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【完結】 Novel〜Lord's Soul〜
story30 それぞれの思い




ウソだろ・・・・・・まさか・・・・・リオナが重傷だなんて・・・・・!!!




いや・・・リオナなら無理しかねない・・・・!!きっとマーシャさんになにかやらされて・・・・ああどうしよう・・・!!!




数日前からダーク・ホームのメイド達の間で流れていた"リオナ重傷事故"の噂を聞きつけ、
スペシャルマスターの部屋が並ぶホールに、
一人の少年がうろついていた。



彼の名はシュナ。



マーシャ達の部屋の扉をノックしようとし、
結局できないまま終わること102回目。



なんだかんだ一時間うろついていた。



・・・はぁ・・・でもリオナに会って・・・何を話せば・・・・というか話せる状態なのか!?



そもそもちゃんと生きているのか!?



シュナはその場にひざを突き、
頭を抱えて座り込んだ。



「あれ!?お前シキの手下じゃね!?」


すると後ろから声がし、
シュナは今にも死にそうな顔で後ろを振り返る。


「あ・・・あなたはラードさん・・・」


・・・・ダーク・ホームいちのサボリ魔・・・ラード・・・


シュナは無意識にラードに冷たい視線を向けてしまう。


それもこれもすべてシキの仕込みのおかげ(?)だ。


「な・・・なんだよその目は!!けっ!!気にいらねぇなぁ!!ほら用がないならさっさとでてけ!!」


使用人または使用人見習いにはすごく厳しいラードは、
普通にマーシャたちの部屋に入ろうとした。


「ま・・・・待って!!!」


「ぁあ!?まだいたのかよ!」


「え・・・いやその・・・何しに行くんですか・・・?」


「は!?てめぇには関係ないだろ!?リオナの見舞いだよ!」


言ってんじゃん・・・・・・


「あの・・・リオナは大丈夫なんですか!?」


「はぁ?大丈夫じゃないに決まってんだろ!?」


な・・・・なんだって・・・!?!?


シュナはスタッと立ち上がり、ラードを押しのけて部屋の扉を連続ノックし始める。




「・・・・たく誰だようるせーなぁ・・・。」


扉から顔を出したのはマーシャだった。


「マーシャさん!!失礼します!!」


「!?シュナ!?どうしてお前が・・・」


喧嘩中じゃなかったか・・?


マーシャは唖然とシュナが歩いていくのをみていると、
足下に何かが倒れているのが見えた。


「あれ?ラードか?まぁいっか。」
「お・・・おいちょっ・・・まっ・・・」

パタン・・・・・・・・



「・・・・て・・・・・」


どうして俺が・・・?

そんなことを思いながらラードは力尽きた。










シュナはリオナの部屋の前までくると、
扉に手をかけ
そぉっと覗いた。


するとそこにはベッドから体を半分起こしたリオナがいた。


こちらにはまだ気づいていないようだ。


リオナの頭の上にはもちろんB.B.。
そしてベッド脇には床に座って嬉しそうにリオナをみているムジカの姿があった。


その三人の会話が耳に入ってくる。




「リオナおいしい?」


リオナは手に持ったお粥を口にそおっとはこんでいく。


「うーん・・・・85点。」


「厳しいね。」


《オイラも食べるー!!》


リオナは頭にスプーンを持って行き、B.B.に食べさせる。


《うーん・・・87点。》


「えー・・・何が足りない!?」


「なんだろ・・・愛情?」


リオナはわざとムジカをじらす。
しかし通用するはずもなく・・・


「愛情!?そうか愛情!」
「・・・・いや嘘だから。」


《コクがない!》


「・・・・そうそれ。コクだよ。」


「おかしいなぁ、マーシャと一緒に頑張って作ったのに・・・」


「でもおいしいよ?うん全然いける。」


「本当に・・?」


「・・・・ああ。んっおかわり。」


「うん!!」


ムジカは満面の笑みでリオナから器を受け取る。


リオナもすごく嬉しそうにムジカを見つめていた。







・・・ってヤバいムジカがくる!!!


