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【完結】 Novel〜Lord's Soul〜
story50 赤き涙



元・悪魔狩りメンバーのジーク=メイリンの案内により、
悪魔狩り本部に到着したリオナたち。


静まり返る森の中で作戦を練っていた。


「・・それにしても思った以上に小さいな。」


本部と聞いて
巨大な屋敷をイメージしていたが
実際は少し大きめな屋敷という感じだった。


「本部は本部でも私たちはここに住んでいるわけではない。本部には仕事をもらいにくるだけで私の家は別にある。」


「へぇ。どこ?」


「・・・・・気になるか?」


「別に。話を戻そう。」


「・・・・。」


マーシャに対し色目を使いながらも
ジークはあくまで自分のペースを保つ。


「ゴホンッ。まず少女は地下の牢屋にいるだろう。おそらく貴様らが探してる三人の子供もそこにいるはずだ。」


「ならさっさと突っ込もうぜ?」


マーシャは楽しそうに体を乗り出すが
すぐにリオナが止めた。


「・・・でも中は戦闘態勢じゃないのか?」


「だったらジークが先に入っていけばいいんじゃね?ジークが生きてるのを見れば俺たちは死んだことになるだろ?そしたら戦闘態勢も崩れ・・」
「甘いな。」
「?」


するとジークは薄笑いを浮かべる。


「悪魔狩りには戦闘班と情報班がいるんだ。だから情報班からすでに私の負けがヘッドにも伝わってるはずだ。」


そんなシステムだったのか・・・。


「・・・じゃあどうする。」


「とりあえず正面突破は無理だ。しかし私は裏扉を使える。そこから地下につながる階段はすぐだ。だからそこから一気に攻め込むぞ。」


「・・・・ちょっとまった。」


「なんだ少年?」


「・・・アンタも来るのか?」


「貴様等は道を知らないだろう?」


「・・・でも」


今更ながらにリオナは疑いを募らせる。


・・罠って事も考えられる・・・


するとそのリオナの表情を読みとったのか
ジークは苦笑しながら肩をあげた。


「・・疑おうが疑わないかは貴様等の勝手だ。だが何度も言うが今は私は悪魔狩りの反逆者でもあるんだ。今更奴らに恩を返そうなど考えない。それに・・・」


「・・・?」


「悪魔狩りは常に単独行動だった。慰め合う仲間などいらない。だから奴らとも別に大切な絆などないんだよ。」


そう言って少し顔を歪ませる。


その視線は常に悪魔狩りの本部に向けられ
何かを伝えたいようなそんな感じがした。


「・・・いいのジーク。」


「なにがだ」


「・・・仲間を傷つけることになるかも」


「クハハハッ!今更何を気にしている!!奴らは仲間でも元・仲間だ!!」


盛大に笑いながらジークは一歩前にでる。


「まぁでも殺さないでくれよ?私は奴らに恨みはないからな。」


ジークのその薄いオレンジの瞳は強く
しかし優しい光を放っていた。


「・・・・ああ。」


「それじゃあ行っちゃうぜ?」


待ちきれずにマーシャは一気に屋敷に向けて駆け出す。


それにリオナとジークも続いた。









無事にリオナたちは裏扉から本部内に侵入した。


やはりリオナの予想通り
裏扉にも厳重に戦闘態勢がしかれ
数人の悪魔狩りが向かってきた。


「・・まずいなぁ」


リオナはB.B.の力なしに
一気に敵を負かしていく。


「悪いけどとーしてね。」


マーシャはにやっと笑いながら手加減なしに暴れまくる。


おかげで壁が粉々になり
見つかる必要がない他の悪魔狩りにも見つかってしまった。


「貴様はアホか!」


「お前に言われたくなーい。」


「何だと!?」


なぜか喧嘩を始めてしまった二人をリオナが止めながら
トランプを物凄いスピードで操っていく。


しかしケンカはやむことなく
リオナの怒りを蓄積させる。


「ったく・・・二人ともやめろ!!」


周りの敵を一掃すると
リオナはカツを入れ
さっさと歩いていってしまった。


取り残されたマーシャとジークは
口をぽかんと開けて立ち尽くしていた。


「あーあ。リオナに怒られちゃったじゃーん。」


「少年も怒るんだな。」


「そりゃリオナも人間だからな。」


ブツブツ呟きながら二人もリオナの後に続いた。





リオナは巨大な扉の前に立ちはだかる悪魔狩りを一気に片づけ
扉の取っ手を掴み押し開ける。


ギィッと音を立てて開くと
目の前には暗やみに包まれた地下に続く長い階段が現れた。


すると後ろからやってきたジークはリオナの肩に手をおいた。


「ここを降りていけば牢が続く通路にでる。複雑に入り組んであるから気をつけろ。」


「・・・・わかった。」


