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【完結】 Novel〜Lord's Soul〜
story54 始動







ダークホーム





マスタールーム





「マスター,お客様がお見えになりましたが。」


スバルはビットウィックスの座るデスクの前で深々と頭を下げた。


報告書に目を通していたビットウィックスは
やや訝しげな表情をして顔を上げた。


「客人?今日はそんな予定はないはずだが・・・・・」


「はい、実は・・・UNKNOWN WORLDの中央局局長のバーナード様が突然お見えになりまして・・・」


「UWから・・・?」


・・・UWは世界政府に属している国々からは一切の関与を拒んでいるはず・・・ではなぜ・・・・・


ビットウィックスはさらに悩むような顔をすると
スバルは申し訳なさそうにビットウィックスに再び頭を下げた。


「マスター申し訳ありません・・!私が開門の許可を出したばかりに・・・!」


「スバル、顔を上げなさい。」


「で・・ですが・・!」


「スバルは悪くありません。」


そのことばにスバルは恐る恐る顔を上げると
ビットウィックスは穏やかな表情をして告げた。


「お通しなさい。」


「た・・・・・・・ただいまお連れいたします。」


ビットウィックスは苦笑いを浮かべながら、
スバルの後ろ姿を見送った。


さて・・・・どうしたものか・・・


ここ何年も親交がなかったのに一体何が目的か・・・・


いろいろ思考をめぐらせているとと
扉をノックする音が聞こえた。


ビットウィックスは深くため息を吐きながら
椅子に座りなおし
入るように促す。


扉が開くと
スバルに誘導されながら一人のいかつい中年男性が入ってきた。


ビットウィックスはさわやかな笑顔で出迎え
UWからやってきたバーナードに軽くお辞儀をした。


それに比べ
バーナードはいかつい顔をさらに歪ませながら鼻息を荒くして椅子に座った。


何やらご立腹のようだ。


「バーナード様、今回はどう言ったご用件で?」


あくまでもさわやかな笑顔でを絶やさないビットウィックス。


しかし相手はますます鼻息を荒くしている。


『貴様ら悪魔は条約を忘れたか!?』


突然切り出された話に
ビットウィックスは笑顔を崩す。


「・・・?突然何の話ですか?」


『世界政府所属のダークホームからUNKNOWN WORLDへの立ち入りおよび一切の手出しの禁止を忘れたのかと聞いておるんだ!!!!』


「まさか。忘れてなんかいませんよ。これは世界政府との協約でもありますからね。」


『ではなぜこのような事態が起きたのだ!?』


そういってバーナードは数枚の写真をビットウィックスに手渡した。


そこには一面黒く焼け焦げた森
黒い傷だらけの家などが映し出されていた。


この黒々しさは、
悪魔のものに似ている。


「・・・これは一体?」


『これはつい先日、UW西部のとある町の森で起きたものだ。住人たちによれば一瞬で森が焼け焦げたそうだ。』


「ほう・・・それでこれが悪魔の仕業だと。」


『当たり前だ!おまえら以外に誰がいる!!』


怒るバーナードに対し
ビットウィックスは余裕の笑顔を見せた。


「しかし残念ながら我々ダークホームは条約通り、貴国には一切のの関与をしていません。なのでそのような事件も我々はやっていないと断言できます。」


『貴様・・・!ここまで証拠が挙がっているというのにとぼける気か!?』


バーナードは立ち上がり
ビットウィックスに掴み掛かろうとした。


しかしすぐにスバルに取り押さえられた。


「まぁそう焦らないでくださいバーナード様。」


ビットウィックスは立ち上がるとバーナードの前にやってくる。


「我々はこの事件に関与はしていませんが・・私にはこの事件の犯人には覚えがあります。」


『な・・・何だと!?だったら早くつかまえんか!』


「・・・ですが我々はUWには立ち入り不可能なものでして・・・」


『うぬぅ・・・・!』


「そこで提案があります。」


『・・・?』


「我々ダークホームにUWへの立ち入り許可を下さい。その代わり我々がこの事件の犯人を見つけだしましょう。」


その言葉にバーナードは目を丸くした。


「悪くない取引であると思いますが?」


『・・・!!そ・・・それはそうだが・・・』


「もちろん今回起きた事件の被害費もこちらで負担いたします。」


バーナードは顔を歪めてはいたが
決して悪くはない条件にやや心を惑わせる。


『本当に捕まえられるんだろうな?』


「もちろんでございます。」


『・・・・わかった。その話に乗ろうじゃないか。ただし立ち入りを許可するのは数人だ!そしてそのもの達の書類をすべて送ること!あと立ち入り可能期間は犯人が捕まるまでだ!』


