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【完結】 Novel〜Lord's Soul〜
story23 赤い瞳を持つ少女







フェイターが姿を現さなくなってから、


リオナの夢にでてくる
あの少年も見なくなった。


それから記憶に変化もなくなった。


忘れもしなければ、


思い出しもせず。




















季節は冬を迎え、


11月24日





黒の屋敷内はすでにクリスマスモードに入り、
メイド達が飾り付けをはじめた。


パァン!!!


「ハッピーバースデー!!リオナくん!!」


朝、
マーシャとB.B.と食堂に向かう途中、
リオナはコロナの襲撃を受けた。


「・・・・・・・・・。」


顔中にはクラッカーのひもやら紙屑やらがくっつき、
イライラ度を増す。


「やだぁリオナくぅん!今日もカッコいい!!!」


コロナに抱きつかれそうになるが、
さっとよけてマーシャとB.B.を引っ張りながら歩き出す。


「そんな冷たいリオナ君もだぁいすき!!」


後ろから聞こえる恐ろしい言葉にリオナは身の毛のよだつ思いをした。


「リオナ君だぁいすき!だってさ。」


「・・・・俺女ってホント無理・・・。」


「ははっ!同感。じゃあ、俺と付き合う?」


「・・・絶対イヤ。」


「ひどいな〜。俺本気なのに。」


いつものマーシャの冗談を軽くあしらいながら、三人は足を進める。


まったく朝からついてない。


それでも極力明るくいようと心がける。


しかしやっぱり今日はついていない。


今日は俺の誕生日なのにな・・・。







食堂につくと、
いつも以上に人であふれていた。


どうやら先日まで長期任務に向かっていた部隊が帰ってきたようだ。


しかしマーシャはそんなこともお構いなしに料理長に話しかけていた。


「おはよう料理長。今日の夜、アレ頼むな。」


「はいよー!!今年はとっておきだからな!!」


「ああ。期待してるよ。」


そう言ってマーシャがリオナとB.B.の元へ戻ってきた。


「アレって何?」


《はいはーい!!オイラわかるー!!》


「ケーキだよ。お前今日誕生日だろ?」


「あ・・うん。」


リオナは少し照れながら俯いた。


毎年毎年、マーシャがちゃんと祝ってくれるから、嬉しくて、俺は幸せ者だと実感できるのだ。


「それにしてももう17歳かぁ。俺と5歳差じゃん。」


「ぬかす日もそう遠くはないね。」


「その前に無理やりルナと契約させてやる。」


三人は席に着こうとすると、
ある者とバッチリ目があった。



それは天敵コール



「おぉこんな所でテメェとあうとはな!!ついてねぇぜ!!ギャハハハ!」


「・・・・ホントついてないよ・・・ははは」


「ああ!?やんのか!?」


コールはリオナにつかみかかった。


「・・やんない。朝からそんな元気ないし。」


「んだとテメェ!絶滅危惧種はそれらしく部屋に引っ込んでろ!!」
「はははははははははは」
「!?!?!?」


なぜか突然マーシャが笑い出し、コールは驚きながらもマーシャを睨みつけた。


「君おもしろいこと言うなぁ。絶滅危惧種か。確かにそうだよなぁ。てかもう絶滅かも。はははは!」


そう言ってマーシャはリオナとB.B.を連れてさっさとテーブルについて食事をし始めた。





残されたコールはただ呆然と立ち尽くしていて。


「お・・俺が・・・・おもしろいだと・・・!?」


不思議な気持ちがあふれ出すコールはボーとしながら部屋へ戻っていった。












その日は
シキからの命令により
シキ達と共に庭の手入れをしていた。


いつもの庭師が休暇に入ったらしい。



誕生日だってのに容赦ない。





「よっし。」


リオナは頭にタオルを巻き、
気合いを入れて、
一気に草を抜いていく。


そして抜いた草はB.B.がはいていくという流れ。



シキとシュナは木の手入れをしている。


あっちの方が楽そう・・・。




しかしマーシャはというと・・・


「なぁお前らちょっと見てろよ!」


「??」
《??》


2人はいったん手を止め、
マーシャに目をやる。


マーシャはなぜか悪魔を引き出し目を赤く染め、
ナイフを大量に出して変形させていく。


するとナイフはみるみる形を変え、
巨大な鎌になった。


《おお!!》


「必殺!"死神草狩り"!!」


そういってマーシャは鎌を横に振りかざした。


マーシャの周りにあった草が、
一気に刈られて宙を舞う。


「おお!」
《すげぇ!!》


しかし刈りすぎたせいで土が見えている。


「はははは!!ちょっと刈りすぎたか?」
「ちょっとじゃない!!!!!」


ガツン!!!!


