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【完結】 Novel〜Lord's Soul〜
story21 最果ての恐怖






「リオナ・・・・落ち着いたか・・・?」


ミュージック・ホールの外でうずくまっているリオナにシキは近づく。


シュナに一緒にくるかと聞いたが、
今の自分は何もできないといって遠くからリオナを見つめていた。


「・・・・・・・・・・・・・。」


リオナはB.B.を抱きしめて、
顔を埋めたまま反応しない。


《リオナ・・・・苦しい。》


そう言うとさらにきつく抱きしめる。


「・・・・・・リオナ・・・・・」


シキはリオナの隣に腰を下ろす。


「・・・音楽祭は・・・中止だそうだ。今年はいろいろ事件が重なりすぎたからね。国王もじきにここに到着するようだ。」


「・・・・・・・・・・・・。」


リオナはふとフォルトを思い出す。


あのあと彼はうまく逃げられただろうか・・・・。




すると突然
リオナは立ち上がり、
B.B.を抱えたままミュージック・ホールへ駆け出した。


「リオナ!?」


シキは急いであとをおう。




《お・・・おいリオナ?どこいくんだよ・・・》


リオナはただ舞台を目指して走り続ける。


「・・・フォルトさんの・・・夢・・・」


《・・・・》


途切れ途切れの言葉だが、B.B.はなんとなく理解できた。





・・・フォルトさんはステージにいる・・・・必ず・・・







予想は的中していた。



リオナとB.B.は観客席へでる。


誰もいないはずのステージにはフォルトの姿。



そしてバイオリンの音がホールいっぱいに響き渡っている。



その音色は優しく・・・暖かく・・・・心に響きわたる。



なんて暖かいんだ・・・・



気づけば涙が頬を伝って流れ落ちていた。


思わず聞き入ってしまった。


時間が過ぎていることにも気づかなかった。


しばらくして、
リオナの後ろからシキと誰かがやってきた。


「リオナ・・・ここにいたのか・・・」


リオナは静かに頷く。


そしてシキの隣にいるシキと同じくらいの男性にチラッと目をやった。


「ああ。こちらは国王の息子さん、次期国王だ。」


「こんにちは。」


優しく笑いかける国王の息子に、
リオナは小さく会釈する。


「それにしても彼は誰だい?とてもいい音色だ。ぜひ父上にもお聞きしていただきたい。」


するとシキが気まずそうに口を開いた。


「・・・残念ながら彼は脱走した最後の死刑囚です。」


「・・・・・・!!そうなのか・・・・・」


国王の息子は残念そうな顔をすると
目をつむり、音楽に聞き入る。


そして最後の音色がホールいっぱいに広がると、
フォルトは自らシキと国王に近づいていった。


「脱走なんてしてすみませんでした。あと・・・」


フォルトはしゃがんでリオナと目線を合わせると、
優しく頭をなでた。


「色々ありがとう。」


「・・・・フォルトさん・・・・・・・・・」


そしてシキはフォルトの腕をつかんで
手錠をかける。


「さぁ・・・いこうか。」


「はい。」


シキとフォルトと国王の息子はホールを後にしようとした。


「・・・どうして・・・・」


しかしリオナの声に三人は足を止める。


そしてリオナは国王の息子を見つめ、
話しかける。


「・・・どうして死ななきゃならないの?・・・ただ・・・夢を一生懸命追いかけていただけなんだ・・・・・」


握る拳に力が入る。



「・・・ただ夢のために一生懸命働いていたのに・・・・それを音楽への冒涜だって・・・・?・・・・そんなのおかしすぎる・・・・・!!それこそ音楽への・・・音楽を本気で愛する人への冒涜なんじゃないんですか!?」


