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【完結】 Novel〜Lord's Soul〜
story11 タイセツナヒトヘ



いつのまに眠ってしまっていたのだろうか。


気がついたら日付は変わっていて、時刻はpm02:33


―・・・・寝過ぎた・・・・


リオナはのろのろとベッドから起きあがると、
カーテンを開けて日の光に目を細める。


― あれ・・・マーシャいない


ほかの部屋にもいる様子はない。


― あ・・・今日は会議だったっけ


そのことを思い出すと、
リオナは服を着替えて何か飲もうとリビングへ行く。


リビングのテーブルの上には
パンとサラダが置かれていた。


「・・・・・・・・・」


あまりおなかも空いていなかったから、
リオナはそっと部屋の外に出た。


「あーリッチャンじゃない!」


ドアを閉めようとした瞬間、
背中から大声で呼び止められた。


振り返ると、真っ赤なドレスを着たユリスが抱きついてきた。


「!?!?」


「おはよ!よく眠れたかしら?」


「リッチャンって・・・・・・・・・」


「そうリッチャン!かわいいでしょ?うふふっ!」


― かわいくないよ・・・!!


「・・・・・・・。ユリスさんは会議に出ないんですか・・・・」


「あらちゃんとでたわよ?マスターのご命令だもの。ああマーシャならマスターと話があるって残ってるわ。あと"さん"はやめてよぉ。ユリスって呼んで。」


「・・・・・・・・・・うん」


「キャー!そのクールさがかわいい!」


― ・・・・死ぬ・・!!


リオナは強く締め付けられて、
苦しそうにもがく。


「あっ・・・・ユリス・・・あのね、ルナの居場所・・・わかる?」


ユリスはルナの言葉に少し顔をゆがめた。


なぜだろう。


「うーん・・・教えてあげたいんだけどぉ・・・あの子一応犯罪者だからねぇ・・・・」


「・・・!?ルナは犯罪者なの?」


「あの子は光妖大帝国の人間だったじゃない?しかも国の重役のほとんどと・・フェイターとも不老の契約をしてしまった・・・・つまりこれはローズ・ソウルを危険にさらしたことになるの。ちょっとこじつけた感じがあるけどね。」


「ルナは・・・どうなるの・・・?」


リオナは心配で両手をギュッと握り締める。


「それはヒ・ミ・ツ!」


「・・・・・・・・・・・。」


「やぁねそんな顔しないでよ。大丈夫。悪くはしないわ。明後日の夜会で話があるはずよ?」


「・・・・・・・・夜会?」


「月に一度のメンバー集会よ。楽しいわよ?お酒いっぱい飲めるし☆」


「・・・・・・・・・・リオナにはまだ早い」


すると後ろから声が聞こえ、
振り返ればベンがいた。


「あらベンじゃない。そんなことわかってるわよ。大丈夫よリッチャン!お菓子も出すように言っておくから♪」


「う・・・・・・・・・うん」


すると部屋から出てきたベンは、
リオナに近づき、手をつかんだ。


「・・・?」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ルナが呼んでる。」


「?ルナが?俺のこと?」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・そう。」


そのままベンはリオナを引っ張ってゆく。


「ちょっとベン!そんなことしていいわけ!?って行っちゃったし。私知らないわよ!?」


ユリスはぷいと顔を背け、自分の部屋に入っていった。
















リオナはベンに連れられ、
エレベーターに乗り込む。


背が大きく、しかも細く物静かなせいか、ベンの感情を背中だけでは見ることができない。


するとベンはエレベーターのボタンを16,13 5,4,13,11,1 ,7..... と順番にボタンを押しはじめた。


「・・・!?」


―・・・・どこに行く気だろう・・


すると次の瞬間、
エレベーター内のボタンが光り出し、
光を増していく。


そして存在しないはずの"100階"というボタンがでてきた。


ベンはその100階のボタンを押す。


するとエレベーターは一気に加速し、
上昇する。


「うわぁ!」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・しっかり捕まってろ。」


「言うの遅いって!」


あまりのスピードの速さに体が浮き上がりそうになる。


― まさか戻るときは急降下!?


