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【完結】 Novel〜Lord's Soul〜
story47 二つの暗雲




何でも屋を始めて数日後
吉報は突然やってきた。


「マー兄・・」


少し戸惑い気味に
マーシャの部屋にクロードがやってきた。


「どうした?」


「あのね、電話が鳴ったからでたんだ・・」


そう言ってクロードはマーシャに電話を渡す。


マーシャは苦笑しながら
電話を見つめた。


「はぁ、また苦情だったらイヤだな。はいもしもし。」


すると電話の奥からした声は、
先日の威勢の良いおばさんとは違い
今にも消えそうなくらいか細い声だった。


『あの・・・・・何でも屋と聞いて電話したんですが・・・・』


「そうですそうです。んで、ご依頼は?」


『えっと・・・悪魔を倒してほしいのですが・・』


「!?」


マーシャは思わず息をのむ。


「・・と、言いますと?」


『実は・・・UW西部に小さな森があるのですが・・その森は悲鳴が聞こえることから"叫びの森"と呼ばれてるんです。そこに先日、私の子供が行ってしまって・・帰ってこないんです。住人は皆"森の悪魔に狩られた"って・・・』


「森の悪魔、か。」


マーシャは不謹慎だが少しホットする。


仲間だったら勘弁だからな。


『だからお願いします!!私の子供を助けてください!!お金ならいくらでも払います!!』


まぁ・・・悪い仕事ではないか。


「かしこまりました。それではお名前だけよろしいですか?」


『クリストファーです・・・』


「はいクリストファーさんですね。それでは明日にはお伺いするので。」


そういってマーシャは電話を切る。


するといつの間にいたのか、
リオナがマーシャの後ろで嬉しそうに目を輝かせていた。


「ははっよかったなぁリオナ。」


「・・うん。」


嬉しさを隠すように、
リオナはマーシャの背中をギュッと掴み、
額をグリグリと押し付けてきた。


「あーもー、リオナ可愛すぎる・・・・。キスしていい?」


「・・・・ふざけるな。」


「はいはい。さぁて初任務は悪魔による"悪魔狩り"だ。」


「・・・俺、がんばるね。」


「ああ。じゃあまずは俺の努力を誉めてぇ。」


そう言われてリオナは少し悩みながらも
わざとらしく目を潤ませた。


「マーシャすごいよ・・!」


「・・・。なんか足りない。」


「・・・じゃあどうすればいいんだよ。」


「ギューッと抱きしめて?」
「・・・・。」
「じゃあ俺から。」
「ギャッ・・!!!離せ!!」
「いーやーだ」
「マーシャ・・!!クロードが変な目で見てるから!!」
「クロード君は目ぇつむろうね」
「そういう問題じゃない・・!!!うわぁぁ!」


リオナをベッドに押し倒し、
ますますヒートアップするマーシャ。


なんだかんだじゃれあう二人をじっと見て、
クロードはクスクス笑っていた。


















悪魔狩り本部


ジークは
"head room"とかかれた部屋の扉をドンドンとたたいた。


「はいりなさい。」


許しを得て
ジークは軽く会釈をしながら部屋に入った。


「先日話したマーシャ=ロゼッティの件だが。」


「確かフラットタウンに呼び寄せるという?」


「そうだ。フラットタウンの住人がうまく呼び寄せたようだ。」


「そう。それで彼らはいつフラットタウンに?」


「明日の昼頃だ。」


「では早急に今ここにいるだけの騎士たちに伝えなさい。」


「了解。」


ジークは頭を下げると
部屋を出ようと扉を開く。


「あ・・・ジーク=メイリン・・」


するとヘッドがジークを呼び止めた。


「なんだ?」


「その・・銀髪の少年は・・どんな少年だった?」


「そうだな・・・背は私より低くて・・」
「そうではなくて・・!!」


きゅうに声を張り上げるヘッドにジークは目を丸くする。


「・・失礼しました。なんでもありません・・。」


ヘッドは少し暗い顔をしながら、
いつものように報告書に目を通し始めた。


何をどうすればよいかわからず
ジークは扉を再びあける。


「・・少年は冷めた漆黒の瞳のクール系、私の苦手なタイプだった。」


「・・・・・!」


そう言い残し
ジークは出ていった。


一人部屋にたたずむヘッドは
先ほどの表情とは打って変わり
驚きで唇をふるわせる。


・・・もし・・・もしジーク=メイリンが言っていた通りなら・・・・


「・・・リ・・オナ・・・・・・」


・・・・・生きているのなら・・・



早く私の元へ・・・・・・・




















月が昇り始め
リオナ達が住むこの丘にも、夜の冷たい風が吹き始めた。


「・・ほらクロード、目つむって」


「うん」


その頃
リオナはクロードとB.B.と風呂に入っていた。


クロードの頭を洗いながら
リオナはボケェと明日のことを考えていた。


・・・森の悪魔・・・


森の悪魔って・・・・なんだ?


