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【完結】 Novel〜Lord's Soul〜
story44 夜明けと夜更け





光妖大帝国      審判の間




巨大な円卓の周りに
10人のフェイター達がフードをかぶって座っていた。


中はがやがやと騒がしい。



すぐに静けさを取り戻す。


そこに2人の兄弟が姿を現したからだ。



「待たせたね。早速始めようか。」


アシュールと兄のカイも席に着いた。


「あれ?今日も12人?ヒュウは今日も欠席?」


「はっ。ヒュウはダークホームの任務で忙しいようで。」


「ふぅん。あいつ実際はどっちの味方なんだかね。」


アシュールは呆れたようにため息をついた。


「それで、ヒュウの仕事の進み具合とか聞いた?」


「はっ。まずシュナ=ピクシーの始末ですが、どうやら完了したようです。念のため探査機を送り込んだところ、生存情報がありませんでした。」


「へぇ。ヒュウでもできたんだ。」


アシュールは満足げにクスクス笑う。


「・・それで実験の方は進んでいるのか?」


カイが珍しく口を開く。


「時天大帝国出身の男の死体をうまく化神にする事ができたそうです。」


「ははっ。ようやく完成したのか。早く見たいなぁ。それじゃあ早急に例のあの子の死体をヒュウに送っておいて。」


「はっ。」


「じゃあ次。ローズソウル探索隊は?」


「はいはーい。俺らっすよ」


いつもチャラチャラしているランダーが立ち上がり、
報告書を読み始める。


「えー以前森羅大帝国にはローズソウルはないという結果がでてたんスけど、なんか地下に隠してあるくさいんですよ。」


「地下室は前も調べたはずだよ?」


「そうなんだけどよ、なんか一回どっかの国に預けてたとかって聞きましたよ?」


「ふぅん。じゃあ武練大帝国は?」


「そこは完全にローズソウルが見当たらないですねぇ。でもダークホームにも取られてないんだと。だからたぶんこの国も他の国に預けてんじゃねぇかなぁ?」


「だとしたら面倒だね。それじゃあランダー達は引き続きローズソウルの探索を頼むね。それで次は・・」


そしてアシュールは待ちわびたように笑顔になった。


「リオナは見つかった?」


しかしリオナ担当の者が申し訳なさそうに顔を上げた。


「アシュール様・・・実はまだ見つかっていないのです。」


「!?なんで!?あの情報は嘘だったの!?」


「い・・・いえ確かにカントリーカウンティーにはいたようですが・・・実はカウントリーカウンティー自体が無くなっていて・・それでリオナ様も見失ってしまって・・・」


すると突然アシュールは立ち上がり
その者の首を締め上げた。


「ぅ・・・ぁあ・・・・・・・!」
「失敗は許されないんだよ?わかってる?こうでもしないと君たちはわからないみたいだね。」
「ヒグッ・・・!!!」


アシュールは力を込める。





「やめないかアシュール」


カイが冷静にとめにはいった。


「兄さん!?でもこいつ・・!!」
「そう感情的になるな。リオナは絶対に見つかる。だろ?」


カイは締め上げられている男を見上げる。


「は・・・はぃ!!!」


アシュールはカイと男を交互にみた。


そして仕方なさげに手を離した。


「次失敗したら本当に殺すから。それでヒュウに送りつけて化神にしてやる。」


アシュールはニコッと笑いかけ
審判の間を出て行った。







・・リオナ・・・リオナ・・・リオナリオナリオナリオナ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・







アシュールは早足で歩くのを止め
その場にうずくまる。



「俺の・・・・リオナ・・・・・」




会いたいよ・・・はやく・・・・





まずは2人で・・・・・





そのあとは・・・






ウィキと三人で・・・・・



















ダークホーム  北の扉




ノースアイランドからの任務から帰ってきたシキは
扉をでて
上からダークホーム全体を眺めていた。


「・・昔に比べて静かになったものだな・・・」


今は人数も半数減り
昔なじみの仲間達も戦いの中で死んでいった。


ダークホームの人手不足は深刻なもので
第一使用人であるスバルでさえ任務にかり出されている。


マスターはリオナ達の脱走事件以来気性が荒くなり
指示能力がかけ
姿を現さなくなった。



このままダークホームはどうなっていくのか・・・。


シキは先が思いやられると深いため息をついた。


とりあえず任務の報告をしなければと
足早に黒の屋敷に向かう。


すると城下町に繋がる階段からこちらにかけてくる影が見えた。


「シキ・・!!シキ大変よ・・!!」


影の正体はユリスだった。
彼女にしては珍しく息を乱している。


「どうしたんだ・・・?」


「驚かないで・・・・・・・聞いてね!!!」


「・・・・・・・」


シキは唾を飲む。


「シュナが・・・・死んだって・・!!!」


「・・・!?な・・・なんで!?」


「それが・・・シキが任務にでた日にね、シュナも勝手に任務にでてたみたいなのよ!!そしたら途中で行方がわからなくなったらしくて・・・そしたら雪道にシュナの物が落ちてたらしいのよ・・・!!」


