[携帯モード] [URL送信]

【完結】 Novel〜Lord's Soul〜
story123 クロノス再来


時は少し遡り、
朝方のこと。

メイドたちがデモを起こしているとはつゆ知らず、
俺とリオナは深く愛しあっていた。

冗談ではなく、マジで。

まだまだ一日中リオナの可愛い顔を見ていたかったけど、
リオナがもう壊れちゃいそうだから一旦やめた。

一緒にシャワーを浴び、髪を乾かすリオナをベッドで待つ。

「リオナ、こっち。」

戻ってきたリオナに腕を広げれば、
リオナは素直に抱きついてきて。

俺たちはそのままベッドに倒れこんだ。

リオナの体は本当に細い。

あれだけトレーニングをやっていても、体は硬くなく、むしろ柔らかい。

乾かしたばかりの髪からはとてもいい匂いがする。

「・・・・マーシャ」

「んー?」

「・・・なんでもない」

リオナは寂しいと、
すぐに名前を呼ぶ癖がある。

だから何度でも言わせたくなるんだ。

俺を欲しがって。
俺だけを見て。

「なぁリオナ、今日からここで一緒に寝ようよ。」

「・・・狭いからヤダ。」

あれ、アッサリふられちゃったけど。

「えー、じゃあリオナのベッドを俺の部屋にもってくればいいじゃん。くっつけたら超デカイベッドになるよ?」

「・・・・マーシャの部屋が狭くなる。」

「いいよいいよー。じゃあこうしようよ。俺の部屋を寝室にして、リオナの部屋を書斎。完璧じゃん。」

「・・・書斎って必要?」

「必要だよー。本読みたいじゃん。」

「・・・・エロ本?」

「まっっさかあああ。リオナがいるのにエロ本なんて読まないよおお!?」

「・・・・なんでそんなに焦ってるの。」

「焦ってないよ。エロ本なんてただの紙っきれだぜ。」

「・・・・ふーん。」

リオナは関心なさそうにしているが、
さっきよりキツく抱きついてきている。

本当はヤキモチやいてるんだ。

ああ、この可愛いヤツをどうしてやろうかな。

「あ、そういやぁさっきリオナが髪乾かしてる間に連絡がきたんだけど、ビットウィックスがまたなんか言い出したらしいぜ。」

「え・・・・そうなの?」

「ダーク・ホームに住む"人間"とメイドへの避難命令だとか。」

「・・・・避難命令?ダーク・ホームから避難するってこと?」

「そうゆーこと。三日以内に済ませるとか。こりゃなんかあるな。」

「・・・・まさか、世界政府と戦争?」

「かもしれない。世界政府は名前だけあって強い軍隊持ってるからな。アレと戦うとなるとかなりの被害が出るだろうし。だったらビットウィックスの避難命令もわからなくない。」