「あっ・・イタ・・目痛いよ・・」


「・・・目開けちゃだめだって。ほらこっち向いて。」


シャワーをクロードの顔に当てながら
シャンプーを流していく。


「・・・はい終わり。冷えるから風呂に肩まで入って。」


クロードを持ち上げて浴槽に入れ、
自分の頭を洗う。


《あっ!オイラのスペースに入るなよ!》


B.B.がクロードにお湯をパシャパシャかける。


「うー・・・・」


「おいB.B.・・いじめるな。仲良く入れ。」


《ちぇー》


「・・・。」


最近のB.B.のおもちゃはクロードになってきている。


そんなクロードが哀れすぎて
リオナは思わずクロードばかりの面倒を見てしまう。


「・・・よーし俺もはいる。どけB.B.」
《ギャッ!!》


リオナも浴槽に入り
クロードを膝の上に載せた。


「・・なんか懐かしいなぁ。」


「・・・・?」


「・・・俺もね、マーシャと一緒にこうやって風呂に入ってた。」


「・・・・僕とお兄ちゃんみたいに?」


「・・・・そ。でもマーシャとB.B.が暴れるせいで風呂から出るときにはお湯がなくなってたな。」


《オイラ今でもいけるのだ!!》


「・・・・やらんでいい。」


リオナはB.B.の首をつかみ
落ち着かせる。


「・・ねぇお兄ちゃん」


するとクロードが少し暗い顔をしてリオナを振り返った。


「お兄ちゃんたち・・明日からお仕事に行っちゃうんでしょ?」


「うん・・・・ルナと留守番頼むな。」


「・・ちゃんと・・帰ってくるよね?」


クロードの不安げな顔は
おそらく彼の過去のあの忌々しい事件のせい。


しかし彼の気持ちの一番の理解者であるリオナは
迷わず彼の気持ちに答えた。


「・・・・大丈夫だよ。ちゃちゃっと終わらせてさっさと帰ってくるから。」


「本当?」


「・・・俺は嘘をつかない。マーシャとは違う。」


《あっマーシャに言っちゃお!》


「・・・・その前におまえの口を縫い合わせてやる。」


《ぎゃぁ!!!》


暴れるリオナとB.B.を見て
クロードは思わず笑顔をこぼした。




リオナ達は風呂からあがると
クロードの髪を乾かしながらリビングに入る。


「おーあがったか。」


「次、マーシャ入る?」


「ああ。リオナも一緒に入ろっ。」


「・・・・嫌だ。」


「せめて"もう入った"とか違う理由にしてよ。なんかズキッてくる。」


マーシャがふざけて胸を押さえながらリオナに軽蔑のまなざしを向ける。


「・・・はいはい。」


「あっそうだ。リオナ、明日の仕事の資料置いといたから目ぇ通しとけ。」


「わかった。」


リオナはクロードの頭をふきながら
机の上の資料に目を通す。


「うわっ。資料ってほどの量じゃないし・・・」


・・マーシャの奴だいぶ省いたな・・


「・・・・ムジカは読んだ?」


リオナはソファーに眠そうに寝転がるムジカに話しかける。


「読んだよ。・・でも文字が読めなかった。」


・・・それを読んでないって言うんだよ


「今、リオナ"それを読んでないって言うんだよ"って思ったでしょ。」


「な・・・なんでだよ。」


「顔に書いてある。」


悪魔な彼女は未だに人間界の文字に苦戦中だったが
空気だけは読めていた。


とりあえずせめて自分だけでも理解しておこうとリオナは読み始める。


「・・叫びの森?」


森から悲鳴が聞こえる・・・か。


化神か何かか?


リオナはさらに下を見る。


「森の奥に住人も知らない屋敷・・・なんかまた幽霊ネタだったらやだな。しかも夜にしか動きがないって・・・まさに幽霊じゃん。」


リオナはガクッと肩を落とす。



するとソファーにいたムジカがクッションを抱きしめながらボソッと呟いた。


「でも噂は幽霊じゃなくて悪魔なんだよね。」


「・・・・・確かに。」


一般人の考え方なら必ず幽霊にたどり着くはず。


「・・・・生きた人間だったり?あっ・・・化神の集団だったらやだな・・」


想像しただけでムジカは顔を真っ青にさせた。


《"悪魔狩り"の本拠地だったりしてぇ!!》


「・・!!」


B.B.の珍しく的を射た意見に思わず目を丸くする。


・・・たしかフォルトさんも言ってたよな・・・"悪魔狩り"の本部があるって・・


「ははっ・・まさか。」


できれば関わりたくない連中だ。


なのに初めからよろしくどーぞじゃ身が持たない。


「・・・・絶対あり得ない。」





でも万が一・・・・万が一悪魔狩りの本部なら・・・






俺たちはなんて大変なことに手を出してしまったんだろうって後から後悔するのだろう・・・・・・




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あきゅろす。
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