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【完結】 Novel〜Lord's Soul〜
story122 ボクたちの辿り着く場所



初めてだった。

こんな想いをするのは。

あの子を見る度に、
胸がドキドキして。

キュッと心臓がつかまれたかのように苦しくなったり。

いつ、どこで、
彼女に恋をしたかなんて覚えてない。

彼女がリオナを好きだってことは知っていた。

たぶんダーク・ホーム中の人が知っている。

だけどリオナはそんな彼女を鬱陶しく思っていたに違いない。

まぁ、確かにあれだけ派手に毎日告白されて抱きつかれて付きまとわれれば・・・・

というかリオナは愛に鈍感だ。

ムジカを好きになって、
ようやくわかってきたんじゃないかな。

ムジカよりもずっと前から、
彼女だけじゃなく、マーシャさんだってリオナを特別な存在として見てたのに。

俺はそんなリオナが羨ましかった。

あんなに真っ直ぐな愛を、
彼女から貰えるなんて。

彼女がリオナを諦めると言い出した時は正直驚いた。

あれだけめげずにリオナにアタックしていたのに。

でも、チャンスだとも思った。

俺にもまだチャンスはある。

だから今度は俺がアタックする番。

ダメでいい。

結果なんて、いいんだ。

ただ、彼女にどうしても伝えたいことがあるんだ・・・・









メイドたちが生活している部屋は"花園塔"という黒の屋敷の最奥の塔にある。

全員女性のため、
男子禁制となっている。

男性ばかりのダーク・ホームの華であり、
常に明るい笑顔でエージェントたちを支えてきた。

たまに夜這いをする野蛮な輩もいるため、
花園塔は完璧なセキュリティとなっている。

たとえ突破できたとしても、
その先では有名な鬼メイド長が待ち受けているのだ。

リオナやマーシャがいう
"トラ婆"というメイド長。

彼女に殺されかけたエージェントが何人いることか。

そんな最強要塞"花園塔"の前で、
シュナは息を呑んだ。

「ど・・・どうやってコロナを呼び出そうか・・・・な」

セキュリティのパスワードは知っている。

使用人たちは万が一の時のために知っているのだが、
侵入したところで生きて帰れるか・・・・

[シュナか?]

すると、突然背後から名前を呼ばれ、
シュナは勢いよく振り返った。

誰かと思えば、ナツだった。

背中に大きな荷物を背負ったナツも、少し驚いた顔をしていた。

「な・・・ナツかぁぁ!ビックリしたあああ」

[そりゃコッチのセリフだっての・・・・]

「というか、なんで此処に?」

まさか・・・ナツも好きな子に告白しに!?

そんなシュナの考えを読んだのか、
ナツは盛大なため息をついてシュナの頭を叩いた。

[バァカ。お前と一緒にするな。俺はビットウィックスに頼まれてきたんだよ。]

「え、マスターに?」

[メイドたち、もういなくなるんだろ?だから最後に"良い思い出"作ろうとしてるエージェントが今日何人も侵入してるらしくてよ。そのせいでメイド達が出発の準備ができないんだと。だからその見張り。俺だって好きこのんでこんなとこ来ないっての。休暇くれるっつーから仕方なくだな・・・・]

そんなに休暇が欲しかったのかと、
シュナは苦笑を浮かべる。

「"良い思い出"って?」

[そりゃお前・・・男だったら分かれよ。]

「あー・・・。」

どもってしまった。

考えただけで顔が真っ赤になる。

「え、じゃあナツにはそーゆー欲がないわけ?」

[は?俺には必要ないからな。]

「経験・・・・ないのに?」

[うっせぇ。お前も一緒だろ!]

「そうだけど、ナツって色々女の子と遊んでそうなのに。」

[はぁ?なんだそのイメージは!今は女に興味ねぇんだよ・・・・あ、だからって男に興味あるわけじゃないからな!こんな男所帯な場所でいい出会いなんて・・・・]

ナツはブツブツいいながら、
花園塔の入り口にドスンと腰をおろした。

[・・・・で、まさかお前も侵入しようとしてるんじゃねーだろうな。]

「へ・・・・?」

[まぁ、侵入しようとしても俺が止めますけど。]

そういいながらナツは背中に背負っていた大きなカバンをドンッと床におろした。

そして何やらカバンの中を探り出す。

「そのカバンの中身って・・・・」

もしかして・・・・武器!?

