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【完結】 Novel〜Lord's Soul〜
story27 LOVE or FRIENDSHIP



12月23日





クリスマスを目前に控えた今日。





外は雪がさらさらとふり、
気分を上げさせる。





しかしリオナたちは朝早くからトレーニングルームにいる。



ムジカがきてから一ヶ月。


リオナたちはクリスマス気分を忘れさせるほどのトレーニングに励んでいた。


メインはリオナとムジカの戦法。



マーシャにしては珍しく
ベンチに座り、紙とペンを手に持って、
なにやら色々策を練っているようだ。



今のところで分かっていることは、
ムジカはB.B.のようにリオナには入れないということ。


そして悪魔がもつ力はふつう、契約者の力を倍増させるというものなのだが、
ムジカの場合はそうではないようだ。


じゃあ何の力があるのか?


それがわからないのである。




《あー・・・オイラ任務がしたぁい!》


B.B.は床に寝そべるリオナとムジカの周りを飛び回る。


「・・・仕方ないだろ。まだ処分が決まってないんだから。」


《ちぇー》


B.B.は何かないかと今度はマーシャの頭に捕まる。


《マーシャ何かわかった?》


「そうだなぁ、少なくともお前が頭の上にいる限り何の案も出てこない。」


《・・・・・・・。》


「あっ!こら暴れんな!!!」


B.B.が暴れまわるせいで、マーシャの髪がいつも以上にボサボサになっていく。


するとマーシャが書いていた紙がリオナの顔に降ってきた。


「うわっ。」


リオナはビクッと起き上がって紙を手に取る。

目を落とすと
そこには色々書いてはあるが、
いまいちよくわからない。



字が汚いせいか・・・それとも自分の視力のせいか。


つい先日行われた身体検査で、
リオナは視力がC判定だった。


Dr.デヴィスは手術をしたがったが、リオナは全力で拒んだ。



「ねぇリオナ!」


嫌な記憶をたどっていると、
ムジカに呼ばれて、
隣で寝転がるムジカに目を向けた。


「なに?」


ムジカは勢いよく体を起こすと、
嬉しそうにリオナに両手を広げてみせる。


「爪っ!」


「・・・?・・・・・あ・・ああ・・・・・爪だね。」


爪がどうしたのかと思っていると、
ムジカは目をつむってうめき声を上げ始めた。


「ぅぅぅぅぅぅ・・・!!!」


「え・・・ムジカ!?」


ボンッ!!!


その瞬間、
ものすごい音を立てたかとおもうと、
ムジカの黒い爪が鋭く伸びたのだ。


「・・・・すごい!」


そう言うと、ムジカは少し嬉しそうに顔を赤らめた。


それをみたマーシャは急に立ち上がり、


ムジカの腕をつかんで爪をまじまじと見る。


「おいムジカ。これであそこの壁に向かってひっかいてみろ。」


「・・・・・・?うん。」


ムジカはいったん立ち上がる。


そして右手を振り上げ、一気に振り下ろした。


ヒュン!