「イテェェェェェェェェェ!!!!!!」


後ろからシキに殴られて、
マーシャは頭を抱えて座り込んだ。


「・・・・給料から引いとくから覚悟しとけよ・・・・」



思いっきり睨みつけてからシキはもとのポジションに戻っていく。


そして遠くからはシュナの笑い声がかすかに聞こえてきた。


「くそっ。シキのバーカ。」


シキが怒るのは当たり前だろと思いながら、
リオナとB.B.も作業に戻った。












「あの・・・・すみません・・・・」



大分たった頃、
突然後ろから誰かに呼ばれ、
リオナはいったん作業をやめて軍手をはずし立ち上がる。


「はい?」


振り向くと、
そこにはボロボロの黒い布を頭から羽織ったひとりの少女が立っていた。


歳は同じくらいか少し年下かというくらいだ。


「あの・・・・屋敷内に・・・ルナ様がいらっしゃると聞いたのですが・・・・・・」


リオナは答えるのに少し困ったが、
ここにいるということは敵ではないだろうと思った。


「ああ・・・・いるよ。」


そう言うと少女は少し嬉しそうに口を開き、
フードの下からリオナを見上げた。


薄黄色の綺麗な色の髪がフードから少しでていて、リオナは思わず見とれてしまう。


綺麗だなぁ・・・


「あの・・・!!ルナ様に会わせていただけないでしょうか!!」


少女は突然リオナにしがみつき、
懇願しはじめた。


その時ふとリオナはあることに気がつく。


「君・・・・もしかしてエージェント?」


少女の瞳は悪魔のような血のように真っ赤であった。


「いや・・・エージェントではないのですが・・・・・ダメですか?」


少女は悲しげにリオナを見上げる。


「いや・・・ダメじゃないけど・・・・・」


リオナは少女の手を引いて、
頭に大きなこぶを持つマーシャの元に連れて行った。


「ねぇ、この子がルナに会いたいって。」


「え?あっそう連れてってやれば。」


あっさり許可が下りたため、
リオナはB.B.と共に少女を連れて屋敷内に入っていく。







「おいマーシャ。あの子は?」


シキは少女を見ながら不安げな顔をして近寄ってきた。


「ルナに会いたいんだとさ。」


「あの子どこかで・・・・」


シキは記憶を辿る。


「ああそうそう、瞳が真っ赤だったな。悪魔以外でもあんなに真っ赤な種族がいるんだな。」


「・・・・・・!!!それホントか!?」


「何が?」


「瞳の話だ!!この世で瞳が赤いのは悪魔だけだ!!」


「じゃああの子もエージェントか?」


「ちがう!!あの子は・・・・というか早く追いかけないと!」


シキは黒の屋敷に向かって走り出す。


マーシャには訳が分からず、
シキをいぶかしげに見た。


「?なんでだよ?」


シキは青い顔をして振り返る。


「ルナが危ないかも!!」





















その頃、
リオナと少女はエレベーターに乗っていた。


「ねぇ、君ルナの知り合い?」


「え・・・・ええまぁ・・・・」


少女は少し気まずそうに下を向く。


「・・・・?君この辺に住んでるの?」


「あ・・・はい・・・・・一応・・・」