「・・・・そっか」

そう言って目を伏せるリオナを、
俺はさらに抱き寄せた。

「どしたーリオナ。不安か?」

「・・・・不安だよ。また、無駄な戦いで人が犠牲になるなんて・・・・」

「そうだな・・・・。」

「・・・・マーシャは絶対戦わないで。」 

「なんで?」

「これ以上体調悪くしたら、マーシャ死んじゃうよ・・・・本当に、死んじゃうんだからな」

今にも泣きそうな顔されちゃあね。

可愛い子の頼みは絶対だ。

「そう?じゃあ、俺のこと、リオナが守ってくれるの?」

「・・・守る。絶対守るから。」

「嬉しい。じゃあ、約束のチューして。」

「・・・約束は指切りだ。」

「だめ。チュー。」

いつもだったらパンチが飛んでくるが、
今日は違った。

リオナは少しためらった後にちゃんとキスをしてきた。

触れるだけのキス。

それがまたそそる。

「・・・あ、俺ちょっとコロナに会いに行ってくる。」

突然、用事を思い出したのか、
リオナは起き上がって着替え始めた。

本当に突然すぎる。

「コロナ?まさかさっそく浮気?俺妬いちゃうよ。」

「・・・違うよ。ちゃんとお別れしとかないと。それに、プレゼントのお礼してなかったんだ。」

「へぇ。じゃあリオナが帰ってくるまで一眠りしよっかなぁ。」

「・・・そういえば、今日はクラッピーとクロード来ないね。まだ寝てるのかな。」

「いつもならお腹すいたって喚きながらくるのにな。昨日の今日で疲れてるんだろ。それかリオナにフられて落ち込んでるんじゃねあのピエロ。」

「・・・その話はナシ。ほら、寝てて。すぐ帰ってくるから。」

「はいよ。イッテラッサイ。」

リオナを見送り、
俺は再びベッドに横になった。

はぁぁ・・・・幸せだ。

でも、幸せに浸かったままではだめだってことくらいわかってる。

俺は過去にケジメをつけに行くんだ。

そこで初めて、
リオナを完璧に奪うことができるんだから。

それに・・・・

リオナはあのウルさい黒ウサギが気になって仕方ないのだろう。

まぁ・・・・心配ではある。

モリン=クィーガが連れて行くとすれば世界政府か・・・フェイターの元、だ。

世界政府ならまだしも、
フェイターなんかに捕まってたら、B.B.を利用してリオナを誘き寄せるっていう手もある。

あんのバカウサギが・・・

B.B.は他の悪魔とは違って既に滅びた肉体に宿っているため、
いくら八つ裂きにされようがまた新しい器を探せば死ぬことはない、はず。

だから今もどこかで生きてはいるはずだ。

それに、悪魔最強なんだ。

そうだろ、バカウサギ。

だからさっさと帰ってこいよ。

喧嘩相手がいないとやっぱりつまらないものだ。
なんてアイツの前じゃ言ってやらないけどな。

そんなことを考えていると、
次第に眠気が襲ってきた。

まぶたを閉じれば
吸い込まれるように眠りについていく。

しかし、その時だった。

『マー兄!マー兄起きて!』

名前を呼ばれ、
再び引き戻された。

『マー兄ったらぁ〜お腹空いたよぅ』

マーシャのことを"マー兄"と呼ぶのはクロードしかいないのだが、
なんだかいつもと口調が違う気がする。

クロードはこんなに自己主張が激しくない。

まるでクラッピーみたいだ。

「あー・・・・はいはい、今起きますよ・・・・って」

ゆっくり起き上がり、
アクビをしようと口を開けたが、
目の前にいた人物に口が閉じなくなった。

「え・・・・どなたですか」

目の前にいたのはクロードでもクラッピーでもない。

いや、顔はクロードみたいだけど、
身長はクラッピーくらい高い。

クロードは6歳くらいだったはずなのに、15歳にまで成長したように大きかった。

クロードが成長した!?

だが、
見た目はクロードの大きい版だとしても、性格や雰囲気が若干クラッピーに似ているのは気のせいだろうか。

それに少し派手だ。

『あ、マー兄にこの状態で会うのは初めてだっけ。』

「ええ、まぁ、初めてですね。」

『敬語やめてよー!らしくないなぁ〜』

「らしくないとかそれ以前に初対面ですから。つーか何様だよてめぇ。」

マーシャがクロードモドキを睨みあげると、
クロードモドキは頬をふくらませて顔を近づけてきた。

『僕はクロノスだよ!』

「クロノス?え、やっぱりクロード?」

『違うよ〜。確かにクロードだけど、僕はクロードとクラッピーがひとつになった存在なんだ♪』

えーっと、
ちょっと待てよ。

クロード+クラッピー=クロノス?

確かふたりは双子で"時の神"の力を持っている。

「てことは、お前が"時の神様"ってやつ?」

『ピンポンピンポーン!』

「わーい当ったりぃ。なんだ早く言えよ〜何にも準備してないしぃ。って時の神様ぁぁああ!?」

『マー兄おもしろーい!』

笑うクロノスの前で、
マーシャは勢いよく土下座した。

まさか神様が目の前にいるなんて。

非常事態・・・いや異常事態だ。

「ご無礼をお許しください俺は無知ですバカですアホですクラッピー君をいつも殴ってすみませんピエロって言ってすみませんいっそ俺を御御足で蹴り飛ばしてください。」

『ははっ!気にしなくていいよ。クロードもクラッピーも僕の一部ではあるけど、一応僕も別物だから。クラッピーはたまに落ち着きないし、いつも迷惑けけてごめんね?』

な、なんていいヤツ!!

