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【完結】 Novel〜Lord's Soul〜
story14 enemy or side




いつもより少し暗めのマスタールーム。




そしてそこに集まるエージェントたち。




「これで全員か?」


マスターは椅子に座りながらタバコをふかす。


「はい。使用人5名と1stエージェント13名とスペシャルマスター4名、計22名です。」



シキはエージェント達の前に立ち
マスターに深く頭を下げる。


「そうか。では参ろうか。」





















《ふぁぁ〜・・・うぃーす・・・・ってありゃりゃマーシャは?》


B.B.が朝起きると、
リビングにはリオナだけでマーシャがいない。

いつもならこの時間は食い入るようにテレビドラマを見ているのに。


「・・おはよ。マーシャならとっくに行ったよ。」


《行ったってどこに?》


「・・・お前聞いてなかったの・・・。不老の契約だよ。」


《へぇ〜、そんなことかよ・・・・って不老!?》


B.B.は耳をピンと立たせて驚く。


「・・・なにを今更・・・・。」


《お前不老だぞ!?わかってんの!?不老ってことは歳をとれないってことなのだ!》


「そうだよ。だからいつかオレがマーシャと同い年ってこともあるかもね。」


リオナは企むように笑う。


《ホントに!?考えられないのだ!》


B.B.は空をバタバタと飛び回る。


「朝からやめろって・・・。ねぇ早く食堂行こうよ・・・。オレお前が起きるの待ってたんだから。」


《よーし!朝飯だぁ!!》


「・・・・朝から元気な奴・・・。」



















「マーシャ?どうしたんだよ。朝から機嫌悪くないか?」


「別にぃ。」


「・・・・・・・。」


マーシャの明らかな不機嫌さにシキは目を細めた。


マスターとエージェント達はルナのいる階に向かっていた。


「・・・・・ルナか。」


「うるせぇよ。イヤなもんはイヤなんだよ。」


「マーシャだけだったもんな。ルナに処罰を与えるべきだっていったの。」


「だから?」


「いや、ルナがそれ聞いたら悲しむだろうなって思って。」


「はん。悲しまねぇよ。もうわかりきってることだ。」


マーシャはいつになく無表情で答える。


「・・・でもさ、もうそろそろ許してやっても」
「許さない。」


マーシャの拳に力がこもる。


「・・・・・・マーシャ。」


「オレはルナを許さない。いや、許せないんだ。今までもこれからも。」


「・・・・・・・そっか。悪かった。」


シキはそっとマーシャの肩に手をおいた。


すると前を歩いていたマスターがシキを振り返って呼び掛けてきた。


「シキ。ついたぞ。」


「はいマスター。・・・・マーシャ、とりあえず今日は大人しく・・・な?」


「はいはぁい。」


いつものようにひらひらと手を振るマーシャを心配そうに見つめながら、
シキはマスターの元に行った。


― ・・・・大人しく・・・・ね・・・


マーシャは小さくため息をついた。




ルナの部屋の扉が開くと、
部屋はまるで外にいるかのように真っ青な空が広がっていて。


エージェント達は驚きながらも中央にある木の根本にいるルナの所へ向かった。


ルナはエージェントたちの気配に気づいたのか、
顔をこちらに向けている。



マスターはルナに近寄り、
手の甲にそっとキスをした。


「今日は貴女と不老の契約をさせて頂きたくここへ参上しました。」


「・・・・・・はい・・・・・・。」


「ではまず契約内容を教えていただきたい。」


「・・・・・はい・・・・・・。・・・・契約内容は簡単です・・・・・・。私と契約を交わした者は歳をとらなくなります・・・・・・。・・・・しかし私が死ねば契約解除となり、不老ではなくなります。また、私なら万が一神の力がなくなった場合も同じです。」


