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【完結】 Novel〜Lord's Soul〜
story12 赤の屋敷



「リオナぁ!!生きてたぁ!ほんっとよかった!!」


「・・・マーシャが斬りつけたくせに・・」


「だから悪かったって。まさか逃げないとは思わなかったんだよ。」


朝、目が覚めると、
マーシャがいきなり抱きついてきた。

謝罪はするものの、
あまり反省をしていないようにも思える。


それは彼のやる気のない口調のせいだろうか。


「最近思うけどさ、マーシャってドSだよね。」


「何言ってやがる。男は皆ドSなんだよ。か弱い者を見るといじめたくなる。」


「俺はSにはなりたくない・・・」


「お前は大きくなったら確実にSになると思うぞ?ドドドSくらいだな。」


「どんだけだよ。ただの鬼畜じゃん。」


「お前よく鬼畜とかそーゆー言葉知ってるよな。ナニナニそっち系が好きなの?ませてるねぇ。」


顔をニヤツかせるマーシャに、リオナは目の前に置いてあった雑誌を投げつけた。


「バカっ!違うよ!俺は頭がいいだけ!」


ふいっとして洗面所へ向かう。


廊下に出ると、一つの部屋の扉が開いていた。


まだ見たことのない部屋だったため、
気になって思わず扉のノブに手をかける。


そっと部屋を覗くと、どうやら書斎のようで、沢山の本が並んでいた。


「すご・・・・・・・」


リオナは思わず目の前にある本を棚から取り出す。


するとバサッと一冊の本が音を立てて床に落ちた。


リオナは慌てて本を拾い上げた。


が、その本を見たとたん、
体が硬直した。


「な・・・・・なんだこれ・・・・・」


するとマーシャがひょいと扉から顔を出してきた。


「なぁ次洗面所使ってい・・・・ってアアアアアアアアアア!!!!?」


マーシャはリオナの持ってる本を奪い取り、
さっと本棚の奥へ隠した。


「・・・・ねぇ・・・"禁断の蜜"って何・・・?」


リオナは先ほどの本を思い出す。
表紙にはスタイル抜群の女。


しかし服は着ずに体をシーツで隠しているが、
丸見え。


リオナは冷たい目を向ける。


「あ・・・あのなぁ・・・お前にはまだ早いけどな、これは男にとって必要不可欠なんだよ!!!まだわかんねぇだろうがよ!!いつかわかる!いつか!!まぁその時は言ってくれよ。貸してやっからよ。はっはっは!!」


マーシャは一気に開き直り、
笑いながら部屋を出る。


残されたリオナは赤くなった顔を押さえながら、
何度も首を振った。


「ありえないありえない・・・・・!!そんなもの借りるかぁ!!!バカ!!って俺が洗面所使うの!!」



ギャーギャー騒ぎながら洗面所の取り合いをはじめ、やっと朝食が終わったのは起床から2時間後。


朝から濃い話をしてしまい、
2人はぐったりしながら食堂から部屋に戻っていた。


「・・・・マーシャが変なこと言うからぁ・・・疲れた」


「はん。まだまだ甘いな。そんなこと言ってるうちはまだ男とは言えないな。いてっ」


リオナがマーシャにパンチを食らわす。


「もうその話はおしまい!!」


「あらら顔赤くしちゃってぇ。かわいいこと。」


「・・・・・・・・・・・怒るよ。」


「はいはい。」


マーシャはポケットから鍵を取り出し、
さっと部屋の扉を開ける。


「どーぞ。」


「どーも。」


リオナは部屋に入るとそのままリビングに向かう。


「あっリオナちょっとテレビ14チャンにしてぇ。ドラマはじまるから。」
「うわぁぁ!!」


マーシャが鍵を閉めていると、
リビングからリオナの叫び声が聞こえてきた。


急いでリビングに行くと、
リオナが尻餅をついていて。


「おいどーした?」


「いや・・・そこ・・・。」


リオナの指さす方を見る。


するとそこには酒瓶を持って
床に臥している男がいた。

死んでるのか、生きているのか。

リオナは青い顔を隠すように掌で覆った。


「ああ。シキか。おーいなんでお前ここにいんだよ。おーい。」


マーシャは容赦なくシキの顔をバシバシ叩く。(というか殴る)


