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【完結】 Novel〜Lord's Soul〜
story33 leave a nest



「クソ・・・もうコッチまで回ってるは・・・」


「リオナ!!峰打ち程度だよ!?」


「・・・・わかってる。殺しはしないよ。いくぞB.B.。」


《おうよ!》


リオナとシュナは襲いかかってくるエージェントたちを軽く吹き飛ばしながら一階に向かっていた。


「・・・・ところで地下の研究所にはどうやって?」


「一階の奥にある隠し扉の中だよ!」


「そんなものがあるのか・・・」


十年以上暮らしているが、そんなもの見たことも聞いたこともない。


「ねぇリオナ!」


「何?」


「俺・・・どうしたらいい・・・!?」


「・・・・・どうしたら?」


「・・・・・うん」


一緒に来い・・・・なんて言えない。


実際シュナは光妖大帝国の王族の生き残りとしてフェイター達に命を狙われている。


だから・・・シュナはここに残るのが一番なんだ・・・。


「シュナはここにいろ。」


「・・・・・・・」


「・・・本当は一緒にきて欲しいよ。」


「・・・・・!」


「でもシュナにはここに居てほしい。それに・・・シキを支えてやれるのはお前くらいだ。」


「・・・・・リオナ」


「次はいつ会えるかわかんないけどさ・・・・絶対にまた会えるから。約束する。」


「・・・・・・・わかった!!」


シュナは目に涙をためながらも、
力強くうなづいた。



《リオナ!!後ろから12人のエージェントが来てる!!》


「・・・・急ぐぞ。」


「リオナ一階につくよ!そこを左に曲がって!!」


「わかった」



一階にたどり着くと、
やはりエージェント達が待ちかまえていた。


リオナはトランプを二本の棍棒に変え、
エージェントの山を一気に駆け抜けていった。


「悪いけどどいてくれよっ・・・と!!」


峰打ち程度と言っても
リオナは容赦なく気絶させながら進んでいくため、
シュナは呆れながら倒れていくエージェントに頭を下げていた。



「シュナ!あの扉か?!」


「ああ!でも、普通にあけたらただの物置だ!ドアノブをつかんだら力を流し込んで!!そうすれば地下へつながる階段がある部屋になるから!!」


「わかった!」


リオナは扉の前に立っていた最後のエージェントをなぎ倒し、
ドアノブに手をかけ、
言われたとおりにする。


そして思い切り扉を開くと
中には底が見えない螺旋階段が続いていた。


シュナは勢い良く扉を閉め、鍵をかけると、
そのまま床に座り込んだ。


扉の向こうでは多くのヤジが聞こえてくる。


「・・入ったはいいけどでるときが大変だな。」


生きてでられるかどうか・・・・


リオナはまじめに考えだした。


《うわぁ・・・・怖い》


B.B.はリオナから抜け出て
螺旋階段を見下ろす。


「この研究所は地下20階まで続いているんだ。」


「全部見て回る時間はないな・・・」


「恐らく・・・・地下8階の"実験体保管室"だと思うんだけど・・・・」


「そんな部屋があるのか・・・」


今まで知らなかったダークホームの闇の部分・・・・・


ここで・・・・もしかしたらB.B.も研究されていたのかな・・・・・


「こんな場所・・・さっさとでたいな・・・・。」


「そうだね。早く行こう。」


「B.B.おいで。」


《うん。》


三人は音を立てないよう、
早足で降りていく。


「なぁ、シキはどうしてこんなとこを出入りしてるんだ?」


研究員ではないのに・・・・


「ここの地下20階には、シキさんの研究室があるらしいんだ。俺はここで待たされてたんだけど・・・・」


「・・・・研究室?シキのやつなんの研究してるんだ?」


「さぁ?なんか秘密らしい。てか誰も知らないみたいだよ。でも噂では天パを直す薬を作ってるとか。」


「ははっ!面白い。」


三人はやっとのことで地下8階にたどり着く。


しかし扉には厳重に鍵がかけられていた。


「あっ・・・鍵・・・!!どうしようリオナ・・・・!!!」


「大丈夫。ちょっとどいて。」


リオナは鍵穴にトランプを一枚かざし、
そっと目を閉じる。


「・・リオナ・・・・?」


《大丈夫だって。まぁ見てなよ。》


少したつと、
扉はカチッと音を立て、
ゆっくりと開いていった。


「すご・・・これも魔法!?」


シュナはいつになく目を輝かせた。


「・・・・まぁね。さっ、行こう。」


中をそっと覗いてみると、
中に人が居る様子はない。


しかしこの騒動に一人も見張りがいないのはおかしすぎる。



恐る恐る足を踏み入れると、
そこにはたくさんの巨大なガラス管が並んでいて、
中には人やそれ以外の生物がうごめいていた。



どんな実験が繰り広げられているのか・・・・想像するだけで吐き気がした。



巨大ガラス管の下にはナンバーがかかれており、
どうやら新しいサンプルはもう少し奥のようだ。


「リオナ・・・!!あそこ・・・!!」


「・・・・・・?」


