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【完結】 Novel〜Lord's Soul〜
story18 ミュージックカウンティー




音楽と自由の都





ミュージック・カウンティー





この国は他の国と大きく違う点が二つある。



一つは、
国全体を囲む防壁がない。


そして二つ目は
門番はいなく、誰でも自由に出入りできる点だ。




国中が常に音楽で満ち溢れ、
とぎれることはなく人々の耳に流れ込む。



時に激しく


時に優しく



音楽は人々をひき込む。












「うわっ!!人ばっかり!!」


シュナは通り過ぎていく人々を物珍しそうに見つめる。


「・・・俺・・・人混み嫌い・・・・」


頭がクラクラして人々の声が反響する。


思い出せないが前にも似たような経験をしたような気がした。


「おいリオナ大丈夫か?」


マーシャはフラつくリオナを支える。


確かにひどい混みようだ。


普段からこうなのだろうか。


「この人混みだと無理ないな。しかも今日から音楽祭の前夜祭が始まるから明日はもっとすごいだろうな。」


シキは同情するようにリオナに視線を送った。


「・・ウソでしょ・・・っう・・・!」


リオナの顔色はますます青くなる。


マーシャはリオナのおでこに手をやり、
熱があるか確かめる。


「あー・・・・ちょっとヤベェな。取りあえず俺たちは宿屋に行くから。また会えたら会おうぜ。」


「ああ。気をつけろよ。リオナ頑張れ。」


「リオナ!無理しないでな!」


そう言ってシキとシュナは手を振りながら人混みに消えた。



「はぁ・・・・自由すぎて苦痛だよ・・・・・」


ボソッと呟くリオナに、
マーシャはケラケラ笑い出す。


「知ってるか?この国のキャッチフレーズ。」


「"音楽と自由の国"じゃないの・・・・?」


「それは表向きな。裏では"束縛国家"って呼ばれてるんだ。」


「・・・・なんで?・・こんなに楽しそうなのに・・・俺は楽しくないけど・・・」


「この国の法律は厳しいんだ。法律を一つでも破ると即死刑なんだよ。たとえば万引きとか食い逃げとかもな。」


そんな・・・


じゃあ戦闘なんか起こしたら俺たち死刑じゃん・・・


リオナはますます体調が悪くなる気がした。


「こんな厄介なところに化神がでたなんて・・・・。」


「まぁなんとかなるっしょ。」


適当すぎるマーシャに呆れて肩を落とす。


「ねぇ、シキとシュナは・・・・ぅっ・・・・ここになにしに来たの・・・・?」


「お前ほんとに大丈夫か?」


「大丈夫だって・・・・」


「ならいいけど。シキ達は死刑囚集めだ。」


「なにそれ・・・」


「先日この国の死刑囚102人が脱獄したらしくてな。警備員はあいにく音楽祭があるから忙しくて死刑囚を探せないんだとさ。だからダーク・ホームに依頼してきたんだよ。ったくくだらねぇ依頼してくんじゃねぇよ。普通音楽より死刑囚だろ。コッチは今人手不足なのによぉ。」