そう言ってリオナは落ちていた木の断片を拾い上げ
呪文で火をつけた。


「ほぉ。魔族はいいな。」


「・・・・そうかな。まぁもう魔族は絶滅するだろうけど・・・。」


リオナは少し悲しげに笑う。


「クハハッ。確かヘッドも同じ事を言っていたな。」


「・・ヘッドてさ、どんな人?」


「私も詳しくはわからんが・・確かお前たちと同じ魔族だったはずだ。まぁあまり魔法が使えないらしいがな。」


「・・魔族?」


リオナはその言葉に一瞬ドキッとした。


「へぇ魔族ねぇ。で?ヘッドはなんで悪魔狩りなんてしはじめたんだ?」


「・・悪魔に国を潰されたとか。ああ確か時天大帝国壊滅のあたりか、大魔帝国が潰れたのも。」


リオナは心臓の鼓動が強く波打つのを感じる。


「・・・俺と同じ・・・生き残り・・?」


・・・でも・・・だとしたら・・・・


悪魔が俺の国を・・・家族を・・・


・・・殺したって事か・・・?


クロードが言っていたように・・・・


「・・ありえないって」


「・・?少年どうかしたか?」


「いや・・・大丈夫。」


だって・・・すべてはフェイターの仕業だ。


悪魔はフェイターとは天敵のはずだ。


でも・・・・・


「マーシャ・・・・」


「あ?」


マーシャはリオナの顔をのぞき込む。


するとリオナはいつになく不安げにマーシャを見つめた。


「・・悪魔の・・・仕業じゃないよね?」


「・・・・」


あまりにストレートな質問に
マーシャはドキッとした。


しかしすぐにニカッと笑いながら
リオナの頭をペシペシ叩く。


「あったりめぇだ。まさか疑ってんのか?」


「ち・・違うよ。ただ・・・」


リオナはぎこちなく笑いながら前にでた。


「ただ万が一悪魔の仕業だったら・・俺は俺じゃいられないから。」


「・・・・」


その言葉にマーシャは思わず息をのむ。


嘘をつきたかったわけではない。


ただリオナにはウソをついてでも知って欲しくなかった。


裏切っている悪魔がいることを・・・・。


なぜならそれをリオナが知ったら・・・・


リオナがリオナでいられなくなるから。



マーシャは一回目を閉じ
深くため息をつく。


そして次に目を開いたときには
いつものノリを取り戻し
リオナにガバッと抱きついた。


「ほれ。前しっかり見なきゃあぶねぇぞ?」


「・・だったら離れろ。」


「えー。」


「・・・えーじゃなくてさっさと離れ・・・・ぅあっ!!」


すると突然
リオナが小さな悲鳴を上げた。


「おい少年!?」


「リオナ!?」


「いや大丈夫・・だ。ただ・・B.B.がムジカに反応してる・・」


確かにリオナから生えるB.B.の耳がピンとまっすぐに立っている。


するとマーシャも眉をひそめ
じっと先に続く暗闇を見据える。


「この先にムジカがいる。」


「・・・!!」


その言葉にリオナはすぐに駆け出そうとした。


しかしすぐにマーシャが止めた。


「まてリオナ。」


「・・・!?」


「誰かくる。」


三人は空の牢屋にさっと入り
身を隠した。


リオナは耳を澄まし
相手の位置を確認する。


足音は・・・ここから40m先


・・・人数は・・・5人


暗闇にジッと身を潜め
しばらくすると
目の前を二人の悪魔狩りが通り過ぎた。


その後ろからは
三人の子どもたち。


「・・・!?」
「・・・・・!!」


リオナとマーシャはハッとし、
顔を見合わせる。


リオナは身振り手振りで"追う?"
と尋ねるが
マーシャは首を横に振る。


そして男たちがいなくなるのを確認すると
リオナ達は牢屋からでて
再び暗い道にでた。


「・・・なんで追わない?」


「あの状況で突っ込んでいったら逆に子供たちが危ない。ここはまず」


"・・・ナ・・・・・・"


「・・・あれ?」


すると突然
リオナはキョロキョロとあたりを見渡しはじめる。


"・・・・ォ・・・・・"


「・・誰だ?」


誰の声だろうか。


しかし声は奥の方から聞こえてくる。


「どうしたリオナ?」


様子がおかしいリオナに
マーシャはそっと近寄った。


リオナはじっとしたまま、耳をすましている。


「・・・・なにか聞こえないか?」


「へ?なにが?」



"・・リ・・・・・・・・ナ・・・・・"


「ほら・・!誰か呼んでる!」


そう言ってリオナはいきなり駆け出した。


「・・?ジークは聞こえたか?」


マーシャは怪訝そうな顔をしながら尋ねる。


「いや・・。私にも聞こえないが・・・。」


しかしリオナは誰彼かまわず必死にかけていく。


声のする方へ


自分の名前を呼ぶ方へ


"リ・・・・・・・・・・・・・・・オナ"


苦しいのか?