シュナが指さす方を見ると、
そこにも巨大ガラス管があった。


しかしよく見ると中には・・・


「・・・ムジカ!!!!」


リオナは急いで駆け寄り、
ガラス管の中のムジカを見つめる。


ムジカは青白い顔をしているが、
呼吸はしているようだ。


でも・・・どうやって出せば・・・・


「リオナ!離れて!」


シュナに言われてさっと身を離すと、
ガラス管は突然光り始め、
なにやら物凄い音を立て始めた。


シュナに目をやると、
シュナはなにやら近くにあったパソコンをいじっている。


さすが使用人を目指しているだけある。


「シュナ、開きそうか?」


「パスワードとユーザーがわからなくて・・・・」


ユーザー・・・・・・


ムジカの新たな実験管理者


「ビットウィックス・・・・は?」


ムジカの兄・・・・ビットウィックス・・・・彼がもしかしたら・・・・




「君たちは一体なにをしているのかな?」


「・・・・!!」
「・・・・!?」


リオナとシュナが振り返ると、
そこには薄黄色の髪を一本に結い、
黒いコートを着た青年が立っていた。


「ここはエージェントは立ち入り禁止なんだが・・・・もしかしてムジカのお友達かな?」


「あんた誰・・・」


リオナとシュナは構える。


「私かい?私はねぇ・・・」


青年の瞳はみるみる赤くなり、
一瞬にして後ろに回り込んだかと思うと、
ムジカをガラス管から取り出し、
抱き寄せていた。


「ムジカのお兄さん。だよ?」


「ビットウィックス・・・・・」


「へぇ、私の名前を知っているのか。でも私も君のこと知ってるよ。」


「・・・・!?」


「銀髪に漆黒の瞳・・・・最短でスペシャルマスターとなったマーシャ=ロゼッティーの相棒、リオナ=ヴァンズマンだね。」


「・・・・ごたくはいい・・・・ムジカを離せ・・・!!」


「なぜ?僕の愛する妹なのに?」


ビットウィックスはさらにムジカを抱き寄せ、
ムジカの頬をペロッと舐める。


「君には渡さないよ。」


「・・・だったら奪うまでだ・・・!!」


B.B.は素早くリオナの中に入り、
リオナはトランプを長剣に変形させる。


「へぇ、面白いねぇリオナ=ヴァンズマン。君のその力・・・いい研究材料になりそうだ・・・。」


「・・・・うるさいっ!!」


リオナが瞬時に後ろに回り込み、勢いよく切りかかる。


が、
ビットウィックスが片腕を掲げた瞬間、思いっ切りはじかれた。


しかし、リオナの表情は笑顔だった。

「・・・・もう一人・・・忘れてない?」


「・・・・!?」


ビットウィックスは振り返った瞬間、
彼の腹に光の塊がぶつかった。


「"光痕"」


シュナは勢いよくビットウィックスの腹に光が闇と化した玉を打ち込んだのだ。


「・・・・あんまりなめてるとケガするよ、お兄さん」


「・・・この・・・敵の裏切り者が・・・」


するとビットウィックスは手のひらで二丁の銃を作り出し、
リオナとシュナに銃口を向ける。


二人もビットウィックスに武器を向け、
じっと相手の様子を見続けた。


「さて、私も本気を出そうか。愛する妹のためにもね。」


「なにが愛する妹だ・・・!!今まで妹を監禁してきたクセに・・・・!」


「ははは!監禁だなんて!嫌な言い方。それはムジカが言ったのかい?」


「少なくとも・・・ムジカはあんたを好んではいないよ。」


「・・・はぁ。おかしいな。教育が足りなかったかな?あとでお仕置きしないと。」


「・・・・残念だけどムジカは俺がもらう。」


「まぁ・・・僕から奪えたらの話だけど。」


そういうとビットウィックスは構えていた銃を乱射し始めた。


リオナは素早くトランプの防壁を作ると、
その間にシュナが左手に光を、右手に闇をためていく。


「リオナ!目つむって!!」


「・・・・ああ!」


その瞬間、
辺り一帯が闇に包まれ、
目の前が見えなくなる。


「ふっ・・!こんなもの!」


するとビットウィックスも手に闇をため始め、
だんだんと巨大化させ、
シュナの作った闇の光をあっという間に包み込んでしまった。


「ゆっくりお休み。」


「・・・!!!う゛・・・・・・・・あぁああぁぁぁぁぁ・・・・!!!!」


「シュナ・・!!」


シュナは黒い煙を上げながら
その場に倒れ込んでしまった。


「・・・シュナ!!!シュナ!!!」


クソ・・・・!!!なんて強さだ・・・・!!!


「B.B.!!」


《!!いくぜ!!》


リオナは今度は二本の長剣に変え、
静かに構える。


「"落葉裂"」


リオナが片方のの長剣を振りかざすと、
その長剣は粉々の紙となり、
ビットウィックスの周りに降り注ぎ始める。


「・・・・・?」


その瞬間、
粉々になった紙は一気にビットウィックスを引き裂き始めた。


「く・・・!!!あぁ・・・!!!」


「後ろがガラ空きだ!」


「!!!」


リオナはそのままもう片方の長剣で、
後ろから心臓を貫く。


「・・ぐ・・・・はぁ!!!」


ビットウィックスは床に倒れ、
声を抑えながら痛みに耐える。


これで・・・終わりか・・・・?