「・・・・・グヘッ・・・・・!!・・・・あ・・・・・?・・・・・・マーシャ・・・・・」


マーシャはとどめを刺すかのように最後に一発けりを入れた。













「・・・・・水です。」


リオナは警戒しながら、テーブルで眉間を押さえるシキにそっと差し出した。


「ああ、ありがとうリオナ。」


シキはリオナに爽やかに笑いかける。


「ったくよぉ〜部屋に勝手にあがるわ人が楽しみにとっておいた酒は飲むわ。いい加減にしねぇと鍵勝手に変えちまうぞ?」


「本当に悪かったって・・・・。いや、これはストレスだ・・俺がこんな失態をさらすなんて・・・だからそれだけは勘弁してくれよ・・・。マスターにしごかれるから・・・。」


シキ=ワーカーヴァンズはダークホームの総取締役でありマスターの第一使用人である。


シキは城内のすべての部屋の出入りを許されているため、
大量の鍵を常に持ち運んでいる。


見た目はまだ10代なのに、マーシャよりも年上だという
いつもニコッとしている好青年。


しかし少々ネジがはずれているのか、時々突拍子もない行動をとるようだ。


「んで、今日は何の用デスカ?」


「そう。今日はあれだよ。リオナ=ヴァンズマンの契約日。」


「今日やるのか?早くねぇ?」


「それが明日は夜会、明後日はダーク・ホーム巡回、明々後日はマスターの出張。そうすると今日しかないんだ。」


「別にシキがいなくても俺がついて・・・・」
「ダメ!!!!!!!!!!」


急に声を上げるシキに
2人は若干引く。



「ダメダメダメダメ絶対ダメ!!それは規則違反だ!あそこの出入りは俺かマスターのどちらかが付き添う決まり!最近は悪魔も凶暴化しているし・・・・!」


「・・・はいはい。わかりましたよ。んでリオナにスーツ用意してくれた?」


シキは今度は急に立ち上がると、
自信満々の笑みを浮かべ、
外していたメガネをさっとかけた。


「もちろん。マーシャと同じデザインにしてある。」


「ほぉ。そりゃ助かる。じゃあ俺着替えてくるからリオナの方頼むよ。」


マーシャは背中をボリボリかきながら、部屋を出ていく。



「さてリオナにはこれに着替えてもらっていいかな。」


そう言って取り出したのは、
真っ黒なシャツに右胸から白く薔薇の刺繍が入ったもの。

真っ赤なズボン。

そして白地に赤と黒のラインが入った紐リボン。


「・・・・これって正装・・?」


「ああ、主に基本スタイルだよ。任務とかは本当はその格好でいってもらわなきゃ困るんだけどね、スペシャルマスターたちは聞く耳を持たないらしい。」


シキの苦笑から普段の苦労が目に浮かぶ。


リオナは下を着替え、上を脱ぐと、背中の傷がズンと痛んだ。


「・・・・・イタ・・・・」


「また派手に斬られたな。マーシャは手加減を知らないから。」


「ホントだよ。マーシャの奴俺のこと本気で殺す気だったよ。」


「・・・ったくあいつは。まぁ許してやりなさい。あいつは愛情表現がいまいち分かってないからな。」


「あれ愛情表現だったの?」


「そうだぞ?ここだけの話だけどな、マーシャのやつ、昨日会議が終わったあとにマスターに頭下げたんだ。」


「・・・・・・・・なんで?」


「"リオナの面倒を俺にやらせてください。降格でも何でもかまいません。俺にリオナを指導させて下さい。お願いします。"ってね。」


「・・・・マーシャ・・・」


「あの面倒くさがり屋でしかも子供嫌いがだよ?わざわざ頭を下げたんだ。どうしてかな・・・・」


「それは・・・・・」


―・・・・俺がわがまま言ったから・・・


「それはきっとリオナに似たものを感じるんだろうな。」


「・・・・・え?」