だったら勝ち目はない・・!!

[ああ、このカバンの中身は・・・]

と言って中から出てきたのは、
漫画本だった。

一瞬にして緊張が解れ、
シュナは安堵のため息をこぼす。

[暇つぶしにリオナから借りてきた漫画だよ。だって一日中ここで見張りぞ?暇すぎて死ぬから、この間リオナの部屋で読んでた漫画の続きをさっき借りに行ったんだけどよ、それが聞いてくれよ・・・・]

「なにかあったの?」

[リオナのやつ部屋にいなくてさ、まさかと思ってあの変態の部屋覗いたら・・・・お取り込み中だったんだよ。]

「変態って・・・マーシャさん?」

[あーそんな名前だったか。とにかくすごいのなんのって・・・きっと今日リオナ死んでるだろうな。]

「そ、そんなに・・・・・・・・は、は、激し・・・・」

恥ずかしくて顔が赤くなる。

[たぶん、お前が想像してるより凄かった。声かけるのもなんだから勝手に借りてきたんだけど。]

「・・・返す時はバレないようにしないと。」

[なんで?礼くらい言わないとな。]

「いやいや!だってナツが[朝借りにきた]なんて言ったら、リオナきっと"もしかして見られた!?"って気にしちゃうじゃないか!」

[鍵かけてないアイツが悪い。大丈夫だよ。見たなんて言わないし。]

「あっそ・・・・。」

ナツとリオナはなんとなく空気が似ているけど、
決定的に違うのが気遣いだろう。

そんなことより、
俺はなんとしてでもこの花園塔に侵入しなければならないんだ!

でも、ナツがいるし・・・・

はぁ・・・・やっぱりダメかな

[おい。お前はなんで此処にいるんだよ。]

「あ・・・いや、その」

咄嗟に答えられなかった。

どうしよう・・・・バレる、かも

[・・・・。]

1人焦るシュナを尻目に、
ナツは漫画を読みながら床に寝転がった。

[お前は使用人なんだから、自分の立場をもっと上手く利用しろよな。]

「へ・・・・?」

突然何を言い出すのかと、
ポカンとしてしまう。

[へ・・・?じゃねぇよ。馬鹿正直に真っ正面から突っ込んでいかないで少しは頭ひねって行けっつってんだ。わかる?お前は使用人だろ!]

えっと・・・・ちょっとまってよ。

俺は使用人で、
その使用人の立場を使えってナツは言ってる訳で・・・・

「・・・・!!」

そうか!

俺は使用人だ!

別に"侵入"するんじゃなくて、
仕事で"入室"するんだ!

いくらでも理由を作れるじゃないか!!

「ナツ!!ありがとー!!」

[知らねぇよ。]

ヒラヒラと手を振るナツに頭を下げ、
シュナは花園塔の扉の前に立った。

震える手で、
パスワードを解いてゆく。

ロック解除の文字が流れ、
扉の鍵が解かれた。

扉をくぐると、
再び扉が待ち構えていた。

しかもさっきより頑丈な分厚い鉄扉だ。

「あれ?インターホン?」

扉の横に、
ボタンが付いていた。

とりあえず、
ボタンを押してみる。

ポーン
という柔らかい音が響き渡った。

しかしすぐに、その音は掻き消される。

『何の用だ!』

すると、
いかにもといった厳つい声が聞こえてきた。

これがあの鬼メイド長"トラ婆"・・・・

でも、ここで怯むわけにはいかない。

シュナは息を呑んで、言葉を発した。

「お、俺は、シュナと申します!使用人見習いとして、第一使用人シキから事付を承って参りました!」

若干言葉遣いがギクシャクしたものの、
なんとか言いきることができた。

シキの名前を利用したことに、
シュナはかなり罪悪感を抱いたが、
きっとシキはそれを見越して後押ししたに違いない。と、信じてる・・・・。

どうか、嘘だとばれないで!