いや・・・コイツはもっと強いはず・・・・・


でも・・・相手もかかってこないし



ここは身を引くのが一番か・・・


「悪いけど・・・ムジカはもらってく・・・・」


リオナはビットウィックスが立ち上がらないことを確認すると、
肩にシュナをかつぎ、
ムジカを抱き抱えて、
急いでその場をあとにした。










「はは。ちょっと手加減しすぎたかなぁ。」


しばらくすると
床に倒れ込んだビットウィックスの横に、
もう一人・・・ビットウィックスが現れた。


体には傷はなく、
はじめと変わりがない。



横に立つビットウィックスは、床に寝そべるもう一人の自分を蹴り上げると、砂と化した。


「くはは・・・リオナ=ヴァンズマン・・・か。面白いな。次は"私自身"で戦ってみたいな。まぁ次は、必ずムジカを手に入れるけどね・・・・」


そしてビットウィックスはそのまま闇に姿を消した。

















「金と・・・あとローズ・ソウルだな。」


その頃
マーシャは部屋に戻り、
必要なものを鞄に詰めていた。


リオナの部屋に行くと、
ローズ・ソウルを手に取り、
鞄にしまおうとする。


するとそれと一緒に
何かの鍵がくっついてきた。


見覚えはない。


「・・・・?何の鍵だ?」


まぁ・・・一応もってくか。


とりあえず色々詰め終わると、
カバンを抱えて部屋を出る。



しかしマーシャは一階には降りずに、
エレベーターに乗り込んだ。



向かう場所は100階のルナの部屋。



別に意味はない・・・ただなんとなく・・・だ。



バンッ・・・・



勢いよく扉を開くと、
ルナだけがいつものようにマーシャを迎え入れる。


「・・・マーシャ・・・・?あなたまだこんな所に・・・・」
「俺と来ないか?」
「・・・え・・・?」


マーシャはルナにさっと近寄り、
手を握る。


「・・・勘違いするな。お前は俺の獲物だ。それをダークホームに捕られるのが気にくわないだけだ。」


「でもマーシャ・・・・私・・・・足手まといになるわ・・・」


ルナはマーシャの手を払うが、
すぐにまたマーシャに捕まれる。


「俺が抱えて走ってやるよ。忘れたか?お前は俺が殺すってこと。お前もそれを望んでるだろ?」


そう・・・・私は彼に殺されたいの・・・・
殺されなきゃいけないの・・・


「もちろん・・・・忘れてないわ・・・・・」


「じゃあ・・・黙って俺に着いてくるか?」


マーシャはじっとルナの瞳を見つめる。


「・・・あなたの・・・・言うとおりに・・・」


そんなルナをみて、マーシャは嬉しそうにルナを抱き寄せた。


「・・・いい子だ。」


マーシャはそっとルナを抱えると、
猛スピードで部屋をあとにした。




・・・・なんでかな・・・・


別に殺す目的でルナを連れて行く訳じゃない・・・・


たぶん、知りたいんだ。


彼女の"本性"を。


俺はきっと、
心のどこかで、
ルナを逃がそうとしている。


俺の恨みから。


本当に・・・・どうかしちまったようだな・・・・


変な俺・・・・・


















さて・・・・どうするかな・・・・



リオナはシュナとムジカを抱えて一階まで戻ってきたはいいが、
未だに扉からでられないでいた。


