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【完結】 Novel〜Lord's Soul〜
Prologue fourth




「がはは!!!また派手に殴られたもんだな!!がはは!!」

バルド宅。
豪快に笑うバルドをよそに、
リオナは痛々しく腫れあがった頬を撫でながらため息をつく。

「笑い事じゃないよぉ〜!ねっリオナ?」

「うん」

「3日たってもその腫れ具合ってぇことは、思いっきし魔力込められて殴られたってことだな!なかなかやるじゃねぇか!」

「誉めてどうすんだよ。あいつら縄操ってたんだ!縄が伸びたり尖ったり!」

「そうそう!ビックリしたんだからぁ!」

「そんなんでビックリしてるっつぁ〜まだまだお子ちゃまだな!がはは!」

お子ちゃま達は不機嫌そうに頬を膨らます。

「俺たちもあれぐらい強くなれたらなぁ・・・」

「なれるさ。」

「え?」

「だから縄少年みたいになりたいんだろ?なれるっつぅの!」

そう言うとバルドはなにやら本棚をあさり始めた。

「おーあったあった!これ見てみろ」

2人は本を受け取り、表紙のほこりを払う。

「魔力の属性??」

「そうだ。魔力にはそれぞれ"属性"がある。そこのしおりが挟まってるページを開いて見ろ。」

しおりのページを開くと、
そこには属性とその説明が詳しくかかれていた。


「大ざっぱに説明すっから耳かっぽじってよぉく聞いとけよ!?まず属性には五つの種類がある。物質を溶かす"熱系"、物質を空間で操る"空間系"、物質を自由自在に操る"物質変形系"、動物の性質を得る"動物系"と、火・水・風を操る"自然系"だ。まぁ自然系はなかなかいないがな。」

「じゃああの縄ヤローは物質変化系?」

「たぶんな。でも全員が自分の属性に気づくわけじゃあねぇ。中には一生気づかず終わるやつもいるからな。まぁそういう奴は鈍感ということだな。」

「ねぇどうやって自分の属性を調べるの??」

「属性は基本"モノ"を介して力を発揮するもんだ。だからとにかくいろんな"モノ"を触ってみて魔力を込めてみるんだ。そんで反応した"モノ"が自分の属性そのものだ。例えばあの縄を操る少年はたまたま縄を触って反応したんだろうな。」

