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【完結】 Novel〜Lord's Soul〜
story127 枯れぬ桜


ひらひらと舞う桜の花

生きているうちに一度は見たいと思っていた

それを毎日のように見られる今は
幸せ以上の何ものでもない。

でも、なんでだろう。

それでも私の心が虚しさを感じるのは・・・・

物足りない

物足りない・・・・

私はまだ・・・・あなたを求めている。

手を延ばしても、
届かないことくらいわかってる。

それでも私は
この体が消えるまで・・・・








サムライ・カウンティー
桜山

ここにきて、早くも2年を迎えようとしている。

初めは慣れなかったこの国の文化も今では肌に馴染みはじめてきた。

草木の静かなささめき

緩やかな風

美しい風景

この国にしかない素晴らしいものたちに、
すっかり心を奪われてしまった。

『ルナ、風邪を引いてしまうよ。』

いつものように縁側で外を眺めていると、
後ろから優しく声をかけられた。

振り返らずとも誰だかわかる。

だってこの家には私と"彼"しかいないのだから。

「・・・・更夜・・・今日も桜が綺麗ね・・・・」

『そうだね。この桜の木は特別だから。枯れることのない不思議な桜だよ』

そう言う彼の目はどこか遠くを見据えていて・・・・

唯一慣れないのは・・・・彼との生活だ。

ここは更夜の故郷であり
実家でもある。

更夜の一族はかつてこの国を統治していた者たちのため、
家も普通とは違い、とにかく広くて大きい。

サムライカウンティの都心から離れ、
山奥にたたずむこの住まいは古き良き文化を未だに残しており、
ある意味貴重だと言える。

「・・今日のお仕事は・・・終わったの・・・?」

そう尋ねれば、
再び更夜は柔らかい笑みを浮かべる。

『ああ。なんだか今日は疲れてしまったよ。子供達は元気だし僕も年かな・・・・』

更夜は賢者でありながら、
先祖代々続く"薬屋"の仕事を続けている。

しかし旅をすることが多いため、
サムライ・カウンティーにいる時だけのようだ。

彼はもう何百年と生き続けている。

私と同じように。

だから家族は、もういない。

彼の一族は滅びてしまった。

『ルナ・・・・』

ふと肩に重みを感じ、
横を向けば
更夜が隣に座って寄りかかっていた。

更夜の黒い髪は光りが当たると蒼くも見えて、美しい。

すっかり神の娘としての力を失った私の目に焼きつく。

「・・・お疲れさま・・・・・」

『うん・・。でもキミが来てから、疲れの引きも早くなったよ。キミからは良いにおいがする。』

そう言って更夜は私の頬に右手を添えた。

視線がぶつかり合う。

そのまま更夜は引き寄せれられるように口づけをした。

触れるだけのキス。

これはここに来てから毎日続いていて。

わたしも初めは困惑したが、
今はもう慣れてしまった。

このキスに何の意味があるのかわからなかったが、
キスが終われば彼の表情がいつになく柔らかくなるから・・・・

『さて。町に降りて少し散歩をしようか。夕飯は外でいただこう。』

「・・・・はい・・・・」

更夜が私を連れてきた理由はわからない。

ただ一言、
『彼を試しているんだよ』
と言うだけ。

いまいち掴みどころのない更夜だが、
そんな彼にも愛着が湧いてきた。


『ああ、そうだルナ。近々お客様がくるようだよ』

「・・お客様・・?珍しいわね・・・・」

『うん。そろそろ・・・・僕も・・・』

何か言いかけ、
更夜はまた淋しそうな目をして
どこか遠くを見つめていた。



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