「・・・・?」


曖昧な返事ばかりでリオナは違和感を感じた。






そしてルナのいる階につくと、
部屋の扉を開いて少女を入れる。


念のためリオナ達もすぐ後ろをついて行く。


「ねぇB.B.。あの子の目、見たか?」


《んーん。見てない。》


「真っ赤な目してた。でもエージェントじゃないらしいし。」


《でも瞳が赤いのは悪魔の一族だけだ。》


「じゃあなん・・・・」


その時。



突然少女は羽織っていた黒い布を脱ぎ捨て、
物凄いスピードでルナに向かって走り出した。


手をみると、刀が握られている。


《ムジカ!?》
「・・・!!」


リオナ達も慌てて追いかける。

が少女は予想以上に足が速い。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!?」


ルナも殺気に気づき、
こちらに顔を向けた。


「ルナァ!!逃げろ!!」


リオナは必死に叫ぶが、
目の見えないルナには無理だった。


少女は口元をひきつらせ、
強く地を蹴る。


「死ね!!ルナ=ローズ!!!」



「ルナァ!!!!!!!!!」



ドサッ・・・・・!!!



人が倒れる音がした。



それはルナじゃなく、
なぜか少女が地面に横たわっていた。


しかもルナは目の前から消えている。


すると突然、
目の前にサッと何かが降り立った。


「ふぅー。危ない危ない。万事休すってこーゆーことだな。」


リオナ達の前に降りてきたのは、
ルナを抱えたマーシャだった。


「のんきなこと言ってる場合かよ・・・・。」


リオナはあきれながらも、
ルナが助かった安堵感でため息をつく。


「リオナ手伝え。あの子捕まえなきゃなんねぇから。」


マーシャはルナをおろすと、
少女に近づいていく。


少女は倒れたまま動かない。


「まさか殺してないよね?」


「まさか。」


そう言ってマーシャは少女の顔をぺちぺち叩いた。


すると少女は目を開き、
ぼうっとしながらマーシャを見る。


「よぉ起きたか?悪魔ちゃん。」


「悪魔!?」


そういわれると、
さっきはコートで見えなかったが背中に悪魔の翼が生えている。


どうりで目が赤いわけだ。


マーシャは少女を縛り上げると、
ぐっと引っ張り、体を真っ直ぐにさせた。


「・・・・・・。」


少女の表情は先ほどの殺気に満ちた感じから一変して、
今はこの世の終わりのように目がうつろいでいる。


「大丈夫。殺しはしないさ。ただ一つ言わせてもらうとだな・・・・・」


マーシャは少女の耳に小さく囁く。


"ルナを殺すのは俺だ。"


リオナには聞こえないように。


「なんて言ったんだ?」


リオナは少し訝しげに首を傾げる。


「何でもなーい。」


「・・・・?」


すると扉から走って駆け寄ってくる五・六人の影が見えた。


シキを先頭にくる様子から、
恐らくマスターの使用人たちだろう。


さらにその後ろからはシュナと、
ダーク・ホーム専属の医者、Dr.デヴィスも一緒にかけてくる。



リオナはただ騒がしくなっていく現場を呆然と見ていた。



とんだ騒ぎになってしまった。


俺のせいか?


