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【完結】 Novel〜Lord's Soul〜
story25 悪魔なカノジョ



翌朝








リオナはいつものように自分のベッドで寝ていた。



結局

昨晩のベッド取り合いレースは、マーシャの違反が発覚したため、
マーシャがソファーで眠ることになった。






ジリリリリリリリリ!!!






部屋に目覚まし時計が鳴り響き、
リオナは手で目覚まし時計を探してとめる。


A.M7:00


「ふぁ〜・・・・・・ねむ。」


目を開けると
目の前にはB.B.が眠っている。


B.B.専用の小さいベッドがあるにもかかわらず、
B.B.はいつもリオナのベッドで寝ている。


「B.B.・・・・起きろ。・・・朝だってさ。」


《えー・・・・・・・まだ眠い・・・・》


「俺もだから起きよ・・・・?」


リオナは体をのそのそ起こそうとした。


しかし、なぜか起きることが出来ない。


そう言われると、
体が少し重い気がする・・・。


まさか・・・




リオナは毛布をばっとめくる。



「ギィャャャャャャャャャャャャア!!!!!!!!!」




リオナの悲鳴は部屋に反響するほどに響き渡り、
隣の部屋からマーシャが飛び出してきた。


「お前朝からなん・・・・ってうがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


マーシャも目を丸くして悲鳴を上げる。


しかしすぐに顔をにやつかせ、
リオナに向けて親指を立てた。


「・・・それでこそ男だっ!」


そう言ってなぜか鼻歌を歌いながらいってしまった。



「お・・・おいマーシャ!!違うって!!」


しかし聞く耳を持たないマーシャにはリオナの声は届かず、
リオナはガクンと肩を落とす。



そう、なんとリオナの腰にはなぜかムジカがくっついていたのだ。


リオナはとにかく手をはがそうとするが、

ムジカの手ははがそうとすればするほどくっついてくるのだ。


「・・・・・・・・・はぁ。」


・・・コレは一種の悪魔の癖なのか・・・・?


もぉ・・・俺知らないからな・・・・・


リオナはわざと大きくため息をつくと、
諦めて再び横になった。


















「・・・リオ・・・・・リオナ」


「・・・・ん・・・?」


誰かに呼ばれてる気がして、
リオナは目を開ける。


あれからどれくらい寝たのだろうか・・・


「おはよリオナ。」


すると目の前にはなんとムジカの顔。


しかもなぜだか体が重い。


「おはよ・・・・ってお前!!!」


なんとムジカはリオナにまたがって顔を上からのぞき込んでいた。


こんな体勢を見られたら絶対マーシャにからかわれる・・!!!


「どうしたのリオ・・・・」
「い・・・・いいから降りろ!!!早く!!!」


ムジカはビックリしながら降りる。


「はぁ・・・・・・・」


どうコレを教えるべきか・・・


リオナは頭を悩ませていると、
それに感づいたのか、ムジカは申し訳なさそうに下を向くのに気がつく。


「ご・・・・ごめん。天上界だと当たり前なんだけど・・・・ここじゃダメなんだね。B.B.にここと天上界は常識が違うからって注意されてたけど、どれがダメでいいのかまだわからなくて・・・・・ほ・・・ほんとごめんね・・・!」


