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【完結】 Novel〜Lord's Soul〜
story08 ダーク・ホーム



ダーク・ホーム
― 黒の屋敷





日は昇り始め、
いつものように眠り始める者もいれば、
起き出す者もいる。


しかし今日はどの人々もある噂で夢中。


屋敷のメイド達は黒いドレスを靡かせて、慌ただしく走り回っている。


人々はそわそわと落ち着かない様子で耳打ちあっている。


『なぁ聞いた?マーシャさんが帰ってくるらしいぜ!』


『マジ!?死んだって言われていたのに!』


『え!?女と子連れ!?』


『あんなに女と子供を毛嫌いしていたマーシャ様が子供までつくるなんて・・・・!』


『いやよそんなの!私の方がマーシャ様見てるのにぃ!!』


『あ〜あ・・・・・マーシャさんの空いた席に俺が入るはずだったのに・・・』


『だから期待するなってあれほど言ったのに。あの方はもとから連絡とかよこすタイプじゃなかったんだよ。』


『あっ・・・ノースアイランドに繋がる扉が開いた・・・今ダークホームに入られたようだ・・・・』









「・・・・・・・・・うわ・・・・高い・・・・・・」


神の島・・・・・ダーク・ホーム


島全体が巨大な壁に囲まれ、
中央には巨大な城、
その周りには普通に町や民家が連なっている。


リオナたちがくぐった扉は
島を囲む壁の上。


下を見下ろすと、家や建物は点のように小さい。


遠くの方を見ると、ほかの大陸に繋がっている扉が見える。


何も障害がないせいか、
風が強く吹き荒れ、小さい体が軽く浮き上がる。


「おいリオナ。危ないからこっちきなさい。」


「マーシャ怖いんでしょ。」


「バーカ。俺はスーパーヒーローだぜ?こんなの屁でもねぇ。」


「あっそう。」


「ああっ!今バカかっておもったっしょー!!!!!!」


―・・・・・・また始まったよ・・


リオナはため息をつく。


マーシャはスーパーヒーローとよく自分のことを称えるが、
未だに力は未知数。


そんなスーパーヒーローが今度は意味ありげに笑い出した。


「よぉし。そんなつまらない性格をした諸君に俺が一発すごいのを披露してやる。」


そう言ってマーシャは袖をめくりあげて深呼吸をする。


そして右手にルナ、左手にはリオナを抱えた。


「ちょっ・・・・マーシャ!?」


「・・・・・・?・・・・ねぇ・・・・・次は何をするの・・・・?」


ルナは心配そうに、
見えない目を細める。


「ははっ!お前ら覚悟しろよ。」


マーシャは壁の奥まで下がると、
勢いよく駆け出す。


「・・・・・・!!!ま・・・・マーシャ!?」


そして思いっきり地面を蹴り、
空に飛び出した。


体が浮き、
時が一瞬止まる。


しかし、時はまたすぐに動き出し、
三人は一気に急降下する。


風を体全体で受けながら、
城に向けてまっしぐら。


「ああああぁああぁあああああああああああぁあ!!!!!!!!!!!!!!」


「んー!!きもちーなぁ!」


「・・・・・・・・・・う・・・・・・・・」



そして無事に城の入り口に着地。


これもすべて計算のうちだったのだろうか。


災いの元凶のマーシャは呑気に伸びを始める。


「あー楽しかった。ってあれ?二人とも大丈夫?おーい。」


被害者2人はあまりの恐怖にぐったりしていた。


この男に付いてきて本当によかったのか。


今更だが後悔し始める2人だった。



リオナは立ち上がると
後ろを振り返り、
近くなった町を見下ろす。


そこには小さい子供から老人まで住んでいて、
なんとも賑やかな声が聞こえてくる。


「あそこにいる人たちにもみんな悪魔がついてるの?」


「いや。あそこに住んでるのは普通の人間。ダークホームのメンバーの家族や恋人が住んでたりするんだ。」