「いいでしょう。」


『ならこれで失礼させていただく。健闘を祈ろうではないか。』


そう言ってバーナードはマスタールームを後にした。


「・・・・・・」


ビットウィックスは苦笑を浮かべながら椅子にドスッと座る。


「・・・マスター」


バーナードを見送ってきたスバルがおずおずとビットウィックスの前にやってきた。


「どうかしたか?」


「いえ・・・ただあんな条件をだしてよかったのですか?」


「ああ。大丈夫だよ。」


「で・・・ですが・・犯人が誰だか・・・」


「それもわかる。」


「・・・!?」


ビットウィックスは楽しそうにクスクス笑いながら
スバルに手招きをする。


「本当に・・・・誰だか分からない?」

「・・・・・・。・・・・・・・まさか!!!」


「そのまさかだよ。恐らく・・・いや確実にあそこにいたのはリオナ=ヴァンズマンたちだ・・。そして森を焼いたのはムジカだろう・・・。」


「まさかアルティメイト・プロジェクトが発動したんですか・・・!?」


「恐らくね・・・。でもどうやってムジカを止めたんだろうね。」


「・・・・と、言いますと?」


「アルティメイト・プロジェクトは神と対等の力でしか止めることができない。となると彼らは恐らくローズ・ソウルでムジカを止めたんだろうね。」


「し・・しかし彼らはどこでローズ・ソウルを・・・」


「リオナだよ。リオナ=ヴァンズマン。彼は以前から大魔帝国唯一の生き残りでありローズ・ソウルの所持者として疑われていた。だからこれでつじつまが合う。」


「・・・・」


まさかの事実にスバルはただ茫然とたたずむ。


「とにかく彼らの居場所はつかめた。早急に捜索隊を出す。スバルの方で数名用意してほしい。ただしリオナ=ヴァンズマンとマーシャ=ロゼッティーと親交が深い者達はさけてくれ。」