リオナは国王の息子にしがみついた。

シキは驚いて急いでリオナを離そうとする。


「リオナ・・!?す・・・スミマセン!!この子今頭が混乱していて・・・」
「いや・・・・・・この子の言うとおりだよ。」
「・・・・!?」


「実は・・・・僕もそう思っていたんだ。」


まさかの言葉にリオナとフォルトは顔を上げた。


「じゃあ・・・・フォルトさんは・・・」



「ただ、国王は僕じゃない。」


その言葉にリオナはシュンと肩を落とす。


「でも僕は父上に・・・いや国王に言ってみるよ。」


「・・・・・・本当・・・・ですか・・・」


リオナは目を見開く。


「ああ。今はすぐには彼を解放できないけれど・・・でもすぐに変えてみせるよ。それに彼は才能がある。このまま死刑にはもったいなさすぎる。」


「・・・だって!フォルトさん!!」


「ああ!!ありがとうリオナくん!!」


2人はピョンピョンと跳ね回った。


すると再び後ろの扉が開く。


「にーちゃん!!!」


そこに入ってきたのは5人の子どもたち。


「!?お前らなんでここに!?」


フォルトの兄弟たちだ。

兄弟達はフォルトに抱きつく。


「このウサギさんが今日ここに来いって!!」


「B.B.さんが!?」


《い・・・いやぁ別に大したことしてないし!!》


B.B.は照れながら空を飛び回る。


「ああ!本当にありがとう!!」



フォルトは本当に嬉しそうに兄弟たちと戯れた。



・・兄弟・・・・か・・・・・


リオナは目を細め、
その光景を見つめる。



俺にもいたのかな・・・・
















外はすでに夕焼け色に染まっていた。


リオナはミュージック・ホールの前の階段に座り、
ただぼんやりと夕焼け空を眺めていた。


B.B.はちょっと散歩と言ってから帰ってこない。


どこ行ったんだろ・・・・


すると後ろから誰かに肩を叩かれた。


「・・・・・・・・?」


振り返るとそこにはフォルトがいた。


「フォルトさん・・・?どうして?」


「シキさんが1日時間をくれたんだ。だから今夜はリオナくんと過ごそうと思ってね。」


フォルトはニコッと笑う。


「だったら兄弟と過ごすべきじゃ・・・」
「弟や妹たちとはこれからでも会えるから。さぁ行こう!」


そう行ってフォルトはリオナの手を引いて
今日まで泊まっていた宿に戻った。













宿についたのはすでに空が暗くなってから。


リオナとフォルトは食事をすますまで、ほとんど話さなかった。

しかし寝る直前にフォルトが気まずそうに口を開いた。



「マーシャさんのこと・・・聞いたよ。」


「そうですか・・・・・」


「僕は・・・今日君に伝えたいことがあったんだ。」


「・・・・・・・・?」


リオナは少し顔を上げてフォルトをみる。


「これは昨晩の話なんだけどね・・・・」












昨晩。


僕は夜の1時くらいまで練習していたんだ。


それで、そろそろ寝なきゃと思ってベッドに入ったら、
リオナ君達の部屋から物音がしたんだ。


まだ起きてるのかと思って僕は部屋をのぞいた。


そしたら起きていたのはマーシャさんだった。


マーシャさんはリオナ君のベッドの横に椅子を置いて本を読んでいた。


「おっフォルトか。悪いな起こしたか?」


「い・・・いや今寝ようと思いまして!」


「ははっ。早く寝ないと明日の演奏に響くぞ?」


そういうとマーシャさんは再び本を読み始めた。


「あの・・・・町がうるさくて眠れませんか?」


「いや、そーゆーわけじゃないんだけど・・・・」


そういうとマーシャさんはそっとリオナ君の髪をかき分けるようにしてリオナ君の頭をなでた。


「ただコイツがうなされてたからさ。」


俺ってやさしー
とかいいながら。


「リオナ君は結構うなされるんですか?」


「ああそうだな。まぁ昔の夢とか見てんのかな。」


「昔?」


「リオナの家族は・・色々あって死んでるんだ。そのショックか何かでリオナの頭ん中で家族の記憶が日に日に消えたり戻ったりしてて・・・・あっこれ内緒ね。」


「はい・・・・。」


「だからこうやってリオナが寝つくまで見ててやってんだ。はっ、ホント俺って優しいな。なーんてな。」


マーシャは小さく笑う。


「でもマーシャさんって本当に優しいですよ。」


僕も笑いながらそういった。


すると彼は少しだけ首を横に振ったんだ。


「俺は優しくなんてないよ・・・。」


「・・・・・・・?」


「俺はコイツに何もしてやれない。こうやって苦しんでてもただ見てることしかできない。」


「マーシャさん・・・・」



マーシャさんはリオナくんから手を離すと開いていた本を閉じた。



「俺さ、女とか子供とか面倒なのが本当に嫌いでさ、初めはこんなガキお断りだって思ってた。でもリオナはどこか俺に似てるんだ。境遇は全然違うけど。だからどうもほっとけなくてね。しかも一緒にいるとさ、イライラしてても落ち着くんだよな。今じゃ愛着までわいちゃってるよ。」


