵?」


《うひょー!!オイラ達もいつのまにか死んでたりして!!!》


「・・B.B.は悪魔だから関係ないだろ。」


すると今までマーシャの腕で眠っていたクロードが目を覚ました。


「ん・・・あ、マー兄」


「お。ようやく起きたか。おはよう。」


《もう午後だけどねー!!》


クロードは目を擦りながらマーシャから離れ
地面に足を付ける。


久々の地面に少し違和感を覚えながらもまわりを見渡すようにぐるっと回った。


そんなクロードを見て
リオナは少し笑いながらクロードに地図を見せた。


「・・今はここにいるんだ。このまま真っ直ぐ行って森を越えてナンバーカウンティーに行くんだ。」


「森!」


「・・森?」


「僕ねっ、森大好き!」


するとクロードは嬉しそうに先頭をきってかけていった。


《子供は元気だなぁ!》


「・・・お前もな。」


「クロードのいた時天大帝国は森が多いからな。」


すると少し後ろからマーシャがつぶやいた。


その声にリオナは振り返る。


「・・・そうなのか?」


「ああ。特に王宮の周りなんて森森森の森だらけ。だからクロードは森で遊んでたんじゃないか?」


「・・・そっか。」


・・・俺は・・・・・


昔・・何をして遊んでたかな・・・


ウィキは・・覚えてるかな・・・


そんなことを考えていたら
いつのまにか顔がゆるんでいて。


そこをすかさずマーシャの指で突かれた。


「えいっ。」


「痛・・。」


「何ニヤニヤしてんだよぉ。」


「べ・・・別に」


「ふぅん。でも、まぁ」


マーシャはほほ笑みながら
リオナの頭の上のB.B.をどかしてリオナの髪をくしゃくしゃっとなでた。


《ぐぴゃ!》
「リオナが嬉しそうで俺は嬉しい。」


《おい!》
「・・・マーシャ」


《痛いじゃん!!》
「なんかリオナ、伯爵に会ってから元気でたよな?」


《シカト!?》
「そうかな・・。」


・・・きっと


それは・・・・


リオナはほほ笑みながら漆黒の瞳をマーシャに向ける。


「もうすぐ会えるから・・。」


「え?誰に?」


「・・秘密。」


そう言ってリオナはクロードの後を追った。


「秘密って、誰だよ。ムジカか?まさかジーク!?」
《違うよ・・・》
「は!?」


今まで痛そうに頭をさすっていたB.B.が
いつになく真剣な顔をしている。


《・・ウィキだよ》


「はぁ?だってウィキは・・死んでんだぞ!?」


マーシャはリオナに聞こえないように小声でつぶやく。


《でも絶対ウィキだよ。だって朝ね、"ウィキ!"って叫んでオイラをウィキだと思ったり"待ってる"って言ってたんだ・・。》


「マジかよ・・。」


マーシャは心配そうにクロードと楽しそうに歩くリオナを見つめる。


「でもよ、もしウィキが来ようが来まいが、それを待つだけでこんなに元気が出るなら・・俺は良いと思う。」


結局・・・俺にはウィキは越えられない。


マーシャは少し悲しそうに笑う。


《でもこなかったら?てかこないよ・・絶対・・・。それを知ったらリオナは・・・》
「バーカ。」
《痛!!!!》


マーシャはB.B.にデコピンを食らわせ
ニッと笑う。


「そのために俺たちがいるんだろ?」


《マーシャじゃ力足らずだよ。ムジカがいなきゃ・・》


「だったら迎えに行きゃあいいだろ。お前のためにもな。」


《なっなんでオイラ!?》


「え?だって最近寂しそうじゃん。同じ悪魔のお友達がいなくって。」


《淋しくなんかないっ!!!オイラをバカにするなぁ!!!》


「へーんだ。悔しかったらこ〜こま〜でお〜いでぇ。」


《もぉ怒ったぞぉ〜!!!!!!》


またいつものように二人のケンカが始まる。


そんな二人をリオナは少し離れたところから呆れたように見つめていた。


「ったく・・・・あの2人はいつもこうなるんだから・・・・」


そうつぶやくリオナに対し
クロードはグリーンの瞳を輝かせていた。


「でもなんか楽しそう。」


「・・・あれがか?俺には理解できない・・・。」


「そう言えばお兄ちゃんってたまにB.B.とはケンカするけど、マー兄とはしないね。」


クロードは不思議そうに首をかしげる。


「あー・・・。きっとマーシャとは長い付き合いだからケンカする気も失せたんだろうな・・・。B.B.とも長いけど・・・・でも昔はいっぱいケンカしてたよ。くだらないことでね・・。」