シュナは慌てて思考がめぐらず、
扉の前で一人であわてていた。


「あれ・・・?シュナ・・・?」


結局見つかってしまい、
満面の笑みをムジカに向けた。


「・・・・!!や・・・やぁムジカ!!元気!?」


「うん。元気だよ。」


「な・・・ならいいんだ!!じゃあ俺はこれで・・!!」
「あっ・・・待って!!!!!」


帰ろうとするシュナの腕をムジカがつかみとめる。


「待って。」


「・・・・?」


「リオナに・・・会って?」


「で・・・でも」
「お願い・・!リオナはね、シュナと本当はすごく話したいと思ってるの・・・!!いつもシュナが遠くにいるとね、ずーっとシュナのことみてるんだ・・・」


「・・・・・・・・・」


俺も・・・・みてたよ・・・リオナは知らないだろうけど・・・


「リオナは照れ屋なの・・。マーシャいわく・・・・。だから会ってあげて・・・?」


「・・え・・・あ・・」


ムジカにされるがままに
シュナは部屋に入れられる。



するとリオナは目を丸くして
まるで幽霊でも見たかのように口を開けていた。


「や・・・・やぁリオナ・・・・」


「あ・・・うん・・・・どうしたの?」


「いや・・・・ただ・・・よ・・・様子を見に来ただけなんだ・・!!!・・・リオナが重体だって聞いたから・・!!!」


シュナは目を少し潤ませながらドアノブに手をかける。


「な・・・なんか元気そうだから俺帰るね!!ごめんじゃあ・・」
「・・・・待ってよ!」


「・・・・・え・・・」


「B.B.椅子とって。」
《ほーい》


「ここ・・・座って?」


リオナがベッドの隣に置かれた椅子を指さすと、
シュナは少し気まずそうに椅子に腰をかけた。


「・・・・・・・・。」


「・・・・・・・・。」


二人は何を話せばいいかわからず、ただ必死に頭で考えていた。


するとB.B.がこの状況をみるに見かねて、
リオナの頭で少しバシバシ暴れた。


それで勢いづいたのか、
やっとのことで口を開く。


「・・あっ・・!あのさ・・!・・・・重体って誰から聞いたんだ・・・・?」


「えっ・・・・と・・・・メイドの人たちの噂だよ・・。」


「・・・・ああ。アイツらはいつも大袈裟だからな・・・。」



するとシュナは突然立ち上がったかと思うと、
リオナのベッドに手をついた。


「で・・・でも体調は大丈夫なの!?またマーシャさんに大変なことやらされたんじゃない!?」


溜まっていた不安を一気に吐き出してしまった。


「・・・・・・・ははっ!ははははっ!!」


「・・・!?!?」


突然笑い出したリオナに、
シュナは呆気にとられたような表情をした。


「・・・・だってさ、なんか親みたいに心配しすぎなんだもん。はははっ」


「そ・・・そりゃ心配するさ!!!!!」


シュナの目はいつになく本気で、
瞳を涙で潤ませている。


「だって・・・だって・・・!!少なくとも俺は・・・・・・・リオナのことを大切な親友だと思ってるから・・!!も・・・・もしリオナがもっと大変なことになったらって思ったら・・・・すご・・・・・・・すごく心配するさ!!!!!!当たり前だろ!?!?」


涙が溢れ出ないように、
言葉を詰まらせながら話す。


「・・・・ごめん。心配かけて・・・・。」


リオナは眉間にしわを少し寄せながらも、
優しくシュナに笑いかけ、
手元にあったタオルをシュナの目に押し当ててやる。


「・・・うぅ・・・・ッグス・・・・・!!」


シュナはそのままタオルを手に取り、顔に押し当てた。


「シュナ・・・・ごめんね・・・・。」


そっと頭をなでてくるリオナの手が優しくて、
シュナはますます涙を流す。


「っ・・・俺ねっ・・・・・・ずっ・・・と・・・・リオナに謝りたくて・・・・!!」
「謝んなくていい・・・。謝まらないで。」


「・・・え・・・・」


「・・・・謝るのは俺の方。シュナの性格を知ってるのに・・・シュナに無理に色々やらせてた・・・。本当にごめん・・・。」


「い・・・いやだよ・・・!謝んないでよ・・!!リオナは悪くない・・!!俺は・・・・俺は・・・・・リオナの行動は正しかったと思うよ!」


「・・・シュナ・・・・・・・。」


「・・・リオナの考え方は・・・シキさんと正反対で・・・あの時初めて戸惑った・・・。俺は今までシキさんの考え方に従ってきたから・・・・。」


シュナはタオルから顔を離し、
真っ赤に腫らした目でリオナを見つめる。


「・・・・でもね・・・あれからムジカの姿を見てて・・・あの楽しそうな顔を見て・・・シキさんの考え方が間違ってるとは言わないけど・・リオナの考え方もあってもいいんじゃないかって・・・。そう思ったらなんだかどっちつかずな自分が嫌になってきて・・・・」


