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【完結】 Novel〜Lord's Soul〜
story20 音楽を愛する男











―・・・なんとか侵入できたぞ・・・!!


その頃フォルトはホール内地下の待合室にいた。



しかしすぐに異変に気づいた。



周りには人一人おらず、
いつも流れ続けている音楽も耳に入ってこない。


― 来るの早すぎたかな・・・・・



フォルトはホール内を歩き回る。



すると舞台への道案内の看板が目に入った。



― ちょっとくらい・・・いいよな



好奇心にかられて
フォルトは道案内どうりに進んでいく。


舞台に近づくにつれて胸が高鳴る。


幻聴だろうか。


緊張のせいで誰かの歌声まで聞こえてくる気がする。



それはとても美しく、
引き込まれてしまいそうだ。








舞台裏まで来ると
やはり舞台のほうから歌声が聞こえてきた。



気のせいなんかじゃない。



フォルトはそっと覗き込む。




誰もいない客席




そして誰もいないはずの舞台に立ち歌う一人の男。



― す・・・・すごい!!!!



フォルトは思わず拍手をしてしまった。



すると男はフォルトに気づき、
顔を向ける。



「あっ・・・その・・・・スミマセン!!」


男は無表情でただ見つめてくる。


「ほう・・・・私の歌を誉めてくださったのですか?」



「は・・・・・はい!!!と・・・とても美しかったです。」



「ありがたきお言葉だ。初めて言われました。」



「そ・・・そんな!!こんなに美しいのに!!!」



「ははは!まぁ・・・今まで私の歌を最後まで聞いた方はいないんですけどね。」


「・・・・じゃあ僕に聞かせてください!!最後まで聞きたいです!!」


フォルトは目を輝かせて彼を見る。



「いいでしょう。あなたがそこまで言うんなら。ただ・・・・リスクは大きいですよ。」



「・・・・・・?」



訳の分からないことを言うと、男は大きく息を吸う。



「・・フォルトさん離れて!!!!」


突然の叫び声で2人は動きを止めた。


「・・・!!リオナくん!?」


リオナは客席を一気に駆け下り、
舞台に上がるとフォルトの前に立ちはだかった。


「フォルトさん逃げて!!コイツは敵だ!!」


「・・・!?そ・・・そうなんですか!?でもリオナ君は・・・」


「俺は大丈夫だから!!早く・・」
「ゴチャゴチャうるさいですよ。」


男はため息をはくとリオナを睨む。


しかしリオナも負けじと睨みをきかす。


「あんたがフェイター?一体なんの用だ。」


「・・・・私はただ音楽祭に参加したかっただけなのですが。気づいたらダーク・ホームの皆さんに囲まれていましてね。仕方なく今歌わせていただいていたのにあなたにジャマされた・・・・。」