空を裂く音がした。

が、壁に傷は一つもない。


「うーん・・・・・・・」


マーシャは再び考え込む。


そして今度はリオナを引っ張り、
ムジカの横に立たせた。


「リオナ。ムジカに命令してみ。」


「命令?」


「"壁をひっかけ!!"的な。」


「・・・・・?」


リオナは意味深なマーシャを一瞥したあと、
仕方なくムジカに告げる。


「・・・・あの壁をひっかけ。」


「・・・・!!!」


するとムジカは突然目の色を変え、勢いよく腕を振りかざした。

部屋中に黒風が起こり、
黒風は壁に吸い込まれるように流れていった。


「・・・・・・す・・・すごい。」


壁は見事にぽっかり穴をあけ、
穴からはトレーニングをしていたコールが驚きで目を点にしていた。



ムジカはというと、まるで何かにとりつかれたかのように、
低い声で笑っている。


「・・・・・・・ムジカ!?」


「大丈夫だリオナ。」


「!?どこが!?」


「これが本来の悪魔としてのムジカだ。」


「・・・?」


「ムジカは契約主であるリオナの命令で悪魔としての力を発揮するんだ。だから今は悪魔としての・・・・まぁ本来のムジカが引き出されてる状態だな。」


・・・本来のムジカ



確かにいつもの不安げな眼差しであどけない笑顔のムジカとは一変して、
今のムジカは表情が冷たい。


まるで感情を持たないかのようだ。


「・・・・じゃあいつものムジカに戻すには?」


「しらね。」


なんと無責任な・・・・・


「話しかけてりゃもどんじゃないの?」


すでに目的を達したマーシャはあとのことには一切無関心。


こーゆーところをどうにかしてほしいものだとリオナはため息をつく。



仕方なく話しかけてみようと
ムジカに目をやると、
ムジカは自分の爪をペロペロと舐めていた。


・・・・・・怖い。


リオナはなぜだか自分もやられるのではという心配が渦巻いていた。


とりあえず爪舐めの邪魔をしないようにムジカの顔を覗き込む。


「あの・・・ムジカ・・。」


するとムジカはピタリと動きを止め、
リオナをじっと見つめる。


「・・・・・・・・・・。」


「あっ・・・・のさ・・・大丈夫・・・・」
「リオナ・・・・・・」


するとムジカはリオナの腕にそっと腕を絡めてきた。


「・・・リオナ・・・・・命令を・・・」


じっと見つめてくるその眼差しは、
一度とらえられるともう二度と離れられないくらい鋭い。


リオナはまるで見入られたように体を硬直させていた。


「・・・リオナ・・・・・?」


「・・・・・・あ・・・ああ。元に戻れ。」


「・・・・・・はい。」


するとムジカの体から
何かが抜けたように、ムジカはその場で座り込んだ。


《ムジカ大丈夫か!?》


「・・・・あ・・・うん。」


「ほら。」


リオナはそっと肩を貸し、
ムジカはやっとのことで起き上がる。


そしてそのままベンチに座らせて、
マーシャが水を与えた。


「気分はどうだ?」


「ありがとう。大丈夫だよ。」


「・・・何か記憶はある?」


「うん・・・。私、壁引っ掻いた。」


「あ・・・・・ああ。」


リオナは安心感してその場に座り込んだ。


「ってことはよぉ。特訓を重ねりゃあムジカはいつものムジカのままで悪魔の力が使えるようになるかもな。」


《先は遠そうだな。》


「はぁ・・・・ごめんね。迷惑かけるかも・・」
「・・・大丈夫。気にしないで。」


「さて。じゃあ今日はここまで。シャワー浴びてこい。」


「はーい。」
「はーい。」


二人はトレーニングルームをでると、
奥のシャワールームに向かおうとした。



「おいちょっと待てよ。」


後ろから呼ばれて、
二人はそっと振り返る。


「・・・コールか。」


さっき壁に穴開けたの・・・怒ってるのかな・・・・


どーしようかなぁ・・・・



「コール・・・さっきのは・・・」
「この女。噂の悪魔か?」


コールは鋭い目でムジカを見てくる。


それが怖かったのか
ムジカはタオルをぎゅっと抱きしめてリオナの後ろに隠れてしまった。


「・・・・ああ。それがなにか?」


「い・・・いや別にただどんなやつだか気になっただけだよ!!」


なぜだかコールは顔を真っ赤にしていた。


「・・・あ・・・あの・・・。」


「・・・・・!?・・・な・・・なんだよ!!」


するとムジカはリオナの後ろから少しだけでて頭を下げる。


「・・・・ムジカといいます。仲良くしてください・・!」


少しぎこちなく告げると、
ムジカは様子を伺うようにコールを見上げる。


「あ・・・・ああ。俺はコールだ!これ以上俺様より目立ったらぶん殴るからな!!」


そう告げてコールはトレーニングルームに戻っていった。


「・・・・?なんだあいつ。変なの。」


「コールっていい人だね。」


「・・・・どこが。」


思わぬ発言にリオナは目を丸くする。


「だって仲良くしてくれるって。」


「・・・・うーん。」


確かにコールにしては珍しく返事をしていた。


普段なら男女かまわず罵声を浴びせるのに。


「いや・・・・まてよ・・・・・。」


もしかしたら・・・・あいつムジカのこと・・・・・・


「どうしたの?」


「いや・・・とにかくアイツには気をつけろ。」


「・・・?うん。」


コールがムジカに一目惚れ・・・か。

いや・・・
考えられないな。

















シャワーを浴びおえて、
リオナはシャワールーム入口の前のいすに座ってムジカを待っていた。


暇を持て余していたリオナは、目の前に山のように置かれている雑誌を手当たり次第に読んでいた。


するとリオナはある雑誌に目がいき、
手にとって中をみる。


"クリスマスプレゼント特集〜女性が喜ぶプレゼント best5〜"