いや、マーシャのせいだ。


誰がなんと言おうとマーシャのせいだ。


・・・でもシキには通用しないだろうな・・・


リオナはこの後シキに怒られるのを想像して、
顔色を悪くした。



それにしても本当にすごい騒ぎとなってしまった。


シキをはじめとする使用人達は慌ただしく少女を大きな手錠で束縛し、
逃げないように四方を固めている。


「ほらさっさと歩け!!」


「・・・・・・・・」


一人の使用人が少女の背中をボンッと押すと、


少女はよろめきながら前にでた。



「・・・・・・・・・あ。」


一瞬


少女が泣いてるように見えた。


気のせいだろうか・・・・。





ルナの方は、
Dr.デヴィスと少し言い争っているようだ。


「だからルナちゃんさぁ、ケガしてたら困るっしょ!念のため医務室きなさい!」


髭面に強面。


リオナもDr.デビスには何度も世話になっているが、
できるだけ世話にはなりたくない。


なんてったって、手術マニアだから。

「・・・私は大丈夫です・・・・・・・・ですからあの子を見てあげてください・・・・・どこかわからないけれど傷を負っているみたいなんです・・!」


ルナにしては珍しく、
声を張り上げる。


「・・・ルナちゃんわかってるのか?あの子はルナちゃんの事殺そうとしたんだよ?」


Dr.デヴィスは呆れながらたばこを吸おうと火をつけるが、
すぐにシュナに消された。


「ここは禁煙ですよ?Dr.デビス。」


「・・・・・・・・・。」


シュナはますますニコニコ笑う。


本当にシキに似てきた。



「・・・・・・・・・・・・・たく仕方ないな。あの小娘も診てやっから医務室にはきなさい。いいな?」


その言葉にルナは満面の笑みで頷いた。


よし、とデヴィスは頷くと、
リオナを呼んだ。


「おいリオナ。俺あの小娘見に行ってくっからお前ルナちゃんを運んどけ。」


「俺は無理だと思う。」


「あ?なんでだよ。」


「あれ・・・・・・。」


リオナは自分の後ろを指さす。


するとリオナの後ろには
目をギラギラ不気味に光らせ、
怒りのオーラを出しまくっている男・・・シキがいた。


しかも右手にはすでに昇天しているマーシャが見え、
リオナは思わず身震いする。


「説教か。まぁ生きて帰って来いよ。」


「・・・・おう。」

こんな事でシキを怒らせるとは・・・・・


シキは怒ると本当に怖い。


死んだ方がマシだ・・・・


そんなことを思いながらも
リオナはシキの元へ行った。


















案の定
シキからの説教は数時間にもおよび、
しかしながらゲンコツはふたつですむという奇跡は起きた。


でもマーシャはともかく俺のせいじゃないだろ・・・



「なぁあの娘は結局なんなわけ?」


マーシャは頭に出来たコブをさすりながら呟く。


シキの表情から怒りはすっかり消え、
めがねを押し上げていつものエリートモード(マーシャ的)に入った。


「あの子はムジカ。れっきとした悪魔だよ。しかも天上界の長、サタンの娘だ。」


「すごい子だね!!」


シュナは興味津々。


「ああどーりで。みたことあるとおもったわ。」


じゃあなんで止めなかったんだよ、とマーシャはシキに再びどやされた。


「・・・でもなんで人型?」


人間にでも取り付いたのだろうか。


《知らないの?サタンは人間の女と結婚したんだ。53回目のね。》


「だから見た目は人型なんだよ。でも中身はB.B.より悪魔に近いかもな。」


《まぁオイラは元が人間だからな。》


人間と悪魔のハーフか・・・・


いろんな意味で・・・・


「・・・・・なんか複雑。」


《?何が??》


「・・別に。えいっ。」
《イタイイタイ!のびる!》


リオナがB.B.の耳を引っ張っていると、
勢いよく扉が開かれ使用人が入ってきた。


「シキ様!ムジカが目を覚ましました!」


「今行く。いいか三人とも!これからは考えて行動しなさい!わかったか!?」


「うぃーす」
「うん」
《まかせとけ!》


この返事からして不安だ・・・

メチャクチャ不安だ!!