リオナは帰りの想像をして、
顔をひきつらせた。


1分くらいたっただろうか。


エレベーターの鐘が100階についたことを知らせる。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・このドア出たら、目の前に大きな扉があるはずだ。・・・・・・・・・・・・・・・・・・その中にルナがいる。」


「あ・・・ありがとう。」


リオナはフラフラしながらエレベーターから降りると、
ベンは軽く手を振って下へ戻っていった。


― なんか男版ルナって感じ・・・・。


リオナはベンとルナを思い浮べながら足を動かそうとする。
すると、すぐ目の前に、ベンの言っていた通り大きな扉があった。


リオナは緊張した足取りで扉の前にたつ。


そしてそっと扉を押し開ける。


するとぶわっと風が吹き上げた。


リオナは目の前に広がる光景に目を疑った。


地面は水


なのに歩ける。


そして水の下には、花がたくさん咲いていて、
すごく幻想的だ。


「・・・リオナ・・・?」


ルナの声がし、
リオナはルナの姿を探す。


ルナは中央にある、
真っ青な葉をつけた巨大な白い木の下にいた。


「ルナ!」


リオナはぴちゃぴちゃと音を立てながら、
ルナの元へ駆け寄った。


「・・・・どうしてここにいるの・・・・?」


「あれ?ルナが呼んだんじゃないの?」


「・・・・・・私は呼んでないわ・・・」


「じゃあなんで・・・・」


― あっ・・・・ベン・・・気を使ってくれたのかな・・・・・


「というか、いつから話聞いてたんだろ・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・え・・・・・・・・・?」


「ううんなんでもない。」


リオナはルナの隣に腰掛ける。


「・・・・・どうしたの・・・・?・・・元気なさそう・・・・」


ルナは悲しそうに見つめてくる。


時たまルナはまるで目が見えているような行動をとる。


「・・・そう?」


「・・・・・ええ・・・・・・」


リオナは軽く笑うと、
ため息をついた。


「・・・ねぇルナ」


「・・・・・・・・?」


「今の俺の心よんでよ。」


ルナは少し戸惑いながら
目を泳がせた。


「・・・ごめんなさい・・・・・・・マーシャに止められていて・・・・・・・・」


「・・・・・・そう」


「・・・・・・・・・・・・・・」


室内のはずなのに、
ちゃんと空があり、
風も通り抜けていく。


風は強く、
けれど静けさを保つ。


すると
リオナは静かに話し出した。


「あのさ・・・・ルナが初めてあったときに、俺に何をそんなに怯えてるか聞いたでしょ?」


ルナはコクンとうなずく。


「現実から逃げるな・・・現実はどこまでも追いかけてくるって・・・」


「・・・・・・・・・・・・・」


「・・・俺さ・・さっき気づいたんだ・・・」


「・・・・・・・・・・・・・・?」


「・・俺の・・・・・記憶が足りないことに・・・・・」


リオナはルナの腕を強くつかむ。


「あの事故より前のことがわからないんだ・・・何にも・・・。誰と知り合いで誰と遊んで・・・誰と何をしていたか・・・家族の顔も思い出せなくなってる・・・」


「・・・・・・・・・・・・・。」


「これが現実から逃げてるって事?でも俺はどうして逃げてるの!?」


「・・・・・・・・リオナ・・・・・・・・・・」


リオナはポケットから先ほど思い出したばかりのバルドの家の鍵を取り出す。


「これ・・・さっきまでは何の鍵だか分からなかった・・・。でも一生懸命考えた。そしたら頭にこの鍵の持ち主の事を思い出したんだ・・・・・・。でも・・・・」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「その瞬間胸がすごく苦しかった・・・・・すごく・・・締め付けられるんだ・・・・・。ねぇ・・・・・どうして・・!!?わからない!わからないんだよ・・・・・・」


