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【完結】 Novel〜Lord's Soul〜
story49 悪魔への恨み




・・・・・・・・・・・・・あれ・・・・・




・・・・なんか真っ暗・・・・・




どこ・・・・?・・・・リオナは・・・?




リオナ・・・?リオナ・・・・・




・・・・・・・・・・・・・・・・怖いよ・・・・・・








"・・・ムジカ。また部屋を抜け出したね。"


"お・・・にいさま・・・・ごめ・・なさい・・・・でも・・・"


"でもは聞き飽きたよ。ムジカは痛くしてもらいたいの?"


"違・・・くて・・・私は・・・ただ・・"


"おいで?ムジカ"


"おにい・・さ"


"おいで。"




・・・・・・イヤだよ・・・ごめんなさい・・・・



・・・・私が悪かったから・・・



だから・・・・叩かないで・・・・・








「・・・・!!!」


ムジカは突然飛び起きた。


呼吸をあらげながら
早まる鼓動を抑えるように胸を押さえる。


「・・・夢・・・か・・・・」


・・・嫌な夢見ちゃった・・・


ムジカは暗い表情を浮かべながら
辺りの見回す。


目の前には鉄柵があり
どうやらムジカはどこかの地下牢に閉じこめられているようだ。


・・・そういえば・・・私・・・
どうしてここにいるんだろう・・


さっきまでリオナとマーシャと一緒だったのに・・・・



「・・・・・!!」


・・・・痛っ・・・・・・


ムジカは足を動かそうとすると
何も縛られてはいないのに
何かに締め付けられている感覚に陥る。


・・・・動けない・・・・・


・・・・なんだか・・・息苦しい・・・


「目を覚ましましたか?」


突然目の前から声が聞こえ
ゆっくりと顔を上げる。


そこには真っ赤なコートを着た
きれいな女性が立っていた。


・・・・・・キレーな人・・・・・・


ムジカは思わず見とれてしまう。


しかし女はそんなムジカを困ったように見つめ返した。


「あの・・大丈夫かしら?」


「あっ・・・・ごめんなさい・・!大丈夫で・・・・・っ痛・・・」


ムジカは痛む体を押さえる。


すると女が鉄柵を開け
中へ入ってきた。


そしてムジカの腕を力強く握った。


「ぁっ・・・!!!!!!!」


苦痛で顔をゆがめながら
ムジカは女の腕をつかむ。


「・・・痛いですか?」


「・・・!?!?」


「あなたには対悪魔用の薬を打たせていただきました。」


・・・!?対悪魔って・・・・


「・・・・・もしかして・・・あなたは・・・」


「私は悪魔狩り本部のヘッドです。」


「・・ヘッド・・・?」


「あなたたち悪魔でいうマスター的存在です。しかしそれにしても・・・・・」


ヘッドはムジカの顎をつかみ
グイッと上げる。


「人型をした悪魔は初めてみました。」


「・・・・・・」


「・・・怖いですか?」


「・・・・・・・・痛いです」


ムジカは正直に答えた。


"嘘はいけない"
ルナから教わったことだ。


「・・・・・・・。正直でよろしい。ではあなたのその痛みを取り除いて差し上げましょう。」


そういうと
ヘッドは檻を出て行き
何か合図を出している。


そしてもう一度振り返り
ムジカに笑いかけた。


「・・・それじゃあ可愛い悪魔さん、またいつか・・会いましょう。あなたにも神のご加護がありますように。」


「・・・・・」


ムジカは今更気がついてしまった。


・・・私・・・・殺される・・・


「・・・どうしよ」


でも体が動かないし・・・・


・・・はぁ・・・


・・・私せっかくリオナに助けてもらったのに・・・・


これじゃあマーシャが言ってた"親不孝"だよ・・・


・・・あれ?・・・リオナは親じゃないから"リオナ不孝"か。


「・・・って私こんなこと考えてるばあいじゃな・・」
「入れガキども!!!!」
「・・!?」


ムジカは突然の怒鳴り声に体をびくつかせた。


次にいきなり現れたのは
赤いコートを羽織った二人の男と
まだ幼い三人の子どもたち。


子どもたちはムジカの前に投げ捨てられた。


「・・・・!!!」


・・・この子たち・・・もしかして・・・


「・・・クリストファー・・・」


小さく呟くと
子供たちは顔を上げ
驚きながらムジカを見つめてきた。


『おねぇさん・・・何で僕らの名前知ってるの?』


「そ・・・れは・・・・・っぅあ・・!!!!」