「・・・・。ったく。それじゃあな。シュナ行くぞ。」


シキは一度咳払いをしてからすたすた歩いていく。


「ああシキさん待ってよ!!」


シュナは三人に手を振ると駆け足でシキを追った。


「・・ちょっと待ってシキ!!」


「・・・・・?」


リオナの呼びかけにシキは半分部屋から出かけた体を戻した。



リオナはなぜかマーシャとB.B.を引っ張っていき、シキに近よる。


「リオナ痛い痛い。」


《だから耳引っ張るなぁ!!》



2人の悲鳴もお構いなしに、リオナはいつになくニコニコして明るい口調で話し出した。


「ねぇシキ、俺たちも行っちゃ・・・」
「ダメ。」
「・・・・・・・・。俺たち静かにし・・・・・」
「ダメ。」
「・・・・・・・・シキのためにならなんでも・・・・・・」
「ダメったらダメ!」


リオナは一気に作り笑顔を崩し、頬を膨らます。


「・・ケチ。」
「ケチで結構。」
「・・・アホ。」
「リオナほどではない。」
「ガミガミオヤジ。」
「おやじはないだろ・・・・」
「テンパ。」
「わざとだ。」
「むっつりスケベ。」
「!?な・・・なんだと!?!?」


シキとリオナは睨み合う。


マーシャとシュナとB.B.は
呆れてため息をついていた。


するとリオナは口元をにやつかせ、楽しそうにシキの肩をつかんだ。


「・・俺、知ってるよ?」


「!?な・・・?」


「シキが夜トレーニングルームで・・・・」
「あああああああああああああああああ!!!わぁぁぁかったわかったぁぁぁ連れてくよ連れてけばいいんだろぉぉ!?」


「・・そう。それでいい。」


リオナは満足そうににこっと笑った。


シキを手なづけたリオナを見て、
三人は尊敬とともに恐ろしさを感じた。


「・・よし、マーシャとB.B.も行こっ」


《おー!!》


「俺は行かなくていいや。」


珍しく乗り気じゃないマーシャに、
リオナはガッカリしたと言わんばかりに眉を下げた。


「・・えー。行こーよ。」


「えーめんどくさいじゃん。B.B.と行って来いよ。あっ、もしかして寂しいとか?リオナは寂しがり屋なんだから〜」


「・・違うし。マーシャがいれば何かしら役にたちそうじゃん」


「ふーんあっそ。もっと可愛くおねだりして欲しかったけど。じゃあ行く。」


そんだけの理由でくんのかよ・・・・・・


本当に気まぐれなマーシャだった。



















エレベーターに乗り込むと、
シキはボタンをふざけてるのかというくらい色々押していく。


また秘密の部屋ってやつか。


すると、エレベーターは一気に急上昇を始め、
リオナ達は手すりにしがみつく。


ルナの部屋は100階なのに、それより上って・・・・


だいたい18階までしかない建物になぜ100階?