「ふん。のんきなもんだね。B.B.!!」


《はいよ!》


再びB.B.はリオナの中に入り込む。


「ほう・・・・あなたもエージェントのお一人ですか。幼くして大変ですな。でも安心なさい。私の子守歌で優しく死に導いて差し上げましょう。」


すると男は大きく息を吸い込み、
ものすごい声で歌い出す。


その声は耳を通り抜け脳に響き、
リオナは激しい痛みに襲われた。



「うぁぁぁぁ・・・・」



とっさにB.B.の耳ごと押さえるが、
そのダメージは大きい。


《リオナ!!大丈夫か!?》


足下をふらつかせながらなんとか立つリオナ。


頭がズキズキする。



リオナは目を前に向けると
フェイターの姿が見えないことに気がつく。


「・・・・・・!!」


「どこを見てるんですか?ここですよ。」


気づいたら時にはもう遅かった。


「光魂」


「がは・・・・・・・・・!!」


後ろから、
白く光る塊を打ち込まれ、


舞台の壁に打ち付けられた。


体中が軋み、
たっているのもつらい。




・・・・やっぱり強い・・・





しかしリオナは再び立ち上がり、
構える。



「ほぅ。まだやる気ですか。しかし残念ながら私は時間がないんです。」


そういいながら一歩一歩

近づいてくる。


「これで最後です。」


フェイターは口から大きく息を吸い込む。




ヤバい・・・・・



死ぬかも・・・・

















・・・マーシャ・・・

















すると突然、

フェイターが苦しそうにもがきだした。


《な・・・なんだ!?》


みるとその体には何本もの黒々しいナイフが刺さっている。



そう・・・このナイフは・・・



「俺のカワイイリオナに何やってくれてんだ。」



マーシャだ。


「マーシャ・・・!」


リオナはホッとして思わず座り込む。


「違うわ!!私のカワイイ小さなダーリンよ!!!」


続けてユリス・ラード・ベンも入ってきた。


「俺のだ。」


「私のよ!」


なぜかマーシャとユリスはにらみ合いを始めている。


「おいおいケンカしてる場合か!?」


ラードは2人の間に割って入り、
喧嘩を中断させた。



するとフェイターはナイフをすべて抜き捨て、
何もなかったかのように急に笑い出した。


「はははは!!!嬉しいですね!!こんなにお客さんがきてくださるなんて!!!」



4人はそれぞれに武器を構える。



「では、まず手始めに私の好きなメロディーからお聞かせいただきましょう・・・」


そう言うと大きく息を吸い込む。


「皆!耳押さえて!!!!!」


「!?」


リオナの呼びかけに四人はさっと耳を押さえる。



そしてフェイターの歌が始まった。


耳を押さえていても
脳に違和感を感じる。


思わず目をつむりたくなるような感覚だ。





すると歌が終わったと思うと
今度はフェイターの姿が見あたらない。



4人は動かず、
静かに気配をくみ取る。




「・・・・・・後ろか!」



マーシャの後ろに現れたフェイターは
先ほどのように光を手に溜め始め、マーシャに打ち込むように手を伸ばす。


しかしマーシャもさっと姿を消し、
一瞬でフェイターの後ろに回り込む。


そしてすぐにナイフを長剣に変え、
思いっきり斬りつけた。



「ぐはぁ!」



すると今度はラードが両手に構えた銃から
ものすごい爆音がしたかとおもうとフェイターに向かって一直線に黒い弾丸がつっこんでいく。


そして黒煙を上げ、
フェイターを包み込んだ。



「よっしゃ!!!大・命・中!!!」



しかし黒煙が消えるとフェイターの姿はなかった。


「・・・・また消えたぞ・・・・・」


「またかよ!!!こそこそ隠れてねぇで出てこい!!!」


ラードは辺り構わず撃ちまくる。

「おいラード危な・・」
「"ラッド・シンフォニー"」


「・・・・!!!!」


突然流れ出す歌に誰もが両耳を押さえた。


先ほどのものよりも脳への刺激が強くなる。


「耳ばかり守っていても体が死ねば終わりですぞ。」


そしてフェイターは姿を現すと、
巨大な光の玉を四人に打ち込んだ。


「ぐっ・・・・・・・!!」



四人は吹き飛ばされて、
壁に激突する。


「ッたく・・・・耳ふさいでる間に攻撃されて・・・これじゃあきりないな。」


するとユリスはすぐに立ち上がり、目をつむると
体中からたくさんの葉のツルをだし、
一直線にフェイターに向けて伸ばした。


「な・・・なに!!」


蔓はフェイターの体を縛り付け、
身動きを制御した。


そしてフェイターの後ろにすぐ回り込んだのはベンだった。


ベンの腕は見る見る黒い電流となり、
細長い槍を作り出す。


「"サンダーロッド"」


そしてその槍を思いっきりフェイターに突き立てた。


「うぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


フェイターの全身に電流が走り、
体を攣させながらその場に倒れ込む。



「すご・・・」


リオナは感嘆の声を漏らす。


「さて。ユリス、こいつを縛ったままシキのところにいけるか?」


「えー・・・・しょうがないわね。マーシャついてきてよ。」


「ヤダ。リオナと行くとこある。」


「えー。じゃあベンは?」


「・・・・・仕方ないな・・・・・」



「なぁ俺は俺は!?」


「ラードはお断り。タイプじゃないから。」



「ひ・・・・ひでぇ!!!」



ユリスは蔓に縛られているフェイターに近づいて、
さらに縛り上げた。


「ふふ・・・・・はははは・・・」



「な・・なによコイツ・・・目覚ましたのね・・・」


フェイターは低い声で笑うと、
次第に大きく笑い出す。


「これで終わると思うなよ・・・。」


するとフェイターの姿はみるみる透けていく。


「まずい!!!空間をゆがませて逃げる気だぜ!!!」