謝ることを知ってるなんて!

『それより!お腹減ったああ!』

「今すぐ作ります。」

『敬語やめてってぇ!いつもクラッピーにしてるみたいに貶してよぅ』

「お前、ドMだったの」

『違うよ!マー兄がドSなんだよ!』

「あー暴れるなよ。今作るから!」

クラッピーのようにワガママなのにクロードのように素直だなんて・・・・
怒るに怒れない。

それに神様ときた!

とりあえず2人の大好物であるホットケーキを焼いてやれば、
目を輝かせて嬉しそうに食べ始めた。

「で、どうやったらクロードとピエロが戻ってくるわけ?」

『ひどい!僕のこと嫌い!?』

「嫌いとかじゃなくてだな、アイツら2人は大丈夫なのか?」

『大丈夫もなにも、僕自身だもの。』

・・・・まぁ、大丈夫ならいいけど。

なんか苦手だわこーゆーヤツ。

クロードとアホピエロみたいに極端の方がいい。

『心配しないでマー兄。クロードもクラッピーもちゃんと返してあげるから。でもね、条件がありまーす!』

と言ってフォークを振り上げると、
フォークに刺さったホットケーキが落ちそうになる。

「おい危ねぇよ!ったく・・・・先に食べてから話せ!」

『はーい!』

中身は確実に子供だ・・・・

"時の神"であるクロノスは、大人ではないのか?

まぁ、クロードはともかくクラッピーの性格が混ざってると考えれば納得もいくが。

『マー兄も食べる?あーん!』

「え・・・・」

いつもクロードが美味しそうに食べるものだから、
よく「あーん」と口をあけてクロードから一口もらっていたが、
まさか大きくなったクロードというかクロノスからやられるなんて。

まるで介護されるじぃさんみたいじゃねーか!!

「い、いらねぇよ。」

『えー!だってクロードには自分から口開くクセにぃ!』

「だってクロードはまだ子供だし可愛いしぃ。お前デカいじゃん。それにクロード100%ならまだしも、あのピエロが半分入ってるとなると俺は断固拒否だね!」

『うっ・・・うぅ〜ヒドイぃぃぃ!!うぁああん!!』

「ちょ、ぇえ!?泣く!?ここで泣く!?」

まるで子供のように泣き出すクロノスにアタフタしたが、
どうにもこうにも泣き止まない。

マーシャはもうどうにでもなれ、と頭を抱えて放置した。

暫くしても収まらない泣き声。

さすがにイライラしてきた。

我慢の限界で怒鳴り散らそうとした時、
ふと玄関の扉が開く音がした。

「・・・・ただいま。」

リオナだ!

助かった!

しかし、リビングにリオナが入ってきた途端、
クロノスはピタリと泣き止んだ。

なんて奴だ!