「あんなに楽しそうなマーシャを見るのは久しぶりだよ。リオナが変えたんだな、きっと。」


「・・・・・そうなのかな。」


リオナは照れたように頭をかく。


「まぁマーシャのことよろしく頼むよ。あいつ人付き合いとか苦手だからさ。ほら、こっち向いて。」


リオナは手に持っていたリボンをシキに渡す。


シキは手慣れたように首に結んでゆく。


「なんか意外・・・・マーシャは人見知りとかしないタイプかと思ってた・・・。」



「そう?マーシャは人付き合いすら面倒だって言って、いつも部屋にこもるか任務に出るかのどっちかだ。でもそれが逆効果でさ。周りの女の子たちはみんなマーシャをレア扱いして。任務に出るときと帰るときは必ず囲まれてしまうんだ。それで下の男たちに恨まれたりして。可哀想に。・・・・はい、できた。」


リオナは複雑に結ばれたリボンを見つめる。


「おお。リオナ似合ってんじゃん。」


着替え終わったマーシャが再びリビングに戻ってきた。


マーシャもリオナと同じ服装をしているが、
リオナのリボンと違って、ネクタイを締めている。


「俺もネクタイがいい・・・」


リオナは羨ましがって
マーシャのネクタイをぐいぐい引っ張る。


「え?これ?残念でーした。3rdと2ndエージェントはリボン、んで1stとスペシャルマスターがネクタイって決まってるんだよ。ネクタイしたきゃ強くなりやがれ。」


リオナはぷうっと頬を膨らましながらも仕方なくリボンで我慢した。
















悪魔と契約を済ますため、
三人は黒の屋敷を出て、
城下町とは逆の方へ向かってゆく。


町の賑やかさとは一転して暗い森が広がり、
肌をかすめる生ぬるい風が不気味さを増している。


「ここの森は、"審判の森"ってよばれているんだ。悪魔のオーラが強く出てしまっているからね。今まで何人ものやつらと契約しにここにやってきたけど、半分以上が怖がって逃げていった。でもリオナは大丈夫みたいだね。」


平然と話すシキを見て、
リオナは尊敬と恐怖の入り混じった気持ちになる。


「・・ねぇ大体どういうことをするの?」


「今から"赤の屋敷"ってところにいくんだ。そこには何匹もの悪魔が眠っていてその中からリオナと相性のいい悪魔を探すんだよ。」


「たまに相性あわなくて泣く泣くダーク・ホームをあとにする奴もいるけどな。」


にやっと笑い、脅しをかけるマーシャにリオナは不安の色をにじませる。


「ちょっ・・・縁起でもないこと言うのやめてよ・・・・」


「そうだぞマーシャ・・・。リオナだって緊張してるんだ。」


「はいはい。」


「・・でも悪魔との相性ってどうやったら分かるの?」


「それはリオナ自身にしかわからない。」


「・・・・・・俺自身?」


「まぁ行ってからのお楽しみってやつだ。」


リオナは若干不安を感じながらも、
2人のあとを追う。




森の奥に進むと、
すぐに赤の屋敷に到着した。


屋敷は名前通り、
赤い壁。


しかし屋敷というよりも城の一部な感じだ。


だがいかにも悪魔が住んでいそうな空間である。


大きな扉を開けると、
すぐに大きな吹き抜けがある広いホールへ出る。


リオナは今にも心臓が飛び出るんじゃないかと思うくらいドキドキしていた。


「リオナ。コッチへおいで。」


シキに招かれ、ホールの中心に行く。



「さて、これから"契約の儀"について説明するよ。まずここの床に書かれた文字を読み上げて。そしてその下にあるダーク・ホームの紋章に、自分の血を捧げる。まぁ捧げるって言っても軽く指を切るくらいでいいよ。そしたら耳に悪魔のよぶ声が聞こえてくるはずだ。その声を辿って悪魔の場所へ行き、悪魔と契約して終わり。簡単でしょ?」


