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【完結】 Novel〜Lord's Soul〜
Prologue eighth



「はぁ・・・・。」


雪がチラチラと降る中、
家の前の木材の上に座るウィキは、空に向かって白い息を吐く。


バルドがラグを去ってから一週間がたち、しかも今日は待ちに待ったクリスマス。


しかしウィキにとってクリスマスなんて楽しくも何ともない。


なぜならリオナが一緒じゃないから。


あの日以来リオナは外に出なくなった。

話しかければいつもみたいに答えるが、どこかぼぉとしている感じがする。

ウィキが遊びに行こうと誘っても、
面倒くさいから家にいるといって聞かない。

サラと三人でやろうと言っていた作戦も
案の定実行せず。


だからウィキはこうして毎日、家の前に座ってただ空を眺めることしかできなかった。


家のドアが開き、ダンが出てきた。

「おぉウィキ。お前こんなとこにいたのか。風邪引くぞ?」

「あーうん」

「お父さんとお母さんは今から仕事に行くから良い子にしてろよぉ?じゃねぇとサンタさんもこなくなっちまうからな!」

「そーだね」

素っ気ない返事を気にもせず、ダンは辺りをキョロキョロと見わたす。

「おいリオナは?」

「部屋にいる」

「またアイツ部屋にいんのか!ウィキ!そーゆーやつのことをなんてゆーか知ってっか?」

「別に。てか興味ないから」

「・・・・お前」

ダンは屈んでウィキの顔をのぞき込む。

「さてはお前リオナだな!?そうやってまた俺をだまそうとしたなっ!?はっはっはぁ俺様はそう簡単には騙されんぞ!」

「いや・・・僕はウィキだから・・・」

「まぁだ嘘をつくきかぁ!?」

すると家からモナも出てくる。

「あらウィキこんなとこにいたら風邪引くわよ?」

同じことを何度も言われ、ため息をつくウィキ。

「・・・別に大丈夫だし」

「・・・・・」

モナもダンの横で屈んでウィキの顔を見つめる。

「あっ!さてはウィキのふりしたリオナね!?私はだまされないわよっ!」

「ほらモナもそういってるぅ!!この冷たさはやっぱりリオナだよなっ!」

二人があーだこーだという中、
ウィキは呆れて肩を落とす。

「リオナがウィキになりたい気持ちは痛いほど分かるけど、リオナはリオナなんだよ?だから無理しなくていいのよ?」

「そうだぞリオナ!お父さんはお前のクールさが大好きだっ!」

そう言って二人は手を振りながら出かけていった。
最後までウィキのことをリオナと呼び続けて。


―はぁ〜・・リオナってかわいそう・・・。

ウィキは心でリオナの日々の苦労に同情した。






雪はいっこうに降り止まず、むしろ激しさを増す。


―さすがに風邪引きそう。


心ではそう思っていても、足が動かない。


家に入ればリオナと一緒。
イヤなわけではないが、なんだか少し怖い。


そんなことを何度も繰り返し考えていると、
向こうからサラが駆けてくるのが見えた。

真っ白い肌が寒さのせいで頬を赤く染めている。

「ウィキ!またそこにいたの?風邪引いちゃうわ!」

そう言ってウィキの頭につもる雪を手で払う。

サラはあたりを見渡すと、そのまま家の二階を見つめる。

「・・・リオナはまだ部屋?」

ウィキは下をうつむいたまま頷く。

そんなウィキを見かねて、サラがウィキの手を取り引っ張った。

「ウィキ家に入ろっ!!」

半ば強引にウィキを家に入れ、リビングの椅子に座らせる。

「ちょっと待ってて。」

そう言ってサラは二階に上がっていく。

「ちょっ・・・サラ!無駄だって・・・って行っちゃったし」













リオナはベッドに寝ころんで、天井に張ってある写真を見つめていた。


急に立ち上がっては天井の写真を一枚剥ぎ取り、
そのまま再びベッドに寝こんだ。


リオナはただただ写真を見つめる。


写真の中のリオナはバルド、サラ、ウィキ、ダンとモナに囲まれ、とても楽しそうに笑っている。


リオナは深いため息をつき、枕元にある棚に手を伸ばし、写真をおく。

すると手に何かがカシャンと音を立ててあたった。


そのままつかんで目の上に持ってくる。


それはバルドの家の鍵


―ウィキが置いてったのか・・・


再び深いため息を吐き、鍵を部屋の隅へ投げると
ガシャンと音を立てて落下した。


すると今度は部屋をノックする音がする。


リオナは思わずベッドから起き上がった。


―ウィキならノックしないはず。


「どーぞ」

その呼びかけに答えるかのように扉が開く。


一体誰が入ってくるのか・・・・そんなことを思いながら扉を見つめる。

しかしリオナの期待とは違い、そのまま再びベッドに寝ころがってしまった。


「バルドじゃなくて悪かったわね」

そう言ってサラはリオナのベッドに腰を下ろす。

「別に期待してなかったし。しかももういないし。」

そう、もうバルドはいないんだ。

リオナはまるで自分の心に理解させるかのように話した。

「外・・・雪すごいね」

「・・・うん。」

「やむかな?」

「さぁ」

途切れ途切れの会話がつづく。


「・・・・・・。リオナはさ、どうして魔法をそんなに学ぶの?別に戦いに行くわけじゃないんだしそんなに覚えなくったっていいじゃない。」

サラは窓の外に降る雪を見つめながら、淡々と話す。


「・・・・俺は強くなりたいんだ。」

「なんで??なんで強くなりたいの?弱いから?今のリオナがただのイジケ虫だから?それとも・・・・」

最後の言葉を言い終わる前に、サラはベッドに押し倒され、気付けばリオナが上に乗っていた。

「黙れよ・・・・!!俺はウィキを守りたいから!家族を守りたいから強くなるんだ!お前に何がわかるんだよ!」

ベッドを思い切り叩く。

しかしサラはひるむ様子もなく、むしろ強気の体制をつくる。

「わからない。あんたの気持ちなんてね。でもね、少なくともバルドはリオナと同じ気持ちを持ってる。」


バルドという言葉がでた瞬間、リオナの顔がゆがんだ。

サラはそっとリオナを押し上げて、じっと目を見つめる。


「リオナがウィキを、家族を大切だと思うくらい、バルドもこの国が・・・リオナとウィキが暮らすこの国が大切なの・・・!そんなこと私に言われなくてもわかってるくせにいつまでそうやってイジケてるつもり?」

「別にイジケてなんか・・・」

「そういうのをイジケてるって言うの!!」

サラは声を強めてリオナの肩をぎゅっとつかむ。

「バルドを大切だと思うなら快く見送ってあげなよ!魔法をまた教わりたいと思うならバルドがこの町に帰ってくる日まで自力でがんばってみればいいじゃない!強くなりたいなら・・・」