だれなんだ?


どうしたんだ?


どうして俺を呼ぶんだ?


鼓動がだんだん早くなる。


とにかく全力で暗闇をかける。



するとあるところまでくると
突然声が聞こえなくなった。


いままで頭に鳴り響いていた声が
すっかりなくなった。


「・・・なんで?」


リオナは乱れる呼吸を整えながら
あたりを見回す。


すると斜め前にある牢屋から
何やら水のような液体が流れてきていた。


リオナは目を凝らしてみるが
なにがなんだかわからない。


足元までやってきた水を
リオナは手ですくい上げた。


「・・・・・・・・・・・」


・・・赤い・・・・・血だ・・・


手についた真っ赤な血を目を丸くして見つめる。


「・・・・ま・・・さか・・」

リオナは血だまりの上を急いで駆けていき
血の流れてきている牢の前に来た。


そして真っ暗な牢の中をじっと見つめる。


「・・・嘘だろ」


まさか・・・・こんなこと・・・・


有り得ない・・・・・


「・・・ムジカ」


そこにいたのは
床に座り込んだムジカだった。


そしてこの大量の血は
確実にムジカからのものだった。


「・・・・・・ムジカムジカ!!ムジカァ!!」


リオナは鉄格子の扉をガシャガシャと強く引っ張るが
鍵がかかっているため開かない。


「・・・・ムジカ!!おいムジカ!!」


何度も何度も呼びかけ
格子を叩く。


しかしムジカは反応せず
血だけが床を赤く染めていく。


「・・・頼むから・・・・返事してくれよ・・・・」


いつもみたいに・・・笑ってくれよ・・・・


「リオナ!!どうした!!」


ようやくやってきたマーシャとジークは
リオナがしがみつく鉄格子の中を見る。


「ムジカ!!」
「少女!?なぜだ!」


マーシャも鉄格子をナイフで切ろうとするが
呪縛か何かで跳ね返される。


「くそ!おいジーク!この呪縛どうやったらとれる!?」


「・・これはヘッドがかけた魔族の呪縛だ。私には解けない・・。」


「はぁ!?てめぇふざけたことほざいてんじゃ・・」
「・・・・どいて」
「リオナ!?」

すると
マーシャはリオナに押しのけられた。


しかしリオナは目に見えない殺気で満ち溢れ
マーシャは思わず後ずさる。


「リオナ・・?」


呼びかけても反応がない。


リオナはまるで別人のような目つきで
低い声で何かの呪文をつぶやきだす。


リオナは鉄格子に左手をかけると
力強く握った。


鉄格子は煙を上げだし
まるで熱で溶けるように曲がっていく。


「少年・・・!?」


「おいリオナ!お前・・!!!」


マーシャは勢いよくリオナの手をつかみ
鉄格子から手を離させる。


「リオナ・・お前手が焼けてるだろう!!!」


鉄格子はうまく崩れ落ちたが
リオナの左腕は
焼け焦げ
それは骨までに達し
血さえ流れてこない。


「馬鹿野郎!!」


しかしリオナは無表情のまま
マーシャを見向きもせずに
手をふりほどいてゆっくり鉄格子の中へ入っていく。


マーシャは驚きで目を丸くしながらも
リオナに続いて中に入った。


「・・・・・・ムジカ」


リオナは床に座り込むムジカに近寄ると、
腕を巻き付けそっと抱き寄せる。


そして背中まで手を回し
ギュッと抱きしめる。


しかしそこで気づいた。


「・・・翼が・・・ない・・・・」


本来あるはずの・・・翼がない


悪魔の象徴がない


「・・・・・・・・・・・・・・・」


翼を切り落とされた傷口から流れ出す血を止めるように
リオナは必死に手でふさごうとする。


「・・・リオナ。いったん腕放せ。」


リオナが腕を緩めたスキに
マーシャはコートを引き裂いた布でムジカの傷をふさいでいく。