― いや・・・結構大変・・・・。


「じゃあ早速始めようか。」


リオナはコクンと頷き、
深く深呼吸をする。


ピンと空気が張りつめ、
肌がピリピリしている。


「・・・・・・・・我、神の心を砕くもの。我が魂は力を求め、天を切り裂き地を沈める。汝に我が肉と血と骨を捧げ、今誓いを交わそう。」


リオナはシキからナイフを受け取り、
指をさっと切る。


そしてその指を紋章に押し付け、血でぬらした。



すると血は一気に紋章を赤く染め、
天から屋敷全体に風が広がっていく。



リオナは耳を澄ます。


悪魔のささやきを聞き逃さないように。



















5分がたった。


しかし未だに声は聞こえない。


― おい・・・・ちょっと長いんじゃねぇか・・・


マーシャは心配になり、
目をつむって立ち続けるリオナの顔をのぞく。


するとその瞬間、リオナはカッと目を見開き、
後ろを振り返った。


― おっ。聞こえたのか?


しかしリオナはなぜか外へ出て行ってしまう。


悪魔は赤の屋敷内にいる。
外にはいない。
儀式の途中で外に出てしまった者は今までにいないのだ。


「ちょっ・・・・リオナ!?おいどこに行くんだよ!?ってシキも早く止めろよ!」


「ちょっと待てマーシャ」


焦るマーシャをよそに、
シキは冷静に、真剣な表情を見せる。


「!?なんでだよ!?契約の儀は屋敷内だろ!?出たらおしまいだ!」


「ちがう・・・あっちにも・・・悪魔がいるんだ・・・。」


「え・・・・?もしかして・・・・・あいつか・・?」


「ああ・・・・・・アイツだ・・・・!」


2人は顔を見合わせて、
急いでリオナのあとを追った。








リオナは屋敷を出ると裏庭に回り、
生け垣を掻き分けてさらに奥へ進んでいく。


《コッチダ・・・・・早ク・・・・早ク・・・・・・・》


悪魔のささやく方へ。


奥へ進んでいくと、突然目の前に真っ黒な扉が現れた。


リオナは迷わず中へ入っていく。


それに続いてマーシャとシキも入っていった。








中はろうそくで照らされている薄暗い部屋。


テーブルもなにもない。


しかし真ん中には何か台座がある。


「リオナ。本当にここ?」


シキの問いかけにリオナはコクンと頷いた。


「うん・・・多分・・・。」


マーシャはしゃがんでリオナの目を見つめる。


「よく聞けリオナ。ここには確かに一匹の悪魔が住んでいる。だけどこの悪魔はほかの悪魔とは違うんだ。こいつは・・・・」


《ゴチャゴチャウルセェゾオ前ラ!!オイソコノガキ!!サッサトコッチキテ契約ヲスマセロ!》


「な・・・・ガキだって・・・・!?」


リオナのかんに障ったのか、悪魔の方へズンズン進んでいく。


「・・・・俺たちにも聞こえるな。悪魔の声。」


「ああ。こいつは特別・・・なんてったって・・・・・あれだからな。」


本来は契約者以外に聞くことのできない悪魔の声に
マーシャとシキの不安がつのる。



リオナは台座へ近づいた。


すると目の前に風が集まっていき、大きな円を描いてゆく。


思わず目をつむってしまったが、だんだんと風も弱まり、
中心に一体何がいるのか、
目を凝らして見つめた。


「・・・・?」


何かいるのはわかる。


リオナはその何かを両目を何度もこすりながら確かめる。


そして、そこに置かれていたのは・・・・


「・・・・・・うさぎ・・・・の人形・・・?」


台座には悪魔の羽が生えた一匹の黒ウサギ。


目は赤く、
黒々しいオーラを放っている。


リオナは思わず手に取った。


「なにこれ。かわいいんだけど。」


《貴様カワイイダト!?俺様ハ悪魔ダゾ!?軽々シクサワルナ!!!》


そう言ってウザギは羽を動かし、リオナから離れて空中を飛び回る。


「わっ!!しゃべったし動いた!!ちょっとコレなに!?」


リオナは頭上を飛び回るウサギを避けながらマーシャとシキの元へ逃げる。


「コイツも悪魔だ。まぁ見た目はウサギだがな。」


マーシャは面倒くさそうに呟く。


「この悪魔はね、規律を破った為にウサギの亡骸に封印されてしまったんだ。」


「規律・・・・?」


「そう。この悪魔は味方である悪魔を食べてしまったんだ。その上、力が増幅してしまってね。この世で定められている悪魔がもっていい力の規定を大幅に越してしまった。だからこの悪魔は力を吸収すると言われる黒ウサギに閉じこめられたんだ。ここに隔離されてるのは他の悪魔がコイツを怖がるからなんだけどね。」


