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【完結】 Novel〜Lord's Soul〜
story52 星ニ願ウ



「・・・リオナたち・・帰ってこないわね・・・・」


「うん・・。」


ルナとクロードは夕飯をすませ
静かな家でため息をもらす。


リオナたちが任務にでて三日がたった。


ルナの予想ではもうとっくに帰ってきてもいい頃なのだが。


・・・なにか・・・あったのかしら・・・


ルナは心配そうに窓の外を見つめる。


外はすでに夜を迎え
丘の上は冷たい風が吹き上げていた。


「・・・マーシャ・・・」


何もなければいいが
心配だけがつのっていく。


「ルナちゃん・・大丈夫?」


するとクロードが心配そうにルナの顔をのぞいてきた。


「・・・大丈夫よ・・?ごめんね・・・心配させちゃって・・・」


「ううん・・」


「・・じゃあお風呂に入ろっか・・」


「うん・・!」


そう言って二人は洗面所に向かおうとした。


・・・ドンドン!!!


突然扉を叩く音がした。


ルナとクロードは顔を見合わせる。


こんな夜に一体誰だろうか。


「・・・・・・」


「あ・・・!お兄ちゃんかも!!!」


そう言ってクロードは玄関に駆け出した。


「だ・・・ダメよクロード・・・・!!危ないわ・・・!!」


ルナの制止を聞かずにクロードは玄関の扉に手をかける。


そしてそぉっと小さく開けた。


そこにはムジカを担いだ金髪の男が立っていた。


「・・・・・・・・・・・・ジーク?」


クロードは扉を大きく開き
目を丸くした。


「・・この少女を届けに来たんだが・・・・って・・・」


ジークもクロードを見て目を丸くした。


「なっ・・・なななななんでお前がいる!?」


「ジーク生きてたの!?」


ジークとクロードは以前ターミナル103で悪魔狩りとして一時的にチームを組んでいたが
お互いに死んだものだと思っていた。


そのため
お互い驚きで言葉をなくしていた。


「・・・ムジカ・・・・!!!」


するとクロードの後ろからルナが飛び出し
ジークの背中で眠るムジカに近寄った。


「・・・ムジカ・・!このケガ・・・まさかあなたがやったの・・・!?」


ルナはジークを睨みながら
ムジカを取り上げる。


「違う・・。これはだな・・」
「まてまて。俺が説明するからさ。」


すると今度はジークの後ろから陽気な声が聞こえてきた。


「・・・マーシャ・・・?」


足を引きずりながらやってきたのはマーシャだった。


しかも背中にはこれまた眠っているリオナとB.B.がいた。


「ただいま。」


マーシャはいつものようにニッと笑いながら
クロードの頭をなでていた。


「・・・なにがただいまよ・・・・」


するとルナがいつになく低い声をだす。


「へ?」


そしてルナはいつになく大声でマーシャにどなりだす。


「・・・心配したのよ・・!?すごく!なのにヘラヘラしながらただいまだなんて・・・・!!」


ルナは顔をゆがませ
さっさと家に入っていってしまった。


「ルナ・・・」
「貴様・・!!!あれは誰だ!!恋人か!?私はあんな女許さんぞ!?」
「うっるせぇよ!てかお前何様だよ!」


とりあえず中に入ろうと
マーシャはジークを促しながら家に入っていった。




「ジーク、リオナとムジカをベッドに運んでくれ。ああB.B.はリオナと離して。そんでクロードは部屋案内してやれ。」


「うん。」


そう言ってマーシャはそそくさと外に出て行ってしまった。


「・・マーシャ=ロゼッティはあの女の元に行ったのか!?さてはアイツ」
「ジーク行こうよ?」
「・・はい。」


ジークはクロードに案内されながらリオナとムジカとB.B.を順に寝かせていった。


そしてようやく終わると
リビングのソファーにドカッと座った。


「・・はぁ。疲れた。」


この3日間で一気に変わってしまった。


立場も居場所も。


「ジーク・・?」


するとジークの横に
ちょこんとクロードがすわり
ジークの顔をのぞき込んでいた。


「ああ・・・そう言えばお前の名をあいつ等がクロードと呼んでいたな。」


「うん。」


「ほう・・。つけてもらったのか?よかったな。」


「うん。・・でもジークにまたあえてよかった・・。僕ジークにお礼言ってなかったから・・・」


「お礼?」


「うん。ジークは僕の世界を変えてくれたんだ。ジークがいなかったらお兄ちゃん達に会うことが出来なかったでしょ?だからありがとう。」


クロードはジークに抱きつき
にっこり笑う。


あまりに無邪気なクロードを見て