「そういわれると・・・リオナ君はどこか子供らしさがないというか・・・何て言うのかな・・・」


「子供ってさ、フツーリオナの年くらいだと、アレがほしいとかああしたいこうしたいとか我が儘だし、すぐに泣くしだろ?それなのにリオナは文句も言わないし寂しいとか弱音を吐かない。」


「そうですね・・・」


「いつアイツの心が壊れるか心配でさ。ただでさえ壊れかけてるんだ・・。だから俺が守ってやんなきゃなんないんだ。」


マーシャさんは微笑むと、
強く頷いた。


まるで自分の心に刻み込むように。


「マーシャさんにとってリオナ君は大切な存在なんですね。」


「そうだな。」


暖かい空気が流れる。


「俺・・・昔本当に大切な人がいてさ・・・その人を失ってから絶対に大切なものなんて作らないって心に決めたんだ・・・。でもそれじゃだめだって気づいた。それは逃げてるだけだって。だから今度大切な人ができたら・・・」



マーシャさんは僕をみると
力強く

そして誰よりも固く誓った・・。


「命に代えても守る。」



















「マーシャ・・・・・・・」


リオナは目頭が熱くなるのを感じる。


「どうしても君に言っておきたくて・・・・。」


「・・・・・・・ありがとうございます。」


「それじゃあ今日はもう寝よう。」


お休みと言って自分の部屋へ入っていった。




リオナは部屋の電気を消して、
ベッドにはいる。


一人きりの部屋はとても静かで、
どこか肌寒い。


一人は全然怖くない。



今まではそう思っていた。




でも




いつからだろうか。





こんなにも一人が寂しくて
怖くなったのは・・・・





「忘れちゃえばいいんだよ。」


リオナは目を開けると

隣には少年が立っていた。


気がつけばいつもの白い部屋。



「忘れちゃえばいいんだよ。」


少年は何度もささやく。


「・・・・・・何を?」


「マーシャだよ。」


「・・・・!!・・・いやだ!!」


「なんで?忘れちゃえば楽だよ。」


少年はリオナの腕をグイグイ引っ張る。


「・・・・イヤだよ!!!離せ!!!」


リオナは少年の腕を振り払って走り出す。


ただ夢中で・・・・


どこに向かうかもわからないまま・・・














ドンドン!!   ドンドン!!