「リオナ・・・コイツは厄介だぞ?悪魔最強にして最悪の性格だ。できればほかの悪魔にするべきだ。」


せわしく飛び回る悪魔をリオナは見つめる。


見れば見るほど落ち着きのなさがイラッとくる。


「・・・そうだね。他を探そう。」


マーシャとシキはその言葉にホッと胸をなで下ろした。


「ああ。それが一番だと思うよ。」


三人は何事もなかったかのように出口へ向かっていく。


しかし黒ウサギの悪魔は黙ってはいなかった。


《貴様ラ・・・・・・・俺ヲミクビルナヨ・・・・・・》


その瞬間、黒ウサギは黒い光をリオナの体に貫かせ、リオナの体は金縛りのようにびくともしなくなった。


「な・・・・!?」


「リオナ!?」


マーシャがリオナに近づこうとすると、
壁があるかのように跳ね返される。


「くそ・・・!結界だ・・・!」


リオナは体を動かそうとするがびくともしない。


《俺トオ前ハ相性ガイイ・・・・コンナチャンスメッタニナイゾ・・・?》


「はなせ・・・!!お前とは絶対契約しないからな!!」


すると悪魔はこらえるように、低く笑い出す。


《ハハッ・・・・・・・・ナァ・・・モシ・・・契約ニオ前ノ意志ガ必要ナイトシタラ・・・・・・・?》


「は・・・・?・・・・・・・・・うわ!!」


次の瞬間、
黒ウサギは宙を蹴り


リオナの中へ飛び込んでいく。


「う・・・・ぁあ・・・!!!」


体に電気が走るような痛みにおそわれ、
もがくが、体は動かない。


結界の外から見ているマーシャが、
シキにつかみかかった。


「!?おいシキどうなってんだよ!」


シキは目を細める。


「これは・・・限られた悪魔しか持たない憑依の力だ・・・」


「憑依だと!?どーゆーこった!?」


「いわゆる強制契約だよ・・・悪魔が気に入った人間に、相手の意志に関係なく契約することだ・・・俺たちにはどうしようもできない・・・・でも何でアイツが・・・?」


「っとにツイてねぇよ・・・・」


マーシャは諦めきれない気持ちとどうしようもない状況の中、
ただその場で見守ることしかできなかった。


しかし次の瞬間、
リオナの居たところから黒い煙が放たれ、
視界が悪くなる。


もがき声は消え、
パタリと何かが床に倒れる音がした。



「・・・・!結界がなくなった!」


「いくぞシキ。」


2人は煙をかき分けるように
進んでゆく。


するとシキの足に何かが当たり、
ビックリして少し後ずさる。


「・・・・・・・・いっ・・・・たぁ・・・」


当たったのはリオナだった。


リオナは床にうつ伏せになっていた。


が、なにかが違う。


「リ・・・リオナ・・・!お前・・・・!!」

リオナはマーシャのあわて振りに首を傾げた。


「はい・・・?」


「・・・・ああああ頭だよ頭!!」


マーシャに頭を指さされ、
リオナは手を頭に伸ばす。


「・・・・・・・・・?・・・・・・・・・・!?」


手になにかふわっとしたものが当たる。


それは二つあり、ピンと長く上にのびている。


いやな予感がした。


リオナはそれをつかんで目の前に引っ張ってくる。


「み・・・・・耳!?」


予感大的中


リオナの頭からは真っ黒いふさふさなウサギの耳が生えていて、
気づけば背中にも悪魔の羽が生えている。


「なにこれ!?なんなんだよ!とれないしぃ!!」


リオナはグイグイと耳を引っ張る。


《わははは!!契約大成功だぜ!!オイラの迫真の演技のおかげなのだ!!》


体の中から黒ウサギの声が聞こえてきた。
しかも黒ウサギの悪魔は先ほどとは打って変わって、口調が子供っぽくなっていた。


「なっ!!俺はお前とは絶対契約なんてしないからな!!」


《だからもうオイラと契約しちゃったんだっての!!わはははは!!》


驚きとショックで唇を震わせる。


「はぁ!?なんだよそれ!んなこと聞いてないし!!」


