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【完結】 Novel〜Lord's Soul〜
story24 broken my world











「そういやぁさ、リオナ達は?」


「・・・ちょっと遅いな・・・」


シキはエレベーターの前で二人はまだかと腕組みをしている。


マーシャはというと
看守とゲラゲラ笑いながら話し込んでいた。


こんなとこでよく楽しそうに話せるものだとシキは尊敬とともに軽蔑した。



するとやっとのことで、
シュナが向こうからかけてきた。


「ごめんなさいシキさん!マーシャさん!」


「遅かったな。まぁいい。早くこんなとこでよう。」


しかし一人足りない。


「あれぇ?リオナは?」


マーシャはシュナの後ろをのぞく。


「あ・・・実はリオナ頭が痛いって言ってまだあそこにすわりこんでるんですよ・・・!!」


シュナはいつも以上にニコニコ笑うため、
マーシャは少しいぶかしげな顔をする。


「・・・・ったくアイツはぁ。」


マーシャは先ほどの牢屋に行こうとすると、
シュナがばっと止めた。


「お手間はとらせません!!僕が連れて帰るので!!」


マーシャが何かを探る様にじぃっとシュナをみるが、
アッサリと目線を外した。


「・・・・・そう。じゃあ頼んだ。行くぞシキ。」


そう言って二人がエレベーターに乗って降りていくのを確認すると、
シュナは先ほどまでマーシャと楽しそうに話をしていた看守に話しかけた。


「毎晩ご苦労様です。今日はおひとりですか?」


「ん?ああいつもならもう一人いるんだが、風邪で休みでな。」


「あっそう言えばさっき1006の部屋の男が呼んでましたよ?俺ここ見てるんで行ってやってください。」


シュナは得意のスマイルを繰り出す。


「おっ悪いなぁ。じゃあちょっくら行ってくるな。」


そう言って看守は鍵を持って左の道の牢屋に消えていった。


シュナはホッとため息をつくと、
なにやら手から白い光を出し、
ムジカの牢屋の方に向けて放つ。


数秒後、
向こうからかけてくる二つの影が見えた。



「リオナはやく!!」


シュナは小声で叫びながら催促するように手を振る。


「悪いなシュナ。」


駆けてきたリオナの手には、
ムジカの手がつながれていた。


「俺知らないからね!?早くいって!」


「ありがとう。いくぞ。」


「はい・・・!」


ムジカとリオナは急いでエレベーターに乗り込み、
ルナの部屋へつながる番号を押した。


エレベーターが動き出したことに安心し、
リオナはムジカから手を離し、
エレベーターの壁にもたれかかる。


「本当に・・・よかったんですか?」


ムジカは心配そうにリオナを見上げる。


「何を今更・・・・それにルナに謝るだけだろ?」


「はい。」


強くうなずく様子に、
リオナも信用する。


「あんた、B.B.の知り合いなんだ?」


「はい。」


「・・敬語はやめてよ。同い年位なんだから。」


リオナはやり辛そうに頭をかく。


「あ・・・・はい!!じゃなくて・・・・うん!」


やっと自然に笑って、
リオナも少し笑みを浮かべる。


「B.B.とはそんなに長い間一緒にいたことはないの。たぶんたった数日・・・。」


「・・そうなのか?」


「うん。私・・・・悪魔なのにこんな姿だから・・・友達がいなかったの。腹違いの兄弟達も私を嫌がって近づきさえしなかった。いつも一緒にいたのは唯一血の繋がったお兄様だけ。でもね、ある日私はある噂を耳にしたの。」


「どんな?」


「ウサギの悪魔がいるって。」


ムジカはとても嬉しそうに、
ともに懐かしそうに話し出す。


「私は話してみたかった。やっと私の気持ちをわかってくれる悪魔が現れたって。それから私はお父様とお兄様には内緒でB.B.に会いに行ったの。初めはやっぱり驚いたわ。まるで人形が話しているみたいだったから。」