マーシャがブツブツ文句を言いながら歩いていると、
目の前を何かが猛スピードで駆けていった。


《うわぁ!!あぶねぇな!!気をつけるのだ!!》


その何かはB.B.の呼びかけに足を止め、
くるりと振り返ってこちらに向かってくる。


茶色のボロボロのコートを羽織っていて、
フードを深くかぶっているせいで表情はよくわからない。


体格からしてどうやら青年のようだ。


《!!!!!》


B.B.は驚いてリオナの頭からマーシャの後ろに隠れた。


「ばかやろ!怒らせてどーすんだよ!」


するとその青年はリオナの前で足を止めた。


リオナはますます頭がクラクラするが、


自分は何も関係ないってことだけは伝えようと口を開く。


が、次の瞬間


その青年はリオナを引き寄せ
どこから取り出したのかナイフをリオナの首にあてがった。


「!?リオ・・」
「動くな!!!!」


突然の怒声に誰もが動きを止める。


青年はそのまま一歩ずつ後ずさり、
人々へもナイフを向ける。


人混みをかき分けて警備員がやってくるが、
ナイフを向けられ近づきようがない。


「近づくな!!きたらコイツを殺すぞ!!!」


人々は怯えてどんどん離れていく。


「・・・・・・あ〜あ・・・・」


リオナはぼぉーっとする頭で思う。


自分はついていないと。



運がいいか悪いかだと、
確実に悪い。



「リオナ・・・!!ったくリオナが死んだらおまえのせいだからな!!」


マーシャはB.B.を思いっきり叩く。


《いったぁ!!!》


それにしてもどうすればいいか・・・・。


下手に手を出せばリオナは殺される。


別に相手を攻撃できなくはないが
今ここに警備員がいる以上
俺も死刑になりかねない。




マーシャは必死に頭を働かせる。


するとB.B.の耳が突然ぴんとたった。

まるで何かを察知したかのように。

《・・・・・!!!!マーシャ!!!》


「・・・・ああ化神だ・・・!!しかもこの近くにいる!!」


ったくついてねーよ・・・


《どーする!?》


「どーするもこーするも・・・・・」


『に・・・逃げたぞ・・・!!!!!』


人々のどよめきに二人はさっと目をやる。


そこには先ほどまでいた青年とリオナの姿はすっかりなかった。



「B.B.。お前はリオナを追え。俺は化神を倒しに行く。」


《りょーかい!!!》


二人は双方に散った。






















頭がぼぉっとする・・・・


なんかこの感じ・・・


昔にもあったような・・・




『リオナも人混みが苦手だなんてホント俺にそっくりだな!!俺も昔初めてここに来たときはこの人混みにぶっ倒れたぜ!!!ガハハハ!!それから俺も人混みが苦手でよぉ・・・』





あれ・・・?



俺はおぶられてるのか・・・・


てか誰だコイツ・・・




なんか俺に似てるし・・・


でも何でだろう・・・・


この背中・・・


なんか温かい・・・・・・・








「・・・・・・・・!!!!」


急に目が覚めて夢だと気づいた。


そういえば俺人質だったんだ・・・



リオナはそおっと目だけを動かしあたりの様子をうかがう。


どうやらどこかの宿屋のベッドで寝かされていたようだ。


しかも青年はいない。


外からは賑やかな音楽が聞こえるほど部屋は静かだった。


・・・逃げていいのかな?


リオナはそっと体を起こすと
突然扉が開いた。


入ってきたのは
茶色い頭をした真っ白い肌の青年。


年はマーシャくらいだろうか。


すると青年は目をまん丸くしてリオナを見てくる。


ヤバい・・・!!逃げるのばれた!?


リオナは焦り、弁解しようと口を開く。


が、


なぜか思いっきり抱きつかれた。


「!?!?あ・・・あの・・・」
「よかった!!!!!」
「・・・・・・は?」


リオナから体をはなすと今度は肩をつかみ、
ゆさゆさと体を揺さぶられた。


「君突然倒れちゃうから・・・僕間違って殺しちゃったのかと思ったよ・・!!!!!」


青年は目にいっぱい涙をためて、
嬉しそうに再び抱きしめてくる。


「あぅ・・・!!あ・・・あの・・・殺すつもりだったんじゃないんですか・・・??」


「まさか!!僕にはそんなことできないよ!!!!」


「・・お騒がせな方ですね・・・。」


ついつい本音が漏れるが、
相手はとにかくうれしいようだ。


すると後ろにある青年のものと思われるカバンがもぞもぞと動き出す。


「あの・・・カバン・・・」


「カバン・・・??ああそうだった!!」


青年は急いで鞄に近づき、
チャックを開く。


すると中からものすごいスピードで何かが飛び出してきた。


《てめぇはオイラを殺す気か!?》


なかから飛び出してきたのはなんとB.B.だった。


「ごめんよウサギさん!!でも安心して!!ライオンくんはここにいるよ!!」


そう言ってリオナを指差す。


・・・・ライオンくんって・・・俺のこと・・・?