ムジカは無理に笑いながら急いで部屋を出ようとする。


まずい・・・・傷つけた・・・


「・・・待てってムジカ!」


リオナは急いでムジカの手をつかみ、
部屋に戻してベッドに座らせる。


「・・ごめんね・・。」


「・・・ムジカは悪くない。」


「ごめ・・」
「すぐ謝んない。」
「・・・・はい。」


ムジカはベッドに正座しながらリオナの顔色を伺う。


「・・・なぁ。」


「・・・・・・・はいっ・・。」


ムジカはビクッとからだを跳ね上げる。


「・・・どうして俺のベッドにいたんだ?」


リオナは率直な疑問をぶつける。


毎回やられたらたまったもんじゃないからな・・・


「・・あの・・・・・その・・・・・」


ムジカは言いづらそうに目を泳がす。


「さ・・・・寂しかったから・・・・・」

「・・・・・・あ・・・・」


リオナは思わず口に手を当てる。


・・・そうだよな・・・



いきなりこんな訳わかんないところでの生活なんて
不安だよな・・・


あーあ・・・・俺ってさ・・・本当に冷たい人間・・・



リオナはさっきムジカにキツく叱ったことを後悔した。


「・・・・・さっきは怒鳴って悪かった。ただ・・」


リオナはゴホンと咳き込んで、
少し顔を赤くしながら話す。


「人間界ではだな・・・男のベッドにはあんまり入っちゃいけないんだよ。そーゆーことはお互いに心を許した者同士がだな・・・」


はぁ・・・俺何言ってんだろ・・・


「心を許す・・・?」


「お互いがお互いを好きってこと。愛のほう・・・・ね。」


「・・愛・・・・」


するとムジカは気づいたのか、
耳まで真っ赤にさせて、
急いでベッドから降りる。


「・・・私って最低・・・・・」


そして今度は一気に顔を真っ青にさせ、
部屋を出て行ってしまった。


「ちょっ・・・ムジカ!!!ああもぉ・・・!!」


自分がいやになってくる。


ムジカを引き取ったのは俺なのに・・・


ムジカに生きてほしいと思って勝手に助けたのも俺なのに・・・


オレがムジカを傷つけてどうするんだよ・・・。



リオナも部屋をでてムジカを追う。



どこいったかな・・・


辺りを見回していると、
玄関の扉が開き、
マーシャが背中を向けたまま入ってきた。



なにやら大きな物を抱えている。


「おいマーシャ!!もっと斜めにしろ!!」


どうやら反対側をラードが抱えているようだ。


二人はそのまま元・書斎、今のムジカの部屋へ運んでいく。


「・・・なにそれ。」


リオナは顔をのぞかせ、
運び終わった二人に尋ねる。


「ああこれか!?これは俺様のベッドだ!マーシャが足りねぇっつうから譲ってやったんだ!」


「助かったぜラード。」


「ガハハハ!!気にすんな!!ってところでよぉムジカはどこだよ!!かわいいんだって!?」


「ああ、さっきまでリオナと寝てた。」


マーシャはわざとニヤッと笑いかける。


「ちょ・・・ちが・・」
「マジかよリオナ!!!手ぇだすの早すぎ!!!」
「・・・・出してないし寝てないよ!!!!」


リオナはイライラしながら部屋を出る。


そんなリオナを見て、
ラードはケラケラ笑い声を上げていた。


「あーあ、リオナもついに恋かぁぁ!!マーシャ、お前どうすんの。」


「は?どうするって。」


「いいのかよーあんなにリオナ大好き人間のクセに新入りにリオナ取られちゃってもよぉ!」


「別にー?リオナが好きならそれでいいし。」


「へぇ、なんだよ面白くないなぁ。」


そんな事を言いながらも、
マーシャの表情はほんの少し、翳っていた。









・・・どこだよムジカ・・・



なぜだか今日は部屋中が騒がしい。


リビングの方からはなにやら水の流れる音がして、
リオナは急いで向かう。


「ムジカ!・・・ってベンかよ・・・」


リオナはガクッと肩を落とす。


「・・・おはよう・・・・・・・」


しかもベンはエプロン姿で料理を作っている。


すでに机の上は豪華な料理でいっぱいだ。


「・・・なにこれ。すごい・・・!」


「・・・今日はムジカの歓迎会らしい・・・・・ラード主催のな・・・。・・・リオナ味見・・・」


ベンに唐揚げを差し出され、
リオナはあーんと口を開いて唐揚げをいれてもらう。


「・・・ん、美味しい!!」


「・・・・よかった・・・・・」


ベンは少し嬉しそうに作業に戻った。


あんたは乙女か・・・・


思わずツッコミたくなった。


「・・・なぁベン。ムジカ見なかったか?」


「・・・・ああ・・・見たぞ・・・・・・」


「!?どこいった!?」


「・・・俺のこと見て・・・・・・驚いたのか逃げてった・・・・」


「・・・・」


なんだかその光景が頭に浮かぶ気がする。


きっと初めて見る人に驚いたのだろう。


「わかった・・・ありがとう。」



また振り出しに戻った。



まさか部屋の外にでてしまったのだろうか。


リオナは念のため部屋の外に向かう。


扉を開けようとした瞬間、
リオナは何かとぶつかった。


「うわっ・・・!!!」


「あっリッチャン!?ごめんごめん!!」


目の前には大量の洋服を抱えたユリスがいた。


「・・・これなに?」


「これはムジカへのプレゼントよ。洋服なくて困ってるだろうからね。」


へぇ・・・ユリスって優しいんだ。


「あっ今リッチャン私のこと優しいって思ったでしょ!やぁだぁ照れるじゃない!」


「・・・はいはい。」


リオナはユリスの横を通り抜け、
部屋の外にでた。


「リッチャン何してるの?」


「ムジカ探してるんだけど・・・いないなぁ。」


「ムジカならルナのところに行ったわよ?」


「本当!?」


「ええ。なんかルナに会いたいっていってたから連れてってあげたわ。てかぁ、かわいーわねムジカ!初めはリッチャンに近づく女は許さないって思ったけどムジカなら許すわ!」


「・・・・ならよかった。仲良くしてやってよ。アイツ友達ほしがってるからさ。」


「まかせなさい!私がかわいがってあげるわ!」


「うん。」


そう言って
リオナは早足でエレベーターに向かった。



エレベーターに乗り込んで、
ルナの部屋へつながる番号を押していく。



ムジカに会ったらなんて言おうか・・・・・


また逃げないだろうか・・・・



"寂しかった"