「・・・ムジカは・・・?」


うつろな目をしたリオナがマーシャを見上げた。


「・・大丈夫だ。生きてる。」


ただ致命傷を負ったがな・・・


するとマーシャの後ろから
悲痛な表情を浮かべたジークがムジカに近寄ってきた。


「・・・くるな!!!」


しかしジークは突然リオナに怒鳴られ
少し後ずさる。


「・・・・近寄るな!お前もムジカを傷つけるのか!?」


リオナはマーシャからナイフを奪い
ジークに突きつける。


「わ・・・私は少女を傷つけたりしない!」
「・・・・嘘だ!お前の仲間が傷つけた!!何が預かってるだ!!」


右手に持ったナイフでジークに切りかかる。


「やめろリオナ!!」


「・・・・マーシャ離せ!!!」


「おいリオナ!!」


バンッ・・!!!!!


暴れるリオナに対し
マーシャが一発殴った。


「少し落ち着け!お前らしくないだろ!」


「・・・・・・!」


「ジークがいなけりゃここまでこれなかったんだ。怒りをぶつけるべきはジークじゃないだろう・・?」


「・・・・・・・・」


マーシャが静かになだめると、
リオナは顔をゆがませ
思いっきり壁を殴りつけた。


「・・・・なにが悪魔狩りだ!俺たちのことなにも知らないくせに・・!!!」


「・・・・・・・」


息をあらげ
怒りに身を震わせるリオナの背を
マーシャは何度もさすってやる。


「とにかくムジカは大丈夫だ。次はお前の左手何とかしねぇと・・」
「・・・・・・・いい」
「は?」


リオナはマーシャを再び押しのけ
牢の出口に向かう。


「・・・少年」


ジークは悲しげにリオナを見つめるが
リオナはじっとジークを睨みつける。


そして何も言わずに横を通り過ぎた。


「・・ムジカと子ども達連れて行って」


「は!?おいリオナどこ行く気だよ!」


「・・・・・・・・・上。ヘッドを潰しに行く。」


「ま・・まてリオナ!お前左手そのままにしたら使えなく・・・・」
「手なんていらない。」
「!!?」


そう言うと
リオナは体から無理やりB.B.を引っ張り出し
マーシャに手渡す。


そして



ザクッ・・・・



リオナはすでに感覚のない左手を
先ほど奪ったマーシャのナイフで切り落としてしまった。


「な・・・・・!!!」



呆気にとられるマーシャとジーク。


「・・少年!!!何をしている!!」


「バカ!!なにしてんだ!!!」

マーシャとジークの責め立てを
リオナはあえて苦しげに笑って流した。


「どっちにしても・・・・もう手遅れだったよ。」


「・・・・!!少年・・・」


そしてリオナは吹き出す血を抑えながら走り出し
暗闇に姿を消した。


突然のリオナの行動に呆気にとられたマーシャは
しばらくの間呆然と立ち尽くしていた。


「おいマーシャ=ロゼッティー!!なぜ少年を止めない!!!」


ジークはマーシャにつかみかかる。


「・・・俺だって止めたかったさ!!」


マーシャはジークを押しやり
リオナの切り落とされた左手を拾い上げる。


その手は肉がほとんど焼けてしまっていて
リオナが言っていた通り
すでに使い物にならなかった。


「少年・・・なんてムチャな!!!」


ジークは自分に腹が立った。


何にもできず
ただ人を傷つけ
見ているだけの自分に。


「・・・でもリオナはきっと命に代えてでもムジカを助けただろうな。」


「・・え・・?」


マーシャは苦笑しながらリオナの左腕を見つめる。


「アイツにとってムジカは生きる糧なんだ。ただの仲間なんかじゃない。ムジカを愛してるんだ。だから俺らがなんて言ったってアイツは止められない。おそらく自分だったら絶対そうだもん。」