《ばかやろっ!!ライオンじゃなくてリオナだ!!!ってリオナ!!!!》


B.B.はリオナに気づき、
翼を広げ、飛びつこうとしたが、
はっとして動きを止める。


「・・・どうしたのB.B.?」


リオナは満面の笑みを浮かべている。


不気味なほどに。


「こっちへおいで?」


手を広げ、ますます不気味にニコッとする。


《い・・・いやオイラ遠慮しと・・》
「いいからおいで。」


するとリオナは容赦なくB.B.の耳を引っ張り上げて、
顔の前でブラブラさせる。


すでに表情は悪魔以上に悪魔となっていた。


「で。言いたいことは?」


《ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ!!!!》


「へぇ、それだけ。」


リオナは耳を握る手に力を込める。


その顔は半笑い。


《うぴゃ!!!!》


すると青年はオドオドしながら止めに入ろうとした。


「あ・・・あの・・・ライオンく・・」
「リオナです。」


《・・・リオナ!!オイラもう騒がないから〜!!!許してくれよ!!!!リオナのゆーこと何でも聞くのだ!!》


そう言うとリオナは手を緩め、
B.B.の顔を両手で包み、
顔に近づける。


「へぇ・・・・何でも?」


《うんうん!!!何でも聞くよ!!》


「それじゃあ・・・・」


リオナは両手をそのまま下にずらし、
首のあたりで手を止める。


《・・・??》


「いっぺん死ね!!!」


《はぅ!!!!》


「ウサギさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!?!?」



しかしその瞬間、
扉を叩く音がした。


「・・・・・・・・・ッチ。」


リオナは残念そうにB.B.を投げ捨てる。


《・・・・・・・たすかった!!》


・・・・ホント怖い・・・というかヤバい!!!