「はっ。早急に用意させていただきます。」


「ああ、それともう一つ。スペシャルマスターの三人もUWに向かわせなさい。」


「・・・?」


「つい先ほど入ってきた情報だが、UWのどこかにローズ・ソウルが隠されたらしい。」


「・・・それでマスターはあのような条件を・・・」


「ははっまあね。とにかくどちらの件も極秘に行ってくれ。」


「はっ。」


スバルは深々と頭を下げ
部屋を出ていった。





しかしスバルが出ていったマスタールームの扉の影には
ある男が潜んでいた。


「・・・・やべぇだろ・・・・!!!」


ばれないようにマスタールームを出ていったのはコールだった。


コールは駆け足で下に下りていき
だいぶ離れたところで足を止めた。


「・・・ふぅ・・・・」


・・・・・それにしても・・・・アイツらがUWにいたなんて・・・・


・・・・てかリオナ=ヴァンズマンのやつがローズ・ソウルを持ってたなんてな・・・・


でも今はとにかくアイツらをマスターより先に見つけなきゃだな・・・


「・・・・・コールか?」


「・・・・・!!」


突然誰かに呼ばれ
コールはビクッとした。


「・・・・!?・・・・何だよ・・・シキか!驚かせやがって・・・!!」


「驚かせるも何も・・・ここは俺の研究室前なんだが・・・」


シキは困ったようにコールの後ろにある扉を指差す。


「俺いつの間に地下に来たんだ!?」


「はは・・・気付かないほど何か考えていたのか?」


「ま・・・まぁな。じゃあおれはこれで。」


そう言い残すと
コールはそそくさと上にあがっていってしまった。


「・・・・・?」


シキは訝しげな表情を浮かべながらも
自分の研究室の扉に手を掛けた。


「・・・・また研究か・・・・・・」


すると今度はシキの後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。


シキがゆっくりと振りかえると
そこにはベンがいた。


「・・ベンか。君も最近よくここを出入りしているね。」


「・・・まぁな・・・でもシキ・・・・あまり無理するなよ・・・」


ベンは無表情のままシキの横を通り過ぎる。


「ちょっと待てよベン。」


するとシキは突然低い声を出した。


「・・・・・・・・・?」


ベンは不思議そうに振り返る。


「・・・最近よく君の姿が見えなくなる。それはどうしてかな?」


・・・ベンがスペシャルマスターをやめてからずっと見てきてはいたが・・・


シキはじっとベンを見つめる。


「・・・・・・・・」


しかしシキの探るような目も気にも止めずにベンはただシキを見つめる。


「・・君はいつまでその無口キャラを貫くつもりかな?」


「・・・・・俺は俺だ・・・・・」


「はっ、気付いていないとでも思ってるのか?」


反発的なシキに対し
ベンは少し眉を動かす。


「・・・・では逆に・・・・俺がシキのやっていることに気付いていないと思ってるのか・・・・・・?」


「・・・・!?」


「・・・・お互い様ってことだシキ・・・・・・・・・」


シキの驚く様子をよそに
ベンはシキに背を向ける。


「・・・・この背徳者が!!!!」


「・・・・シキにいわれたくはない・・・・・・」


そういってベンはそのままシキを残したまま
地下から出ていった。






その頃
コールはダークホーム裏口にいた。


・・・やっぱり俺が行って・・・リオナ達に知らせなきゃ・・・


そして意を決して扉に手を掛けた。


「・・・・コール・・・・・」


「・・・・・!?」


今度は誰だよ!!とつぶやきながら振りかえると
後ろにはベンが立っていた。


「・・・びびらせんなって!!!」


「・・・・・すまない・・・・でもここで何をしているんだ・・・・?」


コールは周りに誰もいないことを確認してから口を開いた。


「・・・・いや、それがよ。さっき聞いちまったんだが・・・リオナ達がUWにいるらしいんだ。」


「・・・本当か・・・?」


「マスターが言ってたんだ!だから確実だろ!だから俺は今からUWに向おうと思うんだが・・」


「・・・・このことシキには言ったのか・・・・・・・?」


「・・・まさか!!シキはなんだか怪しいからな!だってシュナがシキに呼ばれたあとから行方不明でしまいには死んだんだぞ!?アイツが犯人に違いねぇ・・・」


「・・・・俺もそう思う・・・・」


「だろ!?だからこの話は俺とベンだけの秘密な!」


「・・・ああ・・・・」


「そんじゃ当分俺は任務に行ってるってことで!」


そう言ってコールは走り去っていった。


「・・・・・・」


・・・UWか・・・


ベンは暫く立ち止まっていたが
クルッと向きをかえ
再び研究室に姿を消した。











光妖大帝国



神の墓場


そこに1人、カイの姿があった。


「・・・・・」


カイはこの部屋に置かれている2つのローズ・ソウルの横にある3つの小さな墓を拝んでいた。


「・・・・・・これで残りのフェイターもあと10人か」


カイはため息を吐いた。


最近は弟のアシュールは本格的にリオナを求めはじめ
ローズ・ソウルを集めるというフェイター本来の仕事は全くというほど進まない。


カイはどうしたものかと頭を悩ませていた。


「おっ、いたいた。カイさーん」



すると久しく見ていなかった
フェイター1の暴れん坊のランダーがやってきた。


「・・帰ってきていたのか。」


「ついさっきっすよ。・・てかグリンのやつも・・死んじまったんですか。」


「・・ああ。」


ランダーはいつになく悲しげに目の前の墓を見つめる。


「ああそうだそうだ。」


するとランダーは内ポケットからくしゃくしゃに折り畳まれた報告書を取出し
咳払いをして読み始めた。


「えーとですね。武練大帝国のローズ・ソウルが見つかりまーした。」


「・・・本当か!?」


「そうなんすよ。ただっすね・・・・それがUWにあるらしいんですよ。」


「・・・・またなぜあんな国に」


カイはさらに頭を抱える。


「しかもさっきヒュウから入ったばっかの情報なんすけど、そのUWにリオナがいるらしいっすよ?」


「・・!?」


「だからここで一発決めてリオナからもローズ・ソウルを奪っちゃおーってことですよぉ・・・って聞いてます?」


ランダーはぼーっとしているカイの前で手を振る。


「あ・・・ああ。そうだな。でもまずはUWの方を最優先だ。確実に一つずつ仕留めていきたいからな。この任務にはランダー達は向えるか?」


「行きたいのはやまやまなんですけどぉ、俺たちまだ森羅大帝国のローズ・ソウルをさがさにゃいかんのですよ。だからほか回ってください。」


「そうか・・じゃあトラヴァースとナタリアに頼もうとしよう。」


「じゃあ俺が伝えときますよ。それじゃあ。」


そう言ってランダーは出口に向っていく。


「・・・待ってくれランダー」


「はい?」


カイは深刻そうな顔をしながら
ランダーに近寄り
小声で呟いた。


「・・・リオナの事だが・・そのことをアシュールには・・」


「わーかってますよ!お口はチャック!でしょ?」


「ああ、頼む。」


「もちろん!じゃないと仕事が進みませんもんねぇ!ワハハハ!!」


ランダーは片手をヒラヒラさせながら姿を消した。


「・・・・・」


・・・これで・・うまくいくといいのだが・・・・


「・・・・・・・必ず・・神の復活を・・・」


カイはひざまつきながら祈るように呟いた・・・











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