「・・・・!?」


激しく窓を叩く音に目を覚ました。


時刻はまだ夜中の二時。



リオナは窓に近づき、
恐る恐るカーテンを開ける。


するとそこには黒い物体が浮いていた。



「・・・・・・B.B.・・・?」


《オイラだよリオナ!》


リオナは急いで窓を開ける。


《あー・・・・疲れた!》


B.B.はフラフラと入ってくると、
ベッドに飛び込む。


リオナはその隣に腰をかけた。


《リオナ汗だくじゃん!?しかも顔色悪いのだ!》


「・・・大丈夫だよ・・・・ところでこんな時間まで何してたの・・・?」


《・・・・まぁ・・・色々なのだ。》


B.B.はリオナから目を離し、壁を向いて横たわる。


《寝よ。明日は朝早くにでるらしいし。》


「・・・・・うん・・・・・・おやすみ」


《おう。》



本当はB.B.が何をしていたか知っていた。


ずっと・・・マーシャの乗せられた車を追いかけてたんだ。



目的なんてないのにね・・・・。






でも少しだけ



部屋が暖かくなった気がした。



















翌朝


リオナとB.B.はダーク・ホームへ帰るため、

フォルトに別れの挨拶をしていた。



「フォルトさん、色々ありがとうございました。お元気で。」


「こちらこそありがとう。来年の音楽祭にはぜひ遊びに来てね!絶対優勝してみせるよ!!」


《その前に出所しなきゃな!》


「あっ・・・そうたね!!」


一瞬だけ笑いがわく。



「おっリオナここにいたのかよ!!」


後ろからやってきたのはラード。

柄シャツにサングラス姿の彼に、フォルトはビックリしていた。


「おおあんたがフォルトか!!シキから聞いてるぞ!?どーもウチのリオナとB.B.がお世話になりまして!!」


「いっ・・・・いやぁ!!ここここちらこそ!!」


完全にビビっている。


リオナはラードを少しにらんだ。


「なんだその目はぁ!?ええ!?」


「別に。それじゃあフォルトさん。また会いましょう。」


「はい。お体には気をつけて。」


2人はお互いに手を強く握り、
別れた。




「・・・・・シキは?」


「ああシキとあの連れのガキは先にホームに帰ったぜ?俺じゃイヤか?」
「うん。」
「早っ!!!!ひどいなぁ!!」



宿からでると、
目の前には行くときに乗ってきたスピードカーが止まっていた。


ここまで来れるんだったら行きもきてほしかったな・・・・




スピードカーに乗り込むと、
なんと中にはベンとユリスが乗っていた。


「ヤッホー!!」


「・・・よぉ・・・・・・・」


「んだよお前らも一緒かよ!!ほらつめたつめた!!俺が入れねぇだろ!!」









スピードカーは出発すると、
あっと言う間にミュージック・カウンティーを抜け、野原を駆けめぐる。


日がやっと上り始め、
丘の上には朝日が顔を出した。


リオナはただ外の景色を眺めていた。


「あの・・・・さリオナ!!!!」


「・・・・なに?」


ラードとユリスは何やら落ち着かない様子でゴホンと咳をする。


「あのさ!!昨日色々考えたんだけどよ!!俺がお前の面倒をみる!!師匠になる!!」


「・・・え?」


リオナはきょとんとする。


「ちょっとちょっと!!!勝手に言うんじゃないわよ!!リッチャン!!私と一緒に生活しましょ!!」


「いや・・・あの・・・・」


「・・・・俺じゃいやか・・・・・・。」


「ちょっとまって・・・・!」



リオナが少し声を上げると
三人は黙っていすに座り直った。


「・・・皆が俺を思ってくれるのは嬉しいよ・・・。ありがとう。でも・・・気持ちだけで十分だ。」


「リオナ。お前が気を使うことないんだぞ?俺らはお前が好きだからいってんだ。」


「そうよ!」


「・・・・・・そうだ・・・・・・・」


三人からの激烈な申し出にリオナは困ったように頭をかく。


「ちょっと・・・・考えてみる。」


「おう!!それが一番だ!!」


ラードは満足したように笑い出した。








実際・・・誰でもよかった。



誰が新しいパートナーとなっても・・・・


結局マーシャは帰ってこないんだ。





《リオナ・・・?》


B.B.は心配そうにリオナを見上げる。


「大丈夫だよ。」


そっと笑いかけて、
B.B.の耳を引っ張る。


《ぎゃっ!!!》


嘘はついてない。


だいぶ気持ちに整理もついてきた。


「なぁB.B.覚えてる?」


《・・・・・?》


「朝さ、B.B.がマーシャの布団でよだれ垂らして寝てたときのこと。」


《あーあれね。覚えてる。》


「マーシャあの時、B.B.のよだれを俺がおねしょしたって勘違いしてさ。」


《リオナに変に気を使ってたな。》


「ね。"俺は全然気にしてない。幼少の頃は誰もがこうだ"とかいってね。」


《ひとりで暴れてたな。》


「ははっ!!変なの!」