シュナは再びタオルで顔をおおう。


 「・・・・シュナはそれでいいんだよ・・・・」


「・・・え・・・」


「シュナはシュナの考え方でいいんだよ。」


・・・シュナは・・・誰よりも他人を思いやる人間だってことは、俺が一番わかってる。


「・・・・いいじゃん。考え方の違いなんて。皆一緒だったら気持ち悪い」


「・・・・リオナ・・・・・」


「シュナはシュナ。俺は俺。だから一緒にいて楽しいんだよ。」


シュナ・・・・俺はお前の真っ直ぐな思いが好きだよ。


俺にはないものだから・・・・。


「・・・り・・・りり・・・・・」


「え・・?」


するとシュナはリオナの襟首をつかみ、
ぐいっとひっぱり、抱きついた。


「リオナのばかー!!!!」


「・・・・はぁ、なんで。」


言ってることとやってることが違くないか。


「バカバカバカバカリオナのばか!!」


「あ・・・・・あのなぁ・・」
「俺たち・・・親友だよね!?」


シュナはますます力を込めて、
ギュッと抱きついてくる。


ははっ・・・苦しいって・・・


リオナもなんだかんだでそっとシュナの背中をポンポンと撫でてやる。


「少なくとも恋人ではないな。」


するとシュナは勢いよく体を離し、
顔を赤くしてベッドから離れる。


「あ・・ああああたりまえだ・・!!!なんてこと言うんだばか!!!ホントにマーシャさんの生き写しみたいだ!!!」


「それ禁句・・・・。」


というかシュナなんかシキの生き写しどころかすでにシキだ。


「とにかくちゃんと休んでよ!?絶対寝てなきゃだめ!!わかった!?」


「はいはい。」


「返事は一回!!!」


「・・・・・・はい。」


親か。


シュナはそのまま扉へ向かい、
ドアに手をかける。


しかし、何かを思い出したのか、
暗い顔をして振り返ってきた。


「マスターが・・・・今日帰ってきたよ。」


・・・・ああ、ついにか・・・・・


「・・・・処分が決まるってわけか。」


別に覚悟ができてないわけじゃない。


ただ・・・少しドキドキするだけだ。


「なんか・・・シキさんとマスターが話してたのは知ってるんだけど、あんまり聞こえなかったんだ・・・・。」


「・・・・いいよシュナ。なせばなるってね。」


リオナがにこっと笑うと、
シュナはあきれたようにため息をつきながらも、
少し安心したのか、口元がゆるんだ。


「・・・だよね!じゃあまたくる!」


「うん。また来て。」


シュナが部屋を出たのを確認すると、
リオナはバタンと布団に横になる。


「ははっ・・・ははははっ!!」


《!?!?大丈夫かよ!ラリったか!?》


気を使って今まで静かに部屋の隅に行っていたB.B.が、
急に笑い出したリオナの頭に戻ってきた。


「いや。ただ笑いたくなった。」


《薬飲む!?》


「大丈夫。そーゆー訳じゃないから。」


そう・・・可笑しかった。


なんで気づかなかったんだろう。


お互いを分かり合うことがこんなに簡単なことだってこと・・・。


なぁシュナ。


俺たちって変だな。



「はははっ!あーおかしかった!」


《リオナの頭がね。》


「うるさい。俺ちょっと疲れたがら寝るよ。」


リオナはそっと目を閉じた。


これから言われるであろう運命の宣告を聞いて倒れないためにも。


















「へぇ。じゃあシュナとリオナは仲直りしたのか。」


マーシャは自室の机で本を読みながら、ベッドでゴロゴロしているムジカに尋ねる。


「たぶん。私が部屋に入れてあげたの!」


「おっ偉いじゃん。じゃあムジカのおかげが。」


「だったらうれしいなぁー・・・・」


するとムジカはベッドから起き上がり、
さりげなくマーシャの読んでいる本をのぞいてみる。


「ん?なんだ気になるのか?」


「うん・・・字は読めないんだけどね。」


少し自嘲気味に笑うムジカに、
マーシャはそっと本を向けた。


「あのな、ここ見ろ。」


「うん・・?」


マーシャの指差す文章を必死に見るが、
わからないものはわからない。


「ここにはな、大魔帝国壊滅の謎が書いてあるんだ。」


「リオナとマーシャの国だった?」


「ああ。大魔帝国を壊滅させたのは光妖大帝国のフェイターだってことは知ってるよな?」


「うん。」


「光妖大帝国に住む人種はな、光の力を持つんだ。悪魔が闇の力を持つようにな。その光の力はすべてのものを燃やしたり飲み込んだりするらしい。けどとにかく謎が多い力なんだ。でも一つだけ分かってることがある。なんだと思う?」