「・・俺もビックリした。」


「でしょ?しかも話をしてみたら自己中でワガママで・・・まるで子供みたいだった・・・・。でもね。」


ムジカは首にかけてあるペンダントをギュッとつかみ、
目をつむる。


「B.B.は強かった。B.B.は友達がいなくても、見た目が違うからってからかわれても、いつもそれをネタのようにしてた。本当は寂しがり屋なのにね・・・。」


ムジカの表情は悲しく・・・でも懐かしそうに小さくほほえんでいる。


「それからB.B.はすぐに人間界にいってしまった・・・。だから私もB.B.みたいに強くなろうって心に誓ったの。まぁもう終わりなんだけど・・・・」


「・・・・・・。」


「私・・・・強くなれたかな・・・」


ただ下にうつむくムジカを見て、
なぜか心がズキズキした。


体中・・・傷だらけじゃないか・・・


きっと・・・悪魔達からの攻撃を必死に避けてきたんだ・・・


小さい体で・・・・



リオナは無意識にムジカを抱きしめていた。


「・・・・・・・・」


ムジカも身を任せるようにそっとリオナの胸に顔を埋め、
今まで我慢してきた涙を我慢しきれず、
小さく泣いた。


今・・・死んでいく少女に・・・俺は抱きしめることしかできない・・・。


リオナは自分の弱さを憎んだ。


「あなたとなら・・・いい友達になれたかも・・・」


「もう友達だ・・」


「うん・・・・ありがとう・・・」























エレベーターはすぐにルナの階につき、
リオナはさっと部屋の扉を開いた。


「・・じゃあ早く行っ」
「リーオーナー君」


するとルナしかいないはずの部屋の扉の中から一人の男が出てきた。


「・・・・・マーシャ!?なんでここに!」


リオナがさりげなくムジカを背中に隠そうとするが、
すぐにマーシャに引っ張り出されてしまう。


「それこっちのセリフだし。まさかルナを殺す気か?」


「違うの・・・!!ただ・・・ルナ様に謝りたくて・・・!!」


ムジカはマーシャの服をつかみ、見上げながら必死にお願いする。


マーシャは真意を見いだすように、目を細めて見つめる。


「・・・・・・。はぁ・・・これだから女は嫌いだよ・・・・・。」


マーシャは頭をかきながら道をあけた。


「早く行ってこい。」


「・・ありがとうございます・・・!!!」


ムジカはさっとお辞儀をすると、
走ってルナの所まで駆けていった。


「マーシャ・・・ありがとう。」


「いーえ。まぁこんなこったろうと思ったよ。お前のそのちっちぇ脳みそなんてお見通しだ。」


そう言ってリオナの頭を両手で鷲掴み、
ぐわんぐわんゆらす。


「失礼だなー・・・・俺は〜これでも知らない魔術はないくらい〜頭がいいんだってぇ〜あーたーまーがぁやーばーいーかーらーはーなーせーよー」


「はは。可愛いーリオナ。やーなこったぁ。」


マーシャに頭を揺さぶられながらも、
ぶれる視界にルナとムジカの姿がはいる。


俯くムジカをそっと抱きしめているルナを見て
少しだけホッとした。


「やり残したことがこれかよ・・・・。」


もっとさ・・・


ギリギリまで逃げるとか・・・


思いつかなかったのかよ・・・・・・・



すると突然、エレベーターがこの階に着いた音がした。


「・・・・マーシャ、誰かきた・・・!」


「シキだったら俺たちの命がねぇよ・・・・」


とりあえず二人は部屋の扉を締め、
ルナとムジカを見られないよう隠す。


誰だろうか・・・


二人は心臓が高鳴るのを感じる。



そして
エレベーターの扉がゆっくりと開き出した。


思わず身構える。


すると
中から出てきたのは・・・・






《二人とも大変だぁぁぁ!!!!》

シキではなく
B.B.だった。


二人は緊張から解放され、
その場に座り込む。


「なんだB.B.か・・・・・・。」


「脅かすんじゃねぇよ。ばかっ。」


《イ゙デッ!!!!!!!!》


マーシャから思いっきりゲンコツをくらい、
宙に体をふらつかせながらも、
B.B.は焦りを体いっぱいに表している。


「・・・・どうした?」