リオナはふとムジカを思い出す。


・・・やっぱり・・・なにかやった方がいいのか・・・・


とりあえず参考までにとリオナはページをめくる。


すると、目の前のシャワールームのドアが開き、
ムジカかと思い、リオナは顔を上げた。


「あ・・・・・・・・・リオナ・・・」


「・・・・・・・・・・・・・シュナ。」


目があったのはシュナだった。


あの事件(?)以来約一ヶ月、しゃべるどころか顔を合わせさえしなかったせいか、
リオナは言葉に困り、
結局何も告げずに雑誌に目を戻してしまった。


「・・・・・・・・・・。」


しかしシュナは少しもぞもぞしながらリオナの前に突っ立っていた。


それをみかねて、
リオナは仕方なく口を開く。


「・・・・・何か用か?」


「いや・・・・・・・・そうじゃないけど・・・・・・・久しぶりに会ったからさ・・・・。」


「そうだね。」


・・・気まずいなぁ・・・・早くムジカこないかなぁ・・・・


「・・・・ムジカは・・・・・どう?」


「・・・・いい子だよ。」


「そう・・・・ならよかった。」


シュナは何を考えてんだろう・・・・。


よめない・・・・。


すると沈黙が二人を襲う中、
タイミングよくムジカが出てきた。


「リオナごめん。待ったよね・・・・・・・あ。」


ムジカはシュナがいることに気がつき、
シュナとバッチリ目があってしまう。


「やぁ・・・・・・ムジカ。」


「こ・・・・こんにちは・・・。ご・・ごめん話し途中だったよね!私先に・・・」
「いいよムジカ。別にはなしてないし。」


ただ本当のことを言っただけだったが・・・
シュナは明らかに悲しそうな顔をしている。


はぁ・・・俺にどうしてほしいの



リオナは少しだけ心で苛立つ。


「・・・・それじゃあ。いくよムジカ。」


「うん・・・。」


ムジカはシュナに軽くお辞儀をすると、
リオナのあとを追って走っていった。







シュナはしばらくその場に立ち尽くしていた。


「・・・・・・・リオナ。」


実際、シュナはあの日の事を後悔していた。


本当は自分もリオナと共にムジカを助けてやりたかった・・・・・・でも・・・・・・・


「シュナ・・・?どうかしたか?」


後ろから現れたシキに、
シュナは体をビクッとさせる。


「い・・・いや何でもないです。」


「ならいいんだが・・・・・これから明後日のクリスマスダンスパーティーの準備があるんだが手伝ってもらえるか?」


「はい!もちろんです!!」


「じゃあ一階のホールで待ってる。」


そう告げるとシキはその場をあとにした。


残されたシュナは、
小さくため息をつきながら、
リオナ達が行った方をじっと見つめていた。



リオナ・・・・・・ごめんね・・・・・


俺も・・・リオナみたいに強かったら・・・・




シュナは再びため息をついて、歩き出した。



















「どうしよう・・・」



リオナはベッドに横たわりながら、
先ほどよんでいた雑誌に再び目を通していた。


一番はやはりアクセサリーと書かれている。


が、明後日なのに買いに行けるはずがない。
ましてや処分を待つ身なのに休みがもらえるはずがない。


《ジングルベールジングルベール鈴がーなるぅ♪今日は楽しいークリスマス♪ヘイ!!》


「・・・・ねぇB.B.」


《歌の邪魔すんなよ!!》


「・・・・ごめん。いいよ続けて。」


《いいよもう。なんだよ。》


「ムジカへのクリスマスプレゼントさぁ、なにかいい案ないかな?」


《別に恋人じゃないんだからあげなくていいんじゃね?》


そう言われたらそうだけど・・・・・・


「・・・・でもきっと初めてのクリスマスだ。喜ばせてあげたい。」


《うーん・・・なら何でもいいと思う。ムジカなら何でも喜ぶよ。》


「そうだよなぁー・・・。」


《じゃあ直接本人に聞いてみりゃあいいじゃん。》


「・・・・そしたらバレない?」