絶対に扉の向こうには待ち伏せているエージェントであふれているはずだ。


・・・・まいった・・・・


「・・・・ん・・・・・・・ゃ・・・・・」


「・・・・・!ムジカ・・!!」


するとムジカが体を動かし、
そっと目を開け始めた。


「・・・ムジカ!!」


「・・・・リ・・・・オナ・・・・・」


「・・ああ・・・・よかった!!・・・ムジカ・・・・・・ムジカ!!」


リオナは思いっきりムジカを抱きしめる。


このまま死んでしまっていたらと・・・何度不安でいっぱいになったことか・・・・


ようやく状況把握ができたのか、
ムジカもリオナに抱きつき、
涙をこぼした。


「リオナ・・・・・!!リオナぁ・・・・!!怖がった・・・・よぉ・・・・」


「・・・・遅くなった・・・ごめん・・・・」


「あ・・・ごめ・・!!遅くなか・・・・った・・・!!早かったよ・・・!」


こんな時にまで・・・気を遣われるなんて・・・・


「ははっ・・・・ありがとう・・・・」


するとムジカは体を離し、
いつものように申し訳なさげにリオナを見つめる。


「あの・・・・・・・・・お兄様に・・・・」
「会ったよ」
「・・・!!」


ムジカははっとシュナを見る。


「も・・・・もしかしてシュナは・・・」


「大丈夫。ちゃんと生きてるから。なんかお兄さんには見逃された感じかな・・・・」


恐らくあれはダミーだったけど。


「ほんと・・・・・・・ゴメン」


ムジカは今にも泣き出しそうな顔をして、
シュナの顔をなでる。


「・・・・それでね、今日でダークホームを出ることにしたから。もちろんマーシャとムジカも一緒だ。」


突然の発言にムジカは唖然とする。


「・・・!?な・・・・もしかして私のせい・・・・」
「それは違う。」
「・・・・・・」


リオナはそっとムジカの手を握りしめる。


「俺とマーシャには、マスターの考え方があわなかったんだ。だからここを抜けるだけの話だ。」


リオナは普段見せない優しい笑みを見せる。


「・・・・本当に・・・・・?」


「本当だよ。」


「・・・・リオナ・・・・・・」


するとムジカは申し訳なさげに、それでも嬉しそうに頭を下げた。


「あ・・・・ありがとう・・・・」


「気にしないでよ。」



とりあえずここを出なきゃ。


「ムジカ、この扉を開いたら・・・恐らく敵だらけだ。戦えるか・・・?」


「もちろん・・・・!!」


「B.B.は?」


《あたぼーよ!》


「よし。じゃあ行くぞ!!」


リオナはシュナを抱えて、
扉を思いっきり開いた。



力強く一歩を踏み出そうとした瞬間。


「あ・・・れ・・・・?」


目の前には・・・確かにエージェント達の山・・・・


しかしすでに倒れている・・・



「ったく・・・・遅いっての。バカヴァンズマン!!」


「・・・・コール・・・・?」


積み上げられたエージェントの山の上には、
なぜかコールが堂々と座っていた。


「な・・・・なんで!?」


「言っとくがお前の為じゃない!!ムジカのためだ!!!」


そういうとさっとリオナたちの前に降り立ち、
ムジカの手を取る。


そして発した言葉は・・・


「好きだ。」


「・・へ・・・!?」


な・・・・なんだと?