もしもリオナを助ける為なら、
俺だってそうした・・・・


だろ?っとマーシャはジークに笑いかけた。


「・・・・それでも少年はやりすぎだ!!」


「ははっ、そうかもな。」


でも・・・愛するものの命なら


自分の命に変えてでも守りたい


俺も何度も思ってきた・・・


でも・・・・思うだけだった


「リオナ・・・・お前がうらやましいよ」


・・・もう・・・守れないんだ・・・・



二度と・・・命を懸けて守ってやれないんだ・・・・・






だって彼女にはもう・・・






体も・・・・・









心も・・・・






・・・・命もないから






「とにかくムジカを抱えてここをでるぞ。お前はB.B.を頼む。」


「あ・・・ああ。」


マーシャは牢に入り
ムジカを背に乗せた。


「ここをでたら一旦俺はリオナを連れ戻しに行くからムジカを町まで連れてってく・・・」
「・・・・・マー・・・・・シャ・・・・・・?」


背中に背負ったムジカの口から
小さく声が漏れた。


「ムジカか!?ああよかった!」


マーシャはいったんムジカをおろし抱きしめる。


「・・・・リオナ・・・・・・は・・・・・・・・・・」


マーシャは思わずビクッとする。


本当の事なんていえない。


「リオナは・・・だな、先に帰って・・」
「・・・・・・・・ウソ」
「・・・・。」


あっけなくばれてしまい
顔がだんだんひきつっていく。


するとムジカは
マーシャの手に握られた
黒々しい固まりを手に取った。


「あっ!ムジカそれは・・!」
「・・・・・・・・・・・・・・・?」


これは・・・・・・・・・・手?


ムジカの顔がだんだん青ざめていく。


・・・そう言えば・・わたしどうやって牢から・・・


ムジカは牢に目を向けた。


「・・・・!!!!!」


堅く頑丈な鉄格子は
まるで溶けたように曲がっていた。


まさか・・・・この手は・・・・


「・・うそ・・・リオナ・・・・!!」


・・・リオナ・・!!!リオナ・・・!!!


ムジカは痛む体で立ち上がり
足を引きずりながら
歩き出す。


「まてムジカ!」
「少女・・!」


しかしムジカは数メートル歩くだけで
ペタンと力なく座り込んでしまう。


「うぅ・・・・・・・・・・・イヤ・・・・イヤよ・・・・・・・」


ムジカは小さく泣き声を漏らす。


「・・・ムジカ。違うんだ。アイツの手は自分で・・・」
「イヤ!!!イヤイヤイヤ!!!なにも聞きたくない!!!!」


ムジカは両耳をふさぎ
首を横に振り続ける。


マーシャはいつものムジカらしくない彼女の背中をなでてやるが、
ムジカは体をふるわせながら
ギュッと目をつぶった。


「ムジカ・・」


「ごめんなさい・・ごめんなさい・・・私がお兄様の言うこと聞いてれば・・・・・お兄様・・・私いい子にするから・・・もう逃げないから・・・・みんなを痛くしないで・・・・・痛くするなら・・・私を痛くして・・・・」


訳の分からないことを呟くと
ムジカは再び立ち上がり
リオナの左手をギュッと胸に押し当てる。


「・・・・ゴ・・・メンナサ・・・・・イ・・・・オニイサ・・・・・・マ・・・・」


「ムジカ!?おいムジカ!」


様子が変わってしまったムジカをマーシャが力強く揺する。


しかしムジカの目は
まるで血に満ちたように
眼球全体が赤くなり
だんだんとムジカの面影がなくなってきた。


牙をむき
髪も真っ赤に染まり
爪はいつになく鋭くとがる。


そして背中の翼を切り落とされた傷口から
なにやら黒々しい煙が飛び出し
それがだんだんと巨大な翼とかした。



「ムジカ・・?」


黒々しい煙に包まれたその姿は
まるで真の悪魔のようだった。


「・・・・・シュゥゥゥゥゥ・・・・・・・・・」


ムジカは口から息をもらすと
体の痛みを感じさせないような走りで駆けていってしまった。


「お・・・おいマーシャ=ロゼッティー!!追うぞ!!」


ジークは見えなくなったムジカを指差しながら
立ち尽くすマーシャの手を引く。


しかしマーシャは眉をひそめるだけで
動こうとしない。


「・・・・アルティメイト・プロジェクト・・・」


「・・・・?」


突然マーシャが呟いたことに
ジークはただただ首を傾げる。


「何なんだ?アルティメイト・プロジェクトとは・・」


「対神用の最終兵器計画だ・・。ムジカはそのプロジェクトの・・・最終兵器の一つなんだ。」


「・・・なんだと!?」


「だが計画は失敗に終わったはずだった。でも・・」


「まさか・・・今頃になって覚醒したのか!?」


「もしそうだとしたら・・」


マーシャは悪魔を引き出し
ナイフを巨大な鎌に変える。


「何が何でも・・・止めなきゃならんだろ!」


そういうと
マーシャは早足でもとの道を戻り出す。


「まてマーシャ=ロゼッティー!!」


「ぁあ!?」


「私も行く!」


ジークも背中から剣を取り出し
マーシャの横に並ぶ。


「・・・・。いいのか?リオナに殴られるかもよ?」


「構わん。それで彼の気が済むならな。」


「ははっ。リオナは一度すねると手のつけようがないからな。」


「覚悟の上だ。」


「なら結構。」


マーシャはニッと笑い
B.B.を懐に入れると
ジークと共に駆けていった。







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