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【完結】 Novel〜Lord's Soul〜
story53 おもちゃ





ここに来るのは何度目かな・・・






真っ暗で・・・何にもない部屋








唯一ある小さな小窓は







高すぎてわたしの目には空すら映らない







外からは悪魔たちの楽しげな声が聞こえてくる







ああ・・・早くこんな部屋・・・でたいよ・・・







"ムジカ・・・"



するとようやく
いつものように
あの人がやってきた


"お兄様・・・?"


"ああ・・・。さぁこっちへおいで。"


私は嬉しかった。


やっとこの部屋からでれる・・・


私はお兄様の手をつかんだ。


そしたらお兄様は優しく私に笑顔を向けてくれた。


"怖い?ムジカ"


"・・・・・"


"正直にいっていいよ?"


"ちょっとだけ・・怖い・・・・・です"


"そっか・・・"


"で・・でも・・・痛くしないでくれたら・・怖くないよ・・・?"


するとその言葉にお兄様は少し顔をゆがめた。


"ははっ・・・・でもそれはムジカが悪いんだよ?他の悪魔と話したりするから・・・"


"・・・・・・"


"『私の許可無しに他の悪魔と交流を持ってはいけない。』約束、でしょ?"


"・・・・・・はい"


"ああ。いい子だ・・・。"


そう言ってお兄様は私を抱き上げて歩き出す。


"でも・・・お兄様・・?"


"なんだいムジカ?"


"どうして・・・ほかの悪魔と・・・お話しちゃダメなの・・?"


"・・・・・"


一瞬
お兄様の目の色が変わった気がした。


"それはね、ムジカ・・君は普通じゃないからだよ?何度も言ったよね?"


"・・普通・・じゃない・・・・"


"そう。普通じゃないんだよ。"


"・・・・"


そう何度もいわれると
悲しくて胸が痛くなった。


しかしお兄様が
ぎゅっと強く抱きしめてくれる。


"ムジカ・・・・辛い?でも大丈夫だよ・・・"


お兄様はにっこり笑った。


でも・・・


・・・目が笑ってない。


"私が・・・ずっとムジカのそばにいるよ。ずっと・・・"






ああ・・・







お兄様はやっぱり私のこと・・・







嫌いだったんだ・・・









どうしてかな








やっぱり・・・








出来損ないだから・・・?







・・・だから閉じ込めたの?











・・・痛くしたの?











ねぇ・・・・お兄様・・・・












もう・・・・やめてよ・・・・・













「・・・・・・・・・・・・」


目を開けたら
そこはいつもの自分の部屋。


あれ・・・?


いつの間に任務から帰ってきたのだろう・・・


確か私・・・牢に閉じこめられて・・・・


ムジカはとりあえず体を起こそうとした。


「・・・ぃっ・・・・たぁ・・!!」


しかし背中にビリッと痛みが走った。


・・・そうだ・・・確か・・・


翼を切られたんだ・・・・


でもその後が思い出せない。


おそらく家にいるということは
マーシャかリオナが助けて・・・


「リオナ・・・!!!」


そうだ・・!!リオナの左手・・・!!!


私を助けるためにリオナは・・・!!