「なぁ例えばさっ、一人二つの"モノ"を操ることってあるの??」

「それはないな。1人一つしか操れん。だから見つけるのは大変だぞ!?"モノ"との相性ってのもあるからなぁ。」

「へぇ〜」

するとウィキが目の前にあるマグカップを手にする。

そのまま瞼を閉じ、力を込める。

が、そう簡単に行くわけもなく、マグカップは跡形もなく粉々になった。

それを見て
リオナはニヤつきながらウィキをどつく。

「よかったなぁ失敗して。」

「なんでさぁ〜!」

ちょっとだけムキになるウィキ。

「だってマグカップで戦うのかっこわるくない?」

「・・・確かに」

「おまえ等なぁ、格好悪いとか格好良いとか言ってられるのも今のうちだからなぁ?前にトイレと相性イイヤツがいてなぁ〜そりゃあ惨めで仕方なかったぜ。」

2人は想像を広げてしまい、もし自分だったらと考えたらしく顔がひきつってしまった。

「ところでバルドはどんなの?」

「俺か?俺は動物と能力が合体する"動物系"だ。ほら前に犬飼ってただろ?おれは犬との相性が良くてな。まぁ今は死んでいないがな。」

二人は犬とバルドが合体して戦う様子を思い浮かべる。

「・・・言っておくが見た目は犬にならないからな。合体するのは犬の能力だけだ。」

「なぁんだ。」

リオナは少々がっかりした様子だ。

「ねぇバルドはもう犬飼わないの?」

バルドは口にくわえたタバコに火をつけて、煙を上に吐き出し、天井にたまった白い煙を見つめる。

「そうだな・・・もうかわねぇかな。」

2人はなぜかそれ以上尋ねられなかった。

しかしバルドはそんな2人を見て笑って話し出す。

「"動物系"の属性はなぁ、その属性の対象となる動物の寿命を縮めちまうんだ。それに気づいたときはショックでなぁ。だからあの犬で最後だって決めたんだ。」

「そうなんだ・・・。」
「なんか悲しいな。」

「ほぉ〜リオナにも悲しいっていう感情があったのか!」

「・・・・・。あのさ、俺ってそんなに人間味ない?」

「ウィキほどはないな。」


「ウィキはありすぎなんだよ。」

カランカラン

するとバルドの家のベルが鳴った。

「おいウィキ。おまえ玄関に近いから出てこい。どうせ荷物かなんかだ。」

「え゛〜!」

身勝手な意見を押しつけられて、ウィキはぼやきながらも玄関に向かう。

「はいはーい・・・・ってどなたですか?」

ドアを開けてみると、目の前には全身真っ黒なマントを羽織った男が立っていた。顔はフードで見えない。

その男はウィキをみるなり舌打ちをする。

「・・・・子供がいるなんて聞いてねぇよ。」

「あのぉ」

「ガーディンを呼べ。」

「は?」

「バルド=ガーディンだ。話になんねぇな。あがらせてもらうぞ。」

そう言って黒マントの男は、ドスドスと家に上がり始めた。

ウィキはムッとして相手の後ろから退出呪文をかける。

見事に命中した。

しかし相手は何事もなかったかのように歩き続ける。

―なんで!?確かに命中したはず・・・

そんなことを考えているといつの間にかリビングに到着していた。

男は親しげにバルドに話しかける。

「よう。じーさん。あの話考えてくれた?」

バルドは目を丸くして勢いよく立ち上がる。

「貴様まぁたきたか!しつこいやつめ!」

「おいおい、人が親切に助言してやってんだぜ?ここは素直に従ってもらわにゃ困る。」

リオナとウィキは訳が分からず、ただ黒マントの男を見つめていた。

「もう一度言うが俺はこの国に義理なんてねぇ。だからおまえの言うことが正しくても俺は一切手を貸さん!わかったらとっとと帰れ!」

男はフードの上から頭をかくと、困ったようにため息をついた。

「・・・・あんたしかいないんだけどなぁ。まぁあんたもいずれは分かるはずだ。今この国が必要としているものをな。」

そういって男は玄関に向かい始める。
しかしすぐに振り返って、ウィキを指差した。

口元をにぃっと吊り上げて。

「お前。あんな魔術じゃ世界に通用しないぜ?まぁもっとも今じゃ魔族自体が世界に通用するもんじゃないんだがな。」

そう言うと再び玄関に向かっていった。

「・・なんだあいつ?」

「変な人。」

「まったくだ!」

三人はさっきまで黒マントの男が立っていた場所を見つめながらそれぞれに不満をこぼした。






リオナとウィキは家に帰るとすぐに家中の"モノ"という"モノ"を探し始めた。

2人の目の前に並ぶ"モノ"はオモチャから日用品までざっと50個。

「なぁウィキ」
「ん?」
「俺たちさぁ双子じゃん?ってことは属性も"モノ"との相性も一緒なんじゃん?」
「あっそっか。てことは手分けしてできるね。じゃあ僕こっちの半分やる。」
「俺はこっちね」

2人は黙々と作業に取り組む。

熊の人形は爆破して綿が飛び散り、 ハサミは勢いよく壁に刺さる。
真っ赤なリンゴは跡形もなく消えてしまい、ダン愛用のダンベルは床を突き抜けていってしまった。

先ほどまで目の前に広がっていた"モノ"も、あっと言う間に家中に散らばってしまった。


2人は大きくため息をつく。

「・・・・うまくいかないもんだなぁ。」
「だね。」

しばらくしてのドアが開き、
ダンとモナが帰ってきた。

2人は何やら大きな荷物を抱えている。

「ただいまっ・・・・てなによこの汚い部屋は!2人とも今すぐ片しなさい!」

「「・・・はぁい」」

二人はトボトボ片づけ始める。

「お前ら何やってたんだ?まさかケンカ?」

「まさか」
「ちがうよ。僕たち自分の属性を探してたんだ!」

「属性?なんだそりゃ。あぁアレか!?心理テスト的な?」

2人はふとバルドの話を思い出す。

[中には一生気づかず終わるやつもいるからな。まぁそういう奴は鈍感ということだな。]


「・・・まさかこんな近くに・・・」
「鈍感な奴がいるなんてね・・・。」

2人はダンに冷たく同情のまなざしを向けると、何事もなかったかのように再び散らかしたものを片しだす。

「なっ・・・なんだよ2人とも・・・!もしやこれが世に言う反抗期ってやつかな・・・・。グスッ・・・!リオナ!ウィキ!お父さんは寂しいぞ!・・・てかなんだこの穴・・・・って俺の筋肉の友ダンベルゥゥゥゥゥ!!!」