《バレないよ。たぶんムジカはクリスマスって知らないと思う。》


そういわれれば、
ムジカはクリスマスツリーをみて、
¨派手な木だね。初めてみた。¨
とか言ってたな。


「・・・・よし。じゃあ聞いてみるか。」



リオナはベッドから腰を上げ、
ムジカの部屋に向かった。


部屋からは光が漏れていたため、
まだ起きていると少しホッとする。


「ムジカ、入っていいかな?」


「どーぞ。」


リオナは部屋にはいると、
ムジカはベッドに大の字になって寝転がっていた。


しかもパジャマのボタンがちゃんとしまってなく、
お腹が丸見えであった。


「お腹。丸見え。風邪ひくよ?」


リオナはベッドに腰をかけ、
ムジカのパジャマのボタンをしめてやる。


「あっごめんごめん。」


ムジカも起き上がってリオナの隣に座った。


「・・・・他の男の前であんな格好しないでね」


「リオナはいいの?」


・・・・確かに・・・。


「・・・俺はもう慣れた。」


「あははっ!ごくろーさまです。」


「どーも。」


って俺何しにきたんだっけ・・・


「・・・・ああそうだ。ムジカって何が好きなの?」


「好きなもの?」


「そう。例えばアクセサリーとかさ。」


「うーん・・・・・・・リオナ!」


「はい?」


「だから好きなものでしょ?リオナだよ。」


「俺!?」


「うん。」


ニコニコして言うムジカをみて、
思わず顔を赤くする。


「お・・・俺じゃなくてだな・・・モノだよモノ」


「モノ?」


ムジカは少し困ったように考えだす。


「あったかいものなら何でも好きだよ。」


そう言ってムジカはそのままベッドに体を倒す。


「あったかいものねぇ・・・・・。」


その割にはムジカは薄着である。


「ムジカ、寒くないの?そんな格好で。あっほらまた腹でてる・・・。」


「あはは。すぐはずれちゃうんだよね。」


「あははじゃない・・・。全く・・・。」


リオナはベッドから立ち上がり、ムジカに毛布を掛けてやる。


「ありがとっ。」


「はいはい・・・・。風邪ひくなよ」


「うん。」


そう言って部屋を出ようとする。


「リオナ。」


「・・・・?」


「暖かいものよりリオナが大好きだよ。」


「・・・・・・・。」


よくそんな恥ずかしい言葉を・・・


でもムジカの"大好き"は愛の方ではないのは百も承知だ。


「・・・・知ってるよ。おやすみ。」


「おやすみ。」



結局あったかいものだったらいいのか・・・?


聞いた意味ない・・・。


自分のバカ。















12月24日



クリスマス・イブ




その日も朝から雪だった。




庭は一面雪で覆われ、
キラキラとしろくかがやいている。



「うわぁ・・・・白い・・・!!」


ムジカは窓から感嘆の声を漏らしていた。


その後ろからマーシャも覗き込む。


「ああ雪か。ムジカは初めてか?」


「うん。雪ってどんなの?」


「冷たくてふわふわしてるんだ。ムジカのほっぺみたいにな。」


そう言ってムジカの頬を引っ張りだす。


「いいなぁ・・・。」


「外行ってみれば?」


「え?触っていいの?」


「ああ。俺はちょっと用事あるから一緒に行けないけど、リオナに連れてってもらえ。」


「あー・・・・うん。」


でもこれだけのことでリオナを呼ぶのは・・・・迷惑だよね。



結局ムジカは一人で行くことにした。


コートを羽織り、
完全防寒でエレベーターに乗り込む。


そういえば、
自分一人で黒の屋敷を歩き回るのは初めてかも・・・・。


いつもはリオナが一緒だったから・・・。


私って迷惑な女だよね・・・・。


しかもよく考えてみると、
リオナには恋人がいないのだろうか?
たとえいなくてもリオナのことが好きな子は私がいることでリオナに怒っちゃうよね・・・。


もしいたら私って相当迷惑な女かも・・・


これからは考えて行動しなければ・・・・・


そうだ・・・脱・リオナ!!