リオナがB.B.を受け止めると、
B.B.はなぜか泣きじゃくりながら何かを訴えだす。


《あぐばがぎだんだぼぉ!!!!》


「あ!?なんつったかわかんねぇよ。」


《だがら悪魔がぎでるんだっでばー!!!!!》


「本当か・・・・?」
「やべーぞ・・・・!!!」


マーシャは急いで部屋の中に入り、
ムジカのもとへいく。


「ムジカ、悪魔がきた!」


「・・・・!?」


ムジカは急いで立ち上がり、
ルナに深くお辞儀をした。


「今日は本当にすみませんでした・・・・」


ムジカはさっとその場を去ろうとする。


しかしルナは訳が分からず、
少し焦りをみせる。


「・・・・ムジカ・・・・・・・・どこに行くの・・・・・?」



その呼びかけにムジカは足を止める。



「お前・・・ルナに本当のこと言わなかったのか?」


こくんと小さくうなずくムジカを見て、
マーシャは呆れたようにため息をついた。


「ったく・・・・・お人好しすぎなんだよ・・・・」




少しのあいだ、
ムジカは戸惑いながらも、
最後にはルナに笑いかけた。





「天上界に・・・・・帰ります。」


そう言って
ムジカは走って扉に向かった。


「・・・・・・マーシャ・・・・・・・!?」
「お前はここにいろ。後で話しにくるからよ。」


ルナにそう告げると
マーシャも急いで部屋をあとにした。






















四人は急いで一階に向かい、
なるべく見つからないように外へつながる扉へ向かう。


不安からだろうか・・・・・鼓動が早くなるのがすごくわかる。




しかしそう簡単にはうまく行くはずがない。





大きな扉の前には
腕組みをして、
今までに見たことがないくらいに怒りに満ちている男・・・・・シキがいた。


そしてその横には真っ白だった左頬を真っ赤に腫らしたシュナがいる。


目には涙をため、
必死にこらえている。


胸が痛んだ・・・俺のせいだ。


恐らくシキにバレて殴られたのだろう。



リオナが目を向けてもシュナは下を向いて目を合わせようとしない。


《リオナ・・・オイラ先に外行って様子見てくる!》


「ああ。頼んだ。」


B.B.はシキの横を通り抜け、
外に飛び出す。


残った3人は恐る恐る・・・・それでも早足で扉に・・・いやシキに近づく。



リオナは少し前にでてシキの前にでる。



「・・・シキ・・・ゴメン・・・これは俺のせいなんだ・・・・。だからシュナとマーシャは悪くな・・・」



ダンッ・・・・・・・!!!!!



リオナは一瞬にして頭が真っ白になる。


口の中に血の味が広がり、目を開けると天井が見えた。



シキは悪魔を引き出し、黒々しい光の固まりをリオナの腹に思いっきりぶち込んだのだ。


壁に打ち付けられたリオナは
その場でズルズルと背中を壁にこすりつけながら座り込む。


「ッケホ・・・・・・」


咳をすると、血が止めどなく吹き出す。


これが・・・シキの力・・・・・・・・


「リオナぁぁ!!シキお前こんなにすることはないだろ!?」


マーシャはリオナを抱きかかえ、
シキから離す。


「少し痛い目を見ないとわからないようだから。」


「はぁ!?てめぇ何が痛い目だ!!リオナはただムジカのためにやってやったんだよ!!誰にも迷惑かけてないだろう!!!」


マーシャはシキを睨みつけると、
シキも今までにないくらいに怒鳴りだす。



「そういうお前の考え方が気にくわないんだ!!!他人に迷惑をかけないからって許されるのか!?ガキかおまえ等は!」


「んだと!?」


マーシャはシキに飛びかかろうとする。


が、
シキがムジカの腕を無理矢理引っ張って、間にいれたため、仕方なく拳をおろす。


「・・・・とにかく・・・・だ。お前ら処分は覚悟しておけ。いくぞシュナ・・・・」


「・・・・・はい・・・・・・・。」


シュナはリオナに目も向けず、
シキの後に付いていく。


シキに手を引かれるムジカは、
リオナとマーシャを見て、
小さく"ごめんなさい"と呟いて、
外に行ってしまった。



「くそっ!!!!」


どん・・・・・・・!!!


