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【完結】 Novel〜Lord's Soul〜
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時は過ぎ









大魔帝国壊滅事件から10年がたった。






フェイターはミュージックカウンティーの事件以来、
姿を現さず、
一切動きを見せなかった。








その間に、
ダーク・ホームは
ローズ・ソウルの確保に全力を尽くしていた。





五大帝国のうちの二つが壊滅を迎えてから、
光妖大帝国、いわゆるフェイターたちがローズ・ソウルを2つもち、
未だ健在の大武練帝国と森羅四大帝国にあるローズ・ソウルを、ダーク・ホームが回収しようとしていた。





そして残りの一つを持つのが・・・・・・

















「・・・・はぁ。どうしよ。報告書終わらない・・・。」



図書館の机で紙に顔を埋めている銀髪の少年。



リオナ=ヴァンズマン。



彼がこのダーク・ホームにきてから10年がたち、現在16歳。



3rdエージェントから2ndエージェントにランクが上がり、
今では大人に負けないくらい仕事をこなしていた。




今リオナは、
任務10件分の報告書を書いている。


今まで溜めていたツケが回ってきたのだ。



ダーク・ホーム総取締役兼マスターの第一使用人のシキに怒られ、
終わるまで出てくるなと図書館に閉じこめられたのだ。



・・・・・昔は優しかったのに。



リオナはペンをくるくる回しながら辺りを見回す。


さっきまで見張りが何人かうろついていたが、
今は見えない。


今のうちに逃げるか・・・


リオナは大量の報告書を抱えて、
そおっと出口に向かう。



「どこ行くのリオナ?」


「・・・・・・。」


そっと振り返ると
そこにはニコニコしながら立つシュナがいた。


「・・・あ、シュナ。俺は今からトイレに行くから。じゃあ。」
「ちょっとまった。」
「・・・・・。なに?」


シュナはリオナの背中に回り、グイグイ押して机に戻す。


「トイレ行くなら報告書は置いてけば?邪魔だろ?」


ニコニコ笑うその顔に、
"逃げるなよ"と書いてある。


「・・・・・・・シキめ。」


ヤツは抜け目がない。

シュナに言われたらどうしようもないじゃないか。



リオナは仕方なく机に座り直す。


「はぁーもぉ・・・おわんないよ。」


シュナもリオナの隣に腰掛ける。


「はは!今まで溜めてたのが悪いんだよ!」


「だって面倒くさいじゃん・・・。」


リオナは言ってからしまったと思う。


「あっ!!また面倒くさいって言った!!本当にマーシャさんそっくりだ!」


「一緒にいると似るもんなの。」


シュナも実際シキに似てきた。


厳しいところとか。


「よしリオナ!早く終わらせて遊ぼ!!俺も手伝うから!」


「・・本当?助かる!」


2人は手分けして作業を始めた。









なんとかやり終えたのは夕方6時を回ってから。


「「おわったー!!」」


2人は思わず抱き合った。


絶対終わらないと思ったからだ。


最後の一枚を、
報告書の山に置く。


リオナは感激で涙が出てきそうだった。



すると突然、
2人の座るテーブルに一人の男がやってきた。


「てめぇら抱き合ってホントはデキてんじゃねぇの!?ギャハハハハハ!!」


突然現れたのは・・・


「・・・コール・・・・」


彼の名前はコール。


数年前にダーク・ホームにやってきた。


関わりなんて無かったけれど、
いつからか目をつけられ、
ちょっかいを出されるようになった。


ちょっかいどころではないが・・・


だからリオナとシュナは思わずコールを睨んだ。


するとコールはリオナの報告書を手に取ると、

ビリッと二つに破った。


「な!!なにんすんだ!!」


シュナは立ち上がり、
コールにつかみかかる。


しかし体格のいいコールは簡単にシュナを突き飛ばした。


「お前ひょろすぎ!!」
「・・やめろよ。」


リオナがシュナの前に立ちはだかる。


「ああ!?やんのか絶滅危惧種!ああワリィもう絶滅したんだっけ!?ギャハハハハハ!!」


「・・・・・。」


「こんな報告書ごときで時間かけるなんてお子ちゃまだな!!」


そう言って他の報告書を破り始めた。


「やめろよ!!」


シュナは立ち上がり、
コールを止めに入った。


「・・・・・はぁ。」


面倒くさ・・・。


一方リオナは、
席に戻り、座ってただその光景をひじを机につきながら眺めていた。


・・・・だいたい俺の報告書を破ることに何かこいつにメリットでもあるのかな


ほんと暇なヤツ・・・・。




そんなことを思いながらリオナは思わず同情の目を向けた。