ユリスはそのものをシキに渡す。


そう、これはシュナがお守りのように持っていた光妖大帝国王族のペンダントだった。


「なんでだ・・!!シュナは俺の部屋で休んでたはずだ!!!なんで・・・」


シキはペンダントを握りしめる。


「まだ死体は見つかってないけど・・・恐らくあの雪道じゃ生き残れないって・・・・・・」


ユリスは悲しげに俯きながら
シキに背を向け歩き出す。


「・・・・シュナ・・・」


するとシキはユリスがいなくなると
悲痛な表情を無くし、
少し自嘲気味に笑い出した。



寒空の下
どんよりした色の雲を眺めながら
最後に小さく息をもらす。






ごめんな・・・・シュナ・・・・










俺には・・・・・













こうすることしかできないんだ・・・・・・







「・・・・・・・」


シキはペンダントをポケットに入れ
黒の屋敷へと向かった。






屋敷内はシキが予想をしていたよりも
騒がしいことになっていた。


しかしシュナが死んだだけでと言ってはあれだが
どこか様子がおかしい。


「ア゙ッ!シキ!!」


シキは名前を呼ばれ
さっと振り返る。


声の主はラードだった。


「ラードか。一体何が起きてるんだ?」


「大変なんだよ!!シュナが死んだって!!!」


「それは・・聞いたよ。」


「じゃあマスターのことは!?」


シキは顔をゆがませる。


「まさか・・・」


「そのまさかだよ!マスタールームで自殺してたんだ・・!!!」


「・・!!」


最近のマスターの荒れようはひどいものだった。


だからメンバー内では、
辞任するという噂が流れていたが・・・・まさか自殺をするとは・・・


「・・・スバルは何をしてる・・!!」


シキはダークホームの荒れように怒りをこらえるように
拳を握りしめた。


「スバルはあーゆー性格だからよ、落ち込んであれから部屋に引きこもったままだ。」


ラードも呆れてため息をつく。


すると遠くの方から聞き覚えのある怒声が聞こえてきた。


「おいてめぇら!!そんな暗い顔してんじゃねぇぞ!!!ぁあ!?だからフェイターだか悪魔狩りだかにやられちまうんだよ!!」


コールは座り込むメンバー達に怒鳴り散らす。


「あれは止めなくていいのか・・?」


「今ベンが止めに行ったよ。でも今はあーゆーバカガキが必要なのかもな。」


すると突然
黒の屋敷全体に緊急放送が流れ出した。


『ダークホームメンバーに通告いたします。』


「あれ、噂をしてりゃあスバルの声か!?」


「・・・そうみたいだな。」


『これより0036チャンネルで緊急放送をします。5分後に始めるので必ず全員ご覧ください。』


「緊急放送?スバルのやつ何考えてんだ!?」


「・・・さぁな。」


「ってこんなことしてる場合じゃねぇよ!!行くぞシキ!!」


「あっ・・!!おい引っ張るな!!!」


シキは引きずられるようにラードの部屋に連れて行かれる。


「えーと0063・・・0063・・」
「違う0036だ・・!!」


ラードは慌ててテレビのチャンネルを合わせる。


すると画面にスバルが映し出された。


そしてその後ろにはスペシャルマスターのキャロル3兄弟。


