[携帯モード] [URL送信]

【完結】 Novel〜Lord's Soul〜
story17 mission start!





「おいリオナー!早くー!」



「今行く!」



リオナはコートをさっと羽織って、
部屋を飛び出す。




玄関には何度も時間を気にしているマーシャがいた。


「遅ーい。」


「・・・ごめん。寝癖が直んなくて。」


「ほぉ〜。お前もそーゆーの気にするようになったんだぁ。ナニナニ?恋?」


「・・違うよ。というかあんまし女の子いないじゃん。」


「いるじゃん。ほらユリスとか。」


《年離れすぎ!》


マーシャの頭からひょこっとB.B.が顔を出す。


「いつか追いつくぞ?」


「それでも嫌だよ・・・・てか時間は??いいの?」


「ああっ。まずい。急げ急げ。」


― あんま焦ってないでしょ・・・・


三人はせわしく部屋を飛び出し、
エレベーターに飛び乗った。



するとエレベーターにはもう1人乗客が。


「あらマーシャじゃない。あっりっちゃんだぁ!!!今日もかーわーいーいー!!」


たまたま乗り合わせたのはユリスだった。


「お・・・・おはよう・・・・。」


「噂をすれば何とやらだな。」


「なによ。それにしてもすごいスピードで乗り込んできたわね。なにをそんなに急いでるのよ。」


「今日は任務だよ。久々のな。」


「へぇ。どこに行くの?」


「ミュージック・カウンティーだ。化神が現れたらしい。」


「ミュージック・カウンティーかぁ。あそこは観光なら楽しいけど仕事で行くとイライラするのよねぇ。」



ユリスは何を思い出したのか、
体をブルッと震わせる。


「大丈夫。耳栓常備だから。」


「バカね。」


「ほっといて。」


するとエレベーターの鐘が四階についたことを知らせる。



四階にはトレーニングルームがある。



「お前はこれからトレーニングか?」


「もちろん。私の美しい技を浴びせて差し上げましょうか?」


ユリスはマーシャの顎をつかむと、
ぐいっと引き寄せた。


「結構だ。ほれさっさと行けよ。」


しかしマーシャは手慣れたように
シッシッとユリスを追い出す。


「マーシャって冷たい・・・まぁこんなやる気ゼロ男なんて願い下げだけど。じゃあねりっちゃん♪また帰ってきたらお茶でもしましょ♪」


マーシャは閉めるボタンを連打して、
さっさと扉を閉めた。


「たく・・・・女ってのはおぞましいな。」


「・・きっとユリスだけだよ。ルナは普通だし。」


《オイラはルナがタイプだ。》


「あいつ神の子だぞ?お前と天敵だぜ。まるで禁断愛だな。」


《ほぉ・・・禁断愛か!》


「もう・・・朝からそーゆー話はやめろ。てかどーすんの?絶対シキ怒ってるよ・・・。」


「なぁなぁ俺いい考えがあるんだけど!」


「・・・?」
《・・・?》



マーシャからの珍しい提案に、
2人は不安を隠しきれなかった。




















一階につくと三人は走って黒の屋敷の入り口の扉まで走る。


もちろんそこにはイライラしたシキがいた。


「遅い!!これで何回目だ!?」


シキはマーシャにつかみかかってくる。


しかしそこにB.B.が割って入ってきた。


《ごめん!!オイラのせいなんだ・・・・・オイラがねぼうしたから・・・》


「違うんだシキ。マーシャのせいでもB.B.のせいじゃないんだ・・・・俺がちょっとへまして・・・・」


リオナは悲しげに目線を落とす。



すると今度はとどめのようにマーシャが2人を抱き寄せた。


「リオナもB.B.は悪くない・・・!!これもすべて俺の仕業だ・・・!!シキ・・・怒るなら俺を・・!!」


《マーシャ・・・!!》
「マーシャ・・・!!!」


「お前ら・・・!!!」


三人は広い玄関ホールで大声を上げて抱き合う。


そしていつのまにか人だかりができ、
誰もがシキを冷たい目で見つめていた。


『うわぁ・・・マーシャさんたちかわいそう。』
『シキさんひどいな・・・。』
『悪魔だな。』


シキは顔を真っ赤にして、