マーシャは拳を壁にたたきつけ、
シキの出て行った扉をにらみつけた。


「マーシャ・・・・・・本当にゴメン・・・・・俺のせいで・・・」
「おまえのせいじゃないよ。リオナはいいことをしてやったんだ。それより、大丈夫か?」


「うん・・・・・」


「あームカつく!俺のリオナにこんなことしやがって!」


リオナはマーシャの肩を借りて立ち上がり、
グイッと血を拭う。


そうだ・・・・これが俺のやり方だし生き方だ・・・・・・・・。


誰がなんと言おうと俺は・・・・・


「ちょ、リオナまだ立つな。」


「・・・・ムジカを助けに行く。」


どんな罰を受けてもかまわない・・・・・



リオナは扉を開けて、外へ飛び出した。



「おいリオナ!ったく・・・・アイツはぁ・・・」



マーシャは頭をかきながら外に飛び出したリオナを呼び止める。


「待てよリオナ!!」


「・・・・・・?」


マーシャはリオナの肩に手を回し、
ニッと笑った。


「俺もつきあうぜ?相棒。」


「・・・・・マーシャ!」


リオナは思わず涙ぐみ、
マーシャに抱きついた。


「コラ、無防備に抱きつくと襲っちまうぞ。」


「・・ありがとう、本当にありがとう!」


「ったく、後でたーぷり奉仕しろよ?」


「うんっ」


「よし、行くぞ」


2人は走って裏の森に向かった。




















ねぇ・・・・・・・・








どうして避けるの・・・・・?











・・・みんななんで離れていくの・・・・・?















私がいるから・・・・・・・・?















私何もしないよ・・・・・・?















・・・・汚くないよ・・・・・・・?
