力なく床の水を見つめる。


花は奥底まで沈んでいるはずなのに、
色が濃く見える。


ルナはそっと水の中に手を入れ、
近くに沈んでいる花を手に取った。

そしてそれをリオナに手渡す。


「・・・リオナは・・・・怖いのよ・・・・」


リオナは平然と話すルナを見上げる。


「・・・・・・リオナは怯えてるの・・・・生き残ったのは自分だけで・・・・大切な人たちは皆死んでしまったって事に・・・・・」


「・・・・生き残ったのは・・・・自分だけ・・・・・・」


「・・・・・・そう・・・・頭ではわかってるけど心ではまだわかってない・・・。リオナは一人になってしまったことを恐れると共に、生き残ってしまった罪悪感を無意識に持ってしまっている・・・心の傷としてね・・・・。・・・・だから事故以前の記憶を消すことで、心の傷をなくそうとしているのよ・・・。」


核心を突かれる。


少しずつ・・・・・・少しずつだが
歯車のズレが元に戻り始める。


「・・・・俺は・・・どうすればいいの・・・・?」


「・・・・今は・・・無理に思い出さなくていいわ・・・。・・・記憶はちょっとしたきっかけで思い出せるものだから・・・・・。だけど・・・・・・・」


ルナはリオナの手を握り、
胸に押し当てる。


「・・・・これだけは忘れないで・・・・・・あなたは一人じゃない・・・・」


「・・・・・うん。」


少しだけ心が落ち着いたのか、手に持つ花に小さく笑いかける。


「・・・あと・・・・困ったらマーシャに頼りなさい・・。・・・あの人ならあなたのことを一番分かっているわ・・・・・・」


するとリオナは一瞬で暗い顔をした。


「・・・・・でも・・・・・マーシャとは今回で最後なんだ・・・。」


ルナは少し困った表情を浮かべる。

「・・・・・・・そうなの・・・・・・。でも・・・・・リオナならきっとまた新しい人と・・・うまくやっていけるわ・・・」

ルナはそっとリオナの頭をなでてやる。


「・・・・ねぇ・・・・苦しい時は・・・・・泣いていいのよ・・・・?・・・・一人で抱え込んではだめ・・・・・・・・」


「・・・・・・・・うん。」


リオナは深くため息をつくと
ルナに体を任せ、
目を閉じた。


ルナといると心を落ち着く。


そんな感じがする。


「・・あ・・・・・・マーシャだわ・・・・・・・・・」


リオナは目を開けて、扉の方に目をやった。


マーシャがこちらに手を振っている。


「いかなくちゃ。」


気がつけば空は赤く染まり始めていた。


本当に不思議な部屋である。


「・・・・・またね・・・・・」


「うん。また。」


リオナはゆっくりとマーシャのもとへ戻った。












「なぁさっき何話してたんだ?」


「別に・・何も。」


2人は夕食を食べるために食堂へ向かった。


食堂にはたくさんのコックがいて、
頼めば何でも出してくれるという素晴らしいシステムだ。


2人は本日のオススメだという巨大ハンバーグを2人で一つ食べていた。


「・・・・・・なぁ、なんか冷たくない?」


「そう・・・?おいしいけど」


「違くてお前の態度の話。」


「・・・・いつもこんなんじゃん。」


「そうかなぁ。なんかこうグサッとくるんだけど。」


マーシャは怪訝そうな顔をしてハンバーグをつつく。


沈黙が続く中、
突然マーシャの横に女性が4人やってきた。


4人とも左胸に"2nd agent"
とかかれている。


『あっ・・・あの・・・マーシャ様!』


「んあ?おー久しぶり。どうだ調子は?て皆進級したようだな。よかったじゃねぇか。おめでとうさん。」


『はい!ありがとうございます!これもすべてマーシャ様のアドバイスのおかげです!』