ムジカの言ってた言葉・・・・


きっと・・・・誰かに甘えたかったんだろうな・・・





そんなことを考えていると、
あっと言う間にルナの部屋にたどり着いた。


リオナは少し緊張しながら
エレベーターをおり、
部屋の扉に手をかけた。


すぅー・・・・・・・


たくさん息を吸い込んで、
一気に扉を開ける。


リオナは中央に目をやると、
やはりルナと一緒にムジカがいた。


「・・ムジ・・」


リオナは呼びかけようとしたが、途中でやめる。


ムジカはルナの前に座って、
昨日マーシャからもらったメモ帳に何やら必死に書き込んでいる。


何をやっているのだろうか。


リオナは後ろからそっと近づいていく。


だんだんとルナの声が聞こえてきた。






「・・・・なにかしてもらったときは・・・・"ありがとう"っていうの・・・・・・・・」


「抱きつくのは?」


「・・・たぶんダメね・・・・・・」


「じゃあほっぺにチューも?」


「・・・・もっとだめね・・・・・・そう言うことは本当に好きな人にするのよ・・・・・・」


「あっ、リオナが言ってたことね」


ムジカはすかさずメモを取る。


「・・・・それであとは・・・・・・・あ・・・」


ルナはリオナの気配に気づいたようで、
こちらを向いている。


リオナはシーッと口の前で指を立てるが、
目の見えないルナに通用するはずがない。


が・・・


ムジカはあまりに必死でリオナには気がつかないようだ。


しかもルナも空気をよんで、
何もなかったように話の続きを始める。


・・・・何を書いてるんだ?


リオナはムジカのすぐ後ろにしゃがみ、
そっとメモをのぞき込む。



そこには殴り書きで色々書かれていた。


しかし悪魔の文字が八割なため、
リオナは何とか読めそうなものを見ていく。


"食べ物は手で食べない"


"虫はガマン"


"爪は研がない"


"あいさつはちゃんとする"



「・・・・・・用をたす時はトイレで・・・か。」


思わずクスクス笑ってしまった。


「・・・・・・!?!?リオナ!?」


やっとリオナに気づいたようで、
ムジカは顔を真っ青にしてメモ帳を隠した。


「・・あ・・・えと・・・・・これは・・・・・その・・・」


ムジカの怖がる様子を見て、
リオナは少しだけショックを受ける。


「・・・・・なぁ。」


「・・・あ・・・は・・い・・・・じゃなく・・・・・て・・・・・」
「俺って怖い・・・?」


リオナはジッとムジカの目を見つめる。


「ううん・・・!!・・・・怖くないよ・・・!」


「でも・・・・体ふるえてんじゃん・・・。」


「ち・・・・違うの・・・・ただ・・・・」


ムジカはチラッとルナを見る。


「・・・・ムジカ・・・・・・気持ちはハッキリ伝えなきゃ・・・・・リオナは大丈夫よ・・・・・」


ムジカはこくんとうなずき、
リオナに向き合う。


「・・・・怖いの・・・・・・」


「・・・・・・・・・・ほらやっぱり」
「違くて・・!そうじゃなくて・・!」


「・・・・?」


「せっかく・・・友達ができたのに・・・・私リオナに嫌な思いをさせちゃって・・・友達じゃなくなてゃう・・・・・・」


なんだよ・・・・・そんなことかよ・・・・・・


「ばーか。」


リオナはムジカにでこぴんをする。


「・・・痛い。」


ムジカはおでこをさすりながら立ち上がるリオナを見上げる。


「・・・あんなことじゃ怒んないし嫌いになんないし。」


「・・・リオナ」


「あと・・・・俺は元からこーゆー冷たい顔だから・・」
「冷たくない!」


ムジカは突然声を張り上げる。


「冷たくなんかないよ!?ほらっ・・・」


ムジカは手を伸ばし、
リオナの顔に触れた。


「あったかい。」


そう言って小さくほほえんだ。


ああ・・・・・そうか



彼女は誰よりも




冷たいモノを知っているから・・・・




「・・・ありがとな。」



なんだか照れくさくなって。



俺はわざと意地悪を言いたくなるんだ。


「・・・ほら、早く立たないとおいてくよ。ずっとココにいたいなら俺は別にかまわないけど。」


そう言って扉に向かって歩き出す。


でもなんとなく分かってきた。


ムジカのことが。


彼女は絶対に追いかけてくる。


少し寂しそうに、だけどイジワルとでも言いたそうな顔で。




「あっ・・・!!ルナ姉ありがとう!!まってリオナ・・!!」


ムジカはルナに挨拶をすると、走ってリオナの手を捕まえた。


そして上目遣いで少し頬を膨らませた。


ほらな。


「大当たり。」


「・・・・?なにが?」


「・・・なんでもない。ほら行くぞ。」


リオナはクスクス笑いながら、
ムジカを連れて部屋に戻っていった。

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あきゅろす。
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