「どんな?」


ど・・・どんなって・・・


「・・・そうだなぁ、例えば・・・洗面所の取り合いとか・・・どっちが多く化神を倒しただとか・・・色々。」


「はははっ。ホントにくだらないねっ!」


「な・・・!」


他人にくだらないと言われると少しムッとしてしまうが
相手が相手、クロードのあの悪気のない幼い笑顔を見てしまえば反論する気も失せるというもので。


「僕も喧嘩したいなぁ・・・・」


クロードは地面の石を蹴りながら呟く。


「・・・ケンカなんていいことないよ。」


「でも一度はやってみたいなぁ・・。ねぇどうやったらケンカできるの?」


「・・・・・。」


なかなか難しい質問だ。


今まで生きてきた中で
ユリスに"好きなタイプは?"と聞かれた時なみに難しい質問だ。


「そ・・・・それは、だな。とりあえず怒ってみればいいんじゃないかな・・?」


「うーん・・むずかしいね。」


「・・・友達ともケンカしなかったのか?」


「うん・・僕友達ね、一人しかいなかったから・・。」


少し落ち込み気味に言うクロードの頭を
リオナはゆっくり撫でてやる。


「・・なら俺と一緒だ。俺も友達は一人だった。その子・・なんて名前なんだ?」


するとクロードはいつになく嬉しそうにパッと顔を明るくした。


「クラッピーっていうの。きれいなオレンジ色の髪なんだよ?その子はね、僕が生まれた時から一緒なんだっ。でも・・・もう会えないね。」


「・・・クロード」


こういう時
どう慰めればよいか。


何度考えても思いつかない。


だが今日は運がいい様で。


「・・・あ。クロード、ほらあれ。森だよ森。」


「あ。ホントだっ。お兄ちゃん行こ・・!」


少しは元気が出たのだろう。


クロードはリオナの手を引いて再び嬉しそうにかけていく。


今まで色々な森を通ってきたが、
こんなに日光が差し込み
色とりどりの花が咲くこんな美しい森は久々だ。


リオナも思わず見とれてしまう。


だから地面にあんな穴が開いているなんて気が付かなかった。


「うぁあ・・!!!」


なんとリオナは足を滑らせ
穴に落ちてしまった。


穴は予想以上に大きく
なぜ気付かなかったのかが不思議で仕方ない。


だが
ギリギリで両手をのばし、なんとか地面を掴み、落ちずにすんだ。


「・・・・な、なにこの穴?」


リオナは少し涙目で穴の底を見つめる。


しかしすぐに見てしまったことに後悔してしまった。


「・・底が・・・・・ない。」


顔が青ざめる。


まさかこんなに久々に命の危機を感じるなんて。


「って・・・、そんな事考えてる場合じゃない・・・・・・・・」


だんだんと手の感覚が無くなってきている。


本当にヤバい・・・


しかしその時
ふと耳にマーシャの声が聞こえてきた。


だんだんと近づいてくるのがわかった。


「・・・・マーシャ!」


声を出すと、
マーシャが足を止めたのがわかった。


「んあ?リオナ??っておぁ!!!!!リオナ!?!?何やってんの!?!?ってかなにこの穴!?」


するとマーシャの声に気付いたのか
クロードとB.B.までやってきた。


三人は穴を囲むようにしゃがみ
心配そうにリオナを見つめている。


「お兄ちゃん!!」


《リオナ!死ぬなぁ!!》


「そ・・・う思うん・・なら・・早く・・・助・・けて!」


「あ、ああ今助けるから!」


マーシャはリオナの左手を思いっきり掴む。


だがそれと同時にリオナが悲鳴をあげた。


「違う・・!!!!マーシャ違うよ!!!」


「え?」


しかしリオナの訴えは一歩遅かった。


「・・そっちは義手だってばぁぁぁ・・!!!」


リオナの手は地面から外れ
体は穴の底へと落ちていく。


「ぇえ!?!あっ!!手!?ってリオナぁぁぁぁぁ!!!!!」


マーシャはリオナの左手から外れてしまった義手を持ちながら
穴に落ちていくリオナにむかって叫んだ。


《リオナ!!!もうマーシャのばか!!!なんで右手つかまないんだよ!!!》


マーシャは目を丸くして
自分の右手に握られたリオナの左手の義手を見つめた。


「だっ、だってそれどころじゃなかったろ!!!それより追うぞ!!」


《お・・追う!?ってまさか・・・》


「そのまさかだ、よッ!!!!!」
「うわぁ!!!」
《ぐぴゃ!!いやぁぁぁぁぁ!!!》


マーシャはクロードとB.B.を抱え、
そして穴へと飛び込んでいった。


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あきゅろす。
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