突然の告白に誰もが唖然とする。


まさか・・・コールに先を越されるなんて・・・・


リオナはがくっと肩を落とす。


「俺、ムジカのこと好きだから。もちろん愛の方だ。」


「・・あ・・うん」


「だから絶対生きてろ!俺が会いに行くから!!絶対にな!!」


ムジカが顔を真っ赤にさせるのを見て、
コールは勝ち誇った顔をした。


『あっ!!!いたぞあそこだ!!!!』


すると向こうから再びエージェント達がやってくる。


「マズい・・・・ムジカ、B.B.行けるか・・・?」
「ここは俺に任せろ。」
「・・・?!でも」
「いいからいけ!」


いつになく迫力のあるコールに言われるが、
少々いただけない。


「は・・・カッコつけようとして。今更遅いよ。」
「はぁ!?てめぇ人の親切を仇でかえそうってか!?」
「別に頼んでないし。」
「!?!?てめぇこっちが下手にでりゃあなめやがって!!!」
「・・・・はぁ?やるの?」
「いいぜ粉々にしてやるよ!!」


リオナとコールは激しい火花を散らす。


そんな二人の気も知らないで、
ムジカは勢いよく間に入った。


「喧嘩はだめだよ・・・・」


迫力のない言葉だが、
ムジカに言われたらやめるほかない。


リオナは仕方なくコールから離れ、
やっと今の状況を思い出す。


そしてリオナ的には従いたくはなかったが、
仕方なくコールに頼る形を取った。


「わるかったよ・・・・後は頼む。」


そんなリオナをみて、
コールも少し反省したのか、
珍しくリオナに親指を立てる。


「まかせろ。ムジカを頼んだぞ」


「・・・お前のものじゃない」


「・・・。」

最後の最後まで火花を散らしながらも、
コールを残して
リオナはシュナを抱えて玄関に向かった。







「リオナ!」


突然名前を呼ばれ、
横を向くと、
エージェントをハデになぎ倒しながらマーシャがやってきた。


彼には罪悪感という感情はないのだろうか・・・。


「・・・マーシャ!あれ、ルナも一緒?」


マーシャの右肩にはルナが担がれているが、
マーシャの荒い扱いに少し気分が悪そうだ。


「まぁな。誘拐しちまった。」


「・・・・へぇ、マーシャもやるね。」


「そんなんじゃねぇよ・・・!ほら行くぞ!!」


少し顔を赤らめるマーシャを面白がりながら、
リオナ達は一直線に玄関に向かった。



後ろからはたくさんの足音が聞こえてくる。


恐らくかなりの数の追っ手がいるのだろう。


最近はエージェントの数も激減したと聞いていたが、
よく見ると別に少なくはないと思った。


まぁ確実に言えるのは・・・


「敵に回すと怖いってな。」


「マーシャも敵に回すと怖いけど・・・」


「そう?俺は優しいぞ?」


「・・・・どこが。」


あれだけ元・仲間を容赦なく吹き飛ばしてきたくせに。



「・・・ちょ・・・マーシャ・・・」


「あっわりぃ痛かったか?」


「・・違くて・・・・前・・・・」


「へ?」


マーシャはルナに言われて前を見る。


するとすぐ目の前には外へつながる扉があった。


しかしさらに手前には、
見覚えのある顔が・・・・



リオナ達は足を止め、
目の前に並ぶ四人の顔を見つめた。


「よぉマーシャ達!!」

「派手にかましてるみたいね♪」
「・・・マーシャらしいな・・・・」



「ラード・・・ユリス・・・・ベン・・・・」


そしてもう一人・・・


「・・シキ・・・」


四人はすでに戦闘態勢。
いつでも攻撃可能と言うことのようだ。


でも・・・・あの四人とは・・・戦いたくない・・・


「なぁマーシャ・・・」


「・・・・?」


するとシキは少し前にでて、
先ほどまで引き出していた悪魔を引き戻し、
赤い瞳をブルーに戻す。


「さっきな・・・・俺・・・・お前と出会った頃のこと・・・思い出してた・・・・」


「・・・・・・・」


「お前は昔から自由奔放で・・・・面倒くさがり屋で・・・・・なに考えてるかわからなかった・・・」


・・・・こんな時に説教か・・・?