B.B.はもう二度とすまいと肝に銘じた。




すると青年は立ち上がるが扉を開けようとしない。


「開けないの?」


「あ・・・ああ。すまないが誰だか見てもらえるかな・・?」


「??別にいいけど。」


何かわけありっぽい。


まぁ人を誘拐した時点でわけありだよね。


リオナは扉に近づくと、
少しだけ扉を開ける。


しかし身長が低いせいで足しか見えない。


すると突然扉がばっと開かれ、
リオナはしりもちをついた。


「痛い・・・」


「リオナ!?」


名前を呼ばれて顔を上げると
見慣れた赤毛に黄色の垂れ目・・・


「マーシャ!!」


「リオナ!!」


嬉しさのあまり、マーシャに抱きつくと、そのまま抱き上げられた。


「よかったぁ!!生きてたか!!」


「俺も死ぬかと思った」


「そうかぁ〜怖かったよなぁ〜!」


マーシャはリオナをギュッと抱きしめ、
何度も頭を撫でる。


そしてリオナを床に下ろすと、ナイフを取り出し
リオナの後ろにいる青年に10本のナイフをつきつけた。


「ひ・・・ひぃ!!!」


青年はベッドによじ登るが壁にぶつかり、追い込まれる。


「さぁてどうしよーかなぁ?」


「ご・・・・ごごごごごごめんなさい!!!」


「ごめんですんだら警察いらないって話。んでどっちがいい?」


「は・・・はい?」


「だぁかぁらぁどっちがいいか聞いてんの。八つ裂きがいいか千切りがいいか。」


「ひぃぃぃぃぃ!!!!」





一方、リオナとB.B.は呆れた顔で見ていた。


「・・・・あのサドめ。」


《・・・・さっきのリオナみたい。》


「・・・・うるさい。」



リオナはため息をつき、
仕方なく青年の前に立ちはだかった。


「マーシャ、この人なんか悪い人じゃないみたいだよ?」


「・・・・・まじ?」


「まじ。」


「ふーん。」


多少残念そうな顔つきでナイフを引っ込めると、
青年は恐怖のあまりガクッと力なく倒れた。




そしてリオナは思った。



自分は運がない方だと思っていたが、


目の前にいる青年ほどではないなと。








「マーシャよくここがわかったね。」


「B.B.が俺の悪魔に知らせてくれたんだ。」


「へぇ・・・。やるじゃん。」


B.B.は嬉しそうに空を飛び回る。


《へへーん!まぁな!!てかマーシャ。化神は?》


今度は満足そうに親指を立てる。


「もちろんやっつけた。」


「!?化神がでたの!?」


リオナはばっと立ち上がり、
驚きを顔いっぱいに表す。


「ああ。お前が捕まったときにな。」


「えー!!!」


リオナはガクッと肩を落とした。


せっかく力を試せると思ったのに。



「まぁまたすぐに任務がくるさ。まさかこんなに早く終わるとは思わなかったけど。」



するとマーシャは立ち上がって
目を開いたまま気絶している青年に近づく。


「おーい。大丈夫かぁ?」


青年の顔の前で手のひらひらさせる。


「・・・・・あっ・・・!!はい大丈夫です・・・!!」


青年はマーシャに怯えながらも体制を整え、ベッドに座った。



「も・・・申し遅れました!!僕の名前はフォルトと言います!!」


「フォルトね。君何歳?」


「はい!22です!!」


「わお。タメじゃん。よろしく。」


どうみてもマーシャの方が年上に見える。




「んで、なんでリオナを人質にとったの?」


マーシャの質問に、青年は目を泳がせてためらうように口を開く。


「はい・・・・実は・・・・」

青年は唾を飲み、
少し声を震わせる。


「・・・・実は僕・・・死刑囚なんです。」


その言葉に3人は一瞬身をひいた。


「まじかよ!?あの102人脱獄事件の一人!?」


「はい・・・マジです。」


「・・・そもそもなんで捕まったんですか?」



「はい・・・・。僕には5人の妹と弟達がいて、両親は数年前に他界してしまいました。そのため兄弟を養うためにも僕は昼間は町工場で働き、夜は酒屋で演奏をしてました。」


「楽器弾けるんですか?」


リオナは少し目を輝かせる。


「はい。僕は昔からバイオリンが大好きで、本当はバイオリンだけで食べていこうと考えていたんですが・・・」


「5人もいると無理ってことか。」


フォルトはこくりと頷く。


「それで一ヶ月前の夕方のことでした。僕はいつものようにバイオリンを片手に町工場から酒場に向かっていました。しかし酒場につくと、なにか様子が変なんです。とにかく中に入ってみるしかないと思って入りました。そしたら中には警察がたくさんいて、そのまま連行されました。」


「罪名は?」


「第1529条、無免許演奏禁止法に反する無免許演奏罪です。今までそんな法律はなかったのにその日突然公表された上、まだ知らなかったのに捕まってしまい、死刑を宣告されました。」


「ひどい話だな。」


「ホント・・・。」


《でもなんでこの国は死刑ばっかなのだ?あっというまに国民がいなくなっちゃわないの?》


「この国は世界で唯一の音楽の聖地と言われています。だから世界中から音楽を愛する人々の移住が数多く見られるんです。だからこれくらい厳しくしないと国のバランスが崩れてしまうんです。」


フォルトは小さくため息をつく。


「でも僕は兄弟たちが心配で・・・お金がないからきっと大変なことになってるっておもって・・・」


そういうとフォルトはカバンから一枚のボロボロのチラシを取り出し、マーシャに渡した。



「音楽祭か。」


「はい。僕は今までこの音楽祭にでるために日々練習を重ねてきました。世界中の人に僕の音楽を聴いてもらいたくて・・・。この音楽祭の舞台こそが僕のあこがれであり夢でした。そしてこの音楽祭は優勝賞金がものすごく高いんです。だから僕は四日後の音楽祭のために・・・目的は少しずれてしまいましたが音楽祭にでたくて脱獄しました・・・。しかも人質としてリオナ君を巻き込んで・・・・。」