ねぇ行かないで・・・・・・・・

















私はただ・・・・・・・・














・・・みんなと遊びたいだけなの・・・・・















イタいよ・・・・・・・・・・イタいよ・・・・・・













叩かないでよ・・・・・・・・・・・















もう近寄らないから・・・・・・叩かないで・・・・・・

















ドサッ・・・・・・


ムジカはシキの手から解放され、
地面に倒れ込む。


あたり一面が草木に覆われ、
冬の冷たい空気が汗ばんだ額をひんやりひやす。


「ムジカ。悪いが縛らせてもらうよ。」


「・・・・はい。」



シキとシュナは手際よくムジカを木に縛り付けていく。






それをB.B.は木の陰からみていた。


《リオナァ・・・マーシャ・・・早く・・・!!》


B.B.は祈りながら空を見上げる。


《・・・・・・・なんだあれ?》


すると月の中心に
何やら黒い点が見える。



それはだんだんと大きくなり、
月を覆い隠した。


《悪魔だ・・・!!》


しかもすごい数だ


そのせいで月の光は閉ざされ、
森一帯を黒く染め上げる。


「・・・・・・・・・・・きた・・。」


ムジカは空を見上げ、
こちらに向かってくる悪魔を見つめる。




・・・・怖くないよ・・・・・・






寂しくないよ・・・・・






これでやっと・・・・・・楽になれる・・・・





ムジカはそっと目を閉じる。





そして
悪魔達は容赦なくムジカに飛び込んでいく。


「シュナ逃げろ!」


「・・・・・!」


シキの呼びかけに、
シュナはハッとしてその場を離れる。


ムジカの周りは一瞬にして真っ黒になり、
悪魔達の不気味な羽音が響き渡る。






「・・・B.B.!どこだ!!!」


すると向こうからリオナの声が聞こえてきた。


《・・・・!!!リオナ!!!マーシャ!!!こっちだぁ!!!》


B.B.も急いでリオナの元へ飛んでいく。


「・・・B.B.!!!行くぞ!!!」


《おう!!!》


リオナの中にB.B.が入り込み、
マーシャを先頭に悪魔の群に入っていく。


リオナとマーシャの姿を捉えたシキは、
驚きと怒りで眉間のシワを深めた。


「あいつら!!!!」


「・・・・リオナ!!!」


シキとシュナはまさかの展開に驚き、
その場に立ち尽くした。









悪魔たちの群れの中は、
どこか居心地が悪い。


とにかく前に進もうと手でかき分ける。


「・・・ムジカ・・!!」


するとやっとのことで隙間からムジカがみえた。



「・・・・・・あな・・・・たは・・・・!!なんで・・・・」


「・・・・・・助けにきちゃった・・!」


「・・・・!?・・・・・だって私は・・・」
「・・・・・・生きよう」


「・・・・・・・・・!?」


「・・・・・・俺は・・・・・お前の友達だ・・・・なのにまだお前に何もやってやれてない・・・」


「・・・・・・・・・・・」


「・・・だから・・・・生きろ!・・・俺がお前に生きる楽しさを教えてやる・・・!」


「・・・・・・・・!」


ムジカはリオナの顔を見つめる。


こんなこと・・・・初めていわれた・・・・


「・・・私・・・・・・悪魔なんだよ・・・・・・?」


「・・・・・だから?俺も悪魔だよ。ほら・・・・羽生えてるし。おそろい。」


リオナが笑うと、
ムジカもぎこちなく笑った。


が、すぐにムジカは痛みに顔をゆがませる。



隙間からすでに弱っているムジカが見える。


「・・・手!!手伸ばして!!!」


「無理・・・・縛られて動けない・・・」


ムジカは必死に動くが、
やはり手がはずれない。


「リオナ!!俺が切りに行く!切ったらすぐにお前はムジカを抱えて外に!」


「わかった!!」


マーシャは悪魔をかき分け、
ムジカの縛られている木の後ろに回る。


「・・・ァッ・・・くぅ・・・・・!」


ムジカの食いしばる声が聞こえてくる。


「もうちょっとの辛抱だ・・・・我慢してくれよ・・・・」


マーシャはナイフを取り出し、堅く縛られたロープを断ち切った。


「リオナ!」


「・・ああ!」


リオナは力の限りに手を伸ばす。


指の先までぴんとのばし、
ムジカの手を探る。










そうだ・・・・・











生きるんだ・・・・・







彼は・・・・





私を・・・・・





友達だって言ってくれた・・・・












お父様・・・・・・・ごめんなさい・・・・





























生きたいです・・・・・・















生きるんだ・・・・・

















生きるんだ・・・・!!!