ああ・・・そうだ思い出した・・・・



わたし・・・・





覚醒しちゃったんだ・・・・・・



《ブーンブンブン!!!!》


すると遠くの方から
久しぶりの声が聞こえてきた。


そしてその声は部屋に近づいてくる。


《ぶぅーん!!!うわっ!!!ムジカ起きたのか!?って寝てなきゃダメだってぇ!!》


そう言ってB.B.はムジカの腹の上でボンボンと軽くはね
寝かせる。


「B.B.は大丈夫なの?包帯だらけだけど・・・」


B.B.は体中が包帯だらけな為
黒ウサギから白ウサギに変わったようだ。


《オイラはピンピンだもんねー!!!!》


そう言ってムジカの上でぴょんぴょん跳ねる。


「あ・・あのさB.B.・・・・・」


《なーに?》


「・・・えっと・・」


ムジカは少しためらいながら
口を開く。


「・・・私・・・・・・皆に言ってなかったことが・・」


《アルティメイト・プロジェクトのこと?》


「・・・!?」


B.B.からとびだした言葉に思わず目を丸くする。


「な・・知ってたの!?」


《うん。》


「・・・・リオナも?」


《みーんな知ってる。》


「・・・そっか」


ムジカは暗い顔を見えないように下に下げる。


私・・・やっぱりここにいるべきじゃ・・・


《でもムジカはもう勝手には覚醒しないってリオナがいってた!》


「・・・・?」


《なんかムジカの中にローズ・ソウルを入れちゃったんだって!》


「・・・!?私の中に!!?ローズソウルが!?」


ムジカは思わず体を触る。


しかし違和感は全くない。


「私・・・なんてことを・・」


こんなに大事なものを・・・


《考えすぎだって!!むしろローズソウルが相手にわからなくなってよかったってマーシャが言ってたのだ!》


「でも・・・」
《でもじゃなーい!!!》
「・・・痛!」


するとB.B.がムジカの頬をつねりだした。


《ムジカは何の心配しなくてイーの!リオナがついてんだからさぁ!リオナも好きでこーしてんだから悪いって思っちゃだーめなんだよぉ!》


「・・・B.B.」


《ムジカはもっと甘えていいと思う。オイラだってリオナにベッタリだもん。》


「・・でも・・・リオナの左腕・・・」


《それもいーの!あれはリオナがやったことだもん!あのな!今ムジカがやらなきゃなんないことは・・》


「・・・?」


《超休んでぇ・・超食べてぇ・・・》


「・・・」


《リオナに超ありがとうする!》


・・・ありがとう・・・・か



"ごめんなさい"じゃなくて・・・



"ありがとう"



