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【完結】 Novel〜Lord's Soul〜
story09 闇の支配者



何も見えず



まるで飲み込まれてしまいそうな



真っ黒な部屋




と思っていた。





が、実際は明るかった。


部屋全体がはっきり見えるほど明るい。


部屋の奥には大きなステンドグラスの窓があり、
その前に机がある。


そしてそのいすに
一人の男が座っていた。


「マーシャか。」


たばこをふかしている男の口から煙と共に低い声がでる。


「はっ。マスターただいま帰城しました。」


マーシャはマスターに深々と頭を下げる。


マスターは真っ白な髪と髭を生やし、顔は悪魔のように強面。


リオナのイメージ通りであった。


「そこの娘が不老の魔女か?」


「・・・・・・・ルナ=ローズと申します・・・・・・・」


ルナはスカートを少し持ち上げ、丁寧にお辞儀をする。


「そうか。ルナ=ローズよ。貴女とはこれから話し合わなければならないことが沢山ある。しかし長旅で疲れているだろう。だから今日はもうお休みになって、明日またお話いたそう。シキ、彼女を例の部屋へお連れしなさい。」


「はっ。」


シキと呼ばれた男が、奥の部屋から出てきた。


グレーの髪に黒縁メガネ。

とても優しい目をしていて、
リオナと目が合うと、
ニコッと笑いかけてくる。


男は軽くマスターに会釈をし、さっとルナの前でひざまずくと
手の甲にそっとキスをした。


「シキ=ワーカーヴァンズです。どうぞよろしく。」


そしてシキは立ち上がると、
ルナの手を引き、
マーシャの横に立つ。


「お疲れマーシャ。あとで詳しく聞かせろよ?」


「はいはい。疲れてなかったらなぁー。」


小声でつぶやくシキに
マーシャが適当に相づちすると、シキは静かに部屋をあとにした。


「さて、次は化神についてだ。なにかあったと聞いていたのだが。」


「はい。実は化神が何者かによって操られているようで。」


「・・・・・恐らくフェイターの仕業だろう。」


「?フェイターとは?」


マスターは机の引き出しからある分厚い資料を取り出した。


「ああ・・・・マーシャはいなかったから知らないのか。シキの調べによると光妖大帝国で新たな王権が誕生したらしい。その名が"フェイター"。なんとも非道な王権で、先刻の時天大帝国と大魔帝国の壊滅、そしてローズ・ソウルの盗難はすべてフェイターの仕業らしい。奴らは前王も殺し、極悪非道な行動を繰り返している。しかしまさか化神まで操り出すとは。」


マスターは顔を苦くする。


「しかし彼ら自身も化神を操れ切れていないようです。意志を持つことによって、化神にほんのわずかですが話が通じるかもしれないんです。」


「うむ・・・・それならいいんだが、これ以上好き勝手にさせるわけにもいかない。ローズ・ソウルもこれ以上渡すわけにもいかないからな。だから明日はルナ=ローズの件と今後のフェイターへの対処について会議を開く。ほかのスペシャルマスターにも伝えておくように。」


「はっ。」


マスターは吸っていたタバコを消し、
椅子から立ち上がるとコートを着始める。


「私はこれから研究塔へ行ってくる。今新しい研究が進んでいてな。」


リオナはどうすればいいのかわからず、
マーシャの服を軽く引っ張った。


マーシャも苦笑いを返し、
困ったように頭をかく。


「あのぉ〜・・・マスター?」


「ん?なんだ?」


マスターは支度をしながら返事をする。


「ダーク・ホームに入りたいと申す者がおりまして・・・」


「ほう、そうか。それでそやつはどこにいる。」


「はい、ここにいます。」


「わはは、またくだらん冗談を持ち帰ってきたのか。わはは!」


「・・・いや、冗談じゃないです。」


そしてマーシャはパッと思い立ち、リオナを高く持ち上げた。


「コイツです。」


「まーたそうやって・・・・・てえぇぇぇぇ!?」


マスターは今までの強面の顔とは打って変わり、
驚きのあまり目が半分飛び出しているという変な顔になってしまっている。


「こ・・・・小僧いつからおった!?」

「いやマスター・・・最初っからいたんですけど。」


「全っっ然気付かんかった!!いやぁ小さすぎるからな!!」


どうやらマスターは目の前の机でリオナが見えていなかったようだ。


「ほら、リオナ挨拶。」


「こ・・・・こんにちわ。」


リオナはしっかりと頭をさげる。

「ほう、しっかりしているな。で、どこからやってきた?」


「えっと・・・大魔帝国です。」


マスターはさらに目を開き、リオナに顔を近づける。


「!?なんてことだ!小僧は生き残りか!?」


「あ・・・は」
「実は彼の一家は旅大道芸師でして、大魔帝国壊滅とは関係なく、ある町で化神の襲撃にあっているところを助けたんです。しかし残念ながらこの子だけしか助からず、この子がぜひダークホームに入りたいと懇願をしてきたんです。」