するとマーシャはボロボロのチラシをきれいに伸ばすとフォルトに渡す。


「どちらにせよ人のためになるのは確かだ。長年の夢だろ?頑張れよ。」


マーシャからの意外な言葉にフォルトは感激し、大きく頷いた。


「・・・!あ・・ありがとうございます!!!あと・・・巻き込んでしまってスミマセンでした!!」


「いいよ。その代わり、音楽祭ではしっかり優勝しろよ?」


マーシャはニッと笑う。


「はい!!!」


「まぁ暇だし?音楽祭までつきあってやるよ。」


マーシャにしては珍しい発言。


やはり同い年だと気持ちが分かるのだろうか。


いや・・・そんなわけない。


ただ単にサボりたいだけだ。



「いいんですか!?ありがとうございます!!」


フォルトは嬉しそうになんども頭を下げる。


「でもマーシャ、シキに見つかったらまずくない?」


「ああ忘れてた。まぁアイツのことだからなんとかなるっしょ。」


「でも音楽祭が終わったらフォルトさんは捕まっちゃうよ?死んじゃうんだよ?」


考えただけで、悲しくなる。


「でもそれは俺たちにはどうしようも・・・」
「いいんですよ・・・」


すると、フォルトは静かに笑った。


「僕は音楽祭にでれるだけでいいんです。もう僕は十分生きましたから。」


その笑顔はどこか悲しげで・・・・・・


「あっ!!なんかスミマセン!!!あのここの部屋使ってください!!僕は奥の部屋を使うんで!!!じゃあ僕練習してきますね!!!」


フォルトは荷物を持つと、慌てて奥の部屋に引っ込んだ。


「・・・・なんか嫌だな。」


「??なにが。」


「だってフォルトさんは実際何もやってないのに死刑なんだよ!?そんなの間違ってるよ・・・!!」


「・・・・そうだな。でも俺たちが口を出して本当になんとかなると思うか?」


「・・・・・・・・・」


「俺たちが口を出すことによってフォルトの死への覚悟を踏みにじることになるんだぞ?無駄な期待をさせてな。」


「・・・・・・・・うん」


「フォルトはああ言ってるけどな、人間だれでも死は最大の恐怖だ。それは絶対に避けられないものだからな。」


「・・・マーシャも?」


「そりゃあ俺だって怖いさ。まぁ不老なんだけど。」



死という名の恐怖か・・・・



リオナは想像するだけで気持ちが悪かった。




















それから3日間、


マーシャとリオナは警備員たちを見張り、
宿に警備員がくると、嘘をついて追い出した。


そしてB.B.はシキたちが近づいてこないか、悪魔ならではの電波を張り巡らせていた。




三日目の夕方。


四人は部屋で夕食をすました。もちろん料理はマーシャの手作りオムライス。


「本当にここまでしていただいてありがとうございます!!なんとお礼をいっていいやら・・・・」


「いいっていいって。まぁ俺たちも仕事の休暇みたいになってよかったし。」


というかそれ狙っただろ。
リオナはマーシャをどつく。


「お二人はなんのお仕事をされているんですか?」


「まぁおもに世界平和を守る感じかな。」


「・・・いいすぎ。」


しかしフォルトは目を輝かせている。


「世界平和ですか!?すばらしいですね!!」


「興味ある?なぁ今人手不足なんだけどやらない??フォルトだったら楽器で戦えそうだし。」


さりげなく勧誘を始めるマーシャだが、

本当はフォルトを逃がすためのたった一つの方法でもあった。


「戦うんですか?」


「いや、別に演奏だけでもいいんだ。給料は希望した分だけ払うぜ?」


ねばるマーシャ。


「ははは!マーシャさんはおもしろい人だ!」


「・・・・・」


どうやら信じてはもらえなかったらしい。



マーシャは小さく舌打ちをした。


すると突然
B.B.の耳がピンとなる。


《大変だ!!シキとシュナだ!!》


「なに!?まさか作戦Aを実行する事になるとは・・・。B.B.はフォルトを奥の部屋へ。」


《おう!行くぞ!》


「は・・・・はい!!」


「リオナ・・覚悟はいいか?」


マーシャはニヤリと笑う。


「・・・・仕方ないな。本気でやらないでよ?」


「当たり前じゃん。」


しかしその顔は信用できない。


いや、したくない。

















シキとシュナはエントランスを抜け、