三人を必死に止め始めた。


「わっ・・・わかったから!!別に怒ってないよ!!!」


「ホントか!?」


「ホントだよ!!だから早く行くぞ!!」


シキは周りからの視線に耐えられず、
三人をつれて黒の屋敷を後にした。


「・・・・・チョロいな。」
《・・・・・シキ哀れだぜ》
「・・・・・・でも俺たちのためだよ」

三人は先ほどの表情とは一変して、ニヤっと笑い、
親指を立てた。





「あっ!!リオナ!!」


外にでると、
シュナがこちらに手をふっていた。


「遅れてごめんね。」


「いいよ。」


するとシュナはなにやら片手に石を持っていた。


「なにそれ。」


「いや。なんかきれいだなぁーて。」


シュナはちょっと抜けてるというか変わってるというか・・・・


リオナは対応に困り、
適当に相づちをうっておいた。






二人はシキとマーシャの後に続いて歩いていく。


今回の任務はシキとシュナと一緒。


といっても任務先が一緒なだけで、
シキとシュナはマスターに頼まれたあるモノの回収に向かうらしい。


「いいなぁリオナ。俺も化神退治とかの任務がよかったなぁ。」


「・・・そう?俺はシュナの任務の方がいいな。なんか楽しそう。」


「じゃあ交換しちゃう!?」


「ははっ!いいね。」


するとシキはさっと振り返って首をぶんぶん振っている。


「ダメっ!!絶対ダメ!!」


「あはは!!!冗談だよシキさん!!」


大きな笑顔を自然と顔に浮かべるシュナをみて、
自分には無理だなと思ってしまうリオナ。


「いいなぁシキは。あんなに可愛く笑ってくれる弟子がいてぇ。俺も癒してほしいなぁ。」


マーシャはチラリとリオナをみる。


「・・・・・・・。シュナそれちょっといい?」


「?ああいいけど?」


リオナはシュナが手に持っていた石を借り、
体勢を整え、思いっきりマーシャの頭めがけて投げつけた。


「いっ!!」


みごと命中。
思わずガッツポーズをとる。


「っっってぇななにすんだよ!!!!」


「ふん。俺はどうせ無愛想ですよ」


「ほらそうやってすぐ暴力。ちょっとはシュナを見習ってほしいものだね。」


「・・マーシャだって少しはシキを見習ったら!?面倒くさい面倒くさいってジーサンかよ!」


2人は火花を散らす。


「ちょっと2人とも・・・・・」
「あはははははは!!!」


シキの促す声をもかき消すほどにシュナがお腹を抱えて笑い出した。


リオナとマーシャは思わず口をぽかんとする。


「あはははははは!仲いいんだね!!ホント面白い!!!」


「「どこが?」」


「どこがって全部だよ!!あはははははは!!!」


シキとシュナは2人を置いて笑いながら歩いていってしまう。


残された二人は思わず顔を見合わせ、
お互いにため息をついた。


「はぁ、俺はただリオナにニコッて笑ってほしいだけなのに。」


「マーシャが面倒くさがらなかったら笑ってあげる。」


《ねぇねぇ!オイラが笑ってやろうか!》
「「いい。」」


《・・・・・・・・・・・。》









5人は島を一望できる城壁の上まであがり、
ミュージック・カウンティーのあるイーストアイランドへつながる扉に向かった。




「俺イーストアイランドに行くの初めて。」


《オイラ一回行ったことあるよ。》


「ホントに?どこ行ったの?」


《忘れた。》


「・・・・・・・・・・。」




辿り着いた扉はどの扉よりも派手な装飾がされていて、
この先に広がる世界をイメージさせる。


シキが扉の取っ手をつかみ、押し開いた。


「それじゃあ行こうか。」


光が溢れ出す扉に足を踏み入れる。


そのままなにも考えずに、
ただまっすぐに進んでいく。


すると突然あたりが暗くなったことに気づき、
辺りを見回す。




「こっちはまだ夜みたいだね。」


「すごい!!!」


シュナは手を叩いて喜ぶ。


しかも扉があるのは小高い丘の上。


月の光が目の前に広がる草原を明るく照らしているのがよくわかる。


「おいこんな暗闇の中歩いていくのかよ。」