全くのでたらめを言うマーシャにビックリしてリオナはマーシャを目で責めた。


しかしマーシャはこちらを見向きもしない。


「そうか・・・・悲しかっただろう小僧・・・・。」


そういってリオナの頭をなでてくる。


「やはり大魔帝国のローズ・ソウルはすでにフェイターの手に?」


マーシャは厳しい声音で尋ねる。


「いや・・・それがだな・・・どうやらローズ・ソウルはフェイターの襲撃があった日に何者かによって盗み出されていたらしい。」


「と・・・言うと・・・?」


「大魔帝国の生き残りがいるはずなんだ。そやつがローズ・ソウルを持っているはず。」


リオナの心臓が飛び跳ねる。


「その話はシキが?」


「いや、つい何日か前にシキが一人の少年を連れてきてな。ちょうど小僧と同じくらいの少年で、情報を提供するからダーク・ホームに入れてくれって言ってきたんだ。」


「信用できますかね・・・」


「実はその少年は光妖大帝国の前王の息子でな、その子の父君がフェイターに殺され、彼は助かったが、その後国から脱走したらしい。だから情報は正確だろう。」


リオナの右ポケットが熱くなる。

ローズ・ソウルがうずき始める。

― どうしよう・・・・渡すべきか・・・・・。


そっと右ポケットに手を入れ、
小さい玉を取りだそうとした。


しかしすぐにマーシャの手で阻止された。


― !?マーシャ・・・・!?


マーシャを見上げると、
マーシャはいつになく厳しい顔つきで小さく首を横に振った。


「さて、私は時間がないからこれで失礼する。小僧、名前は何という?」


「リオナ=ヴァンズマンです・・・・・・。」


「ほう、リオナか。よい名前だ。マーシャよ、今週中にシキをつれてリオナに悪魔の契約を。」


「はっ。」


「それとリオナ。」


「はい。」


「ようこそ。悪魔の聖地"ダーク・ホーム"へ。ではこれで失礼する。」


そう言ってマスターはさっと部屋をあとにした。



「はぁ〜・・・長かった。さて、さっさと部屋に」
「ねぇ・・・・・マーシャ」


マーシャは伸びをしていた体を止める。


なにを聞かれるかわかっているかのように、
リオナに苦笑いを向けた。


「・・・・・はい?」


「いつから知ってたの・・・・?」


「え?」


「とぼけないで・・・俺がローズ・ソウルを持ってることだよ。」


「ああ・・・・・ごめん最初からしってた。」


マーシャはいつものようにニッと笑う。


「!?」


「事件のあとさ、お前の服がほとんど燃えちゃってさぁ、着替えさせようとしたらポケットから鍵と写真とローズ・ソウルがでてきたわけ。あっそうだ写真なんだけど、ほぼ全焼してたから捨てちまった。悪いな。」


「それはいいけど・・・・ねぇさっきどうして止めたの?ダークホームに預ければ安心じゃないの?」


マーシャは困ったように頭をかく。


「あのな・・・・今の世の中は誰が正しくて悪いのかがわからなくなってきてる。もちろん俺はダーク・ホームを信用してる。でもダーク・ホームが俺らを裏切らないという保証はない。実際光妖大帝国もそうだ。信用していたのにまんまと裏切った。だからこれはお前がもっておけ。」


「・・・・・だからさっきも作り話したんだ・・・・・。」


「勝手に作って悪かったな・・・一応前にダーク・ホームと光妖大帝国というかフェイターだっけ?が大魔帝国壊滅事件の生き残りを捜してるとは聞いていたからな。だからああでも言わないとリオナが疑われるとおもって。」


「そっか・・・・」


「ローズ・ソウルについては俺とリオナだけの秘密な。ほかの奴らには絶対言うな。」


「うん・・・・」


「よし、じゃあ部屋に行こぉぜ。疲れたしさ。一眠りしようぜー」


マーシャは大きな欠伸をしながらマスタールームをでていく。


「ありがとうマーシャ。」


少し照れながらそう小さくつぶやき
リオナも部屋を出る。


マーシャはリオナに見えないように
赤くなった頬を手で覆った。


「ははっ!なんだよきもちわりぃなぁ〜。いつもの無愛想はどこいったぁ?」


「・・・・・・・うるさい」


リオナは頬をぷぅっと膨らまし、さっさと歩き出す。


「ははっ!ほんっとコイツはおもしろいわ!」


2人の笑い声が静かなダーク・ホームに響き渡った。





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