シュナは願う様に目をつむる。

『なんだ、そうかい。また侵入者かと思ったわ。』

先ほどと打って変わり、
メイド長の声が穏やかになった。

『ただ、入ることは許せない。』

一気に、頭が真っ白になった。

まさか、ここまできて・・・・会えないなんて。

シュナは魂を引き抜かれた様に、
へなへなと座り込む。

『ところで、その事付とやらは私にかい?』

「い、いいえ・・・・その、コロナさんに・・・と、言われていたのですが」

半分生気を失った声で話すと、
メイド長はマイク越しにケラケラと笑いはじめた。

『なぁんだコロナかい!ちょいとお待ち。』

そう言うと、
マイクの電源が切られた音がした。

どうしようかな・・・面と向かって話せないなら、
ここにいたって意味はない。

今のうちに逃げ・・・・

と、その時だった。

「ちょっと!そんなとこでなにしてるのよ!」

「へ・・・・?」

「へ・・・・?じゃないわよ!だらしない男ね!早くこっちに来なさい!」

あっという間の出来事だった。

目の前にコロナがいて、
手を引かれて歩いている。

しかも、
メイドたちの視線の中を堂々と。

頭が混乱している。

だって、さっきメイド長は中には入れられないと言っていたのに。

"コロナ"と書かれた部屋のドアの前までくると、
シュナは無理矢理部屋に押し込まれた。

後からコロナも入ってくる。

コロナの顔は真っ赤に染まっていて、
なんだか少し、いや、かなり機嫌が悪そうだ。

「あ・・・あの、コロ・・・・」

「あんたね、なんでノコノコやって来たのよ!」

「え・・・・?」

「他のエージェントは体張って侵入して来たりしてるのに、なんでアンタは馬鹿正直に真っ正面から来てるのって聞いてんの!しかもメイド長も私のこと女扱いしないでこんなヘナチョコ男通しちゃうなんて信じられないわ!」

はぁ・・・・と深いため息をついて、
コロナは床に座り込んだ。

どうやら、
コロナ的には無茶なやり方で会いに来て欲しかったらしい。

「で、何の用よ。」

「あっ・・・・えっと」

「私、引越しの準備で忙しいんだけど。」

本当に機嫌が悪い彼女の前で、
怖気づいてしまう。

でも、言わなきゃ、ここまで来たんだから!

「あのさ!コロナ!・・・・お、俺・・・!」

「告白ならやめてね。」

「・・・・!!?」

言う前から振られるなんて・・・・

振られる覚悟はできていたものの、
ただ振られるよりダメージが大きかった。

「な・・・なんで」

「なんで・・・・ですって?」

いちいち怖いコロナに、
シュナは小さい悲鳴を上げる。

そんなシュナを見て、
コロナは再び深いため息をついた。

「私ね・・・・結婚するの。」

「け・・・・結婚!?なんで!?誰と!」

驚きのあまりコロナに顔を近づけたが、
片手で押し返された。

「ちょっと、近いわよ!」

「ご、ごめんなさい・・・・」

「まったく・・・・。私、婚約者がいるの。昔からの幼馴染。でも、結婚なんてしたくなくて。だって幼馴染は幼馴染だもん!それ以上では考えられないの!私は本当に好きになった人と結婚したかった。だからダーク・ホームに逃げたの。ママもパパも干渉できないこの組織に。でも、ここを出たら、実家に帰らなきゃならない。だから、帰ったら、私は結婚するのよ。私の意思に関係なくね。」