肩を握る手の力を緩め、
サラは優しく微笑みかける。

「強くなりたいならまずはバルドみたいに誇りを持ちなさいよ・・・・。」

ふとリオナの目から一筋の涙が流れおちた。


そう、バルドが大切だ。


世界一の師匠だ。


よき理解者だ。


すごく・・・すごく好きな人だ。




リオナは涙を拭い、
いつもみたいにニッと笑う。


「・・・・そうだった。なんか俺らしくなかった。ごめん・・」

サラは思いっきりため息をついた後、あきれたように笑いかける。

「ホントよ!・・・・それに謝るなら私じゃないでしょ。」


「・・・・うん」


そう言ってリオナはベッドから立ち上がり、部屋の隅に落ちたバルドの家の鍵を拾い上げる。

そして天井から剥ぎ取った写真と一緒にポケットにしまった。

リオナは部屋を飛び出し、駆け足で家の階段を駆け下りる。

「ウィキ!」

ウィキは声のした方をみる。

そこにはいつもの笑顔で立つリオナがいた。

驚きのあまり、口がぽかんと開いたまま。

「・・・・!リオナ!?」

照れたようにリオナは頭をかく。

「ウィキ・・・・・・・ごめん。俺、バカだった。俺は1人じゃないのにな・・・」

「・・・・・リオナ・・・」

ウィキはリオナに近づきほっぺたをつかみ、思いっきり引っ張る。

「そうだよ。気づくの遅すぎ!僕待ちくたびれちゃったよ。まぁ今回はこれで許してあげるけどぉ!」

「・・・!!いってぇな!」

そういって二人は久しぶりに笑いあった。

そんな二人の頭をサラがクシャクシャっと撫でる。

「じゃあ〜例の作戦決行しますか!」

「「おー!!!!」」












昼下がり


目の前を通り過ぎていく人々を暇そうに見つめるダンとモナ。

今日の売り上げもあまり期待できない。

「暇だなぁ〜・・・・」
「そうだね」
「今日はクリスマスだぞ?」
「そうだね」
「二人へのプレゼント買っといた?」
「もちろん!今までにないくらいお菓子をつめたわっ!」
「マジ!?二人ともよろこんでくれるかなぁ」
「そうね」