「まさか。ちゃんと用意してあるよ。多分もうそろそろだと思うんだけど・・・・」


シキはあたりをキョロキョロみわたす。


「??シキはなにやってるんだ?」


「さぁ?」
《さぁ?》


リオナたちは訳が分からず、
ただ首を傾げる。


そんな三人を見て
シュナはさらに不思議がった。


「知らないの?スピードカーだよ。」


「スピードカー?」


「高速で走る車だよ。世界に数台しかないんだ。」


「それってマスター御用達のやつじゃん。なんでシキが使ってんだよ。」


「俺は一応、マスターから一番信用されてるからね。」


シキの笑顔が一気に腹黒さを増した。


「俺らなんか徒歩だぞ!?くそっ。オレもスペシャル・マスターなんかやめて使用人試験でも受けようかな。」


ブツブツマーシャが文句をぶちまけていると、
遠くの方に小さな二つのライトが目に入った。


「あれだよ!!」


かすかに音も聞こえてくる。


そしてあんなに遠くにいたスピードカーはほんの一瞬で目の前に止まった。


《早ッ!!!!》


夜空と一体化するほどの真っ黒いボディーは、
いかにもダーク・ホームらしいデザインだ。


「いやはや遅れて申し訳ございませぬ。」


運転席から出てきたのは白髪だらけのヨボヨボなおじいさん。


しかしきっちりタキシードを着ていてなかなかキマっている。


「大丈夫ですよ。こちらは運転手の砂音路さん。」


「どうも砂音路です。」


「サオンジ?珍しい名前だな。」


マーシャは物珍しげに砂音路を見た。


「はい。よく言われます。」


砂音路さんは丁寧に頭を下げる。


「じゃあみんな順番に乗って。」


「はーい。」



スピードカーに乗り込むと、
なかは座席がコの字型になっていて、中央にはテーブルがあるという高級感あふれる雰囲気が漂っていた。


「すごっ。いつもこれで任務に行ってるの?」


「うん!すごく快適だよ!あっ今お茶入れるから!」


そう言ってシュナは立ち上がってお茶を入れに行った。


「リオナもこーゆーのがいいか?」


マーシャは若干居心地悪そうにリオナの隣に座る。


「・・うーん、俺は徒歩でいいかな。こういうの慣れてないから。」


「ははっ。俺も。」





スピードカーは走り出すと、
景色が見えないほどのスピードをだす。


しかし揺れはほとんどなく、
快適だ。


「ふぁ〜・・・・」


リオナは大きなあくびをすると、眠そうに目をこする。


「リオナ眠いか?」


「うーん・・・・ちょっと・・・。」


「寝ていいぞ?ほれ。」


マーシャはリオナの頭で寝ているB.B.を膝におき、
枕代わりにする。


「・・・・膝枕」


「イヤか?」


マーシャはいやらしく笑う。


「・・・・眠たすぎてどーでもよくなってきた。」


そう言うとそのままパタンと横になり、
すぐに寝てしまった。


その様子にシキは小さく微笑んだ。


「リオナとB.B.、相当疲れてるようだね。」


「昨日も遅くまでトレーニングしてたからな。」


「アレは完成した?」


「大体な。あとは実戦あるのみよ。」


三人は気持ちよさそうに眠るリオナとB.B.を見つめる。


「なんかリオナかわいい!!」


「確かに。」


《・・・・・▼※●◎◇◆□■@&#%∴※!!!!》


「!?B.B.今なんか言った!!」


シュナは楽しそうに近寄る。


「あー寝言だよ。こいつ寝言言わない日ないもん。」


「へぇ!リオナは?」


「リオナはあんまり言わないかなぁ?あーでもよくうなされてるな。そんで一緒に寝てると腰の方にキューって抱きついてくんだよ。」


「・・なんか意外だな。」


「リオナかわいい!!」


「だろ?マジあの時は可愛すぎて危うく襲っちまうとこだったぜ。」


「襲う??」


シュナが首を傾げてシキを見る。


「こ・・・こらマーシャ!!!子供の前でなんてこと言ってんだ!!!」


シキは耳を真っ赤にさせて怒る。


「別に本心を言ったまでさ。」


「ったくおまえってやつは!!まさかリオナにいつもそーゆーこと言ってんのか!?」


「・・・・・・・ほぼ毎日ね。」