エレベーターに乗っていた。


「あの三人はうまくいったかな?」


「まぁどうせ仕事をさっさと終わらせて遊んでるよ。まったく・・・人手不足だって言うのに・・・。」


シキは疲れ切った顔でつぶやく。


「はは!!マーシャさんらしい!!でも僕たちもあと1人ですよ?がんばりましょう!!」


「そうだね。」


二人はエレベーターを降りると、マーシャ達がいると思われる部屋に向かう。


「ここだな。おーい、マー・・・・」


シキはノックしようとした手を止めた。


「?どうしたのシキさん?」


「しっ・・・・」


二人は耳をそばだてると、


中から妙な声が漏れてくる。



「・・・・マ・・・・マーシャ・・・・痛い・・・・!!」


ギシギシ・・・・ミシ・・・


「すこしの辛抱だ。我慢して。」


ギシ・・・ミシ・・・


「・・・・・・う・・・・・痛い痛い・・・・・やぁ!!あ・・・ダメ!!!!」


「あーもう・・・・入れちゃえば楽なのに。」


「・・・じゃ・・・・じゃああと・・・・いっ・・・・一回だけ・・・・・ぁあッ・・・・」


シキは固唾をのむ。


これはまずい・・・!


まさか・・・・・まさかマーシャがほんとにこんなことするなんて・・・・


リオナを・・・・リオナをたすけなきゃ・・・・


「おっけい。あと一回で終わらせてやるよ・・・・じゃあ・・・・入れるぞ?」



シキは思いっきり扉を蹴り開けた。


「ちょっ・・・・ちょっとまったぁぁぁ!!!!リオナの純潔は俺が守る!!!!」


「シキさん!?」


突然何をしだすのかと、シュナは呆然とシキを見つめた。


「よぉシキ。派手にきたな。」


マーシャはベッドで横たわるリオナにおおい被さるような体勢でいた。


「よぉじゃない!!マーシャ!!俺はお前に失望した!!さっさとどかんか!!」


シキはマーシャを無理やりベッドから下ろす。


「おおっと!!危ないだろ。目薬こぼれるじゃん。」


「なにが目薬だ!!いいわけしても・・・・・って目薬?」


シキはマーシャの右手にある目薬を見つめる。


「なにさ。俺はただ目薬をリオナに入れようとしただけだぞ?なのにコイツがいやがるからよぉ。」


「だって目薬痛いんだもん。」


勘違い・・・
顔が熱くなるのを感じる。


「どうしたシキ?お前顔が赤いぞ・・・・あ・・・・・さてはお前変な想像してただろ!?」


マーシャはじりじりと歩み寄り、シキを部屋の外までさりげなく追いやっていく。


「い・・・いやまさか・・・」


「さっきリオナの純潔がどーたらこーたら叫んでたもんなぁ?」


マーシャの顔がみるみるいやらしい笑いになっていく。


「違っ・・・・お・・・俺は・・・・」


「もーシキのえっちぃ〜」


「マ・・・マーシャのバカヤロー!!!!!」


シキは顔を真っ赤にさせて、エレベーターも使わずに階段をものすごいスピードで駆け下りていった。


「シキさん!?」


状況把握ができなかったシュナは
マーシャにぺこりとお辞儀してからシキを追って走り去っていった。



「バイバーイ。当分近づくなよー。」


部屋は一瞬静まり返る。



「あっはははは!!!!マジうけるわ!!!」


マーシャは腹を抱えて笑いながらベッドにころがる。



「・・・マーシャはひどい人間だ。シキ可哀想。」


リオナは窓からシキが走り去っていくのを見る。


「はははは!!でもこれでアイツ当分は俺を避けるぜ!?はははは!!」


「まぁそーだけど・・・・」


「どうしたよ?なになに本気になっちゃった?」


気がつけば、
再びマーシャがベッドに乗り上げ、リオナに覆いかぶさっていて。


リオナの顎をクイッと掴み上げた。


「ホントにヤッちゃう?」


「・・・へ?なにを?」


「なにをって、ナニを。」


「ちょ・・・ばか!!ヤダよ!!」


リオナにはまだナニがよくわからないが、
いかがわしいことだけはわかる。

マーシャをポコポコ殴り、
押しのけた。



リオナはシキも心配だったが、何よりもシュナに勘違いされていないかが心配だった。

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あきゅろす。
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