突然、男にムジカは思いきり髪を引っ張られ
動かない体を無理やり動かされ悲鳴を上げる。


「何勝手に話してやがる!!」


「おいガキども!早く立て!!」


男は今度は子供たちにつかみかかろうとする。


「や・・・やめてください・・!!」


しかしムジカが割って入り
子供たちを庇うように立ちはだかった。


体の痛みをこらえながら
必死に男たちを睨みつける。


「この子たちに・・・何をするんですか・・!?」


「ぁあ!?何するって決まってんだろ!?」


「悪魔狩りに育ててやるんだよ!!!」


「!?」


ムジカは驚きで目を丸くした。


「で・・・でも・・・まだ子供ですよ・・!?」


ムジカはふるえる手で精一杯子供を後ろにやる。


痛みはすでに限界に達しているのに。


「あのなぁ、悪魔狩りにも限りがあんだよ。お前ら悪魔にやられて減ってきてんの!」


「だからこーいった若いガキンチョたちを将来の悪魔狩りに育ててやるわけさ。」


男たちはにやっと笑うと
ムジカを思いっきり蹴り飛ばす。


「・・・ぁあああぁぁ!!!!!!!」


骨が全部折れたような痛みが走った。


痛すぎて痛すぎてムジカは呼吸が乱れていく。


「苦しいか?そうだろうなぁ。その薬は拷問用だからよぉ。死ねないようになってんだよ!」


「・・・・ぅ・・あぁぁあ・・・・・」


男たちはムジカの横を通り過ぎ
子供たちに近づく。


そして一人一本ずつナイフを持たせた。


「いいか?これでアイツの体を切り刻め。殺さない程度にだ。」


「・・・・・・・」


意識がもうろうとする中
ムジカは思わず息をのむ。


『・・!?い・・・イヤだよ!!お姉さんがかわいそうだよ・・・!!』


「なにホザいてやがる!!さっさとしねぇとテメェラを殺すぞ!!」


『ひっ・・・・・!!!』


子供たちは目に涙をためながら
今にも意識をとばしそうなムジカを見つめる。


「弱点は翼だって聞いてるぜ?ほらさくっとやっちまえよ!」


男たちは子供たちを前に押し出した。


子供たちはカタカタ震えながら
首を横に降り続ける。


『や・・・・やっぱりできな・・・』
「早く・・・・・・」
『!?』


ムジカは痛む腕を必死にのばし
子供の手を掴む。


『お・・・・姉さん・・・!?』


「私は・・・・大丈夫だから・・・」


ムジカはニコッと無理やり笑うと
子供のナイフを持った手を
自分の背中に持って行く。


「怖がらないで・・・・大丈夫だよ・・・」







・・・まさか・・・・・自分がこんなことになるなんて・・・・・・・








私・・・・まだやらなきゃいけないこと・・・・いっぱいあるのに・・・・









・・・・リオナ・・・・・・









・・・どうせ今日が最期なら・・・









・・・一度くらい甘えておけばよかったな・・・・

















「・・・・・・ムジカ!!!!」
「なんだ!?暴れるな!」


リオナは突然目を覚まし
ジークの背中で飛び起きた。


しかし先ほどやられた傷が痛み
顔を歪ませる。


「リオナ起きたか!ああよかった!あんまり動くな。傷ふさがってねぇから。」


リオナはマーシャを見て少しだけ安心した。


・・・生きてたんだ・・・


「って、こいつ誰・・・」


今更ながらリオナは自分を背負う男について聞く。


「簡単に言うとお前を殺そうとした奴。」


「・・・・なんで一緒にいるんだよ。」


「ムジカのいる場所につれてってくれるらしいぜ?罠じゃなけりゃな。」


するとジークはしかめっ面をしながら振り返った。


「昨日の敵は今日の友だろう?」


・・・・お前が言うな。


「・・それに私は今ではただの追放者だ。今更お前らを罠にかける気はない。」


「・・・なんで追放者?」


「悪魔狩りは一度の失敗も許さない。なのに私は再び本部に戻ってもう一度チャンスをもらった。けれど、もう私は二度も失敗してしまった。後も先もないんだよ。」


ジークの真剣な表情に
リオナは思わず理解を示してしまう。


「・・・まぁマーシャがいいって言うな俺はそれでいいよ。」


「さすが俺のリオナ」


「・・・・マーシャのじゃない。」


するとリオナは何かを思い出したかのように
突然暗い表情になった。


「・・・・・少年大丈夫か?」


「・・・・あ・・・いやちょっと嫌な夢見てさ。」


「ムジカか?」


「・・・ああ」


・・・さっき・・・ムジカが泣いてた・・・・