一体この黒の屋敷はどうなってるんだ・・・・


考えるだけで頭が痛くなる。



エレベーターは段々とスピードを緩め、
表示は"シークレット"とでている。



エレベーターを降りると、
ルナの部屋と一変し、
目の前は暗くて長い石畳の廊下が続いている。


「いいか?ぜぇぇぇぇぇぇたい勝手な行動をとるなよ!?物に触るのも禁止!いいな!?」


シキはとどめを刺すように他の四人に釘を刺す。


「はい!」
「はぁい。」
「へーい。」
《おー!》


若干不安を抱きながらも、
シキはろうそく片手に歩き出した。


廊下にはいくつもの扉があり、
上に小さくあいた窓からギョロギョロ動き回る目がいくつも見える。


「・・・・なぁシュナ・・・こいつらなに・・?」


リオナは初めてみる光景に、
思わず息をのむ。


「ここに閉じこめられているのは世界中で極悪犯罪を犯した極悪犯達だよ。」



「・・・・?でもそういうのは警備連合何たらが管理してるんじゃないのか?」


「警備連合共和国ね。彼らは表向きの犯罪しか取り扱わないんだ。ここにいるのは裏の犯罪を犯した人たちだ。」


「ああ・・・最近はやってる"悪魔狩り"の奴らとか?」


「そうそう。そうゆう事件のね。」


"悪魔狩り"とは、
ダーク・ホームメンバーだけに襲いかかってくる事件のこと。

これにフェイターは一切関係なく、
反悪魔、すなわち神派の者達によるものらしい。


このせいでダーク・ホームのメンバーも激減。


今では10年前の半分ほどしか残っていない。


一番奥まで行くと、今までの扉とは少し違う扉にたどり着いた。


ドアには結界のような赤いマークがかかれている。


シキがそのマークに触れると
そのマークは消え、
扉が入ることを許すかのように静かに開いた。










ムジカと呼ばれる少女は部屋の隅にうずくまっていた。


小さく、かすかに体を震わせながら
まるで部屋に差し込む月の光を避けるように、
影と一体化している。


「ムジカ・・・・・体調は大丈夫かい?」


「・・・・・・・・・。」


「シカトかよ。」
「マーシャ!」
「はいはい。」


シキはゴホンと咳をすると、
気を取り直してムジカに優しく話しかける。


「・・・・・・なぜ君がここに来たか聞かせてくれないか?」


「・・・・・・・。」


しかしムジカは口を利くどころか顔を上げさえしない。


「・・・困ったな。」


シキは頭をかきながらムジカを見つめる。


《ムジカ・・・・》


するとB.B.はリオナから離れ、
ムジカの元にとんでいく。


「あっ・・・コラB.B.・・・・・」
「B.B.・・・!?」


ムジカはB.B.という言葉に反応して、
今まで下げていた顔をばっと上げた。


《ムジカ》
「B.B.・・!!」


ムジカはガバッとB.B.に抱きついた。


B.B.はチラッとシキを見ると、シキはそのまま続けろと促す。


「・・・・・B.B.・・・!!B.B!!」



そう言えばB.B.とムジカは知り合いだったのか。



《どうしたんだよムジカ?お前が人間界にいるなんて。》


ムジカは座り直してB.B.に向かって話しだす。


「・・追放・・・・され・・・・たの・・」


《ぇえ!?なんでまた・・・》


「サタンは知っているのかい?」


シキの優しい問いかけに、
ムジカは目にいっぱい涙を溜めて、
首を縦に振った。


「・・だ・・だって・・・・・私・・・お父様に・・・追放されたんだもの・・・」


「・・・・・!?」
《何でだよ!?》


「・・・お母様が・・・逃げ出したの・・・。人間界へ・・・・」


「ディズさんが!?」


ムジカの母親であり、天上界の長、サタンの妻であるディズは、昔はダークホームのメンバーの一人だったようだ。


「理由は・・・・わからない・・・・でもお父様はカンカンで・・・・・お母様を裏切り者として見つけ次第殺すとおっしゃって・・・・・・」


《・・・・・・でもなんでムジカが追放?》


「・・・わた・・しは・・・・裏切り者の・・・女の・・・娘だから・・・・・・・汚らわしい子供だって・・・・・」


ムジカは再び顔を埋める。


そして肩を震わせ、
何かに耐えるように、
唇をかんだ。


「本当は・・・私も・・・・殺されるはずだったの・・・・・・・・・禁忌の子は始末されるべきって・・・」


「!?」
《!?!?》


「でも・・・お父様がある条件を出してきたの・・・・。次の満月である1週間後までに・・・・・悪魔達からの攻撃を避けて上手く人間界に行き・・・・ルナ=ローズを殺すことが出来たら・・・私を殺さずに逃がすと・・・。」