「いやいや。感謝するなら自分たちの師匠にしなさい。」


『はい!本当にありがとうございました!!』


4人はキャーキャー言いながら小走りで去っていった。


「・・・・・・マーシャは女の人達に人気だね。」


「そうか?お前もいつかそうなるから絶対こうなるから。」


「ふぅん。」


「・・・・・・・・・・・なぁなんか俺した?」


「・・・・・・・・だからしてないって。」


2人の間に険悪な空気が流れ出す。


「あっ!!マーシャとリオナじゃん!!」


するとタイミング悪く
向こうからラードがやってきた。


ラードは当たり前の如くマーシャの横に座ると、
勝手にハンバーグを食べ始める。


「ん〜!!!うまい!!なぁ2人とも食べねぇの?てリオナ!!お前もっと食べろってぇ〜!!じゃねぇとおっきくなんねぇよ!?ばぁはっはっはっはっ!!!!」


「・・・・・別に関係ないし。」


リオナの冷たい態度に
さすがのマーシャも耐えかねたようで。


「おいリオナ。なんだその態度は。ラードに謝れ。」


「・・・・・・・・・・」


2人の間に火花が散り始める。
やっと不穏な空気に気がついたのか、ラードは2人を交互に見た。


「マーシャべつにいいってことよ!!リオナも気にすんな!!ははは!!!」


ラードの笑い声は盛り上げるどころかますます空気を悪くした。


するとマーシャは突然立ち上がり、
リオナの腕を掴むと、思いっきり引っ張り上げた。


「ちょっとこい。」


マーシャはズンズンと歩き出し、
残されたラードはポカンと口を開けたまま2人を見送る。


「これ・・・俺食べちゃうぞ!?」


















食堂を出るとマーシャは何も言わずに外へ出て、
庭へと足を運ぶ。


外はすでに日が暮れている。


マーシャのリオナの手を引く力は強く、
腕を振ってもびくともしない。


「マーシャ・・・・!?痛い・・・・!」


しかしマーシャは聞く様子もなく、
リオナをぐいっと引き寄せたかと思うと
すぐに芝が生い茂る地面へ投げ捨てた。



―・・・・・・・・!


「立て。」


マーシャは冷たく言い放つと、
悪魔を呼び起こし目を赤く染めた。


そして突然ナイフが10本現れたと思うと、
ナイフは渦のように回りだし、一本の細い竜巻を作り出す。


竜巻はだんだんと細くなると、
綺麗な一本の漆黒の長剣となった。


長剣を手にしたマーシャは
リオナに向けて先を突き出す。


「俺を殺すつもりでこい。」


「・・・・・・な・・・!?」


「じゃねえと俺が先にお前を殺すぞ?」


マーシャは長剣を振りかざす。


ものすごい風が吹き荒れ、
一瞬にしてリオナの右頬を切り裂いた。


白い頬は赤い血を流し、
リオナを恐怖へと駆り立てる。


― ・・・・マーシャのやつ・・・本気だ・・・・


リオナも突っ立っている訳にもいかず、
さっとトランプを取り出し、
マーシャに向けて投げる。


トランプはものすごいスピードでマーシャに突進していく。


しかしマーシャは長剣を前に構えると、
目には見えない速さですべて切り裂いていく。


そして一気にリオナに詰め寄り左手に黒々しい光をため始める。


「なめてっとあっと言う間にあの世だぜ?」


耳元で囁くと、左手で魔力をリオナの腹に打ち込んだ。


「ぐぁ・・・・・・!」


ものすごい音を立てて、
リオナは城の壁にぶつかる。


しかしリオナも黙ってはいない。


すぐに立ち上がって、次々にトランプを投げつける。


しかし変わらず次々と切り裂かれていく。


「何回言わせる気だ?こんなんじゃ俺は倒せないぞ。」


― ・・・クソっ!!!どうすればいい・・・!