「そう・・・だよね!ありがとう・・・だよね!」


《そーだよぉ!わかったらさっさと寝ろー!!》


「・・うん」









B.B.はムジカを寝かせると
そのままブーンと叫びながら部屋を出た。


「おい!うるさいぞ貴様!」


《あいあーい》


ジークに怒られながらも
B.B.は天井ギリギリまで飛び上がり
今度は猛スピードでリオナの部屋に入っていった。


ベッドで寝ていたリオナは
入ってきたB.B.を見て体を起こした。


「・・・どうだった?」


B.B.はリオナの膝に着地する。


《ムジカにはちゃんと言ってきたよ。オイラオリジナルで!》


「・・オリジナル?」


《おう!リオナが言ってたこと丸々プラスオイラオリジナル!》


「・・・まぁ伝えてくれたんならそれでいいけど・・なんか不安だな。」


《安心したまえ!!わっはっは!!》


ふんぞり返るB.B.を見て
リオナはため息をつきながらも小さく笑った。


「・・・ああでも言わないとムジカはとことん落ち込むからな。」


《確かに。ってリオナも寝なきゃダメだってぇ!オイラがマーシャに怒られちゃうよ!!》


「ははっ!そうだな・・ちょっと眠くなったから寝る。」


《オー!じゃあオイラ遊んでくる!》


「・・・・ああ。あんま遠く行くなよ。」


あー・・・眠い・・・


寝よ・・・


リオナはそのまま目を閉じた。






すると目を閉じたはずなのに
瞼の裏が明るくなっていった。


またか・・・この感覚・・・・


・・・いやな予感しかしない。



そう思いながらも
俺はそっと目を開く。


やはり目の前に広がっていたのは
何度も目にした真っ白な部屋。


「リオナ!」


そしていつものようにリオナをよく知った少年がいた。


しかし何かが違った。


「・・・・!?」


俺は驚きで思わず手で口を押さえた。


「どーしたの?リオナ?」


今まで見えていなかった少年の顔が
はっきり見えている。


しかも少年の顔は
自分そっくりだ。



いや・・・・同じ顔だ・・・・



まさか・・・・これが・・・俺の兄弟の・・・・





「・・ウィキ・・・?」


今まで・・見えてなかったのに・・・


なんで・・・・


「リオナ・・・」


ウィキは俺の顔を驚いたように見つめてくる。


「僕が・・・見えるの!?」


「・・・・・ウィキなのか?」


「うん!僕ウィキだよ!!!ウィキだよリオナ!!」


そう言ってウィキが俺に抱きついてきた。


「・・・ウィキ」


こんなに・・・近くにいたなんて・・・



なんで・・・気づいてやれなかったんだろう・・・・


「・・・・会いたかった・・・・」


俺はウィキをそっと抱きしめた。


「僕も!ずっと・・あいたかった!!やっと・・・・思い出してくれたんだね・・・・」


・・・・ああ・・・・・この暖かさ・・・・・


これを求めてたんだ・・・・・・



するとウィキは俺の手をつかむ。


「リオナに見せたいのがあるの!」


そう言ってウィキは俺の手を引いて
真っ白ないすに座らせた。


そして俺に一冊のスケッチブックを手渡した。


「見て見て!これ僕が書いたんだ!」


「・・・?」


俺は表紙をめくってみる。


そこには俺とウィキの絵が描かれていた。


「ね!じょーずでしょ!?」


「うまいうまい。」


次のページにはクリスマスツリーが描かれていた。


「これは・・?」


「これはねっお父さんとお母さんとリオナと僕との四人で初めて中央都市に言ったときに見たツリー!!」


「・・・・四人で・・・」


あれ ・・・なんか・・・覚えてる気がする・・・・


「確か・・・俺が気持ち悪くなって・・・」


「そう!!そうだよ!!リオナ思い出してきた!?」


「ああ・・・なんか思い出してきた」


ウィキと俺は双子の兄弟で、
ウィキが、大事な、大事な弟だってことも・・・・


不思議だ・・・・あれだけ考えても出てこなかったのに・・・







「よかった!僕ね!リオナが思い出すようにってぜーんぶかいたんだ!次はね・・」


そう言ってウィキはどんどんページをめくっていき
俺はなんとなくだが少しずつ色々なことを思い出しつつあった。


「ははっ・・!!そうだそうだ・・たしかあの時バルトがおっきなくしゃみしたんだよな・・!」


「そうそう!すごくビックリしたよね!!」


・・懐かしい・・・


すごく・・・


ずっと・・・探してた・・・



・・・俺の思い出たち・・・


でも、気づいてしまった・・・・


なんとなく、
ウィキが、もうこの世にいないことに気がついてしまった。


でもどうして?
どうしてウィキが死んでしまったのか、わからない。


思い出せない。


それでも今は、
ウィキに、
聞けなかった・・・・



「・・あー楽しかった」


「まだまだあるよ!?」


「でも・・・もう帰んないと。」


さすがに・・・この世界にいすぎるのはまずい。


「行かないで・・・」


ウィキは涙目で俺を見てくる。


「悪い・・でもここは俺の世界じゃない・・また来るから・・」


「嫌だ!!!」


俺が立とうとすると
ウィキは押さえつけてくる。


「ウィキ・・・」
「やだやだ!!!リオナここにいて!」


その目からは涙があふれ出している。


「リオナは僕のものだよ!?」


「・・・・!!」


・・・ぼくの・・・もの・・・?


・・・モノ・・・・・?


その言葉になぜか体が固まる。


「ねぇリオナ!!お願い!!リオナだったらいてくれるよね!?」


・・・俺だったら・・?


「だってリオナは僕の言うことだったら何でも聞くでしょ!?リオナはいつだって僕に付いてきた!!」


・・・それは・・・・・


「リオナ・・・変わっちゃったね・・・」


・・変わった・・・?


俺が・・・?



"リオナ・・・・変わったね・・・・"


・・・サラ・・・?



"昔は・・・ウィキのおもちゃみたいだったのにね・・・・"


・・・・ウィキの・・・おもちゃ・・・・


「それもこれも・・・マーシャのせい?」


「・・え・・?」


「マーシャがリオナの気持ちを変えたんだ!僕のリオナの心を壊したんだ!!!」


「違う・・・」


「違くない!!マーシャはリオナを僕から奪ったんだ!!」


「・・・・違う!!!マーシャは俺を救ってくれた!!!マーシャは俺に生きる目的を与えてくれたんだ!!!」


俺は叫んで思わずウィキを突き飛ばした。


ウィキはよろめきながら
後ずさる。


怒っただろうか・・・


でもウィキの表情は・・・


泣きながら笑っていた・・・


「へぇ・・・そっか・・・」


するとウィキはスケッチブックを拾い上げ
すべての絵をリオナの前で破きはじめたのだ。


「おいウィキ・・!!!」
「あーあ。なんかガッカリ。」


・・・・・・・・・・・・・!?


「リオナはいいおもちゃだったのに。」


・・やめ・・・ろ・・・・


「マーシャにとられちゃった。」


・・・やめてくれ・・・・・・・


「僕のゆーこと聞かないおもちゃなんていらない。バイバーイ。」


「やめろ・・・!」





嘘だ・・・・嘘だよ・・・・


俺が・・・・・



ウィキのおもちゃだなんて・・・・・・














「・・・・・・・・!!!!!!!」


リオナはベッドから飛び起きた。


パジャマは汗でぐっしょりしている。


「・・・・ハァ・・ハァ・・・・」


元の部屋にはもちろんウィキの姿は見あたらない。



「・・ウィ・・・・キ・・・・・・・・・・・!」


リオナはもう一度目をつむる。


もう一度ウィキに会うために。


しかし何度目をつむっても
何度会いたいと願っても
あの白い部屋は二度と現れなかった。


リオナは体を起こし
顔を手で覆う。


「・・・・嫌・・・だってば・・・・・行くなよ・・・ウィキ・・」





俺にはお前しかいないんだ・・・・



俺は・・・・昔から・・・・





ウィキが大好きだった・・・・






ウィキさえいてくれればあとはなんにもいらなかった・・・・・






でも・・・・・・・・






それってウィキにとっては・・・




俺はただの都合のいいおもちゃにしかすぎなかったのかな・・・・





・・・・ただ俺は振り回されてるだけの存在だったのかな・・・・







・・・・あぁ・・・・ウィキ・・・・・







バイバイなんて・・・・言わないで・・・・・







こんなおもちゃいらないなんて言わないで・・・








俺・・・・・・おもちゃでもなんでも・・・・









ウィキの隣にいたかった・・・・












第六章 孤陋の光

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