自分の子供なのに・・・ひどすぎる・・・・


リオナは思わず顔をしかめる。


「だからルナに殺しかかったのか・・・・」


「ごめんなさい・・・・・」


「でも次の満月って・・・」


リオナは牢屋の高いところにあいている小さな窓から空を見る。


「明日が・・・・・満月なんです・・・」


《え!?じゃあムジカは明日殺されるのか!?ちょとマーシャどうにかしてくれよぉ!!》


「・・・・まいったな。」


《シキィ!!》


「悪いが俺には・・・」
「いいよB.B.・・・・・もう・・・いいんだよ・・・」


《ムジカ・・・》


「ここまで逃げてこられただけ・・・すごいでしょ?」


ムジカは苦しそうににこっと笑う。


うっすらと浮かび上がる青い痣は
体中を点々と染めていた。


見ているだけで痛々しい。


《ば・・・バカやろう!!バカやろう!!》


B.B.はムジカの頭をポカポカ叩くと牢屋を飛び出していってしまった。


「おいB.B.!!・・・って行っちゃったし・・・。」


部屋が一気に静まりかえる。


「・・・・・シキさん・・・どうしますか・・・?」


シュナは腕組みをして悩んでいるシキに、答えを求める。


「・・・・でもムジカを助けるのは無理だ・・。なんといってもサタンの命令だから・・・・」


「問題はムジカをどこに連れて行くかですね。」


シュナの一言に、
リオナはハッと顔を上げた。


「どこにって・・・?」


「このままムジカをここにおいておいたら悪魔達に俺たちもやられかねない。生身の悪魔は強いから。」


「・・・じゃああの子をどこか外に追いやって見殺しにするのか!?」
「リオナ。」


マーシャはリオナを止めようとするが、
リオナは声を荒げ、
ムジカの前に立ちはだかった。


「リオナ・・・・これは難しいことなんだよ・・・・。天上界の悪魔は人間界の赤の屋敷にいる悪魔みたいな気さくな奴らじゃない。」


「でも・・・・・!!」


こんなことがあっていいのか・・!?


この子は・・・なにもやってないのに・・・!!


「あの・・・・」


すると争いを止めるかのようにムジカが口を挟む。


「明日私を黒の屋敷の裏の森に連れて行ってください・・・。」


「あんた・・・・・」


リオナはムジカの肩をつかみ、
左右に揺さぶる。


「・・・あんたはそれでいいのかよ!!死ぬんだぞ!?あんたの仲間に・・・オヤジに殺されんだぞ!?」


昔にもあったな・・・


あれはたしか10年前のミュージックカウンティーで・・・

罪なき人間が殺されていく・・・


ダメなんだ・・・・


どんなに遠くて違う種族でも・・・こんなことは許されない・・・許しちゃいけないんだ・・・!!



「・・・ふふっ・・・・・・・・仲間・・・・・・か。」


「・・・・?」


「・・・気を使ってくださってありがとうございます。でも私はお父様に殺されるなら幸せです。」


シキはリオナを後ろに下げ、
ムジカの前にかがみこむと、
手をつかみ、
そっと手の甲にキスをした。


これでも、彼女は我らが王、サタンの娘・・・


敬意を軽んじてはいけない。


「・・・・明日・・・・夜10時にお迎えに参ります。」


その表情は、とても苦しそうで、
つらそうだった。


「はい。」


「それじゃあ戻ろうか。」


「は・・・はい!」


シキは急いで扉を開く。


シキが先に部屋からでると、
マーシャはムジカに近寄り、
くしゃくしゃっと頭をなでてやった。


「・・・じゃあなムジカちゃん。何もしてやれなくて悪い。次生まれてくるときは幸せに・・・・。」


「ありがとうございます・・・。」


マーシャもそっとおでこにキスをすると、
部屋を後にした。


「・・・・・・・・・・・。」


リオナはというと、
ただその場で立ちすくみ、ムジカを見つめていた。


「リオナ・・・・」


シュナの呼びかけで我に返り、
急いで出ようとする。


「あの・・・・」


するとムジカがリオナの足をつかみ、
リオナを止めた。


「あの・・・・一つやり残したことがあるんです・・・・」


「やり残した・・・こと?」


「はい・・・・・お願いできますか?」

「・・・?」





今日は誕生日なのに本当についてない。


でも・・・この少女との出会いから・・・運命の螺旋が再び動き出したんだ・・・。








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