いつまでも甘えてはいけないぞムジカ!!


私はリオナの幸せを邪魔しちゃいけないんだ!!


ムジカはエレベーターから降りて、
一人で天に向かって拳を突き上げる。






「・・・一人で何やってるの・・・・」


その頃、
リオナはムジカの後ろをつけていた。


マーシャにムジカが一人で出かけたと聞いて、
心配でつけていたのだ。


そのまま物陰に隠れながらムジカのあとを追う。


するとムジカは突然足を止めた。


どうしたのかと思うと、
目の前のクリスマスツリーに見とれていた。


「・・・・・キレー」


そういえばムジカはクリスマスツリーの前を通る度に毎回立ち止まっては目を輝かせていた。


よっぽど気に入ったのだろう。


しばらくムジカはその場で立ち止まっていると、
後ろからメイドの集団がやってきた。


それに気づいたムジカは慌ててその場をあとにした。


・・・・大丈夫かよ・・・・



リオナは不安ばかりがつもっていた。


するとムジカは今度は急にその場に座り込み始めた。


体調でも悪くなったかと思い、
駆け寄ろうとすると、
ムジカはすぐに立ち上がって何やら嬉しそうに手に持ったあるモノを天に掲げ始めた。


・・・・・・虫だ・・・・・・・・。


・・・まさか・・・食わないよな・・・・食うなよ・・・・食うなよ・・・!?・・・・あーあ・・・・・・。


案の定、
ムジカは口に入れてしまった。


・・・あれだけ注意したのに・・・


リオナは嬉しそうにスキップしているムジカを見てガクッと肩を落とす。



やっとのことでムジカは外へと続く扉にたどり着く。


しかしムジカは一向に扉を開けようとしない。


扉の前をふらふらと歩き回り、
開けようとしてはまた歩き回る。


あーもぉ何やってんだよー・・・・


ついにみるに見かねたリオナはムジカに歩み寄った。


「・・・・ムジカ。」


「・・・・!!リオナ!?」


ムジカは目を丸くしてまるで幽霊でも見たかのように顔を青くした。


「なんでココにいるの?!?!」


「・・・・さぁなんででしょーか。」


リオナは怪しく笑ってムジカを壁に追いやる。


「リオナ・・・・怒ってる?」


「ちょっとね。」


「・・・・ごめんなさい」


「何が?」


リオナは笑いながら両腕で壁に手を突き、ムジカを逃げないように閉じ込めた。


「・・・・・・虫・・・」


「・・・・へぇ、わかってるじゃん。食べちゃだめってあれだけ言ったのに・・・・ねぇ。」


「もう食べません・・・・絶対」


「あともう一つ。」


「もう一つ・・・?」


「・・・・そう。なんででしょーか。」


ムジカは本気で悩みながら、
首を横に振る。


「ごめんなさい・・・わからないです・・・・。」


「はぁ・・。」


リオナはわざと大きなため息をつくと、
ムジカの手を引っ張り、扉をひらいて外へでる。


「うわぁ・・・・きれい・・・!!」


一面真っ白な地面にムジカは目を輝かせる。


しかしすぐにリオナに気まずそうに目をやった。


「・・・・・リオナ?」


「・・・・一人じゃ怖いくせに。」


「え・・・・」


「なんで俺呼ばなかったの。」


「だっ・・・だってリオナにばっかり頼ってられないもの・・・・私一人でも大丈夫だもん・・!!」


そう言ってムジカはリオナに背を向けて階段に腰をかけた。


「・・・・ばーか。」


まだ一人は怖いくせにさ・・・


何強がってんだよ。


リオナもムジカの隣に腰をかけ、
ムジカの顔をのぞき込む。


「・・・・変な気使わないでよ。ムジカどうせ俺に迷惑かけてるとか思ってるんだろ。」


「・・・!!」


「ほらね。別に迷惑だなんて思ってないよ。」


「でも・・・・よく考えてみたんだけどね、リオナのこと好きな子はさ・・・私がリオナの近くにいたらやきもち妬いちゃうかもよ?」


「・・・・は?そんなこと気にしてたの?」