そのリオナの姿を見て、コールは手を止めてリオナに顔を近づける。


「てめぇその目は何だよ!!!!」


「別に。」


「はぁ!?んだよてめぇは!!胸くそワリィんだよ!!」


そう言ってリオナに向けてこぶしを振るい上げる。


しかし、
さっとリオナの顔の前にトランプが現れ、
壁を作ってガードした。


「いっってぇな!!!!!!くそ!!覚えてろよ!!!!」


どこかのガキ大将ねようなセリフを残し、
コールは鼻息を荒げながら図書館をでていった。


「リオナ!!!!」


シュナは目に涙を溜めながら怒った口調でリオナに近寄る。


「なんで止めなかったんだよ!!リオナならあんなやつぶっ飛ばせるだろ!?」


「なんでって・・・・」


面倒くさかったから。


なんていえないし。


「ちょっとおなかが痛かった。」


「はぁ!?お腹!??!?報告書よりリオナはおなかの方が大事なの!!」


キレまくるシュナの顔は
怖いと言うよりむしろかわいい。


「わるかったよ・・・。ごめん。」


リオナは立ち上がって、
床に散らばった報告書をかき集めた。


「あーあ。粉々。」


「・・・・・・・はぁ。」


シュナもため息をつきながらもリオナの横で紙を集める。


「嘘つくならもっとマシなこと言ってよ・・・・・。」


やっぱバレてたか。


「いつかぜーんぶが面倒くさくなっちゃって死んじゃうんだからね!?」


「うん、肝に銘じとくよ。」


リオナは笑いながらのんきに報告書をパズルのようにあわせ始める。


それをみてシュナは再び深いため息をついた。


「・・・・リオナはクールなんだよ。だからコールはリオナをライバル視してるんだ。」


「・・・そうなのか?」


「気づかなかったの!?」


「うーん・・・・・・・微妙。」


でも考えてみると、
コールは何かとリオナに嫌がらせをしてくる。

しかも日に日に悪化してきているのは
リオナからの反発がないからだ。


「一回痛い目見せてやりなよ。」


「そんなこてしなくて別にいーよ。ほっとけば終わるって。」


そう言い続けて三年。

未だに続いてるんだけど
とシュナはつぶやく。





コール=ハードリンは2ndエージェントの18歳。


たちが悪いので有名。


マスターがいくら言っても聞かないくらいだ。



喧嘩を売られ始めたのは三年前。


夜会で、マスターからリオナの働きぶりを表彰された時からのようだ。


自分より目立つ奴は叩きのめす。


それが彼のモットーらしい。









リオナとシュナはエレベーターに乗り込み、
部屋へと戻っていく。


「それどうするの?」


シュナはすでに原形をとどめていない報告書を指差す。


「まぁてきとーに貼り合わせるよ。なんか悪かったな。」


「べつにいいんだけどぉ・・・」


シュナはまだ引きずっているようだ。


「・・・いーじゃんいーじゃん。あんなの放っておくのが身のためだよ。」


リオナはポンポンとシュナの肩をたたく。


そしてエレベーターが14階についたことを知らせた。


「じゃあなシュナ。今日はありがとな。」


「うん。またね!」


手を振り別れ、
リオナは部屋へ向かう。





2ndエージェントになると、
師から独立し、
好きな者とペアーを組め、
部屋も8階の二人部屋に移動のはずだった。



がしかし、



今リオナは14階のスペシャルマスターの階にいる。



それは数年前、
リオナとシュナが2ndエージェントに上がった頃のこと。



著しくエージェントが減り続けるダーク・ホーム。


その現状を止めるためにも、
マスターは今までの制度を取りやめて、
とにかくこれ以上エージェントを減らさないためにも、なるべくランクの低い者と高い者でペアを組むことになったのだ。


リオナとシュナはチームを組む気満々だったが、
マスター直々の命令により、
そのままリオナはマーシャと、
シュナはシキとになった。



だから今もなおリオナはマーシャの部屋で暮らしているのだ。


でもリオナは口には絶対出さないが、またマーシャといられて嬉しいようだ。









リオナは"マーシャ様&リオナ おまけB.B."
とかかれたプレートがかかるドアを開ける。


「ただいまぁ。」


なにやらリビングの方が騒がしい。


何をやってるのかと
リオナはいやそうな顔をしながら近づいていく。


するとその騒がしい声はテレビからのものだった。



ソファーに座るマーシャとB.B.は、
リオナに気がつき
手をひらひら振っている。


《リオナだ!おつかれー!》


「おーリオナ。お帰り。お前シキに捕まったんだって?」


「・・・てかマーシャのせいでもあるんだからな。いっつも俺が報告書だしてるんだよ?たまには書いてよ。」


「ヤダ。」


「・・・・・・。」


俺こんなに面倒くさがりじゃないぞ?