暗い部屋で・・・・ひとりで俺の名前呼んでた・・・



「・・・・なぁ、ムジカは無事なんだろうな。」


「私はただ人質にとっておけと言っただけだ。」


「・・・・とにかく急ごう。」


・・・胸騒ぎがする・・・


・・・早く・・・助けないと・・・



「ところで悪魔狩りの連中はみんな悪魔に恨みがあんのか?」


「私のように悪魔を恨む奴もいればただ単に神を信仰している奴もいる。まぁ悪魔を恨むのは私みたいに勘違いからって事もありえるがな。」


「・・・神か悪魔か」


実際どっちが悪いかなんて・・・決められない。


くぐもった表情を見せるリオナに
ジークは思ったことを口にする。


「少年はなぜ悪魔に?」


リオナは少し考える。


「・・・なんでかな。なんでだろう。」


「まさかノリだなんて言わないだろう?」


「まさか。」


・・・確実にいえることは・・


「・・マーシャに憧れて・・・かな」
「リオナらぶ!」


マーシャに抱きつかれ
リオナは慣れた手つきで剥がしていく。


「てかよぉ、悪魔狩りのトップってやっぱり強いのか?」


「いや・・・彼女は創設者だから強くはない。ただ悪魔への恨みは人一倍強い。」


その言葉にリオナとマーシャは思わず目を丸くする。


「・・・かっ彼女って・・・・ヘッドって女?」


「俺ごっつい爺かと思ってた。」


「そうなのか・・?ふつうに23の若い女だ。」


「23!?」
「23!?」


二人は唖然としてしまう。


その二人の表情に逆にジークが驚く。


「・・貴様等の考え方がわからんな。


「だって俺たちの元ボスはいじきたねぇじじいだぜ!?」


「・・・貴様等知らないのか?」


「・・?」


すると突然
ジークは真剣な顔つきで二人を見つめる。


「・・ついこの間だが、ダークホームのボスが死んで新たなボスが選ばれたらしい。しかも年齢は20代の青年だと聞いている。」


「・・・!?」


「まさかシキ!?」


「・・・・それはない。」


「だよな。」


・・・でも20代の青年って・・・いったい誰だ?


「・・・ビットウィックスだったりして。」


「ああ!!確かそのような名だった!!」


「ムジカの兄ちゃんかよ!」


「何!?少女の兄だと!?」


「・・本気か。」


・・・・・有り得ない。


「今、ダークホームは大分荒れているようだな。」


「お前等悪魔狩りのせいでな。」


「・・・だからさっき謝っただろうが。」


「知ってる。あはは。」


「・・・・。」


ジークはマーシャのわざとらしいにやつきにイラッとしながらも
"これぞ私が求めた男だ"と小さくつぶやいた。


「・・・あれ?そういえばB.B.は?」


「アイツならお前の中にいるよ。」


「ぇえ!?」


リオナは焦って頭を触る。


すると両手にフワフワした耳が当たる。


「マジだ・・・・てかなんで!?」


・・・今俺の中に入ったら・・・!!


「お・・・おいB.B.!はやく出ろ!!聞いてるか!?」


リオナはB.B.の耳を引っ張るが
反応がない。


「リオナやめとけ。」


「でもB.B.が・・!」


「アイツは自分からお前の傷を半分背負ったんだ。早く治るようにな。まぁ痛すぎて気ぃ失ったらしいがな。」


「・・・B.B.・・」


リオナは傷口に手を当て
中にいるB.B.を感じるように撫でた。


・・・ありがとな・・・B.B.・・・


「・・・そいつはいい悪魔だな。」


ジークは優しくつぶやく。


「・・・・うん。B.B.だけじゃない。ムジカも、マーシャの中の悪魔も・・・どんな悪魔も人間の事を第一に考えてる。」


そう・・・神だってきっとそう思っていたはずだ・・・


「・・だから俺たち人間はそれに答えなくちゃいけない。代償なんかじゃない。思いやる心からだ。」


「・・・・クハハ・・・ハハハハ!!」


突然笑い出したジークに対し
リオナはすこし訝しげな表情をする。


「・・なにがおかしい。」


「いや・・・ただ少年がそんな考えでは私たちはまだまだだなと思ってだな。まったく・・頼もしいな。」


ジークはリオナの頭を強くなでると
前にでて
すぐに足を止めた。


「さて・・・ようこそというべきか。」


リオナとマーシャもジークに並ぶ。


「うわ・・・」
「すごいな。」


「悪魔狩りの本部へ・・・」












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