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【完結】 Novel〜Lord's Soul〜
Prologue fifth



大魔帝国 中央都市



街は二週間後に控えたクリスマスに向けてレンガ造りの建物達は派手に飾りつけられている。

巨大ツリーの周りにはカップルから家族連れまでたくさんの人であふれかえっていてた。



そんな中、ツリーよりもこの人だかりに驚きを隠せずにいられないもの達がいた。



そう、ヴァンズマンファミリーだ。


「世の中にはこんなにたくさんの人がいるんだねっ!」

「・・何人いるんだろ?」

「ざっと300ってとこじゃねぇか?」

「ちょっと三人とも人ばっかり見てないでツリー見なさいよ・・・・・それにしてもすごいなぁ!きれいだなぁ!ねぇもっと近くに行こうよ!」


リオナとウィキとダンはあからさまにイヤそうな顔をする。

確かにこの人混みだと出入りだけで体力を消耗してしまいそうだ。

しかしそんないいわけがモナに通用するはずもなく、三人はモナに手を引かれて人混みに突入する。

「リオナ、ウィキ。女ってのは面倒くさい事が大好きだ。だがそれに付き合ってやるのが紳士ってもんだぜ?将来のために覚えとけよ。」

「「あーい」」

たった数メートルの距離なのに、何分かかっただろうか。

四人は下から上を見上げる。
するとそこには葉でつくられた緑色の空が広がっていて、木々の間からは飾り付けられたライトの光が漏れている。

「スゴォイ!!ツリーがキラキラしてるー!」

ウィキは目を輝かせながらキラキラと光るツリーを見つめる。

「ねっウィキすごいでしょ?ほらリオナもおいで!」

「う・・・うん・・・」

しかしリオナは少し離れたところから動こうとしない。

「おいリオナどうした・・・ってお前顔色悪いぞ!?」

心配したダンがリオナの顔を手で覆う。

「・・・・この人混み・・・気持ち悪い・・・・。」

「そりゃ大変だ!とりあえずでよう!」

そういってダンはリオナを背負って人混みから離れた。


「リオナァ・・・」

後ろからはウィキが心配そうにリオナの名前を呼ぶ。

「大丈夫だウィキ。ただの貧血だよ。それにしてもリオナは俺にそっくりだなぁ〜!俺も初めてきたときは人混みに酔ってぶっ倒れたもんだ!ガハハハ!」

「・・・最悪。」

「だろっ!?あれから俺も人混みが嫌いでよぉ〜」

もちろんリオナの言った最悪とは、ダンの不幸な体験談のことではなく、リオナとダンがそっくりだということ。







リオナの体調が回復したところで四人は再び街を見て回る。

大通りにはたくさんの店が建ち並んでいた。

「あっ見ろよあれ!魔法雑貨屋だ!懐かしいなぁ!」

そう言ってダンが店に入っていくのに三人も続く。

店内は今にも消えそうな明かりが天井からぶら下がっていて、店内を薄暗く照らしている。

あたりは本当に売り物かと思うくらい物であふれかえっていた。

するとウィキが一本の羽ペンを手にする。

「これただのペン?」

「まさか!ここは魔法雑貨屋だぞ!?ちょっと貸してみ」

そう言ってダンは羽ペンを手に持つと、すぐにまた手を離す。

しかし羽ペンは宙に浮いたまま。

「すごっ!」

「だろ?でもまだまだこれからだぜ?」

すると羽ペンは急に動き出して、紙も何もないのに空中で文字を描き出す。

空中に浮かぶ感じに書き出された文字には"ダン・ヴァンズマン"とかかれていた。

「これは心で念じた文字を空中に書き出してくれるスーパーな羽ペンだっ!」

「へぇ〜ダンすごーい!」

すると再びペンが動き出した。

"惚れ直した?笑"

「・・・・・・・。」
「・・・・・・・。」
「・・・・・・・。」

三人は何事もなかったかのように店内を散策し始める。

"・・・・ねぇなんか最近みんな冷たくない?"