「うん・・・。」


ムジカは申し訳なさそうにリオナから目を離す。


ははっ・・・可愛いな。


リオナはムジカの肩に手を回し、
ギュッと引き寄せた。



「・・・妬かせちゃおっか。」


「・・・・・は?」


ムジカは目を丸くしてリオナを見つめる。


「あっ、ほらコロナがこっちのぞいてる。」


そう言ってリオナはさらにムジカを引き寄せる。


「や・・・やだリオナ・・・・・・・。」


「・・・・あれ、俺のこと嫌い?」


「・・・・・・・イジワル。」


「そっか・・・嫌いなのか。」
「大好き・・・」


「聞こえない。」


「大好き!!」


ムキになるムジカはもっとかわいい。


って俺・・・・・・もしかして・・・・ムジカに・・・


「・・・・恋・・・・か?」


「え?」


「いや・・・何でもない。」


まさか。


まさかだよ。


絶対にありえない。


まだ1ヶ月しかたってない。


いや・・・これはきっと妹みたいな感じだな。
うん、そうだ絶対。


「リオナ・・・痛いよ。」


「あ・・・ああごめん・・。」


リオナは未だにムジカを抱き寄せているのに気がつき、
急いで腕をはずす。


「リオナは好きな子とかつきあってる子はいないの?」


突然の問いかけにリオナは少し焦りを見せる。


「・・・・え?俺?いないよ。」


「ふぅん。モテモテなのに。」


「なんか女って面倒くさいっていうかさ・・・あっ・・・ムジカは別ね。そーゆームジカはいないのか?」


「うーん・・・・・・なんて言うかそういう感情がわからない。」


「ははっ、俺もだよ。」


「リオナも?」


「うん。」


「じゃあ仲間だね!」


ムジカは嬉しそうにリオナの手を握る。


・・・ヤバい・・・・なんだこの感じ・・・・・・


「そっ・・・・そろそろ戻ろ!風邪ひく・・・!」


「そーだね。」


リオナはムジカの手を引いて部屋に戻っていく。


・・・なんでこんなにドキドキしてんだよ・・・・


クソッ・・・・・・・






「それは恋だ。」


「ぶっ・・・・!!」


マーシャからの唐突な意見にリオナは思わずお茶を噴き出してしまった。


あの後ムジカと部屋に戻ったが、
どうしても気持ちがおさまらず、
リオナはマーシャの部屋にのりこんで、
自分の今の心境を暴露していた。


「おい汚ねぇよ。」
「・・・・だってマーシャが変なことゆーから!!」


「ホントのこと言っただけだ。ほらタオル。」


「ごめん・・・。てか今の話ムジカに聞こえてないよね・・・。」


リオナは部屋から顔を出し、
廊下に誰もいないことを確認すると再び扉を閉める。


「大丈夫だって。今ムジカとB.B.は風呂入ってるから。」


「それ先に言って・・・。というかB.B.のやつムジカと入ってるのか・・・・。」


マーシャは入れ直したお茶をリオナに手渡す。


「なになに?妬きもち?」


「ばか・・!また噴き出すよ。」


「次噴き出したら追い出すぞ。」


「・・・・・・・。」


「でもさぁ、たかが一ヶ月でもよぉ、こんなに近くにいりゃあ恋してもおかしくねぇよ。」


「・・・・・・・そう思う?」


「ああ。だって俺も、リオナの事好きだもん。」


そう言ってマーシャは顔を近づけてくる。


が、
リオナは相手にすることなくサラリとのけてみせた。


「ちぇっ。リオナ全然相手にしてくれないや。」


「からかうなよ・・・・でもさ、もしかしたら妹みたいな感じがわいてるんじゃないかな?」
「それはない。」
「・・・・・・・。」


やっぱり・・・恋なのかな・・・・


「・・・・じゃあ仮に俺はムジカに恋したとしよう。でもその後はどうすればいい?ムジカにとって俺はいい仲間でしかないんだよ?」


それにムジカにとっての"好き"は愛情じゃなくて"友情"としてだ。


「そうだなぁ・・・"友人以上恋人未満"だな。」