二人は雪が舞い散る空を見上げながらリオナとウィキが喜ぶ姿を思い浮かべる。




「今日はもう閉店かい!?」

二人はビクッとして声の主をみる。

「・・・!なんだトラ婆か。」

「何だとは失礼な奴だね!売れてないと思ってせぇっかく野菜買いにきたのに」

「!!いつもありがとうございますトラさん!今日は何にしましょう?」

「じゃあとりあえずキャベツとキュウリ」

「ありがとうございます」

トラ婆はダンが小さい頃からの知り合いらしく、よく面倒をみていた。

いまでもダンとモナから野菜を買ってくれる唯一の常連客。

ヴァンズマン家の家計を支えているのはトラ婆と言っても過言ではない。


「おちびチャン二人は元気かい?」

「ああスンゲェ元気だぜ。最近じゃウィキはお菓子屋、リオナはマジシャンになるって言っててな。やっと子供っぽくなってきたよ」

「へぇ〜マジシャンかい。あぁそういえばさっき隣街で手品をやってるって聞いたよ。まだ小さい子供だって。お金がないのかねぇ。かわいそうに。」

「俺たちだって金がないんだぜ?かわいそうだろ?」

トラ婆はダンの頭をパシっとたたく。

「ったく!あんただったら本気で働けば普通の町でも暮らせるのにね!リオナとウィキが可哀相だよ」

「いーのいーの!俺たちはビンボーな生活が好きなの。ね?モナ」

「うん!」

トラ婆は二人の幸せそうな顔にあきれたようにため息をつく

「はぁ〜まったく相変わらずだね!まぁ地味にがんばりな。」


そういってトラ婆は手をひらひらふりながら帰って行った。


ダンはトラ婆の遠ざかっていく背中を見つめ、急にごほんと咳をつく。

「・・・なぁモナ?」

「なに?」

「俺からさぁモナへのクリスマスプレゼントっていつもなかったじゃん?」

モナはしばらく考えてみる。

「そう?いつもチュウしてくれるじゃない」

「だってそれ毎日してるからクリスマスプレゼントって言えないし」

「ははっ!確かに!でもクリスマスはいつもより長めだよ?」

「そうだっけ・・・?」

想像すると、顔が熱くなる。

「まっ・・・まぁそれはいいとしてさっ!さっきトラ婆が言ってた手品・・・見にいかね?久しぶりにデートって言うか・・・・。」

ダンは照れて目を泳がす。

そんなダンをみて、モナから笑いがこぼれる。

「うんっ!いこ!」

「・・まじ!?よっしゃ!」





二人は早めに店を閉め、
仲良く手をつないで町へ繰り出す。

まだ24歳のせいか、子持ちには見えない。


「なんか昔思い出すね!」

「だなっ!でもそう思うとさぁ〜リオナとウィキも大きくなったよなぁ〜」

「そうだね。あんなに小さかったのに。特にリオナは昔のダンにそっくりになっちゃって。」

「え!?どこが!?」


「どこがって全部よ?顔と性格」

ダンは自分の顔を押さえながら考えてみる。

リオナとウィキの銀色の髪はダン似、
漆黒の瞳はモナ似だ。

ウィキの少したれぎみの目と明るい性格は
モナにそっくりだ。

そう考えるとリオナのつり目とあの冷めた性格は昔のダンにそっくりな気もする。

「・・・・あの冷たさは俺似だったのか・・・!」

「出会った頃はすごいクールで格好良かったよ。でもダン変わったよねぇ〜今じゃクールの欠片もないもの」

「・・・ガーン・・」

「ははっ!今のダンも好きだよ!」

「ホント!?」

「ホントホント♪」

ダンは喜びのあまりクネクネと動き出す。

「あっ見て!人が集まってる!あれがトラ婆がいってたやつかな・・・・って聞いてるダン・・・?」

「んぁあ聞いてる聞いてる!あれだよきっと!」


二人は人混みの隙間から様子をうかがう。


人混みの中心では
なにやらトランプのパフォーマンスが繰り広げられているようだ。


人々は歓声を上げてはお金をおいていく。