ダンは言葉にならない心の叫びをいつまでも空中に描き出していた。








魔法雑貨屋をあとにし、
再び大通りを歩き出す。

「なんか箒屋が多いな」

確かにここらへんは箒屋が何件も連なり、互いに火花を散らしあっている。

「僕箒はキライ・・・」

ウィキがほっぺたを膨らませる。

もちろん原因は先日の隣街での少年達とのケンカ。

それに感づいたリオナはすぐに話を違う方向にそらす。

「な・・・なぁウィキアレ見ろよ!ぬいぐるみが動いてるぞ!」

やっと箒屋通りがおわって、見えてきたのはぬいぐるみ屋。

クリスマス前のため、店の前でも商品を展開していた。

真っ白な台の上では、まるで生きているかのようにぬいぐるみ達が楽しそうにダンスをしている。

「かわいいなぁ〜なっ!ウィキ!」

普段はぬいぐるみには興味のないリオナだが、ウィキのためなら人格変換もおしまない。

だがリオナの努力も虚しく、
ウィキは未だに頬を膨らませたままだ。

―おかしいなぁ・・・ぬいぐるみなら笑うと思ったのに・・・

心の中でボヤきながら、目の前で踊るぬいぐるみ達に目を移す。

するとリオナの目にあるものがうつり、思わず顔をひきつらせる。

「・・・ぞ・・・ぞう・・・」

先日の隣街で見たサーカス以来のご無沙汰。
しかし罵倒されながら追い出されたというイタい思い出つきだが。

どうりでウィキの機嫌が戻らないはずである。

リオナはため息をつきながらも、とりあえず少し先で子供達が群がっているところにウィキを連れて行く。

子供達は何をしているのだろうかと後ろからのぞいてみる。
その先にはカラフルなキャンディーがワゴンを埋め尽くすキャンディー屋があった。

「ほらウィキ!キャンディーだよ?おいしそぉ〜!」

するとウィキも列の先を見る。

「・・・すごい!おいしそぉ!」

一気にウィキの顔に笑顔が戻った。

リオナもウィキの様子にホッとして、笑みをこぼす。


リオナとウィキの食べたそうな様子に、
ダンとモナは顔を見合わせてくすくすと笑った。

「こいつ等にも可愛らしいとこあるもんだなぁ〜!」
「そりゃあ私たちの息子だもの♪」


そう言ってモナはかがんで二人の頭を軽くなで、二人の手にお金を渡した。

「ほら、これで好きなの買っておいで♪」

二人は顔を見合わせて満面の笑みでワゴンに向かっていった。


ダンとモナはワゴンにかけてく小さな二つの背中をじっと見つめる。

「ねぇダン、今の二人の顔見た??すっごい笑顔だったよ?」
「そうだなぁ。これであいつらもやっと子供らしくなってきたんじゃねぇか?」
「そうだね。連れてきてホントに良かったよ。"二人をもっと子供らしくさせよう大作戦"大成功だねっ♪」
「だなっ!」


"日頃の感謝のプレゼント"が実は"二人をもっと子供らしくさせよう大作戦"であったなんてつゆ知らず、二人はキャンディーワゴンの前でキャンディーを選んでいた。

「うーん・・・迷う」
「僕決めたよ!」
「早くない?」
「そう?目ぇつむって右から三番めっ!ってやった」
「こういうところはアッサリしてんだよなぁウィキって」
「リオナほどじゃないよ」