「なんだ普通の人もいるんだ。」


「ああ。でもな、ここに住む人間はメンバーと違って、一度でもダークホームへ足を踏み入れたら、一生ここからでれないんだ。」


「もう違う国には行けないって事?」


「そーゆーこと。でもこいつらは皆自ら望んできたやつらばっかだ。だから不幸とかではないと思うぜ。」


「そっか。」


三人が町を眺めていると
突然、耳に地鳴りほどではないが、大きな音が入ってきた。


目の前の城の扉が開き始めたのだ。


黒い大きな扉は、ものすごい音を立てながらゆっくりと開いてゆく。







『お帰りなさいませ。マーシャ様。』


扉の向こうには先が見えないほどの
メイドの行列があった。


メイドたちは深々と頭を下げて、
微動だにしない。


「あ〜あ〜こんなにハデに出迎えてくれちゃって。」


マーシャは慣れたようにメイド達の行列(名付けてメイド・ロード)を歩き始める。


しかしリオナは、こんなに大勢の人々に注目される中、歩くのは人生初。


怖いというか、恥ずかしいというか。


なんとも言えない気分で入り口に突っ立つ。


「・・・・・リオナ・・・・・・・?」


ルナが心配そうに呼びかける。


「あ・・・あはははは・・・・・・・・大丈夫だよ・・・・」


「・・・・・・・・・・・・・・・・」

するとルナは無理に笑うリオナの手をひき、
メイド・ロードを歩き始めた。


「ルナ?」


「ねぇ・・・・・・道あってる・・・・・・?」


「うん。そのまま真っ直ぐ。」


ルナはすいすいと歩いていく。
まるで目が見えているかのようだ。


「ふふっ・・・・案外簡単ね・・・」


「・・・・!!ルナにはわからないよ・・・・・!!」


リオナは頬を膨らませ、
ルナに導かれながらメイド・ロードを突き進む。


メイドロードの後ろには、
たくさんの見物客であふれていて、
ざわざわと色々な話し声が聞こえてくる。


『マーシャ様・・・・また一段と男らしくなられて・・・』


『あっ・・・今目があったわ!!』


『でもまさか妻と子供がいたなんて・・・・・・・・!!!』


『あの女・・・・・!よくマーシャ様の横をのこのこ歩けるわね!』


『私の方がマーシャ様に尽くしてるのにぃ!!』


野次馬たち(主に女たち)のぼやきは止むことはなく、
むしろ内容がどんどん現実から離れていってしまう。


どうやらダークホームのメンバー達は、
マーシャがルナを孕ませてしまい、
そんな2人の子供がリオナだと勘違いをしているようだ。


「ったく変な噂がたってやがる・・・しかもよりによってルナとかよ・・・・・・・・・・・」


マーシャは思いっきり顔をしかめる。


「でも案外モテてるんだね、パパ。」


「うれしくねー。つぅかパパ呼ぶな。」


入り口からだいぶ歩いたところで、
やっとメイド・ロードに終わりが見える。


すると横から一人の高齢のメイドがでてきた。


おそらくメイド達をまとめる者だろう。


―・・・・あれ??なんかどこかで見たことがあるよーな・・・・・


リオナは記憶を探っていく。
が、わからない。


そのメイドはキツくつり上がった目を閉じ、
マーシャの前まで来ると、深く頭を下げた。


「お帰りなさいませ、マーシャ様。長い旅路はさぞ大変なものだったでしょう。そしてお疲れのところ大変申し訳ないのですが、早速マスターがお待ちです。すぐにマスタールームへお向かい下さい。お荷物は私がお預かりします。」


「オーケー。リオナとルナも荷物を・・・」
「あっ!!!トラ婆!!」


リオナは思わずメイドに向かって指をさしてしまう。


「・・・・・はい?」


メイド版トラ婆は一瞬にして顔をこわばらせ、肩をふるわす。


「こ・・・・こらリオナ!!!おまえなんて事を・・・・・・・!!はははすみませんメイド長!!コイツ言語障害なんですよ!!ほんっっとゴメンナサイ!!では我々はこれで!!」