ムジカは精一杯手を伸ばす。



するとかすかに指が当たった。


「あともうちょっとだ・・・・!!」


「うん・・・!!」


二人は最後の力を振り絞る。



そしてついにムジカの手はリオナにつかまれ、思いきり引っ張られる。



リオナはそのままムジカを抱き寄せ、
悪魔の群から飛び出した。



「・・・・はぁ・・・・はぁ・・・・」


二人は呼吸を乱しながらも急いで群から離れる。


マーシャもすぐに出てきてリオナ達の元に行く。


「・・・さて、あとはリオナとムジカ次第だ。」


「そうだな・・・・。」


「・・・・・・・・・・?」



ムジカがマーシャとリオナの会話に首を傾げていると、
後ろからシキとシュナがやってきた。


「・・・・どうするつもりだ!悪魔達に攻撃したらどうなるかわかってるだろうな!?」


シキはリオナにつかみかかろうとするが、
シュナがすぐに止めた。


「・・・考えがあるんだ」


「・・・考えだと?」


「もしかしたら・・・シキは怒るかもしれないけど・・・」


リオナはそっとムジカの手を握り、
目を見つめる。


小さく笑いかけると、
ムジカはキョトンとしながらも、にこっと笑った。



すると悪魔たちはようやくムジカがいないことに気づいたようで、
こちらをにらむ。



《リオナ!!》
「・・・・ああ。」


リオナは地面に指でさっとダーク・ホームの紋章を描き出す。



つぎに左手の指をカリッと噛み、
血を流すと、
ムジカの唇から流れる血を右手でぬぐい取る。


両手についた血を混ぜ、
その手を地面に描いたダーク・ホームの紋章につく。


そして小さく呪文を唱え始める。


そう・・・・悪魔との契約の呪文



「我、神の心を砕くもの。我が魂は力を求め、天を切り裂き地を沈める。汝に我が肉と血と骨を捧げ、今誓いを交わそう。」



すると次の瞬間、
ムジカが金色に光り始め、
リオナに引かれるように近づく。


そしてリオナの手には、B.B.と結んだ時とはまた別の紋章が刻まれた。


「・・・・・・!!」


リオナのまさかの行動にムジカ自身も驚きを隠せず、
リオナの目をじっと見た。


「・・・契約成功だね。」


しかしリオナはお構いなしにニコッと笑いかける。




「・・・・一人の人間が・・・・二匹の悪魔と契約するなんて・・・・有り得ない。」


シキは目の前で繰り広げられた奇跡のような出来事を、
ただ呆然と見ることしたできなかった。



すると悪魔たちも足を止め、リオナとムジカに向けて罵声を上げる。


しかしリオナは気にする様子もなく、
ムジカに腕を回し、引き寄せる。


「・・・これでムジカは俺の悪魔だ。もう攻撃できないだろ?」


リオナはにやっと笑い、
悪魔を挑発する。


『オノレニンゲンメ・・・・!!』


『フザケヤガッテ・・・・・・ムジカ・・・・セイゼイシナナイヨウニモガキクルシメ・・・!!!』


悪魔達は翼を広げると、
大きく羽ばたいて真っ暗な空に消えていった。


「・・・・・・・ふぅ。一件落着っと。」


「リオナかっこよかったぜ?」


後ろからマーシャがリオナの首に腕を回し、
リオナは少しよろめきながら親指を立てる。


《ムジカ!!》


B.B.はリオナの体から離れると、
ムジカに抱きついた。


「B.B.!!」


ムジカもB.B.を抱きしめ、
嬉しそうにくるくる回る。


「私・・・・生きてる・・・・!!生きてるんだ・・・・!!」


回っているうちにムジカは足場をふらつかせ、
地面にしりもちをついてしまった。


その振動が体の傷に響いたのか、
ムジカは痛そうに顔をゆがませる。


「あんまり暴れると傷に響くよ・・・・・」


困ったようにため息をつきながらリオナは座り込むムジカに手をさしのべる。


「・・・あ・・・・・・」


するとムジカはリオナの手をつかみ、
ぎゅっと自分の胸に押し当てる。


「・・・本当に・・・・本当にありがとう!!!私・・・・・・・あなたに一生奉仕します・・・!!!」


「あ・・・いや奉仕とかじゃなくて・・・」


リオナは少し顔を赤らめながら、
しゃがんでムジカの手をもう片方の手で包む。


「・・ただ・・・・ムジカが楽しく生活してくれるだけでいいんだよ・・・・」


って何言ってんだ俺・・・


すごく恥ずかしいこと言っちゃった。


しかも後ろを向くと、
ニヤニヤしたマーシャとB.B.がいた。


本当にやな奴らだ。



しかしムジカはその言葉に感動したのか、
目を輝かせてリオナをみつめている。


「あ・・・・あとそれに敬語はなし」


「・・・・・うん!」


あまりに素直に笑ってうなずくため、
リオナはドキッとしながら目をそらし、
ムジカを引っ張り上げる。


「お・・・・俺はリオナだ。よろしく。」


「私はムジカ。よろしくおねがい・・・・」
「敬語。」
「あっ・・・よ・・・・・よろしく、な?」


言葉遣いに慣れないためか、リオナの言い方になってしまう。


「・・・はははは!!!!!!」


「えっ・・・・!?私何かした!?」


しかしムジカは気づいていない・・・というか気にしていないのか・・・?