嫌みか?とふと思ってしまうリオナ。

「・・・・まぁいいや。俺ソーダで」
「僕リンゴ!」

「はいよ!まいどありー!!」


二人は飴をなめながら子供達の群から抜けようとする。

すると子供達は一斉に空を見始めた。

『あっ!サンタさんだぁ!』
『ほんとだ!』
『サンタさん!私いい子にしてるよ〜!』

子供達からの歓声が響き渡る。

思わず二人も空を見上げる。


「あ・・・・」
「あれ・・・・・」

二人はボケェとサンタを見つめ、あの日の記憶を呼び起こす。

そう、あれは数週間前。

いつものように暇を持て余して、つい刺激がほしいあまりにサンタを打ち落とそうとしていた。

結局サラのせいで失敗に終わったが。


「ふぅん・・・サンタか。」
「サンタだね。」

サンタはあの日のように颯爽と空を駆け回り、子供たちに手を振っている。

そんなサンタと二人は目が合い、ついつい手を振ってしまう。

「・・・・・・」
「・・・・・・」

二人は何もいわずにダンとモナのいる方へ歩き出す。

しかしもう一度だけ空を見つめてサンタに向かって小さくつぶやく。

「・・・・この前は悪かったよ・・・。」
「これからは少ぉしだけいい子にしてるからさ。」










一日というのはあっと言うまで、空にはすっかり月がでていた。

そして中央都市の街は、眠ることなく、むしろ盛り上がりつつあった。



しかしヴァンズマンファミリーの双子の兄弟は、さすがに疲れてしまい、
名残惜しいが家に帰ることにした。

ヴァンズマン一行は昼間に通った道を戻っていく。

同じ道なのに、夜のせいか全く違う道に感じる。

しかし目の前に見覚えのあるものが見えてきた。

巨大クリスマスツリーだ。

昼間はすごい人だかりだったが、今はカップルがポツポツといるだけ。


けれどツリーの下で、
誰かが何かをやっていテ


「ねぇあれなに?」

「あれはきっとマジシャンよ。シルクハットかぶってるし」

「マジシャン?」

「ちょっと近くで見てみるか」



そう言ってマジシャンらしき男に近づいていく。


男の周りには客が一人もいず、ヴァンズマンファミリーの貸し切りとなった。


「ようこそいらっしゃいました!今宵はトランプマジックをお贈りいたします!」


マジシャンはものすごいスピードでカードを切り始める。

そして一枚カードを取り出して四人に見せた。

「このカードを覚えておいてくださいね。今から私がこのカードを当てます。」

カードの札はスペードのクイーン。

マジシャンはスペードのクイーンを束に戻し
またものすごいスピードでカードを切り始めた。

すると次の瞬間、マジシャンは空中にトランプをバラまいた。

ヒラヒラと舞い落ちるかと思うと、トランプは空中でピタリと止まっている。

しかし一枚だけはヒラヒラと落ち続け、マジシャンの手の上に乗った。


「あなたがたが見たカードはこちらですか?」

マジシャンの手のひらにはスペードのクイーン


四人は思わず感嘆の声を上げた。

「すごいすごーい!おじちゃんかっこいい!」

「ただのマジシャンかと思ってたわ!」

「すごすぎっ!」

「やべぇなおい!どーゆーことだよぉ!」


宙に舞うトランプがマジシャンの周りを取り巻き、
きれいに手元に戻る。

「いや〜ありがとうございます!こんな新鮮に喜んでくださる方々は久しぶりです!」

そう言って深くお辞儀をする。

「これどーやるの?」

ウィキからの率直な質問に少し戸惑う。

「いやぁ・・・そうですね。実は私は空間系属性の魔法使いでして、トランプとの相性がいいんですよ。ですから今のようにトランプを操ることができるんです。」

「へぇ!すごい!」

「ちょっとやってみますか?」

そういってマジシャンはウィキとリオナに1セットずつトランプをわたした。

「トランプと一体になるつもりでトランプに魔力を流し込んでみてください。」

二人はマジシャンに言われた通りにする。


目をつぶり


トランプの鼓動に合わせ


少しずつ魔力を流し込む


すると突然二人のトランプが輝きだして、二人を取り囲むように回り出した。


「これってもしかして・・・!」

「僕たちの属性!?」


そしてトランプは二人の手元にきれいに戻ってきた。


マジシャンは驚きのあまり、
手をたたいて飛び跳ねる。

「素晴らしいです!まさかこんなところで同じ属性の方、しかも同じ"モノ"を操る方に出会えるなんて!お父様お母様!!とても素晴らしいお子様を授かりましたねっ!!」

「お・・・おぅ・・・ありがとう・・」

突然に話をふられて戸惑うダンとモナ。

「へぇ〜なんかアッサリ見つかったなぁ」
「ねっ!トイレじゃなくてよかった!」
「確かに・・!」


二人はマジシャンに向かってお礼を言う。

「ありがとうおじちゃん!」
「ありがとー!」

そういってトランプを返そうとすると、
マジシャンが勢いよく二人の手を止める。

「まってください!このトランプは受け取って頂けないでしょうか?これは私とあなた達の運命的な出会いの記念です!どうか受け取ってください!」

そういってトランプを持った手を押し戻される。


「いいのおじちゃん!?」
「いいの!?」


二人の問いかけにマジシャンは笑って大きく頷く。


ダンとモナには流がよく掴めないようだが、息子たちが喜んでいるからオッケイということになったようだ。


「それじゃあまたねおじちゃん!」

「はい。またぜひお会いしましょう。」


四人はラグの町に向けて歩き出す。


するとリオナが立ち止まり、クルッとマジシャンの方を見た。

そして大声で呼び掛けた。

「おじちゃーん!俺将来の夢決めたよぉ!」

リオナの声にマジシャンは耳を傾ける。

「俺マジシャンになるから―!!」

その言葉にマジシャンもにっこり笑う。

そしてリオナもいたずらっぽく笑って再びみんなのところにかけていった。

「僕はお菓子屋になりたいな!」

「おうおう!なれるさ!夢はでっかくもて!」

「じゃあ王サマー!」

「ちょっとそれはむりじゃない・・・?」



四人は中央都市をあとにする。

また行こうと心に決めて。

















しかし、運命の歯車はすでに音を立てて回りはじめている。

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