少し寂しげな表情に、
切なさを覚える。

抗えない運命に、
コロナは必死に対抗して生きてきたのか・・・

なのに俺は・・・・最初から、諦めてた。

「コロナ・・・・俺、コロナの事が好きだよ」

「なっ・・・だからね!私の話聞いてた!?」

「聞いてたよ。でも、いくら君に婚約者がいたって、ずっと想ってる人がいたって・・・・俺は君が好きだよ。どうしようも無いくらい、君が好きだ!」

言っている自分が、どうしようも無いくらい恥ずかしくて、顔が真っ赤になる。

それでも、
伝えたい事なんだ。

「シュナ・・」

みるみる赤くなっていくコロナの手をギュッと握る。

「君の真っ直ぐに1人の人を想うその姿が好き。その人のために努力する君が好き。いつも強がっていても、なんだかんだ自分を抑えているコロナが大好きだ!」

コロナがまだ、リオナを想っている事くらいわかってる。

だから、
だからこそ、
伝えたかった。

「自信を持って、コロナ。君は最高の女の子だよ。君なら、きっと幸せになれる。諦めないで。自分を、諦めないで・・・・」

ああ、きっと、
シキさんが今の俺を見たら、
呆れた顔して「お人好しだな」と呟くんだろうな。

でも、これはお人好しでもなんでもない。

むしろ、俺のエゴを押し付けているんだから。

「シュナ・・・・」

しばらくすると、
コロナの方から口を開いた。

「アンタ・・・・やっぱりバカね。」

「えっ」

「告白したかと思ったら励ましだすし・・・・本当、メチャクチャね。」

予想外の言葉に、
少しショックを受けた。

まぁ、コロナらしいけど。

「本当・・・・メチャクチャよ・・・・」

しかし、
コロナの目からは、
透明な雫が零れ落ちた。

1つ・・・・また1つと、
それは止まる事を知らない。

シュナは慌ててハンカチを渡したが、
コロナの手によって弾き飛ばされた。

「やめて!優しくしないで!」

「こ、コロナ・・・・」

「これ以上・・・・これ以上優しくされたら・・・・」

コロナは顔を両手で覆い、
俯いた。

「アンタのこと・・・・もっと好きになっちゃうじゃない!!」

「・・・・!!」

こんなにドキドキしたことがあっただろうか。

きっとこれが最初で最後かもしれない。

でも、これだけでも、
俺は十分だよ・・・コロナ

「ごめんね、シュナ・・・わたしやっぱり・・・・まだリオナくんが好き・・・」

「うん・・・・知ってるよ」

「諦めるって言ったけど・・・やっぱり無理だった・・・・・この想いを、捨てることはできなかった」

「うん・・・・・・」

「だから、私も・・・・リオナくんに、最後にもう一度、想いを告げるわ。ちゃんと、伝える。」

よかった・・・

心の底から、そう思えた。

きっと彼女は、
もっと素敵な女性になる。

どうか自信をもって・・・・

「ありがとうシュナ・・・・」

「こちらこそ、ありがとう。」

「私・・・・シュナのこと、もっとちゃんと見ておけばよかったって、今すごく後悔してる。」

「え、ほ・・・・本当に!?」

「ええ。」

コロナは今までにないくらい、穏やかな笑みを浮かべた。

「シュナ、あなたなら素敵な王様になれるわ。」

「コロナ・・・・」

「私なんかより、いいお嫁さんゲットしてよね!私だって、幸せになるんだから!」

ニコッと笑う彼女に、
やっぱりかなわないやとシュナも笑う。

その時、
ふとコロナの顔が近づいてきた。

ビックリして、思わず目を閉じる。

「このヘナチョコめっ。」

そんなつぶやきのあと、
頬に温かくて柔らかいものが触れた。

キス・・・・だ。

「コ、コロナ!?」

「なによ、喜びなさいよ。私のファーストキスよ!頬っぺただけど・・・・」

コロナも恥ずかしそうに顔を背けた。

なんだか可笑しくてクスクス笑えば、
コロナも一緒になって笑い始めた。

この空気が、
時間が、
本当に幸せだった。














コロナがリオナに会いに行くというため一緒に花園塔を出ようとすると、
扉の向こうからナツとリオナの会話が聞こえてきた。

リオナも丁度今来たようだが、
なぜここに・・・・

[あ、リオナ。]

「・・・・あれ、なんでナツがいるの。」

[見張り。]

「・・・・見張り?へぇ、よくわからないけど、面倒臭そうだ。」

[なに、代わってくれるの]

「・・・まさか。」

[で、リオナもまさか夜這い?いや昼だから昼這いか。]

「・・・は?そんなことしないよ。」

[ああそっか。さっきまでお楽しみしてたもんなぁ・・・・あ、これ言っちゃまずかったっけ。]

ナツってばもぅ・・・・

なんで言っちゃうんだよ!!