「我々はどうすれば?」


「・・・・私の手のひらに手をおいてご自分の名前を言って下さるだけで結構です・・・・。」


ルナは少し不安そうな顔を見せる。


それは恐らくマーシャのせいだろう。


「それでは順番に・・。まずは1stエージェントから。」


シキは皆を一列に並べ、
順に契約を済ませていく。


「これで俺も不老不死の最強かぁ〜!はっはっは!!」


「バカね!不老だけよ!あ〜あ、このままだとダーリンと歳の差が開いてっちゃう!!!そんなのいやん!!」


周りはラードのように喜ぶものもいれば、
ユリスのように嫌がるものもいた。


― のんきな奴ら・・・・


マーシャは作り物の空を仰ぐ。


この空を飛び回る鳥達は、
これが偽装空間だと知っているのだろうか。


本当の風を感じたことがあるのだろうか。


そもそもこの鳥達も本物なのだろうか・・・。



「最後だよマーシャ。」


シキに呼ばれて気がつけば皆契約を済ませて
すでにこの場にいなかった。


「はいよ。」


マーシャはルナに近づき、
乱暴に手を取る。


ルナは少し体をビクッとさせ、
おびえたように目線を落とした。


「ったく・・・・マーシャ・・・!」


シキに怒られ、
マーシャはぷいっとしながらも手の力を抜く。


「・・・マーシャ=ロゼッティーだ。」


そう告げると、
ルナは目をつむり
小さく何かを唱え始めた。


するとだんだんとルナの体が光り始め、
その光が手を伝ってマーシャへと移る。


体中が燃えるように熱くなり、
思わず顔をしかめてしまう。


しばらくすると、
一瞬にして熱さがなくなり
体も光をなくした。


「・・・・終わり・・・です・・・・・」


ルナはさっと手を離し、
木にもたれ掛かる。


呼吸も少し、乱れていた。


「ルナ・・・・大丈夫?」


シキはさっと駆け寄り、
ルナにタオルを渡す。


しかしマーシャは何事も無かったかのように部屋を出ていってしまった。


「・・・・・アイツめ・・・・」


「・・・シキさん・・・大丈夫です・・・・ありがとうございます・・・・。」


ルナはニコッとうっすら笑う。


なぜかシキにはそれが悲しく思えた。


「・・・でもマーシャは少しやり過ぎじゃないか・・・?」


「・・・え・・・?」


「何というかな。少し厳しすぎる。」

しかし
ルナはすぐに小さく首を横に振った。


「・・・あれでいいんです・・・・むしろマーシャは優しすぎます・・・・本当なら私は殺されてもいいぐらいなのだから・・・・・」


「・・・ルナ・・・。」


シキはルナの頭をポンポンと触り、
少し笑いかけて部屋を出ていった。







ルナの部屋を出たシキは
扉を背中でゆっくりとしめた。

しかしその時、


「うゎっ!!マーシャ!おどかすなよ!」


「悪い。」


扉を閉めたとたん、
目の前にマーシャがいることに驚いた。


「も・・・もしや盗み聞き・・・」
「んなことすっかよ。ばーか。」


マーシャはくるっと背中を向けて、エレベーターのボタンを押し乗り込んでいく。


「ほら、閉めっぞ?」


「待ってくれよ。」


シキも続いて乗り込み、
エレベーターはものすごいスピードで急降下していく。


「先に戻ったかと思ってた。」


「いや、おまえに聞きたいことがあってさぁ。」


シキはなにを聞かれるのか、
内心ドキドキしながらマーシャの言葉を待つ。


「なんだい?」


「お前も最近、1人のチビ預かったんだって?」


「ああ。なんだそのことか。そうなんだよ。ちょっと訳ありの子だからマスターに頼まれてね。」


「そのチビ・・・・光妖大帝国の前王の息子なんだろ?」


シキは少しびっくりして目を見開く。


「それ・・・・誰から?」


「ラードから。あっ・・・もしかしてこれ秘密だった?」


シキは首を思い切り縦に振る。


なぜラードが知っているのか・・・あの噂好きめ・・・・!!



シキは困ったようにため息をついた。

「大丈夫アイツには口止めしとくから。」


マーシャは少し苦笑いをしてシキの肩を軽く叩く。


「助かるよ・・・・で、その子がどうしたって?」


「あのさ・・・・そいつ・・・この間の大魔帝国の事件について何か知らないかなって・・・・」


マーシャは落ち着かない様子で髪の毛をいじくりまわす。


「ああ・・・・ローズ・ソウルについて?」


「違う。死体についてだ。」


「・・・・・死体?」


「ああ。今悪魔の間で噂になってることがあるんだ。大魔帝国から死体が出てこないって。1人もだぞ?しかも時天大帝国の時もだ。」


シキは少し戸惑いを見せる。


「・・・・・・・ごめん。たぶん彼は知らないよ。彼はここに来たときに知っていることをすべてはなした。ルナのこと、フェイターのこと、そしてローズ・ソウルのこと。それだけだ。」