「あっそうだ2人ともこっちに来なさい。」

「「??」」

2人は床の穴に食い込むダンをおいてモナの元に行く。

「ほらダンもはやくっ!」

「ヴン゛・・・」


ダンとモナに向かい合うように2人が座ると、モナが少し改まって話し出す。

「えーとね。リオナとウィキにはいつも窮屈な生活を送ってもらってると思うの。何にも文句言わないでさ。」

「別に窮屈だなんて思ってないよ。」
「うん!思ってないよ!」

「2人は優しいからね。ありがとう。だからそんな2人に日頃の感謝を込めてプレゼントがありま―す!」
「そうでーす!」

「プレゼント?」
「ナニナニ!?」

プレゼントと聞いて胸が躍る。

そしてダンは勢いよく立ち上がり、大きく腕を広げて声を上げる。

「中央都市日帰りツアーだぁ!」

その言葉を聞いて一瞬止まる。

「・・・まじ!?」
「やった!」

2人は手を取って跳ね回った。


ラグの町の住人にとって、中央都市に行くのは夢のまた夢。
一生に2、3回行ければいい方だ。
なぜなら入り口で徴収される入場料が(ラグの住人にとっては)バカがつくほど高いからである。


「でもそのお金どうしたの?」

「今までコツコツ貯金してたのよ。この時のためにね。」

「ねぇでも洋服は?」

「それは心配いらねぇ!この箱を開けてみ!」

2人はダンから白い箱を受け取り、ふたを開ける。

「おぉ!!すごーい!」
「きれいだっ!」

その中には二着の赤と黄色のチェックのシャツと真っ黒でキレイなズボンが入っていた。


「これね、いつも野菜買ってくれる常連さんがくれたの。その人ね、商売が成功したらしくて今度中央都市に移り住むらしわ。これはお別れの品としてくれたものなのよ。まぁ私が商売上手だったってのもあるけど♪」

2人はいつになく目を輝かせてモナに飛びついた。

「ありがとぉ!!!」
「ありがとぉ!!!」

「ふふっ!!はいはい♪」

そして2人は思いだしたかのようにダンを見る。

「あっお父さんもありがとね」
「ありがとね」

「なんだよそのツイデ感!」


家に笑い声があふれる。


しかしリオナとウィキの心はそれ以上に期待と楽しみで満ちあふれていた。











昼寝のつもりが寝過ごしてしまい、すっかり夜になってしまった。

バルドは双子が散らかしていった本を片づけようとソファーから起き上がる。


「ったく・・・散らかすだけ散らかしやがって」

タラタラと文句を言いながらも、何だかんだいつも目元は笑っている。

とりあえず床に落ちていた本を拾い上げていると一冊の本の間から一枚の写真が出てきた。

「?」

そこには大魔帝国の王宮の前に王様らしき人物と、若かりし頃のバルドが立って写っていた。

「ふん・・・なつかしーな・・。」

バルドは昔、優秀な才能を認められ、王宮の学士を勤めていたことがある。

この写真は初めて王宮に勤めたときの記念すべき一枚。

しかしこの写真をとった数日後、王が急死し、第36代王となる息子の政治が始まった。

36代目の王は前王とはちがい、傲慢で欲張り。
しかも汚いものが大嫌いだった。
そのせいで貧しい人々は一つの街に隔離され、差別された。
それがラグの町の始まりだ。

バルドはそんな王が許せず、何度も王に抗議した。
しかし王は聞く耳を持たず、寧ろラグの町は荒れる一方だった。
バルドはそんな王の政治に耐えられず、わずか五年で辞職し、自分がラグの町を盛り上げようとラグの町に暮らし始めたのだった。

あれから30年。
今は王も変わり、頼りない感じはするものの、ラグの町は少しずつよい方向へ傾きつつある。

そんな懐かしい思い出にふけっていると、
急に昼間に来た黒マントの男のことを思い出す。


「今・・・この国が必要としているもの・・・・か。」

今、世界の情勢が乱れる中、
バルド自身この国のために自分が動かないといけないことくらい分かっているのだが。

バルドは棚の上に飾られている、いつも世話を焼く双子との写真を手に取る。

そして、まるで写真の中にいる双子に向けて話しかけているようにつぶやく。

「この生活も捨てがたいんだけどな・・・。」




人は時に、叶わないと分かりながらも神に願いをこうことがある。

今すぐ消えてしまいたいとか

世界を手にしたいとか。


あるいは

時をこのまま止めてほしいだとか・・・・・




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