「・・・・どうしたのマーシャ。」

「あいつどうにかしてくれよ。」

「・・・・あいつって?」

「そこにいるクロードとクソピエロの合体ロボだよ!」

リオナはマーシャが指差す方を見ると、
予想以上に冷めた反応を見せた。

「・・・・あ。クロノス・・・だっけ」

『リオ兄だぁぁ!おはよ〜』

クロノスは立ち上がるとそのままリオナにダイブした。

もちろん、成長した15歳の体を支えきれるはずもなく、2人して床に倒れこんだ。

「・・・・痛い痛い」

『ごめんね!今どくから!』

クラッピーのようなクロードのような。

本当に曖昧だ。

「つーかリオナ知り合いだったのかよ。」

「・・・・知り合いではないけど、見たことがある。一回だけ。」

「どうにかしてくれよ。この手の奴は苦手なんだよ。」

よく言えば甘え上手、
悪く言えばただのぶりっ子。

「・・・・あー、確かにマーシャの苦手なタイプだね。でも俺にも無理だよ。」

「コレだったらピエロの方がまだマシだ。」

「・・そうなの?」

「だって思いっきり殴れるじゃん。」

「ああ・・・・そういうこと」

コソコソと話す2人をニコニコしながら見つめるクロノス。

何とかしてクロードとクラッピーに戻したい。

「で、お前の言う条件ってなんだよ。」

『えっと、条件ていうか、お願いがあるんだ。』

「なんだよ。お願いって。」

『そんなに構えないで。ホント、大したことじゃないんだ。ただ、渡して欲しいモノがあって。』

そう言ってクロノスは小さな箱を取り出し、
マーシャに手渡した。

「プレゼントか?誰に。」

『更夜に。』

クロノスの口からでた名前に、
マーシャとリオナは視線を交わした。

更夜に会いに行くことは誰にも言っていない。

できればあまり知られたくはない。

知られてしまい、更夜に逃げられてしまったら困るからだ。

「・・・・なんで知ってるんだ」

リオナが落ち着いた声音で尋ねると、
クロノスはイタズラっぽく笑った。

『さぁ。神様だから、じゃだめ?』

神様と言われてしまえばこれ以上は何も言えない。

マーシャは困ったように小さなため息を漏らした。

「それならいいけどよ、あんまり広められると困るんだよ。」

『大丈夫。誰にも言ってないよ。』

クロノスの柔らかい笑みを見て、
ああ、こいつはやっぱりクロードやクラッピーのように子供ではないんだな、と改めて感じた。

『この箱の中には、更夜に頼まれたものが入ってる。まぁ、お礼みたいなものかな♪』

「お礼?なんかやらかしたのか」

『やらかしたっていうか、取り引きみたいなものだよ。クラッピーがね、もし帝国が襲われた時はクロードを守ってってお願いしたんだ。知ってるでしょ?更夜は快く返事をしてくれたけど、僕としてはそれなりの対価を支払いたくて。だからもし、クロードを助けてくれたら更夜の望むものをあげるって約束したんだ。それがコレ!』

掌に収まるくらい小さい箱。

中身が気になるが、
聞いても教えてくれなさそうだ。

「これを更夜に渡せばいいんだな」

『えっいいの!?』

「ただ、会える保証はないからな。」

『うん!ありがとぉお!マー兄大好きだよ!』

ガバッとマーシャに抱きついてくる。

じゃれついてくるクロノスを、
はいはいと言いながら背中をポンポンと軽く叩いてやっていると、
リオナがリビングからいなくなっていた。

いつの間に。

「で、俺たちには何か無いわけ?お礼」

『さっすがマー兄♪もちろんあるよ!』

「おいベタベタくっつくな。」

『マー兄が大好きなんだもん。』

マーシャが無理矢理引き剥がすと、
まるでクラッピーのように頬を膨らませた。

『お礼はね、マー兄たちがいない間のお留守番。』

「それだけ?」

『それだけって言うけどさ〜あ〜、クロードは大丈夫だとしてクラッピーを留守番させるのは心配じゃない?』

確かにそうだ・・・・。

あのバカピエロを放っておけば他のエージェントに面倒をかけてしまう。

今回はシキとシュナも一緒にくるし、
ビットウィックスも天上界に向かうとか。

このまま"クロノス"のままでいてもらえば、
万が一敵が攻めてきてもクロノスなら大丈夫だろう。

「仕方ねぇな。それでチャラにしてやる。」

『わーい!じゃあ早速出かけてくるね!』

「はぁ?」

『せっかく久々に出てこれたんだもん!楽しみたいよねぇ』

「危ないからやめとけ」

『だいじょーぶ!これでも時の神だよ?世界の様子を見ておきたいんだ。だから暫く留守にするけど気にしないでね』

心配するなだって?

神だろうがなんだろうが、
こんなフワフワした奴が1人で出かけて、心配しないでいられるわけがない。

「ダメだ。ダメなもんはダメ!」

『えー!じゃあ、マー兄も一緒に行く?』

「行かねぇよ。とにかく、外には出るな、絶対!ダーク・ホーム内だけだ。」

『むぅぅ。信頼されてないね。』

「じゃなくて、心配してるの。ホントに。頼むから。」

『マー兄がそこまで言うなら仕方がないよね・・・・じゃあ屋敷内見てきていい?』

「いいよ。あんま周りに迷惑かけるなよ。」

『はーい!』

そう言って、
クロノスは元気よく部屋を飛び出していった。


(※story124に続きます)

[*前へ][次へ#]
[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!