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【完結】 Novel〜Lord's Soul〜
story156 自由と束縛
ボクが選んできた道は、
決して正しいものではない。

大切なキミを想うあまり、
キミを傷つけてしまった。

キミを傷つけてまで、ボクの我が儘を押し通そうとした。

生まれた時からずっと、
ボクは我が儘を押し通してきた。

キミはいつだって何も言わずに、
ボクに愛を与えてくれた。

ボクの歩んできた道は、
キミにとって苦痛だったかもしれない。

ただボクは、キミとずっと一緒に居たかっただけなんだ。

一緒に笑って、イタズラして、遊んで、たまに喧嘩して、仲直りして。
昔に・・・昔みたいに戻りたかっただけなんだ。

もしキミと再会した時は、
謝らせて欲しい。

許してくれなくてもいい。

リオナ・・・・ボクを恨んで。

キミから大切なものを奪ったボクを・・・・













「ウィキ・・・大丈夫?」

「・・・!ご、ごめん、なんだっけ・・?」

またボーッとしてしまっていた。

いけない癖だ。

ウィキたち3人はレイニーカウンティにやってきていた。

身一つで飛び出してきたため、
何かしら身を隠せるものを用意しなければならない。

自由になったものの、フェイターたちが追ってくるかもしれないから。

キッドにコートを手渡されたが、
ボーッとして気がつかなかった。

「ウィキ、少し休もうか?」

「い・・・・いい!!大丈夫だよ!!!ちょっと考えごとしてただけで・・・っ」

一刻を争う今、立ち止まっている余裕はない。

それに、これ以上迷惑をかけたくないんだ。

慌てふためくウィキに、キッドは苦笑した。

そして、いつもみたいに優しく、ぎゅっと抱きしめられる。

「少し休もう、ウィキ。」

「でも・・・・」

「いいの少しくらい。それに俺が休みたいの。」

「え・・キッド疲れた?」

「ううん。嫉妬した。」

「嫉妬?」

「そう。俺はウィキの思考を独占している"何か"に妬いてる。」

キッドはたまに、ものすごく恥ずかしくなるようなことを平気で言ってくる。

まるで王子様のように。

彼はどちらかというと家系的に王子を守る騎士なのだが。

≪どうしたのだ?≫

すると今までウィキの背中に隠れていたB.B.がひょっこり顔を出した。

≪またキッドがクサいセリフでも言ったの?≫

「え、クサイ!?クサかった!?!?」

何でもハッキリ言葉にしてしまうのは、B.B.の良いところでもあるのだ、一応。

天然系王子様と、愛玩系毒舌悪魔。

この2人のやりとりは、何度見ても面白い。

≪あ、ウィキが笑ってるのだ。≫

「ちょっとウィキ〜!酷いじゃないかぁぁ!」

「ち、違うよっ・・・・!ちょっと面白かっただけ・・!」

少しだけ、気持ちがラクになった。

けれど、それでもやはり悩みは全て拭えない。

それをキッドは見抜いていた。

「ウィキ、少しだけ休もう。ね?」

柔らかく笑いかけられれば、ウィキの頬もたちまち赤くなる。

この表情に弱いのだ。

「・・・・うん、わかった。ごめんね・・」

ウィキが同意をすると、キッドは満足げに笑った。





賑わう町に足を踏み込むと、何やら町はお祭りムード一色だった。

何の祭りかはわからない。
ただ、カラフルな飾り付けに、たくさんのフラッグが風に揺らめいていた。

「わぁ・・・・すごい!」

お祭りの雰囲気は好きだ。

暗い気持ちも明るくなるから。

子供達が楽しそうに町をかける姿。
大人達が大きな声で笑う姿。

それだけで楽しい気分になる。

キッドはウィキとB.B.を連れて、近くのカフェに入った。

そのカフェがまたオシャレで、キッドのセンス力の高さに惚れ惚れしてしまう。

「さ、好きなの頼んで。」

「えっと・・・・」

≪オイラね、パフェがいい!チョコレートバナナストロベリーオレンジチェリーデラックスアイスクリームパフェ!!≫

「ははっ!B.B.は相変わらず食いしん坊さんだなぁ〜」

B.B.はパフェか・・・・
と、ウィキは何にしようか少し迷ってしまう。

本当はパフェがいい。
あんな美味しそうなもの食べたことないし、
カラフルで可愛かった。

でも、自分はもう6歳児じゃないのだ。

アシュールのおかげかせいか、6歳から16歳の過程は一切なく、気がついたらこの16歳くらいのカラダになっていた。