「そんなにすごいのかなぁ?」

「人が多くて見えないなぁ〜」

二人は半分あきらめ気味に後ろへ下がる。

すると目の前を横切る少女たちの会話が耳に入ってきた。


「すごかったねあのこたち!」

「かわいかったねぇ!しかも双子ってところがいいわよね!一人欲しい!」

ダンの表情が凍りつく。

「・・・・双子・・?」


モナは不安げにダンの顔をのぞき込んだ。


「ダン?大丈夫?・・・ちょっとダン!」

ダンはお構いなしに人混みに割って入っていく。

中心に近づくにつれ嫌な予感が増していった。


あと数メートルというところで人混みの上から覗き込む。


そして目に入ったのは、自分と同じ髪をした少年二人だった。

















日も暮れ始め
リオナとウィキとサラはラグへ戻り、いつもの廃棄の山の上で、今日一日の成果を確かめる。


「すごい!!8050ベルよ!」

「そんなに!?」

「スゴォイ!」

三人は目の前のお金に目を輝かせる。


「とりあえずこのお金は二人が持ってて」

「えっまじ?」

「うん。もっと貯めておっきいもの買お!」

そう言ってサラはウィキにお金を渡す。


「じゃあまた来週な」

「来週な!」

「うん!じゃあね!」


サラは手を振りながら家に帰っていく。


二人も家に向かった。


「なぁウィキ。もしお金貯まったら何する?」

「うーん・・・お父さんとお母さんに何か買ってあげる!」

「いいねそれ!二人を驚かせよっ!」

「じゃあこのことは二人にはヒミツだねっ!」

二人はダンとモナが喜ぶ姿を思い浮かべながら家に向かう。






「「ただいまぁ〜」」


二人はいつものように家に入る。


しかし今日は家の中がしんと静まりかえっている。


いつもだったら家に入ってすぐに雑音混じりのラジオが聞こえてくるはずなのに。


するとモナがキッチンから顔を出してきた。

「・・・・!おかえりなさい・・あのね」
「二人ともここに座りなさい」


二階から降りてきたダンがモナの声を遮る。


「??な」
「いいからすわれ」

ダンの表情は今までに見たことないくらい冷たい。


顔を見合わせながら二人はいすに座る。

ダンは二人の顔をじっと見据えたまま
静かに口を開いた。

「今日稼いだ金を出せ」

二人はビックリして顔を見合わせる。

「な・・・なんで」
「いいからだせ!」

リオナはウィキに目をやり
出すように合図を送る。

が、ウィキはいっこうに出す様子がない。

「ちょっ・・・ウィ」
「何で?」

ウィキもいつになく真剣な表情をしている。


「・・・何でだってか?お前らガキの分際で金稼ぎか?あ?何でんなことしたんだよ!!」

「別になんだっていいじゃん!」

「何でもいいだと!?俺はお前等を金稼ぎさせるために育ててきた訳じゃねぇぞ!」

ダンは机を思いっきりたたく。

しかしウィキもひるまない。

「僕たちはもっとお金が欲しいんだ!!お金があれば何でも買える!もうこんなビンボー生活はイヤなんだっ!」

「ああそうか!だったら出ていけ!俺はこれからもこの生活を続ける!そんなに金が欲しけりゃ金持ちの養子にでもなっちまえ!」

強く言い放てばウィキの表情がみるみる歪んでいき。

「・・・!お父さんのバカっ!」

ウィキは目に涙をためて、そのまま家を飛び出していってしまった。


「ウィキ!」
「ほっとけ!」

モナが追いかけようとするが、
ダンに止められ、どうしようもなくウィキが走り去っていった方を見つめた。


ダンは深いため息をついて、小さく舌打ちをする。

それはまるで自分に向けられたものかのように、虚しく鳴り響いた。


「ねぇ・・・・お父さんは何でこんな生活をしてるの?」

今まで黙っていたリオナが口を開いた。

「・・・・。何でって俺たちには」