マーシャは少し困ったように頭をかく。


「でもお前は人一倍正義感があってさ・・・・・・実はまっすぐな人間だって俺は知ってる・・・・・・。だから俺はマーシャ自身が好きだった・・・・」


「・・・・」


「ただ・・・・最近になって・・・・俺・・・なんだかマーシャと距離感じて・・・・もしかしたらマーシャは変わったのかもしれないって思った。」


「・・・・シキ・・・・・・・」


「でも今日気がついた・・・・・・マーシャは変わってなんかいない。マーシャは俺が好きな昔のマーシャのままだ・・・・。変わったのは・・・俺自身だった・・・・。」


するとシキは、
ポケットからあるものを取り出し、マーシャに手渡す。


「これ、覚えてるか?」


「・・・当たり前だろ。」


手渡されたのは赤と黒のリング。


「俺が初めて長期任務に行くって時に御守りだってマーシャがくれたやつ。一応・・・大切にしてたんだぞ?」


「ありがとな。でもこれはお前にやったやつだ。シキが持ってろよ・・。」


そう言ってマーシャはシキにリングを返す。


が、
すぐにまたシキに押し渡された。


「今度はお前が持って行く番だ。・・・・・・長旅なんだろうから・・。」


「・・シキ・・・・」


「で・・・でもやるとは言ってないからな!?あとで返してもらう!!!だから・・・・」


だから・・・・・・


「絶対に死ぬなよ・・・!」


シキは珍しく素直になるのをみて、
マーシャは思わず吹き出してしまう。


「はははは!」


「な・・・なんで笑うんだ・・!!!」


「だってよぉ」


だって・・・・シキは昔と変わりないからさ・・・・・


「シキ」


「な・・・・なんだよ・・・・」


マーシャはシキに手招きをし、
シキを目の前に呼び寄せ、
そっと両肩をつかむ。


そして口元を耳に近づけ、
そっと呟く。


「大好き」
「!!!!!な!!!!!」


シキは両手で耳を押さえながら一気にマーシャから離れ、
言葉にならない叫びをあげた。


「お・・・お前というやつはぁ!!!!!なんて事を言うんだバカやろう!!!!」


「えー、だって寂しくなるだろ?」


「寂しくなんかない!!ええい!!さっさと行っちまえ!!!」


「言われなくても行きますよ。」


そう言ってマーシャはシキの横を通り過ぎ、
スペシャルマスターたちの前にたつ。


そして思いっきり頭を下げた。


「世話になった。」



そんなマーシャを見て、
リオナとムジカも横に並び、
頭をさげる。


「ばぁはっはっは!!!マーシャのそのバカさが好きだぜ!!!」


「お前ほどじゃねぇよ。」


「ムジカ!元気でやるのよ?」


「うん・・・!!」


「・・・リオナ・・・マーシャには気をつけろよ。・・・・・」


「・・・・うん。」


「ってちょっと待て!!!!」


シキの突然の大声に一斉に静まる。


「まさか・・・ルナも連れてく気か!?」


シキは目を丸くしながらマーシャに近づいていく。


「あ、ダメ?」


「ダメもクソもない!!本当ならお前等もダメなんだからな!?」


ルナだけは置いてけと
マーシャからルナを奪おうとする。


が、
マーシャの前に、
スペシャルマスターの三人が立ちはだかる。


「マーシャ!今のウチに行っちまいな!!」
「ここは私たちに任せなさい!」
「・・・元気でな・・・」


三人はシキを押さえながら、
向こうからやってくるエージェント達を片づけていく。


「助かる。じゃあお前ら行くぞ。」


「あっ・・・ちょっとまって。」


リオナは肩に担いでいたシュナを思い出し、
シュナを端に座らせる。


「・・・元気でな・・シュナ・・・」


次会うときも・・・笑ってな・・・


そしてリオナはシュナに背中を向け、
マーシャたちと共に黒の屋敷を出た。














ダークホームを取り囲む城壁に登り、
リオナ達はそれぞれ色々な事を思いながら島全体を見下ろす。


・・・長かったような・・・短かったような・・・・


それでも大切なもの達と過ごした時間は・・・とても・・・とても楽しかった・・・


もう二度と・・・ここには戻ることはないかもしれないけど・・・・


すべてを終わりにした時に・・・・もう一度来たいな・・・・


だってここが・・・俺のもう一つの故郷だから・・・




「リオナ・・・いいか?」


「ああ。いこう。」


リオナ達はダークホームの外へ繋がる扉をくぐる。







これから待ち受ける運命は



こんなものじゃないかもしれない




それでも俺たちは




このゆがんだ世界を変えるために




精一杯生きていかなきゃならないんだ





そして世界が変わったその時が






俺たちの生きた証になるから・・・・


















第四章 暗躍の螺旋

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