『皆さんお忙しい中お手間をとらせてしまい申し訳ありません。今日は先日亡くなった前マスターのバンドン=アイラークの後任が決まりましたのでご報告いたします。』


その言葉に誰もが目を丸くした。


「まじかよ!!決まるのはやくねぇか!?」


「・・でも誰が後任を・・・」


すると画面の横からひとりの男が姿を現した。


男は薄い黄色の髪を後ろで束ね
赤い瞳をぎらつかせている。


『こんにちは皆さん。初めまして・・・と言うべきでしょうか。』


シキは驚きで体をふるわせる。


「だれだよコイツ!?てか誰かに似てねぇか!?」


「彼は・・・」


『新たにマスターとなったビットウィックスです。』


「ビットウィックス・・・」


「おい誰なんだよシキ!!」


「彼は・・・サタンの息子だ・・。」


「サッ・・・・サタン!?てことはムジカのにーちゃん!?」


「そうだ・・・・彼は・・・」


『私はこれまで地下の科学研究所の所長をやらせていただいていました。皆さんにとってはこんなに若くしてしかもこんなに早く就任したことに対して不安や不満もあるでしょう。しかし今はそんなことを言っている場合ではありません。フェイターの動きはここ十年見られなかったものの、つい先日、某国家でフェイターらしき人物が確認されました。フェイターは我々の予想を遙かに越えた動きをしているのかもしれません。もちろん悪魔狩りとやらも・・・・・。だから我々は今すぐに戦力向上を目指し、いち早くローズソウルを回収し、世界の平和を目指すのです。』


壁越しにエージェントたちの歓声が聞こえてきた。


「あ・・・案外言うなこいつ・・・」


「彼はダークホームのブレーンだからな・・・」


「なんか・・・悔しいけど期待しちまうぜ・・・!!!」


当分の間
ダークホームにビットウィックスコールが鳴り止むことはなかった。









「ありがとうございますビットウィックス様・・。」


スバルは放送を終えたビットウィックスに深く頭を下げる。


「気に病むなスバル。お前は色々と抱えすぎだ。」


「そんなことはございません・・!!!」


するとビットウィックスは少し苦笑しながら
スバルとキャロル3兄弟に向き合った。


「君たちに早速こんなことを言うのもあれなんだが・・・」


[いえよ何でも。俺たちはあんたについて行くって約束だ。]
[おいナツ・・!!]
[わーってるって。]


「・・今君たちも任務にでたりしているだろう?でもこれからは以前のようになるべくダークホーム内にいてもらいたいんだ。フェイターの襲撃に備えたい。」


すると珍しくアキが口を開いた。


[・・・でもダークホームには悪魔以外は侵入不可能では?]


「そうだね。でも万が一ダークホーム内にフェイターのスパイがいたら?」


その言葉にスバル達は固まった。


「はははっ。万が一だよ。いないことを祈るけどね。あともう一つお願いがある。」


「何でももうしけください。」


「それじゃあ・・・僕の妹のムジカと誘拐犯のリオナ=ヴァンズマンとマーシャ=ロゼッティーを捕まえてほしいんだ。」


ビットウィックスは困ったように笑う。


[まぁあんたのお願いなら仕方ねーよなぁ。]