「嘘。お金がないなんて嘘なくせに。俺知ってるんだ。お父さんは本当は中央都市の貴族だったって。」

ダンは思わず目を丸くする。

「!?それドコから聞いてきた・・・?」

「・・・トラ婆だよ。前に隣街で人探しをしてるチラシを拾って、その写真がお父さんにそっくりだったから昔からお父さんのこと知ってるトラ婆に聞いたんだ。ウィキはこのこと知らない。トラ婆には口止めされてたけどね。小さい頃にこの町に一人で出てきたんでしょ?」

「・・・・!そうなの・・・?ダン・・・」

モナも驚きで表情を堅くする。

「・・・・・・・」


「お父さんが何考えてんだかわかんなかったけど、俺はこの生活がキライじゃなかった。でも今はやりたいことが沢山あるんだ。そのためにはお金がいる。だから俺はお父さんの考えにはついていけないから。」

そう言ってリオナも外に飛び出していった。


ダンは何も言えずに俯く。


そんなダンを見ながら、モナはため息をついていすに座る。

「貴族だったなんて初耳」

ダンは少し顔を上げてモナの顔を見る。

しかしモナはいつもみたいに、あきれたように笑いかけてきた。

「まぁダンにはそれくらいのヒミツがあった方がカッコいいけどね」

「・・・・モナ・・・。」

ダンは再びため息をついて、
机に頭をつける。


「俺のおやじさ・・・金がすべての嫌なおやじでさ・・・。金のためなら犠牲をおしまない・・・そんな奴だった。母さんは何もいわなかったけど・・・すごく辛そうだった。」

「うん・・・・」

「母さんは俺が五歳の時に死んじゃってさ。その時にちょうどラグの町を知ったんだ。俺とは全然逆の世界で、その町で暮らすのが憧れだった。」

ダンは立ち上がって、壁に飾られているリオナとウィキの写真を見る。

「・・・あいつらには、金に目がくらんで欲におぼれるような・・・オヤジのような人間にはなって欲しくないんだ・・・。・・・でも・・・間違ってたのかな・・・・。」

ダンは手の平を強く握りしめ、すぐに力なくだらりと開く。


するとモナはダンに近づき、後ろから抱きしめ、優しくささやいた。

「そんなことないよ?大丈夫。あの子たちはちゃんと育つ・・・・ううん。育てよ。私とダンで。私はダンにずっとついて行くよ。」

モナの腕に力がこもる。

ダンもモナの手を握りしめ、思いを一つにする。

「・・・・モナ・・・。ありがとう・・。」

















リオナはウィキを探し回り、やっとのことで、いつもの廃棄場の山の上にいるウィキを見つけた。


「いきなり飛び出していくなよ。」

「・・・・・・ごめん。」

リオナもウィキの隣に腰を下ろす。

「んでこれからどうするの?まさかホントに養子にでもなるつもり?」

「・・・・・・まさか。」

その言葉にリオナはホッとしながらも、ウィキの表情に不安を抱く。

「・・・・ねぇリオナ」

「なに?」

「・・・・・・・・・・・・」

「??」

「王宮から宝を盗もうよ」

リオナは思わず言葉を失う。

「・・・宝を盗んでお父さんを見返してやるんだ」

「・・・・・本気?」

「本気。僕はやるよ。」

そう言ってウィキは王宮のある中央都市に向けて歩き出す。


「・・・まじかよぉ・・・・」

リオナは困って頭をかく。


しかし自分が今とるべき行動はいつも決まっていた。


「ウィキ!」

「・・・・?」

リオナは走ってウィキの隣に並ぶ。

「俺も行く。」

「・・・・!そうこなくっちゃ」

二人は手と手をパチンと合わせ、中央都市へ向かう。






















そして今




世にも不幸なクリスマスが始まろうとしていた。


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