「・・・?どーゆーいみ?」


「友達以上のことをしてやるが恋人以上のことはしてやらないってこと。」


「当たらず障らずってことか。」


「そーゆーこと。」


「・・・・なんかむずかしい・・・。」


リオナはため息をつくと、
マーシャのベッドに寝転がる。


「ところで、クリスマスプレゼントは用意したか?」


「まぁ・・・一応。」


「よし。じゃああとは・・・・」


「・・・・・あとは?」


「Shall we dance?」


「・・・・うそ。明日のクリスマスパーティーのやつ?」


「そうだ。ダンスに誘うんだ。」


「ちょっとレベル高すぎ・・・・」


「なーに言ってんだ。ダンスに誘わないんならいきなり告白だな。どっちがいい?」


マーシャはニヤニヤしながらお茶を飲む。


「わ・・・・わかったよ・・・!!誘う!!」


「それでいい。」


すると突然マーシャの部屋の扉が開き、
ムジカとB.B.が顔をのぞかせた。


「お風呂あがったよー。」


「はいよ。じゃあ次俺行ってくる。おいB.B.。俺の背中流せ。」


《えー!?オイラ今入ってきたばっかー!!!!》
「いいだろ?ほら行くぞ。」


マーシャは立ち上がると、
リオナにクチパクで¨男になれ¨と告げ、B.B.を連れて部屋を出ていった。


部屋にムジカと共に取り残されたリオナは、
緊張で心臓が張り裂けそうなほどバクバクしていた。


「リオナ?大丈夫?なんか顔色悪いよ?」


「い・・・いや。大丈夫・・・」


「・・・そう?ならいいんだけど。じゃあ私自分の部屋にいるね。」


そう告げてムジカはマーシャの部屋を出ていってしまった。


あーもー・・・自分しっかりしろよ


その瞬間、
リオナの頭にある一人の男が浮かぶ。


コールだ。


それから想像が広がっていく。


コールがムジカと楽しそうにダンスを踊っている映像が頭に一気に流れ出した。


・・ダメだ・・・!!


コールにとられてたまるか・・・・


リオナは勝手な妄想で勢いづき、
ムジカの部屋へ向かった。


「・・・・ムジカ!!」


「!?」


勢いよく部屋に入ってきたリオナに
ムジカは驚いたように目を丸くしている。


「どうしたのリオ・・」
「ムジカ!!!」
「は・・・・・はい!」


リオナはムジカの腕をとり、
手をぎゅっと握る。


「あ・・明日・・・・・お・・・お・・・・俺と・・・・・」


「・・う・・・・うん。」


だんだんと顔が熱くなる。


「お・・・俺と・・・・・・・・・ああやっぱ無理・・」


しかしリオナはその場で頭を抱えてしゃがみ込んでしまった。


・・・無理無理・・・
改めてこんなことするの無理


するとしゃがみ込むリオナを心配そうにムジカがのぞき込んできた。


「リオナ大丈夫・・!?やっぱり休んだ方がいいよ・・・!!」


「えっ・・・あ・・ちょ・・ムジカ!?」


ムジカはリオナの腕をつかみ、
部屋を飛び出し、リオナの部屋に連れて行く。


そしてそのままリオナをベッドに寝かせ、
布団を掛けてやった。


「あ・・・あのムジカ・・・」
「しゃべっちゃだめ・・!!体調悪いんだから・・!!今日はもう休んで!!いい!?」
「は・・・はい・・。」


「じゃあ何かあったら呼んでね・・!!」


そう言ってムジカは部屋を出た。


・・・私・・・リオナの役に立てたかもっ!!


「〜♪」


ムジカは鼻歌を歌いながら気分良く部屋に戻っていった。







・・・・・まいったな・・・・・


一方リオナはガッチリ布団に入れられてしまい、
でるにでれない状況にため息をついていた。


しかもムジカを誘うことができず。


はぁ・・・・自分のアホ。


リオナは自分の情けなさを恨んだ。

















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