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【完結】 Novel〜Lord's Soul〜
Prologue zero リオナ×ウィキ
<わんわん物語>






6月12日


天気は晴れ


のちに曇り


夕立には要注意







俺はいつもの廃棄場の山の上で本を読んでいた。


「ねぇリオナみてみてぇ!!」


「?」


ウィキは満面の笑みであるものを見せる。


「・・・・・子犬?」


「そう!そこで拾ったの!」


「そこって?」


「そこのダンボール!」


確かに"あげる"と汚い字でかかれているが、
なんか怪しい。


「へぇ。で何の実験に使うの?」


「ううん!!これは実験体じゃなくてペットだよ!」


「・・・・・なーんだ。」


ちょうどいい実験体だと思ったのに・・・。


俺は目を子犬から本に戻す。


「あーちょっとリオナァ〜!」


「・・・何?」


「散歩行かないの?」


「行かないよ。1人で行ってくればいいじゃん。」


「えー!?一緒に行こーよぉ!?」


「ヤダ。」


「何で!?」


「俺犬嫌い。」


「ウソだ!」


「ウソじゃない。」


「面倒なだけでしょ。」


「・・・・・・・・・・・・。」


図星すぎて返す言葉が見つからない。


仕方なく、
ウィキと子犬と散歩にでる。




ウィキはどうしてもバルドに子犬を見せたいらしく、
まずはバルドの家に向かう。


家が見えたとたん、
ウィキは子犬を抱えて走り出し、
ドアをノックした。


コンコンコン


返答はない


コンコンコン


いないのかな?


コンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコン


いやいやいやいや叩きすぎだろ。


「おいウィキ・・・いないんだって。あきらめよ?」


「むぅ・・・・・・・・。」


ウィキは頬をぷぅと膨らますが、
すぐにガッカリしたように肩を落とす。


はぁ・・・どうしようかな。


するとウィキは子犬を持ち上げて、なぜか謝罪をし始めた。


「ごめんねポン太0612・・・・。バルド今留守みたい。」


「ポン太0612・・・・?」


「うん。こいつの名前!」


「いや・・・0612って?」


「今日は6月12日でしょ?だからポン太0612!かわいいでしょ!?」


「あ・・・ああかわいい・・・・ね」


心にもないことをいってしまった・・・。


しかも自分の顔がひきつってることに今気がついた。


「ウワァゥーウワァゥー・・・。」


急にポン太0612が鳴き始めた。


か・・・・・・かわいくない・・・・・!


「どうしたの!?どこか痛いのポン太0612!?」


ねぇその名前言いづらくない?
なんでそんなに頑張って言わなきゃいけない?



ウィキはそんなことも気にせず、
ポン太0612の体をまさぐりだす。


「違うよウィキ。こいつきっとおなかが減ってんだよ。」


「ウワァゥーウワァゥー!!!」


だからかわいくないって。



はぁ・・・・もうおいてこーよ・・・・


もっと楽しいことしたい。


本読むとかさ。


すると今の感情が顔にでてしまっていたのだろうか、
ウィキが暗い顔をして俺の顔をのぞき込んできた。


「ごめんリオナ・・・・・。つまらないよね。」


そんな顔すんなよぉ・・・


あーもー・・・・・。


「ううん。別にやることないし。ウィキがたのしければそれでいいし。」


嘘は言ってない。


「・・・ホント?」


「ホント。ほら、餌をやりに行こう。」


「・・・・・うん!」


俺はウィキとポン太0612を連れて、
ある場所に向かう。


そう、
我が家自慢の八百屋だ。


相変わらず客は来ていない。


しかも父さんに関してはアホ面で寝てるし。


これじゃ客も来ないよ。


「おーい、父さん。おいってば。起きてよ。」


「んぁ・・・・?おーお前たちどうした?ってなんだそれ。」


ウィキは腕を伸ばして父さんの顔の前に差し出す。


「ポン太0612だよ!」


「ポン太0612!?お前が名前付けたのか!?」


「うん!リオナと一緒につけたの!」

嘘つけ。

一言もいってねーよ。


「ほぉ〜お前らネーミングセンス良すぎだぜ!!流石は俺の息子たち!!」


あんたがセンス一番ねぇ―。


「お母さんは!?お母さんにも見せてあげたい!」


「ああモナなら今中でトラ婆と話してっぞ?」


それを聞いてウィキは母さんとトラ婆の元へ走っていった。


残された俺と父さんのとこにも嬉しそうに同じことを話すウィキの声が聞こえる。


なんか微笑ましいな・・・。



でも・・・・


でも一言言わせてもらうと、
嘘はいってほしくない。嘘は。


てか俺だったらもっといい名前つけたし。


「あっそうそう。なんかエサない?あいつおなかが減ってるみたいなんだ。」


「ああトシオ001-414-2130?ちょっと待ってろ。」


・・・・・・・・・・誰?


トシオって誰!?


ポン太0612だから!


名前忘れるの早くない!?


さっきアンタあんなにほめてたじゃん!!


てかそれウチの電話番号だから!