マーシャはリオナとルナを抱えると一目散に走り抜けていく。


「マーシャァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!」


さっきまでのマーシャへの敬意はどこへやら。

背中からメイド版トラ婆の恐ろしい叫び声が聞こえ、
マーシャのスピードはどんどん加速した。






『あれ?今のマーシャさんじゃね?めちゃ速かったけど。』

『なんかあっちでメイド長が叫んでたぜ?まーたなんかやらかしたんだよ。あの2人は犬猿の仲だからな。』














マーシャは中央の螺旋階段まで行き、一気に5階まで登り切ると2人を下ろした。


そしてまずはリオナのホッペタを思いっきり引っ張る。


「イ゙ダイ゙イ゙ダイ!!!!!」


「痛いじゃないっ!!お前なんでメイド長の裏のあだ名を知ってんだよ!?」


「は!?そんなの知らないし!ただ俺の知り合いのトラ婆に似てるなぁと思ってついつい口がすべっただけだもんっ!」


するとマーシャは驚いたように今度は目をかっぴらき、リオナの顔を両手で引き寄せた。


「お前・・・トラ婆を知ってるのか!?!?」


「う・・・・うん・・・」


マーシャの顔が近くなるたび、
リオナは後ずさりをする。


「うそぉ!まじでか!?トラ婆は俺のばあちゃんなんだよぉ!!!!」


衝撃の事実。


まさかこんな偶然ある訳ない。


「ぇえ!?うそだろ!?」


「それが本当なんだよ!!!!」


「すごい・・・・すごすぎる!!!」


2人は手を取り合ってピョンピョンと跳ね回る。


いつもの2人を知るものが見ると、
あまりにも不気味な光景である。


「・・・・・・でも・・・・・なぜあのメイド長さんは怒ったのかしら・・・・・?」


マーシャは動きをピタリと止めた。


「・・・それはだなぁ、俺もリオナと同じ事をしたからだ・・・。」


「同じ事?」


「ああ。俺が初めてダークホームに来たときもあんな感じで出迎えられてさ、そんでメイド長が出てきた瞬間に思わず"トラ婆!"て叫んじゃったわけ。だってさぁメチャメチャそっくりだったんだもん。」


「うんうん。」


「それからさ、ホームの人たちがメイド長のこと"トラ婆"って呼ぶようになっちゃってさぁ。そしたらある日いきなりメイド長の怒りが爆発してよぉ〜・・・俺1ヶ月も謹慎になったんだぜ!?」


「なんと言うか・・・・同情するよ・・・。」


「でもまさかリオナと知り合いだったなんてなぁ。世界は狭いな。なぁトラ婆は元気か?」


「うん。ピンピンしてるよ。あと100年は生きられるよ。」


「ははっ!それ俺もよく言って・・・・・」


すると2人はハッとして顔を見合わす。


「ごめん・・・・そういえば・・・」


「国は壊滅したんだったな・・・・。」


2人はさっきの盛り上がりから一転して、
一気に暗くなる。


「・・・・・・・・・・・・・・・・」


すると急にルナが2人の手を掴んだ。


「「・・・・・・・・・・・??」」


どうしたのかと2人はルナを見た瞬間、
手にビリビリっと激しい電流が走った。


「イッッッッッッタァァァァ!!!!!」


「な・・・なにすんだよぉ!!」


2人はヒリヒリする手をさすりながらルナを睨む。


するとルナはよく分からないような顔をして、両手を広げ、
手のひらを見せる。

手のひらには小さな黄色い石が乗っていた。


「これ・・・電撃石じゃねぇか!どこから取ってきたんだ!?」


「・・・・さっき・・・・もらった・・・・・」


「誰から!?」


「・・・知らない人・・・・・・これあげるから・・・・写真とらせてって・・・」


マーシャはさっと電撃石を奪い取ると遠くに投げすて、ルナの頭を軽く叩く。


「知らない人からしかもこんな凶器をもらっちゃダメでしょっ!?」


「・・・・・ごめんなさい・・・・・・・・・」


「ははっ!マーシャまるでルナのパパみたーい。」


「なっ!!!」


リオナのからかいに、いつもなら軽く流すマーシャが、妙に突っかかってくる。


「お・・・俺はこの小娘にあんな凶器を持たせたらそれこそ凶器だと思ってだなぁ・・・!!」


「はいはい。でさ、ここじゃないの?マスタールームって。」


いつのまにたどり着いたのか、
目の前には"master-room"とかかれたドアがあった。


「おっと!そうだよここだよぉ。ったくおまえ等のせいで取り乱しちまったじゃねぇか。」


― 自分が招いた事態じゃんか・・・・


「さて、お前ら身なりを整えろよ。んで部屋に入ったらちゃーんとあいさつするんだぞぉ?なんてったってダークホームのトップだからな。」


「そうなの?」


「うん。そうなの。じゃあ行くぞ?」


リオナは息をのむ。


ダーク・ホームのリーダーであり、
悪魔の支配人





心臓を高鳴らせながら部屋に入っていった。





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