だからさすがにもうパフェという見た目ではない。

それにキッドに子供っぽいところを見せたくない。

「ぼ、僕は・・・コーヒー」
「ウィキはこのパフェ食べてみてよ。」

するとキッドはウィキの言葉を遮るように、
メニューに載っていたパフェを指差した。

そのパフェはカラフルで、まさにウィキが食べたかったものだった。

「でも・・・・」

「ウィキはパフェ嫌い?」

「き、らいじゃないけど・・・・」

「じゃあ俺と半分こしない?」

やっぱりキッドはずるい。
紳士で、きらきらしてて、何でもお見通し。

本当・・・・好き。

「僕もパフェに、する・・・・」

「うん。」

ウェイトレスに注文をし、
ようやくひと息ついた時、
キッドがゆっくりとウィキを見た。

その視線に、思わず顔をそらしてしまう。

「ウィキ・・・なにか悩んでるんじゃない?」

まさかこんな単刀直入に聞かれるとは思わなかった。

きっとキッド自身、すごく心配をしてくれていたんだと思う。

そう思うとなんだが申し訳なくて。

でも、言っても良いのだろうか・・・・

≪どうしたのだウィキ。もしかして、リオナに会うのが怖くなった?≫

「えっ・・・・」

≪ぎゃははっ!図星なのだ!≫

まさか、このB.B.に言い当てられてしまうとは・・・・

開いた口が塞がらない。

「そうなのウィキ?」

「えっと・・・・」

ウィキは伏し目がちに、ゆっくりと息を吐き出す。

やはり、隠し事は無理だ。

「・・・・うん。リオナに、会うのが怖い・・・」

「何かあった・・・?」

「ううん・・・・。ただ、考えてたんだ。僕は今まで、リオナを散々振り回した。僕がまだちゃんと生きていた頃も、リオナに我が儘ばかり言って、困らせてた。アシュールに捕まって生き返るまでの間も・・・リオナの思考に入ってリオナを傷つけることをたくさん言ってきた。」

「でもそれは、アシュールに操られていたのもあるし、それにリオナくんに会いたいって想いがあったからこそ、ウィキは必死だったんだよ。」

「それでも・・・・僕はリオナの人生を台無しにした。今だって、リオナは僕のせいで更夜さんと契約してしまった。僕を助けるために命をかけてくれた・・・・っ。それに・・・リオナが愛していたマーシャさんとも離してしまった。僕はリオナに・・・・合わす顔がない・・っ」

涙が込み上げる。

会いたいのに・・・会いたくてたまらないのに。

「ウィキ・・・・」
≪そんなこと気にしてたのかウィキ!≫

すると空気が読めてるのか読めてないのか全くわからないB.B.がウィキの膝に座った。

≪気にすることないのだ!リオナはそんなことでウィキを嫌いになったりしないのだ。≫

「そ、うかな・・・・」

≪リオナは優しいのだ。それにウィキの事が本当に大好きなのだ!ウィキがリオナを好きで色々やったように、リオナもウィキが大好きだから更夜と契約したんだよ!≫

その言葉が、すごく嬉しかった。

B.B.の言葉に偽りは感じない。

そうか、B.B.は誰よりもリオナとずっと一緒にいたから。

≪それにマーシャのことは無視して良いのだ。≫

「そ、そうなの?」

≪マーシャは変態なのだ。ウィキがどうこうしたからって問題じゃないよ。マーシャはいずれリオナに捨てられてたのだ!ぎゃははは!≫

どう反応をすべきか。

"マーシャ"という人物を深く知らないため、何て返せばいいかわからない。

だが、B.B.の言葉に勇気をもらったことは間違いない。

「・・・ありがとう。B.B.。なんだか、早くリオナに会いたくなったよ。」

≪それはよかったのだ!元気だせウィキ!≫

そんな2人を見て、キッドは安心したように笑っていた。

「必ず会えるよウィキ。俺がちゃんと見つけるから。」

「うん、ありがとうキッド。」

話して、よかった。

心がスッキリした。

「さて、パフェを食べたらすぐ出発するよ。」

≪パフェー!!はやくこーい!≫

「ははっ、B.B.は本当に元気だな。」

久々に、心から笑った気がする。

こんなふうに、まだ笑えるんだ。
笑っても、良いんだ。

初めて手にした自由に、
心が震えた。




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あきゅろす。
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