「もちろんお受けいたします。」


スバルとキャロル3兄弟は頭を深く下げる。


「頼もしいな。よろしく頼むよ。」


そう告げてビットウィックスはマスタールームをあとにする。


そしてそのまま黒の屋敷の屋上へでた。


そこから眺める景色は
世界を一望できる気さえ起こす。


「変わらないな・・・私も・・・この世界も・・・」




時だけが無情にすぎていく。









それでも私は・・・やらなければならない。






世界を変えなければならない・・・







たとえ悪役に回ってでも・・・・




















ウェストアイランド




メカニックカウンティー





すべてが機械で作られている国


だいたいの機械製品はこの国で作られ
技量は世界No.1


が、今は国全体が炎の渦に包まれている。





人々は逃げ惑い



子供達は泣き叫ぶ





「・・・ここも内乱か。」



すると
燃えさかる家々を平然と歩く男が一人。


背中には布にくるまれた長い棒を背負っている。


彼のこげ茶の瞳はただただ悲痛な光景を目に映し出していた。



「もったいないな。この国なら指折りの先進国になると思ってたのに。」


男は近くのがれきの山に腰をかける。



・・目の前を逃げまどう人々は
逃げるのに夢中で他人なんかに目をやらない。


自分が生き残れれば
すべてがいいと思ってる。


「まったく。人間は無情な生き物だね。」


・・いざとなったときだけ許しをこう。


それで救ってやるとすぐにまた調子に乗る。


「これは天罰だよ。謹んで罪を受け入れなさい。」


男は笑いもせず
ただじっと過ぎゆく時の流れを見つめる。


すると
突然男の前に一人の少女がやってきた。


少女は頭から血を流しながら
涙目で男をじっと見つめている。


「どうしたんだいお嬢ちゃん。」

すると少女の腕の中から
小さな子犬が出てきた。


「あのね・・・・ちーちゃんがね、ママを捜してたらね、ワンワンが出てきてね、ひとりぼっちでさみしそうだったの。」


男は犬の頭をなでてやる。
すると嬉しそうにほえだした。


「それより君の頭の傷は大丈夫?相当血が出てるけど」


「ちーちゃんはね、大丈夫なの。きっとママが迎えに来てくれるから。でも、その間お兄ちゃんと一緒にいてもいい?」


その言葉に男は初めてにっこり笑った。


「もちろんだよ。こっちへおいで。」


「うん!」


少女は嬉しそうに男の体に抱きつく。


「お兄ちゃん・・・暖かいね。」


少女は目をそっと閉じる。



・・・迎えになんか来ないのに。


何を根拠に言ってるんだろうねこの娘は。


それでも・・


「僕は君みたいな人間、嫌いじゃないよ?」


男はギュッと少女を抱きしめる。


もう・・・冷たくなってきてる。


すると少女は再び小さく瞼を押し上げた。


「お兄ちゃん・・・の・・・・名前は・・・?」


「僕の名前?」


少女はこくっと頷く。


「更夜」


「こう・・・や・・・・・・イイ名前・・・」


少女はそのまま目をつむり
それから何も話さなくなった。


すると少女の安否を気にしてか
子犬が静かに泣き始める。


「大丈夫だよわんこ。この娘は素敵な世界へ旅立ったんだよ。この歪んだ世界を脱出したんだ。」


そう言うと嬉しそうに子犬は走り去っていった。


「さて。」


更夜は少女を物陰におくと、
近くに咲いていた花を抜き
少女に持たせてやる。


そして両手を合わせて目をつむった。


「本当は助ける気はないんだけど・・君のその暖かさにめんじて今日は"救い"をあげるよ。・・・・安らかに眠れ。」


更夜は立ち上がると
背負っていた布にくるまれた長い棒を包みからをとりだす。


包みをはがしていくと
中から銀色の長い棒の先端に
黒い石がはめ込まれた杖が出てきた。


そしてその杖を地面にさし
更夜は何かを口ずさんでいく。


「・・・・・вёλπζιτσθΦΣψφЁЫЩабюьърсомгжууя・・・・・・」



更夜の周りには風が起こり
辺りに広がる炎が
物凄い勢いで黒い玉に吸収されていく。


そしてしばらくし
風がやんだ頃には
燃えさかる炎はすっかりなくなっていた。


しかし更夜は珍しく顔を歪ませた。


「玉が・・・変色してる?」


更夜は先端についた玉をさわる。


玉の黒色が薄くなってきていた。


・・確か先日・・・森羅大帝国にローズソウルを戻したときも赤がオレンジになっていたな。


更夜は深くため息をつく。


「神が暴走をはじめたか。まったく・・・神は封印されてからも無茶をなさる。」


更夜は杖をしまうと
それを背負い、
焼け野原と化したメカニックカウンティーを抜けてでていく。


「そういえばルナは元気かな。変な男がついてなければいいけど。久々に会いに行ってみようかな」


更夜は少し微笑みながら
暗闇に姿を消した。














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