すると中から母さんとトラ婆が出てきた。


「あーまってまってダン!エサならあるから!」


そう言って母さんは店の戸棚からパンくずを出す。


「おーいいのあるじゃん!さすが俺のマイワイフ!」


「これはアタシがモナにやったんだよ。」


そう言ってトラ婆はポン太0612を抱えて空き箱に座る。


すると母さんは目を輝かせて手を挙げる。


「はいはーい!!私エサあげたい!!」

「えー!!」


ウィキは嫌そうな顔をする。


「お願い!!つぎやらせてあげるから!!」


「うーん・・・・じゃあいいよ。」


「やったぁ!」


ってかそこは普通子供に譲らない!?



それでも母さんは嬉しそうにポン太0612の口元に持って行く。


「ほらお食べ!イベリコブタ!!」


犬だから。


ねぇそれ犬だから!


どこをどう見たらブタになる!?


「違うよ!!これはポン太0612だよ!?」


「いやいやトシオ001-414-2130だから!」


「やぁだぁ!イベリコブタがいい!」


何故か三人は名前でケンカをし始める。


はぁ・・・もう帰っていい?


するとトラ婆は急に笑い出した。


「ワァーハッハッハ!!リオナも大変だねぇ!こんなのと一緒じゃあ。」
「うん。」


思わず即答。


「それにしても犬っていうのはいいもんだね。」


「トラ婆はかったことある?」


「そりゃあるさ。昔、孫がおまえさん達ぐらいの時に犬が欲しいって騒いでねぇ。仕方なく買ってやったんだよ。でもある日突然死んじゃってねぇ。かわいそうなことしたよ。」


「・・・・名前はなんていったの?」


「たしかね・・・・・マーシャ2号だったかね。」


・・・は?


「孫がこの犬は自分の分身ダっていってね。自分の名前つけたのさ。あたしゃ反対したんだけど聞かなくてさ。」


・・・・・てかさ・・・・ペットってそーゆー名前つけられる生き物だっけ・・・



つぅかトラ婆の孫絶対に犬のことパシッてたっしょ・・・・。


そりゃ突然死ぬわな。


てかそこの三人はいつまでケンカしてんだ。


もうほんとに帰るよ!?


「あのさ・・・俺先に」
「リオナは!?」


「・・・・はい?」


三人はリオナに詰め寄る。


「リオナはどれがいい!?」


「どれがって・・・・」


「もちろんポン太0612だよね!?」
「もちろんトシオ001-414-2130だよな!?」
「もちろんイベリコブタよね!?」


・・・ほらこの展開。


マジめんどい!


はぁ・・・どうしよっかなぁ・・・


ここはあえてのシカトとか?


でもその後がまた面倒だしなぁ・・・・


そうだ・・・ここはこれで・・・


「じゃあマーシャ3号。」


うん。これが一番無難な道。


トラ婆の孫・・・・・俺はアンタの意志を受け継ぐよ。


パシリにはしないけど。


しかし三人はいかにも不満そうな顔をしている。


「えー!?それじゃあ俺たちがつけたなま」
「何か。」


トドメに一発睨みつける。


「・・・いや・・・マーシャ3号でいいです。なっ!?ウィキもいいだろ!?」


「うーん・・・まぁリオナが言うなら・・・」


「仕方ないわね。」


あっさりしすぎだろ。

いやむしろ助かったケド。



するとマーシャ3号は俺のところによってきて、
体を擦り付けてくる。


・・・なかなかカワイいじゃん。


「リオナになついてるよ!よかったね!」


「・・・あーうんまぁ・・・・・・」


「俺朝と夜の散歩係〜!!!」


「じゃあわたしエサ係〜!!!」


飼う気満々かよ・・・


「じゃあ僕とリオナは総合係〜!!!」


総合・・・?
てか俺も入ってんのね。


「ほらおいで!マーシャ3号!」


ウィキは満面の笑みでマーシャ3号にむけて腕を広げる。


まぁ・・・・
よかったなウィキ。





・・・が、マーシャ3号は駆け寄ろうとしない。


というかびくとも動かない。


目は開いてるし・・・いたって正常そうなんだけど。


「あれー?どうしちゃったの!?」


ウィキはマーシャ3号を持ち上げる。



そして事件は起きた。


なんとマーシャ3号の首がもげたのだ。


「マーシャ3号!?!?」


唖然。


なにが起きた!?


開いた口がふさがらないっていうけど
まさにそれだ。



しかしトラ婆はいたって冷静。


マーシャ3号に近づき、
首と胴体を持ち上げる。


「なぁんだこれおもちゃだよ。」


「おもちゃ!?」


「これ魔動式ペットだよ。それにしてもリアルだね。」


なんだこのオチ・・・


今まであんなに言い争ってたのに・・・





「ポン太0612・・・・・」
「トシオ001-414-2130・・・」
「イベリコブタ・・・」


三人は思わず白目をむく。


こりゃ重傷だ。





結局マーシャ3号も突然死。


マーシャ本体はちゃんと生きてるのだろうか?


いや・・・この展開だと生きてはいない・・・か。










その夜は三人とも死んでいた。


食事中は一切口を利かず、
いつもより早く寝た。


まぁ次の日にはケロッとしていたのは言うまでもないけど。



それにしてもマーシャ3号は気の毒だったな。


別に思い入れはなかったけど。


でも寝る前に一応
会ったことのないマーシャやそのペットのために拝んだよ。


安らかに眠ってくれって。












数年後に出会うとも知らずにね。



END



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あきゅろす。
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