ラードが真っ先にフェイターに向かっていく。


「マジかよ。」


「何とかならないの?」


するとマーシャはハッと顔を上げて、
リオナを見た。


「リオナ!カードでアイツを閉じ込めろ!!」


「で、でも空間の歪みは止められないよ?」


「違う!リオナは空間系魔法だから空間ごと閉じ込めることができるはずだ!!リオナ早く!!」


「う・・・うん!」


リオナは軋む体を動かしながら、
フェイターをカードで取り囲む。


「ははは!!今更遅い!!」


しかしリオナは諦めない。

B.B.と力の波長を合わせ、
カードの巨大化に急ぐ。


「・・・・・・・・く・・!」


全身の痛みに顔がゆがむ。


《リオナ!!お前体が!!!》
「大丈夫だから・・・・!!」


《・・・・・・!!》


二人は更に力を合わせる。



そして間一髪。


カードを巨大化させ、フェイターを完全に閉じ込めた。



「おのれ悪魔の僕め・・・・!!!」


フェイターはカードに閉じ込められ、
舌打ちをした。


「すごいぞリオナ!!!ヒューヒュー!!」


ラードに抱き上げられ、
リオナは少し頬を赤く染めた。


しかし体への負担がさらにのしかかる。



このまま保つことは・・・・



「・・・・マーシャ・・・・・もって3分・・・・」


リオナはマーシャを見ずに話す。


いや
見れなかった。



力の無い自分があまりにも情けなくて。


「そうか・・・わかった。」


しかしマーシャは優しくリオナの頭をなでてくる。



"お前のせいじゃない"
と言うかのように。


「みんな。コイツの確保は無理だ。」


たんたんと話すマーシャに誰もが目を丸くする。


「!?じゃあ逃がすのか!?」


「まさか。」


マーシャはフェイターが閉じ込められているカードの箱を見てニヤっと笑った。


「抹消だ。」



「よっしゃ!!!」
「おっけい!」
「・・・任せろ・・・・・」



四人は一斉にフェイターに向かっていく。



「おのれ・・・・心まで悪魔に売りさばくとは・・・私を見くびるなよ・・・・。・・・最終章・・」


フェイターは今までにないくらいに大きく息を吸う。


「また歌が始まるぞ!!耳気をつけろ!!」


四人は耳を押さえながら箱に近づく。


しかしリオナは手を伸ばしたまま。


リオナはカードの防壁のために手を離せないのだ。


「ああリッチャンが!!リッチャン!!手を離して!!!」


呼びかけるがリオナは離そうとしない。


「リッチャン!!!」


「リオナァ!!離せ!!コイツなんかいいから離せ!!!」


ラードとユリスの呼びかけにも、
リオナは頑なに首を横に振る。


「・・・ダメだ・・・・だめなんだ・・」


ここで離したら・・・・


俺は自分を許せなくなる・・・


だから・・・・



「"最終章   デス・ハーモニー"!!!」


リオナは目を閉じた。



痛みを覚悟し、


手にさらに力を加える。


たとえ死んでも・・・


コイツだけは逃がしちゃいけないんだ・・・・!!




そして"死の旋律"が流れ始めた。




















しかし先ほどのような脳への激しい痛みがない。



何故だろうか。



不発だったのか・・・?




いや違う・・・不発なんかじゃない・・・・




リオナはそっと目を開ける。






目の前には
すでにユリスとラードとベンが、
リオナのカードごとフェイターを始末した後だった。






戦いは終わった。





でも・・・まさか・・・まさか





リオナは恐る恐る両手を自分の耳に持っていく。




そこには暖かい・・・大きい手




「マーシャ!!!!!!!」


リオナの叫び声に三人も急いで駆け寄る。



マーシャの手は役目を果たしたかのようにリオナの耳から外れ、
力なく体ごと地面に倒れた。



マーシャは目をつむったまま
動かない。


「いやだ・・・・いやだ・・・!!!マーシャ・・・・・マーシャ!!!!!!!!」


必死にマーシャの体を揺する。


しかし、反応がない。



「ちょっと!!マーシャ起きなさいよ!!!!!」


するとベンは、
マーシャの体を揺するユリスとリオナを抑えて、
冷静にマーシャの体を触り出す。


「・・・・・・・・・・・・・・・。」


リオナはじっとベンの顔を見る。



「・・・リオナはあっちに行ってろ・・・・・・・・・」
「なんで・・・・なんでなんで!?マーシャは!?マーシャ死んでないよね!?」


「・・・・・・・・・・・・・・。」


ベンの沈黙に、
リオナは目に涙をためる。


「嘘だ・・・・・・マーシャ・・・・マーシャ起きてよ!!!!!!!!!ねぇ!!!」


再びマーシャの体をゆすり始める。


しかしやっぱり反応がない。



B.B.もリオナの中から離れて、マーシャの顔をのぞき込む。


《マーシャ・・・・》


「ラード・・・リッチャンを連れてって。」


「・・・・・わかった。」


ラードはリオナを押さえつけ、
無理やり持ち上げた。


「やめろ!!やめろって!!!離せよ!!離せ!!!!」


「暴れんな!!B.B.手伝え!!」


《・・・・うん。》



B.B.とラードに運ばれ、
どんどん遠くなっていくマーシャを見つめる。


「・・・いやだ・・・・いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ・・・・!!!!マーシャ・・・・・いやだよ!!!ねぇ嘘でしょ!!俺は簡単には死なないっていったじゃん!!いつもみたいに笑ってよ!!ねぇ!!!マーシャァァァァ!!」





俺はすべて失っていくのか・・・・







記憶も・・・・家族も・・・・・・大切な人も・・・・・・






全部・・・・・全部・・・・・・・・・







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