ジークは少し照れながらクロードの頭をなでてやる。


「・・お前も変わったな。」


それもあの少年のおかげか・・・


「クハハハ・・面白い少年だ」


「ジーク・・?」


「いや、何でもない。」


ジークは微笑みながら
目をつむり
ただ今はこの穏やかな空間に身を任せた。
















・・・マーシャのバカ・・・・・・・


・・・心配した私がバカみたい・・・・・


ルナは目にたまった涙を拭いながら
庭に咲いた花を一本とって
花びらをちぎり始めた。


「あーあ。せっかく育てたのに。」


「・・・ホントよ・・・それもこれも全部あのボサボサおちゃらけバカのせいよ・・・・・って・・・」


ルナは一瞬にして硬直した。


「ひっどいなぁ。ルナにまでそう思われてたなんてな。」


「・・・・!?ま・・・マーシャ・・・!?」


驚きで目を丸くするルナの後ろにマーシャが座る。


「・・・なによ・・・」


珍しく頬を膨らますルナに対し
苦笑しながらもマーシャは小さくため息をついた。


「心配した?」


「・・当たり前でしょ・・・・!?」


「そっか。」


「・・・・・・・・・・・・。」


「・・・・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・ごめん。」


突然謝ってきたマーシャに
ルナは少し戸惑いを見せる。


めったに謝らないマーシャだから
どうすればよいかわからない。


しかも今はマーシャの顔が見えない。


・・・彼は今どんな表情をしているのだろう。


でも・・怖くて見えない・・・。


「・・・マーシャ・・・?」


「ははっ・・・俺謝っちゃったよ・・・」


「・・・・らしくないわね・・・・・」


「・・・・・・そうだな。なーんか疲れたみたいだ!あはは。」


マーシャは笑い声をあげるが
その笑い声も小さく消え
すぐにため息をつく。


「・・・・・」


「・・・・なんかさ・・・色々・・あってさ。」


「リオナと・・ムジカ・・・?」


「・・ああ。」


「・・・・・」


マーシャは夜空を見上げる目を腕で隠す。


「俺がいたのに・・・あいつらを守れなかった・・。あいつらに傷を負わせた・・・体にも・・・心にも・・・」


いつもならこんな弱音を吐かないのに・・・・


「リオナなんて・・・・また自分を犠牲にしたんだ。俺は・・・リオナを守ってやれなかった。」


よっぽど参っているのかも・・・


「マーシャ・・・・」


するとマーシャは背中を傾け
ルナの背中に身を任せる。


「しばらく・・このままでいていいか?てかいるけど・・」


「・・・うん・・・・」


マーシャは小さく笑いながら
ゆっくり目を閉じた。


「・・マーシャ・・・」


「・・・ん?」


「・・・きれいね・・・星・・・」


「ははっ・・そうだな。キレイだ。」


「・・・星って・・・」


するとルナは静かに話し出す。


「・・・星ってね・・・本当はでこぼこで傷だらけなのに・・・こうやって光って傷を隠してる・・」


「・・・・」


「・・・しかも星は・・・自分の傷よりも他人の傷を癒すためにただただひたすら光り続けてる・・・・・・・」


するとルナもマーシャに身を任せ
そっとマーシャの手を握った。


「・・・ねぇマーシャ・・」


つらいなら・・・泣いていいんだよ


苦しいなら・・・やめていいんだよ


だから・・・・いつまでも・・・


あなたはあなたのままでいて・・・・


「どうしたら・・・星の傷を癒すことが出来るかしら・・・・・・」


あなたは・・・どう思うかな・・・


「・・・ははっ」


するとマーシャは小さく笑い出し
その振動が背中越しに伝わった。


「なんか元気でたかも。」


「・・・・!ホント?」


「ああ。」


ルナはじっと
マーシャの顔を眺める。


その顔はいつも通りではないがにっこり笑っていた。


しかしルナにはそれで満足だった。


「・・・よかった・・・」


「何?なにがなにが?」


「・・・マーシャが元気でて・・・」


ルナは久々に心の底から笑った。


その様子をみて
マーシャも小さく笑った


「何笑ってんだよ・・・。ったく・・・」


この空気感が、


本当に、
心地よかった。


いつまでも続けばいい。


でも、わかってる。


彼は私を恨んでて、
彼の心は"リオナ"で埋め尽くされていることくらい。


だけど、
これで私は充分・・・・


マーシャが、
幸せになれれば・・・・・・・・







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