エレベーターが1階についたことを知らせる。


「そうか・・・わかった。ありがとうな。」


マーシャは手をひらひら振りながらエレベーターを降りていく。


「なぁマーシャ!」


「何?」


シキはマーシャに駆け寄る。


「・・・・あんまりそのことには・・・・首を突っ込まない方がいい。」


「何で?」


「何でもだ。下手したら命をねらわれかねない。」


「誰に?」


「誰にって・・・・・」


困ったように目線を落とす。


「ははっ!!大丈夫だよ。もう首は突っ込まない。ただちょっと気になっただけだからさ。」


そう言ってまたシキの肩をたたき、
また歩いていってしまった。


「・・・・・・・・。」


シキは厳しい顔つきでマーシャをみつめ、もう一度ため息をはいて戻っていった。

























「なぁB.B.・・・・もっとキレイに食べろよ。」


《悪魔にしつけを教えるのは無謀なのだ。》


「・・うるさい。」


二人は食堂で朝食を食べていた。

B.B.は朝からラーメンを食べ、
しかも食い散らかしている。


そのせいで周りからは人がいなくなり、
リオナはうれしいんだか悲しいんだか分からなくなっていた。


「あー、俺のトマト食べただろ・・・。」


《そーゆー割にはどうでも良さそ・・・・》
「ここあいてる?」


急に話しかけられて二人はビクッと体をはねさせた。


気がつけば、
リオナの横には1人の少年が立っていた。


キレイな金髪の、リオナと同い年くらいの少年。


「・・・・・あ、うん。どうぞ。」


リオナは横にずれて少年に席を譲る。


「ありがとう。君、リオナ君でしょう?」


少年はニコニコしながら話しかけてくる。


「!?何で知ってんの?」


「シキさんから聞いた。こっちは君の悪魔?」


ひたすらラーメンを食べ続けるB.B.をみて、
少年はますます笑う。


「・・・ほらB.B.・・・・挨拶・・。」


《うぃーす》


「あははは!!かわいい悪魔だね。」


「・・・・・・・・。」


リオナはかなり警戒しながら少年を横目で見た。


「ああごめんね!オレの名前まだ言ってなかったよね。シュナって言うんだよろしく。リオナ君。」


「リオナでいい。あとこいつはB.B.。」


《B.B.様だーい!!》


「ははは!!B.B.よろしくね。」


シュナはニコニコしながら色々尋ねてくる。


「リオナの出身はどこ?」


「大魔帝国。」


「あっ・・・・この前事件があった・・・・」


シュナは笑顔から一変して悲しそうな顔つきをした。


「・・・・・・・ごめんね・・・」


「何でシュナがあやまるの。お前のせいじゃないし。」


しかしリオナははっとする。


― やばい・・・言っちゃいけないってマーシャに言われてたのに・・・


「あっ・・・えーっと、でも俺は旅芸人だったからその事件とはなんも関係ないんだけどな。はははー」


慌てて付け足した嘘だが、
シュナは安心したのかまた笑顔を見せる。


それがなぜだか心を締め付けた。


「ねぇリオナはどうしてここにいるの?」


まだ質問するのかというくらい聞いてくる。


「それは・・・・強くなるため。」


「どうして?」


「どうしてって・・・・」


「光妖大帝国をつぶす為さ。」


「!?マーシャ!?」


突然現れたマーシャはB.B.の横に腰掛けて、B.B.からラーメンを奪いとった。


《ああ!!!オイラのラーメン!!!》


「あなたがマーシャさん?こんにちは。」


「やぁやぁ。君が最近入ったっていう少年シュナ君。シキから聞いてるよ。」


「はい!よろしくお願いします!」


シュナは急に立ち上がると頭を思いっきり下げた。


「あははは、かーわいーなぁ。どっかの誰かさんと違ってぇ。」


「・・・悪かったね、無愛想で。」


リオナはムスッと顔を横に向ける。


「あっもう時間だ!じゃあオレはこれで。またねリオナ、B.B.。マーシャさん失礼しました。」


シュナは頭を下げて、かけあしで食堂を出て行った。


「・・・礼儀正しいね。俺と違って。」

リオナは未だにいじけてるのか、
ふんっとマーシャから顔を背ける。

そんなリオナを笑いながら、
マーシャはリオナの頬を面白がってつついていた。


「そうだなぁ。っておいひがむなよぉ。まぁ育ちが育ちだからな。」


「??あいつ貴族かなんか?」


「いや、貴族なんてもんじゃない。あいつは光妖大帝国の前王の息子だ。」


「光妖大帝国の前王の・・・!?」
「しー!!これここだけの話ね。」


― だから謝ってきたのか・・・・。


《おいおいマーシャそれいっちまっていいのかよーう。オイラ達もシキに口止めされてるのだ?てかラーメンかえせ!!》


「俺も口止めされた。でもいつかはバレるもんだしよぉ。特にリオナは注意しなきゃなんないし。アレだからな。」


《ああローズ・ソウルか。》


「!?えっB.B.はなんで知ってんのさ。」


「俺が話した。B.B.はこれからお前と一生関わる奴だからな。信用できないけどな。」


《へへぇん!!信頼したまえ!!!》


― すんごい不安だ・・・・!



「・・・もし裏切ったら一生お前に飯やんないからな。」


「優し過ぎだなリオナ。もし裏切ったら俺が粉々に粉砕してやっから安心しな。」


《お前らオイラが裏切ること前提かよぅ・・・・》


B.B.はガクッと肩を落とし、
空をゆらゆらさまよう。


「・・・でもさ、シュナはスパイとかじゃなくてもう仲間なんでしょ?」


「まぁな。あいつも悪魔と契約したし。ただ用心に越したことはないってハナシ。」


― 用心か・・・



いつからだろうか・・・・

人を警戒し人を疑うようになったのは・・・・




でもマーシャに言えばきっとこういうだろう。






"今はこういう世の中だから"



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