すると目をつむったままリオナがつぶやいた。


「リオナ起きてたのかよ。」


「リオナ!!それは本当か!?ああ何てことだ・・・・!!リオナの将来はどうなってしまうんだ・・・!!」


取り乱すシキに対して、
マーシャはヘラヘラ笑っている。


「ははっ!大袈裟だなぁ。ただのご愛嬌だよ。」


「そんなんですまされるかっ!!なっリオナ!?」


「・・・・・・・・・・・いいよもう慣れたがら。」


とにかく静かにしてくれと言わんばかりに、
適当に手をひらひらさせて再び眠りに落ちる。


シキはあまりのショックに言葉をなくし、
頭を抱え込んでいた。


「てかシキ絶対違うこと想像してるだろ。俺別に言葉だけで、手ぇだしたわけじゃないから。」


マーシャはニヤっとシキを見た。


「あ・・・当たり前だ!!!」


「シキは頭が堅すぎなんだよぉ。な?シュナ?」


「うー・・・うん?」


何がなんだかサッパリわからないシュナはとりあえずうなずいておいた。











夜が明け、
太陽が顔を出した頃


スピードカーはようやくスピードを緩め、
止まった。


「到着したでございまする。」


砂音路さんがひょっこり顔を出す。


5人はスピードカーから降りると、
サンサンと輝く太陽に目を細める。


砂音路さんは丁寧にお辞儀をすると、
再びスピードカーに乗り込み、
ものすごいスピードで消えていった。


「はぁ〜!寝た寝た。」


リオナは大きく伸びをしながらあくびをした。


するとシキがそそくさとリオナに近づいてきて、小さく呟く。


「も・・・もし・・・もしだよ!?絶対にあってはならないことだけど・・・・・マーシャならやりかねないから・・・・・!!何かあったら俺に・・・いや言いづらかったらシュナでもかまわない!!だから一人で抱え込むなよ・・!!」


そう言ってまた走って前まで行ってしまった。


「・・・・・・・・・・は?」


リオナはワケが分からず呆然と立ち尽くす。


「おいどうした?早く行こーぜ?」


「あー・・・うん。なんかシキに変なこと言われた。」


「??変なこと??」


「マーシャに気をつけろ的な。またシキに何か言ったんでしょ。」


「あー、アイツ俺のことショタコンだと思ってんだよ。」


「は?なんで?」


「知らね。アイツ妄想癖ヒドいからなぁ。」


マーシャは何か企むようにニヤっと笑う。


「・・・・・・・。まぁ何でもいいけど俺を巻き込まないでね。どーせまた変なこと企んだろうから。」


「あれ?顔にでてた?」


「でまくりだから。」


マーシャは本当に容赦ない。


変な気を起こさなきゃいいけどとリオナは心で祈った。





しかしそれにしても
あたりには国らしきものが一切見えない。


だいたい国は大きな防壁で囲まれているのだが。


シキは目の前にある少し高めの丘を登っていく。


《どうせ下ろすならもっと近くでおろせよな。》


「言えてる。」


とりあえずシキの後ろをついて行く。


「あっ!なんか聞こえる!!」


シュナは目をつむって耳を澄ます。


リオナもならって必死に聞く。


「あっホントだ。音楽が聞こえる。」


二人は走って丘を一気に駆け上る。


さすがに息が切れ、
頂上で一度呼吸を整えた。


そして顔を上げると・・・


「すごーい!!!!!!」


「わぁ・・・・」


丘の下には
国が広がっていて、
賑やかな音楽が風にのってここまで聞こえてくる。


「はは!!楽しそう!!行こーリオナ!!」


「うわぁ!!落ちる落ちる!!」


シュナはいつになく目を輝かせ、
リオナの手を引き走り駆け下りる。



《さすが子供は元気だ。》


「ああ。ってお前もだろーが。でも楽しみは初めだけ。行けばすぐに分かるさ。この国の裏の事情がな。」


「音楽と自由の都、ミュージック・カウンティー・・・・・か。どこが自由なんだか。」


3人も後に続いて丘を下っていった。



[*前へ][次へ#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!