リオナのトランプはすべて切り裂かれ、
あとがもうない。


それでもあきらめずに粉々になったトランプをマーシャに向けていく。


そしてふとマーシャのもつ長剣の成り立ちを思い出した。


― ・・・・・・もしかしたら・・・


しかしそのすきにマーシャはリオナの後ろにさっと回りこむ。


「隙だらけだ。このまま叩っ斬られるか?」


マーシャが長剣を高くかかげる。

しかしリオナは逃げる様子もなく、
背中を向けたまま。


そしてマーシャは思いっきり長剣を振り下ろした。


「・・・・・・・・・・!!」


血が辺り一面に飛び散った。


青い芝を真っ赤に染めていく。


リオナは激しい痛みに耐えながらも、
足を踏ん張り、立ち続ける。


マーシャはまさかリオナが逃げなかったとは思わず、
一度止まり声を張り上げた。


「なんで避けない!今のはお前にならよけられたはずだ!」


「・・・・・・・・ははっ・・・なんででしょーか・・・・」


リオナは口をひきつらせ、

マーシャに向けて手をかざす。


「"血合"」


するとマーシャに引き裂かれたはずのトランプが、
リオナの流した血によって、どんどん合体してゆく。


「!?」

マーシャは呆然と見つめる


そして気がついたら54枚の引き裂かれたトランプは
一つの巨大なナイフに変わり、
マーシャに向けて、突撃していく。


しかしマーシャは逃げる様子はなく、
むしろ目をつむってただ突っ立っている。


リオナはハッとしてトランプのナイフを急いで止め、引っ込めた。


そして一瞬頭に浮かんだのは


血まみれで倒れ込むマーシャの姿


「や・・・・・やめろ・・・・・・」


リオナはひざを突き、

瞳をふるわせる。


・・・・マーシャが・・・・・マーシャが・・・・・・・死んじゃう・・・・消えちゃう・・・・・・俺を残して・・・・・・・・・・・・・


するとマーシャは長剣を消し、
震えるリオナの前に立った。


「リオナ。」


「!?マーシャ・・・!」


マーシャの呼びかけで幻覚から目を覚まし、
リオナはホッと胸をなで下ろす。

・・・・よかった・・・マーシャ生きてた・・・


マーシャはしゃがみこみ、リオナの顔を両手で包み込み、厳しい目を向けた。


「リオナ・・・・・・なんでさっき俺を刺さなかった・・・?」


リオナはふるえる瞳をマーシャからそらす。


「だ・・・だって・・・・マーシャが消えちゃうと思って・・・」


「俺はあの程度じゃ死なない。お前にもそれぐらいわかるだろ?」


「・・・・・・・・・・・・でも」


「でもじゃない・・・・」


「でももう見たくないんだ!!大切な人がいなくなっていくのを!!」


リオナは声を張り上げ、
目に涙をためる。


「リオナ・・・・・・」


マーシャはそっとリオナを抱きしめた。


「リオナ・・・・誰だってそうだ・・・。大切な人を亡くすのはすっごくつらいことだ。でもいつまでもそんなこと言ってたらな、この世界では生きていけない。俺たちは兵士と同じだ。いつも死と隣り合わせ。いつ死んだっておかしくない。」


「・・・・・・・・・・・・・・」


「だからって・・・・大切な人を亡くしたくないからって、人との関わりを持たずに薄っぺらい関係を保つって考えは納得いかないな。」


「・・・・・・・・・・気づいてたんだ・・・・・」


「そりゃあな。少なくてもお前の事を一番分かってるのは俺だから。リオナ・・・・人はな、大切な存在があるからこそ強くなれる。絶対守ろうって思ってね。だから大切な人を失うときの代償はでかいかもしれない。それでも得られるものの大きさは計り知れない。」