リオナとB.B.はお腹を抱えてクスクス笑う。


《あとさ!任務に行く途中に野宿する事になって、小高い丘があったときにぃ、マーシャのやつオイラ達が寝てると思ってさ!》


「ひとりで丘の上でポーズ決めてたよな!」


《オイラ達が見てるのに気づいたときのマーシャの顔!!すごかったなぁ!》


「うん。あれはウケた。」


2人は再び笑い出す。



この一年間はあっと言う間だった・・・



マーシャとB.B.とは昔からの知り合いのような気もするほど・・・・



すごく・・・・すごく・・・・










楽しかった。







「なぁB.B.?」


《なに?》


リオナは外に目をやり、
しっかりと心に刻みつける。



「強くなろうな。もっと。」


《おう!》



もう泣かない。


強くなるんだ。


マーシャくらいに。


強く・・・強く。























ダーク・ホームへの扉についたのは昼間を回ってから。



スピードカーと運転手の砂音路さんに別れを告げ、
5人は扉をくぐる。


扉から出ると昼間から一変して、
神の島ダーク・ホームは夜中の12時を回っていた。


空気は冷たく、
なにか新鮮なものを感じる。


「・・・・・ただいま」


リオナは大きく息を吸い込み、
ゆっくりと吐き出す。


「よし」


「リッチャーン?行くわよ?」


「はーい。」


リオナは4人の元へかけていった。












黒の屋敷は夜中だからだろうか


不気味さを増していた。



しかし扉が開くと
中には時間を感じさせないくらいにいつも通り
メイドたちの行列があった。


『お帰りなさいませ。』


スペシャル・マスターの三人は慣れたように道を通っていく。


・・・・やっぱり慣れないな。


リオナは苦笑いをしながら通ってゆく。


しかしすぐに違和感に気がついた。


屋敷全体に黒い装飾がなされていたことに。


きっとマーシャの・・・・



少し気を落としながらも
リオナはラードたちに続いて歩く。



すると前方にシキが立っているのが見えた。


夜中だって言うのにしっかりスーツを着ている。


そういうところはしっかりしている。


「ご苦労様。疲れただろう?」


そう言うシキは目の下にクマを作っている。


「大丈夫。だいぶ寝てきたから。」


シキはリオナのいつもの表情にホッとする。


「それで・・・帰ってきて早々あれなんだが・・・」


「わかってるわ。」


そういうとスペシャルマスターの三人は、部屋には戻らず、
そのまままっすぐ進んでいく。


「リオナも・・・あとB.B.も」


「うん。」


リオナは何も聞かずに三人の後に付いていった。


どこに向かっているかはだいたいわかる。



きっと・・・・




これから大切な人へお別れをつげに行くんだ・・・。



















いつも使わない道を抜け、
薄暗い廊下を歩いていく。


すると暗闇の中から黒くて大きな扉が現れた。


「この奥で眠ってるから・・・」


そう言うと、シキは扉を開く。



鼓動が高鳴る。


もう立ち直れたって思ってた。


でも・・・







リオナはベンの脇に隠れながら部屋へ入っていく。










部屋に入って真っ先に目に入ったのは真っ白い大きなベッド。


リオナはその上がみれなくて、思わず目をつむる。


しかしすぐに事態は起きた。



「!?どーゆことだ!?」


「・・・・・部屋間違えたとか・・・・・」


「まさか。シキよんでみる?」


ユリスは部屋の外にいるシキを呼びに行く。


リオナは何が起こったのかわからず、
そっと目を開いた。


「・・・・・!?」


目に映ったのは・・・・







誰もいない空のベッド。












マーシャが・・・いない・・・?


心臓がさらに高鳴る。



シキは慌てて部屋に入ってくると、
空のベッドを見て唖然とした。


「なんでだ!?確かにここにさっきまで・・・」
「あれ?みなさんお揃いでどうしました?」






誰もが耳を疑う。







だって・・・・だって・・・



「な!?」

「嘘だろおい!!!」

「なんで!?」

「・・・お前・・・・・!」



だってマーシャは・・・・
















死んだはず・・・。














「なんで生きてんのー!?!?」


マーシャは全員の声にビクッとして、
目を丸くした。


「い・・・いや・・・俺死んでないし。ほら生きてるし。」


マーシャはその場でピョンピョン跳ねる。


「だっ・・・・・だだだだだだだだだだだだってお前あの時死んでたぞ!?心臓だってビクともしないでよぉ!!」




「ああ。あれ仮死状態だよ。ああでもしないとホントに殺されるところだったから。ああここダーク・ホーム?おれちょっと仮死のまま寝過ぎたらしいな。だからみんな死んだって勘違いしてんのか。あははウケる。」