リオナはシキを睨みつける。


シキはドキッとし、
いつも以上に微笑んだ。


「いや・・・・・その・・・・・・なかなか似合ってるよ?」


「似合ってない!あーもぉマーシャ!どーにかしてよ!!俺こんなヤツやだよ!!」


「ああ、俺もイヤだなぁ。」


「って人事かよ!!」


すでにキャラが崩壊しつつあるリオナから、
やっと黒ウサギが体から離れる。

リオナは潤んだ目で黒ウサギを睨みつけ、
あれこれと文句を募らせていく。


しかしすぐに
諦めたのか深いため息をついた。


「てかなんで出てきたの・・・?悪魔って契約したら一生体から出てこないんでしょ・・。」


《わはははは!!オイラは特別なんだよ!なんならずっとお前の中に入っててもいいんだぞぉ?》


リオナの頭に乗る黒ウサギに、
リオナは全力で拒否をした。

















「はぁ・・・・・・・・・・・・・俺の人生が・・・・・・・こんな人形に壊されるなんて・・・」


《人形とは失礼だな!!オイラはれっきとした悪魔なのだ!!まぁ見た目はウサギだけど・・・》


三人と一匹は無事(?)に契約をすませ、
黒の屋敷へ戻っていく。


「まぁまぁリオナ。コイツは見た目はかわいらしいけど力はすごいよ。まぁその力の使い方に問題があるんだけどね。」


シキのフォローなんて今は耳に入らない。


一方マーシャは、明らかに不満そうにワザとほおを膨らませている。


「それにしても厄介だなぁ。こんなうるさい悪魔と生活するなんてよぉ。」


《は!?オイラはうるさくない!!だまれうんこ頭!》


「はいはい。うんこ頭で結構。だから黙れ。」


マーシャはシッシッと黒ウサギを払いのける。


そんな態度をとられたのは初めてだったのだろうか。


黒ウサギは初めて戸惑いを見せた。


《!?・・・・おいクソガキ。あいつ大丈夫か?》


「何が。」


《だってうんこ頭言われてるのに突っかかってこないのだ!!あいつの中の悪魔死んでんじゃね!?》


「大丈夫だよ。マーシャはもともとあーゆー人間だし悪魔もきっとそうなんでしょ。」


《ふん・・変な奴!》


言う言葉がなくなったのか、
黒ウサギは中途半端なつっこみで終わった。


「お前の方が変な奴だよ黒ウサギ。」


《黒ウサギいうな!!オイラにはれっきとしたネームがあるんだよ!!》


「何?」


《B.B.(ビービー)だ!》


「・・・・それ何かの略?」


《もちろん"Black Bunny"の略なのだ!》


「・・・・・結局黒ウサギじゃん・・・」


《違うんだよ!!バカかお前は!》


「はぁ・・・・・・・もう何でもいいから少し黙れよ・・・」


リオナもさっさと歩いていってしまう。


《チクショー!!天下のオイラがこんなガキになめられてたまるかぁ!!》


B.B.は先ほどのようにリオナにつっこんでいく。


「うわぁ!!」


再び黒い煙が上がり、
リオナの体に入ってしまった。


《さぁ行けぃ!!リオナ!!》


「お前出てこい!!こんな格好で戻ったら皆に笑われるだろ!?」


リオナはぐいぐい耳を引っ張る。


しかし出てくる様子はない。


《わはははは!!!存分に笑われたまえ!!!!!》


「えー!!?マーシャ!裏口ない?!」


「ない」


「シキィ・・・・・!!」


「・・・・・ごめんなリオナ」


シキはこんなことになってしまったことへの罪悪感からかリオナをまともに見れなかった。


「・・・・・うぅ・・・・」


B.B.との生活を思い浮かべると、
自然に涙が出てきそうだ。


リオナは肩をガクっと落とし
三人と一匹は黒の屋敷へ戻っていった。


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あきゅろす。
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