するとB.B.はムジカを弁護するようにさっと飛んできた。


《あのなリオナ・・・ムジカって見た目は人間だけど頭が悪魔なんだよ・・・》


「・・・ってことは・・・?」


《言葉の意味をあまり知らないんだよ・・・・常識とかもな。》


「・・・・・!?」


そうなのか・・・・・


リオナはこの先のことを考えると頭がくらくらした。



「まぁ・・・1から教えてやるのも悪くはないけど。」


「そうだぞ?なんてったってこれからはムジカもリオナのペアーなんだからな。しっかり調教してやれ。」


「・・・ちょうきょう・・・」


その言葉に首を傾げるムジカをみて、
リオナはマーシャを思いっきり殴り、
ため息をついた。




四人でギャーギャー騒いでいると、後ろからゴホンと咳払いをする声がする。


四人はそおっと振り返ると、
完全にキレているシキと困った顔をしたシュナが立っていた。


・・・すっかり忘れてた・・・


リオナは処分のことを思い出し、
少し顔をゆがめる。


「・・・今回のことはもちろんマスターに報告させてもらう。処分はそのあとマスターにしてもらう。ただ・・・・」


シキは少し下を向くと、
拳を握りしめ、
小さくつぶやく。


「・・・たとえマスターがおまえ等を許しても俺はおまえ等を許せないと思う・・・」


そう告げるとシキはスタスタと黒の屋敷に戻っていく。


そしてシュナも慌ててシキの後を追おうとした。


「待てシュナ・・・!!」


シュナはリオナの呼びかけに足を止める。

「・・・・ごめん。お前を巻き込んで・・・。」


しかしシュナは振り返らず、
小さく肩を震わせるだけ。


「・・・・シュナ」
「リオナごめん・・・・・・俺は・・・・シキさんと同じ考えだ・・・・」


そういってシュナは走り去っていってしまった。


「・・・シュナ・・」


リオナは悲しそうに下を向く。


ごめんな・・・・シュナ・・・


するとムジカが心配そうな顔をしてリオナの顔を覗きこんできた。


「リオナ・・・もしかして・・・・私のせいで友達じゃなくなっちゃった・・・?」


ムジカも悲しそうにリオナを見つめる。


「違うよムジカ・・・・。ムジカのせいじゃない。それに今でも友達だしさ。大丈夫だよ。」



そう・・・俺は友達だと思ってるよ・・・・・



今は溝があるけど・・・・いつかわかり合えると思うんだ・・・・・・



その時は・・・・・また笑ってほしいな・・・



「さぁてお前ら。よぉく聞け。」


マーシャは突然近くの切り株に乗り、
腰に手をあてる。


「今日から俺たちはムジカを加えて4人チームだ。ルールは喧嘩厳禁に加えてセクハラ抹殺だ。わかったか野郎ども。」


あんたが一番危ないだろ・・・・


「そんでムジカには俺が今まで大切に使ってた書斎をやる。」


って使ってるとこ見たことないし・・・・


「ありがとうマーシャ!」


「いーえー。でもここで残念なお知らせだ。」


「・・・・・・?」
「・・・・・・?」


《あーオイラわかったぁ!!!》


B.B.がハイハイと手を挙げる。


「はいB.B.。」


《あれだろ!?お風呂のシャンプー切らしてる!!今日オイラが入った時はなかったぞ!》


「はい違います。答えはだなぁ、ベッドの数だ。現在マイホームにはソファーとベッド二つしかない。」


「だから・・・・・」


「早いもん勝ちってな!!」


そう言ってマーシャはものすごいスピードで走り出す。


《オイラが一番だぁ!!!》


B.B.は翼を広げて一気に飛んでいく。


「・・・ずるいな。ほら、ムジカも行こう。」


「あ・・・・うん・・!!」


リオナはムジカの手を引きながら、
夜の森を駆け抜けた。







こうして俺の17歳の誕生日は幕を閉じた。



得るものもあれば



失うものもある。




それはよくわかっている。



だけどやっぱり・・・・・つらいよ。











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