のんきに笑うマーシャをユリスとラードとシキが思いっきり殴った。


「馬鹿やろ!!お前おれがどんだけ心配したかわかってんのか!?」


ったく迷惑なやつだ!
と鼻をならして怒る。


「まぁ生きてるならよかったわ。ホントお騒がせよね。」


「だからごめんって。ってリオナ!お前もいたのか。」


マーシャはベンの後ろに隠れるリオナを覗き込んだ。


「・・・・・・・。」


「リオナもしかして怒ってる?」


「・・・・・・・・。」


リオナはますますベンの後ろに引っ込んでいく。


「マーシャ・・・お前ちょっとは責任感じろよ・・・リオナはお前が自分のせいで死んだと思ってたんだぞ・・・!?」


シキに怒られ、
マーシャは少し態度を改めて、
床にしゃがみ、リオナと目線の高さを合わせた。


「リオナ、こっちきて?」


「・・・・・ヤダ。」


「・・・・頼むよ。顔見せて。」


「・・・・・・・。」


しかし一向に出てこようとしない。


ベンも困ったように、隠れるリオナをみる。


「・・・・・・・リオナ、ごめんな。心配かけるつもりはなかったんだ。ただ・・・・さ、お前を守りたくて・・・・・・」


マーシャは目線を下に落としながらつぶやく。


「・・本当に・・・・ごめんな。」


すると突然マーシャはしりもちをついた。


気づけばリオナがマーシャに抱きついていて。


「・・・リオナ」


「・・・マーシャ・・・・・マーシャ・・・・・・マーシャ・・・・」


リオナはただ名前を呼び続ける。


"マーシャ"という確かな存在を確かめるために。


「俺はここにいるよ。」


「うぅ・・・・・・ぁぁぁマーシャぁぁぁ!!!」


急に泣き出すリオナを
マーシャはなだめるようにギュッと抱きしめた。



「俺・・・・俺・・・グスッ・・・怖くて・・・・寂しくて・・・・一人が死ぬよりつらくて・・ウッ・・マーシャがいないのが・・・・こんなに・・・寂しいなんて・・・苦しくて・・!!!」


マーシャは静かに頷く。


「・・も・・・もう・・・・ぅっ・・・・ひと・・・りは・・・・グスッ・・い・・・・・や・・・だよ・・・・!!!」


リオナはあふれる涙をマーシャの肩に押し当てた。


「ははっ。やっと泣いた。」


「・・うぅ・・・グス・・・」


「ありがとなリオナ。俺すんげぇうれしい。だってリオナは俺のことイヤがってるとおもってた。」



「・・・そ・・・そん・・・な・・・・ワケ・・・ないじゃ・・・ん・・・・!!!大好・・・・き・・・・だし・・・!!大・・・好きだよ・・・」


「うん。まぁ俺はいい男だからさ。」


マーシャのいつものナルシスト発言に
一気にリオナは泣き止む。



「そーゆー意味じゃない・・・!!」


リオナはマーシャから体を突き放そうとするが、
今度はマーシャがリオナを抱き寄せた。


「わかってるよ。俺もリオナだーい好き。」


「・・・・・!!なんかやらしい!!離せ!!!」


「そんなことないぜ?」


「くすぐったい!!ははっ!!」


耳元で囁くマーシャを蹴り飛ばす。


「あっ!!こらやったな!!」



いつものように騒ぎ出す二人をみて、
誰もが安堵のため息をついた。


「やっぱりリオナにはマーシャだな!!がははは!!」


「マーシャにもリオナだな。」


「なんか残念ね。せっかく私のものになるとこだったのに。」



《ったく心配かけさせんなよな!!》


そういいながらも
嬉しそうに飛び回るB.B.をマーシャは手を伸ばして捕まえた。


「お前も寂しかったか?」


《お・・・オイラは別に・・・》
「あのね、B.B.のやつマーシャが乗せられた車をずーっと追ってったんだ。」


「へぇ〜そぉかぁ。」


マーシャはニヤリと笑う。


《オイラはただ車が大好きだっただけだ!!》


「チューしてやろうか?」


《いやだいやだ!!やめろ離せって!!!》



B.B.は一気に飛び上がり、
天井に頭をぶつけた。


《ふぎゃ!!!!》


一気に部屋中が笑いに包まれる。


部屋中がとっても暖かくて、


幸せだった。

















大切な人の存在は








誰よりも自分を強くする








ねぇマーシャ・・・?










マーシャはいったよね。








"人間誰でも死は最大の恐怖"
だって









でも俺は















自分の死より















大切な人の死の方が怖いよ・・・
















マーシャもそうだろ?











だから今度は












俺が命がけで守るよ。
























第三章 壊レカケノココロ

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あきゅろす。
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