「ヒント。」


「早いな・・・・例えばムジカが悪魔の力で家を燃やしたら最後はどうなる?」


「・・・・丸焦げ?」


「ピンポーン。黒い跡が残るだろ?それとは逆に光妖大帝国の光の力は白い跡が残るんだ。一切黒はないはずなんだ。」


するとマーシャは机の引き出しから、
ある黒く焼け焦げた一枚の紙を取り出した。


「これ・・・なに?」


「写真だ。もう何も見えないけど。しかもリオナのね。リオナには捨てたって言ってあるから秘密な。」


「うん・・・・」


「この写真はおそらく光妖大帝国から襲撃された日・・・つまり壊滅時に燃えたんだ。」


「でも黒い・・・」


「そう。光妖大帝国が攻撃して民家を次々に燃やして国中を火の海にしたはずなのに、残ったのは白い燃え跡だけじゃなく黒い燃え跡だった。」


「ってことは・・・・・」


「考えたくはないが・・・光妖大帝国に悪魔と契約した誰かが力を貸したってことだ。」


「じゃあ・・・ダーク・ホームの誰かが裏切ってるってこと?」


「そーゆーことになるな。」


何とも言えない状況に、
ムジカは眉間にしわを寄せる。


「このこと・・・リオナは?」


「・・・リオナには言ってない。」


「なんで・・・・?」


「リオナには・・・辛すぎるだろ・・・。仲間の中に家族を殺したやつがいるなんてな。」


「そうだよね・・・」


「ただでさえ記憶に翻弄されて苦しんでるのにこの事言ったら・・・・もっと狂っちまうぜ。」


ムジカは先日の発作を起こしたリオナを思い出した。


まるで何かにとりつかれたかのように叫び、
たまに何かをつぶやく。


「ねぇマーシャ・・・リオナがこの前言ってた・・・命よりも大切っていうのは・・・・」


「きっと・・・アイツの双子の兄弟のことだ。」


「・・・・!!」


「きっとだんだんと思い出してはきてるんだ。でもどうしても体が拒否しちまうんだろうな。」


「・・リオナは思い出したくないのかな・・・」


「・・・・・ああ。怖いんだろきっと。」


マーシャは何も写らない丸焦げの写真を手にとり、
じっと見つめる。


「自分が大切にしていたものを思い出しても、もう目の前には何も残ってないんだ。そしてその現実を受け入れたとき・・・自分が正気でいられるかが怖いんだろう。」


「なんか・・・・すごく悲しい・・・悲しいよ・・・」


ムジカはマーシャのベッドに腰をかけ、
枕をとって顔を埋める。


「悪かったなこんな話して・・・・。」


そう言ってムジカの頭を優しくなでると、
ムジカは小さく首を横に振る。


「ただムジカには本当の事を知っといてもらって色々調べるのに手伝ってもらおうかなぁって思ってだな・・・・・まぁ・・・強制はしないが・・・」
「手伝う!!!手伝うよ!!」


ムジカはばっと顔を上げて赤くなった目でマーシャを見つめる。


「・・・なら助かるわ。」


マーシャはニコッと笑って再び頭をなでてやる。


「とりあえずはリオナの記憶を優先して調べていこう。一応あっちの件はヘタに深く調べられないからな。」


「ねぇマーシャ・・・」


「んあ?」


「なんでマーシャはリオナのためにそこまでするの・・・?」


リオナは本当は記憶を知りたがっていないのを知っているのに・・・?



「そんなの簡単さ。」


マーシャはくるりと背を向けて、
再び机に座る。


そしていつものように自信に満ちた笑顔を見せる。


「リオナが大切だからさ。」


大切で、愛おしくて。


絶対に、守ってやりたい。


こんな俺の本当の思いなんて、ムジカには言えないけど。


「・・・・・」


「それにもしリオナが記憶を・・・本当のことを知りたいってなったときに、俺はちゃんとしたことを教えてやりたいんだ。」


「だからずっと一人で調べてたの?」


「まぁな。でも今は助手が一人増えた。だろ?」


ムジカは小さく頷く。
役に立つかはわからないが。


「マーシャは優しいね。」


「俺?リオナほどじゃない。」


「そうかな。二人とも優しいよ。」


私も・・・・二人に近づきたいよ・・・・


「さて、もうそろそろシュナも帰っただろ。ムジカ様子見に行くか?」


「うん!」


「よし。とことんいじってやろうぜ?無理しない程度に。」


そう言って2人は部屋を出た。





なぁリオナ・・・・



・・・・お前が記憶のことで苦しむくらいなら・・・・


別に無理に知る必要はない・・・。


俺はそう思う・・・。


そのまま何も知らずに暮らしていくのも悪くないと思う。


でも・・・・・もしそれでも苦しいなら・・・・・



その時は・・・

どんな手を使ってでも、
俺が忘れさせてやる。

君の幸せが一番だから。

だから、よくわからないこの"想い"は隠していく。

歪んでいるかもしれないから。


ああ、
それでも、
それでもね、俺はお前を・・・・




--してるんだ、リオナ。

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