リオナはため息をつきながらテーブルに座る。


「それ何の番組?」


「ああこれ?"憧れのあなたに愛の告白!!ドキンドキンのラブコール☆"だとさ。どいつもこいつもぜったい自己チュー女ばっかだよ。」


マーシャはいやそうな顔をしながらチャンネルを変えようとする。


《あ!?オイラ見てるからかえんなよ!!》


「あっコラ。」


そう言ってB.B.はマーシャからリモコンを奪うと、
テレビに食い入るように見ていた。


「このバカウサギめ。」


マーシャはいつものように軽く暴言を吐くと、
ソファーから腰を上げて
テーブルにいるリオナの隣に座る。


「おいB.B.。あんまり近くで見ると視力落ちる・・・・・・って・・・」


リオナは画面に映る一人の少女に目がいく。


ピンク色の髪にひらひらのワンピースといういかにもブリッコ少女だ。


「へぇ。リオナこーゆーのがタイプ?」


マーシャはリオナを小突いた。


しかしリオナの顔はどんどん青ざめていく。


「違っ・・・・こ・・・・こいつコロナだよ・・・!!」


「ぇえ?まさか。」


マーシャもよーく少女を見る。


「!?まじだ!!」


部屋が一気に静まりかえった。



コロナとは、
ダーク・ホームのメイドをやっている少女。



一年前にダーク・ホームに入ってきて、
その時にリオナを見て一目惚れ。


その時から何かとリオナに付け周り、
リオナを見つけるとすぐに抱きついてきたりする。


もちろんながら嫌がるリオナは
いつも彼女と出会わないよう極力、メイドの聖地一階をうろつかないようにしていた。



「な・・・なんでコイツでてるの?」


確かにここ最近見かけてはいなかった。


だからリオナの機嫌もよかったのだが。


「あれじゃん?リオナに告白とか?」


マーシャは人事のように笑い出す。


「・・・・まさか。」


顔をひきつらせながらリオナは画面を横目で見る。


『えーでは続いて参りましょう!!お名前は?』


『コロナでぇす!!』


『コロナちゃんか!!かわいいなぁ!!じゃあ今から告白する相手を教えてくれますか!?』


『あのぉ〜仮名でもいいですかぁ?相手の方に迷惑かかっちゃうと困るんでぇ。』


『コロナちゃんは優しいなぁ!!うんうんいいよ!』


『えーと・・・・リオナくんです!きゃっ!はーずーかーしぃ!!!』


仮名じゃねぇ!!!!!なにが相手に迷惑だバカヤロー!!!


リオナは顔を机に埋もれさせる。


「まじでリオナかよ。お前これで今年8人目だよな?この色男!」


《色男!!》



なぜか2人は盛り上がっている。



『それではコロナちゃんからリオナくんへの愛の告白です!!』


コロナはアップにされて、
顔を赤らめている。


『リオナくん・・・・私・・・・前からあなたしか頭にないの・・・・・最近は他の女の子とかにキャーキャーされて・・・少し焼けちゃうなぁ・・・。だから・・・・だから私だけを・・・・私だけを見』


プチ。


《ア゙!!!!リオナ消すなよ!!!!いいとこだったのに!!!》



「・・・・・・・・・うるさい。」


リオナは怒りでリモコンを真っ二つに折り曲げてしまった。


「あーあ。ちょっとリモコンヤバいことになっちゃったじゃんリオナ君。」


「"君"はやめろ・・・・」


B.B.はテレビを付け直すが、すでにコロナの出番は終わり、
CMにはいっていた。


《ああっ!!終わっちゃった!リオナのバカやろー!!!!!》


「・・・何とでも言え。」


リオナは何も見なかったかのように、
テーブルで先ほどコールに破られた報告書をテープで貼り始めた。


「まぁた派手に破いたな。発狂したのか?」


「・・まさか。俺じゃないよ。コールだ。」


「またアイツ?ほんとリオナのこと嫌いなんだな。」


マーシャは粉々になった報告書を持ち上げてみて、
苦笑する。


「・・まぁ別にいいんですけど。」


「どぉせまた何も言わなかったんだろ?」


「・・だってややこしくなりそうじゃん。」


「一発シメときゃいいのによぉ。だからアイツもますますちょっかい出してくんだよ。」


「それシュナにも言われた。」


「だろ?なんなら俺がやってやろうか?可愛い可愛い俺のリオナをイジメたツケはデカいぜ。」


マーシャはリオナを抱きしめると、嬉しそうにニヤっと笑った。


「・・・やめとけって。マーシャがでたらもっとややこしくなる。」


「ちぇー。」


「・・ねぇ見てるんなら手伝ってよ。」


「はいはい。」


《なぁなぁオイラも手伝っ・・》
「いい。」
《・・・・・・・・・・・・。》


確かにこのまま嫌がらせがハードになってきたら困るな・・・。


というか周りに迷惑がかかったら・・・・


「・・やっぱり一回シメとこうかな。」


「ははっ。こえーな。やっぱ俺も混ぜてよ。」


「マーシャはダメ。」


《じゃあオイラがシメる!!おりゃ!!》


そう言ってB.B.はマーシャの首に飛びかかる。


「おわっ!!!離せ!コラ!」


「あーB.B.暴れるなよ。報告書が飛ぶだろ。」


部屋中が一気にギャーギャーとうるさくなった。








こうしてなんだかんだ毎日楽しい生活を送っている。






この日寝たのは結局夜中の3時頃。



もちろん次の日は寝不足。



しかもたくさんのメンバーから、コロナからの大胆告白の件でいじられ、
シキにボロボロの報告書で怒られるなんて、
リオナはまだ知らない。

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