シュナは扉越しに地団駄を踏む。

「な・・・・まさか、見たのか!?」

[事故だよ事故。だって漫画借りに行ったら部屋にいないから。一言声掛けとこうと思って変態の部屋に行ったら、ね。てかよく今動けるな。さっきまであんなに激し・・・イッテェェ!!殴るなよ!]

「ナツ嫌い・・・・大っ嫌い!」

[はぁあ!?なんでそうなるんだよ!]

「・・・・ふん。ナツなんてもうしらない。」

[わ・・・・悪かったって。そんな怒るなよ。]

ナツが謝るなんて珍しい。

リオナには本当に弱いんだな・・・・。

「・・・・反省してるのか?」

[してるって。じゃあ今度から札でも垂れ下げとけよ。"取り込み中"とか。]

「・・・・。考えとく。」

[冗談だよ・・・・]

「・・・・借りるくらいなら声掛けなくていいよ。メモとかでいい。」

[それが面倒なんだよ。]

「・・・・大雑把」
[神経質]
「・・・短気」
[女顔]
「・・・ヘンタイ」
[お前の相方ほどじゃねぇよ。]
「・・・マーシャは変態だけど、紳士な変態だ。」
[紳士な変態ってなんだよ。]
「・・・うーん。わからない。」

くだらない言い合いにしびれを切らしたコロナが、
思い切り扉を開けた。

「リオナくんっ!」

「・・・・あ、コロナ。」

リオナにしては珍しく、
自分からコロナに歩み寄って行く。

「・・・・丁度よかったコロナ。俺、今お前に会いに」
「あのね、リオナくん・・・・」

コロナは緊張した面持ちで、リオナの手を握った。

「私、リオナくんが好き。きっとリオナくんは聞き飽きてるかもしれないけど・・・・それでも私は本気で、リオナくんが好きだよ!」

リオナは驚きで目を見開いていた。

突然のことで、
きっと頭が少し混乱しているのだろう。

「コロナ・・・・俺・・・」

「ご、ごめんね!最後の最後まで迷惑かけて!でも、どうしても伝えたくて・・・!」

「・・・迷惑なんかじゃないよ。むしろ・・・嬉しい。ありがとう。」

リオナの微笑みに、
コロナだけでなく、男であるシュナやナツでさえ惹きつけられる。

「・・・・今まで、コロナの気持ちを無視してごめん・・・・。不安だった。愛とか恋とか・・・少し前まで、全然わからなくて・・・・コロナの気持ちにどう答えればいいのか。でも、今ならわかる・・・・」

リオナはコロナの両手を包み返し、
頭を下げた。

「・・・ごめん。コロナの気持ちにはこたえられない。ただ、こんな俺を好きって言ってくれて、本当に、本当にありがとう。」

コロナの瞳にみるみる涙が溜まっていく。

悲しい、終わってしまった。
でも、それだけじゃない。

全てに、踏ん切りがついた。

だから、自然と笑えた。

「リオナくん、ありがとう。」

「・・・そんな。お礼だなんて・・・・あ、そうだ。」

何やらポケットを探るリオナに、
コロナは首を傾げる。

するとリオナのポケットから、
綺麗に包装された箱が出てきた。

それをコロナに手渡す。

「これ、私に?」

「・・・うん。前に誕生日のプレゼント貰ってお返ししてなかったから。遅くなったけど・・・・お誕生日おめでとう。それと、今まで、本当にありがとう。」

「リオナくん・・・・」

どうしても我慢できなくて、
コロナは思い切りリオナに抱きついた。

これが、本当に最後だ。

リオナも今日ばかりは、
コロナをギュッと抱きしめた。

「私たち、これからも友達だよね?」

「・・・ああ。友達だ。絶対に忘れないよ。コロナ・・・どうか幸せになって。」

「・・・うん!ありがとう!」

そう言ってコロナはリオナから体を離すと、
ゆっくりとシュナを振り返った。

「シュナ!」

「ん?」

「あんたも、私のこと忘れたら許さないからね!!」

「わ・・・・忘れるわけないじゃん!!」

「ふふっ!約束!」


忘れないよ。

ずっと、ずっと。

君との思い出があるから、
前に進める。

だからどうか、

君も・・・・俺を忘れないで。

進む道は二度と交わることはないけれど、

辿り着く先は
一緒だと信じてるから・・・・。




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