「・・・マーシャ・・・・・」


マーシャはさらに力を込めて、ギュッと抱きしめる。


「大丈夫。大丈夫だから。それに人はそう簡単には死なない。だから人と関わることを怖がるな。そんで・・一緒に強くなろうぜ?」


「マーシャ・・・・!!!」


リオナの目からどっと涙が溢れ出す。
そしてマーシャにギュッと抱きついた。


「怖かった・・・・!!マーシャが・・・マーシャがいなくなっちゃうかもって思うと・・・!!!寂しがっだ!!!!うぁぁぁ!!」


「ははっ!!ったく想像力豊かすぎなんだよ。俺は死なねーよ。」


リオナはマーシャから離れると、背中を向けて空に向かって叫ぶ。


「マーシャのバカ!!」


「はぁ!?なんだとてめぇ!」


「バガバガバガ!!!!なんでぞんなに優しいんだよ!」


「・・・え?」


「いつも変なことばっか言って・・・・面倒くさがり屋で・・・・・なのにずっと一緒にいてくれて・・・・・!!!!」


リオナは泣きじゃくりながらマーシャの方に向き直る。


「なのに今度から違う人とだなんて・・・独りになっちゃうみたいで・・・・寂しいよぉ・・・」


今まで言わなかった・・・・・・・いや・・・言えなかった言葉・・・。


ずっと・・・ずっと言いたかった・・・・・


マーシャに・・・バルドに・・・・そして今はまだ思い出せない・・・大好きだったみんなに・・・・


マーシャはそっとリオナの頭をなで、
ニカッと笑った。


「ったく。やっと素直になった。いつもこうだといいんだけど。」


「なっ!!!!」


「これからは俺のことをご師匠様とよべ!」


「・・・・・・は?」


いきなり何を言い出すのかと、
涙が一瞬にして止まった。


そしてマーシャは少し目をそらし、頭をかく。


「きょうから俺がリオナの面倒見ることになった。」


「・・・・・・へ?」


「だぁかぁらぁ俺がお前の師匠になったって言ってるの。」


リオナはぽかんと口を開けたまま、
再び泣き始めた。


「なんでだよぉ!!」


「何でって・・・・・そりゃあお前の事が心配だからさ・・・・それに・・・・」


「・・・・・それに?」


「・・・・お前の記憶、修復しなきゃなんねぇだろ?」


「・・・・・!!なんで知ってるの!?」


「それは・・・だな・・・・」


マーシャは少し困ったように目を泳がす。


「グスッ・・・・・どうぜまたルナとの会話を立ち聞きしたんでじょ・・・・・・・」


「あはは大正解。」


「・・・・・・・・・・・・ぅっ・・・・!!」


リオナは下を向く。


「いっ・・・言っとくけどなぁ!俺はリオナが心配で立ち聞きしてしまっただけの話であって・・・・」


「わがっでる・・・・!!ありがどう・・・・・・・・!」


リオナはマーシャに抱きつき、
目をマーシャの肩に押し当てた。


するとそのままリオナは力なくその場に倒れ込んでしまった。


「!?おいリオナ!?どうした!?ってウギャアアア!!血がぁぁ!!!!!」


マーシャは自分がリオナの背中を切りつけことを思い出し、
急いで医務室へ連れて行った。




















その夜





夢を見た







再び真っ白な部屋にいて、


目の前をいつもの顔が見えない少年が走り回る


「そんなに走り回ると疲れちゃうよ?」


俺の呼びかけに少年は気づくと嬉しそうに近寄ってくる


「ねぇ次はどの記憶を知りたい?」


そう言って少年は無邪気に俺に手をさしのべてくる。


でも俺は首を振り、
少年の手をのけた。


「別にいい。今はこのままで。」


すると少年は悲しげにリオナを見つめてくる。


「大切な人が・・・・できたみたいだね・・・・。いいの?いつかいなくなっちゃうかもよ?」


「わかってる。だから俺は強くなって、大切な人を守るよ。」


リオナの目は強く、
そして光があった。


すると少年はため息をつき、
いつものように砂のように崩れ去った。


そしてまたいつものように、
闇の中で一人取り残される。


いや・・・・俺は一人じゃないんだ・・・。


一人じゃない。


マーシャもルナもいる。



そして暗闇にも、ひびが入り、
崩れていった。















目を覚ますと、
マーシャの部屋のベッドにいた。


身体中が包帯でグルグル巻きにされていて、動きづらい。


少し力を入れて横を向くと、
マーシャの顔が目の前にあるのにビックリした。


マーシャはスースーと寝息をたて、
静かに眠っている。



「・・・いつもこれくらい静かならいいのに・・・・なんてね」


マーシャの格好は昨日のまま。


ずっとリオナに付いていたようだ。


リオナはそっとマーシャの手をつかむ。


その手は大きくて、
計り知れない強さを感じる。


「・・・・マーシャって・・・・バカだけど・・・・強いね。・・・・・でもバカだっ」


一人でクスクス笑いながら、

マーシャの手を握る。


「・・・おやすみ・・・マーシャ。」


そして再び
夢に落ちる。


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あきゅろす。
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