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【完結】 Novel〜Lord's Soul〜
story121 愛を追う


"一緒について来て欲しい・・・ルナの元へ"

マーシャの過去に決着をつけるため、
リオナたちはルナがいると言われるサムライ・カウンティに向かうことになった。

賢者である更夜がルナをかくまっているらしい。

更夜の生まれ故郷である
サムライ・カウンティで。

そして、今回は俺とシュナも一緒に行くことになった。

確かにリオナとマーシャ2人では何かと不安でもある。

戦闘面でも、
精神面でも。

出発は、ユリスとラードが帰ってくる3日後となった。



そして、
ダーク・ホームにも動きがあった。

ダーク・ホームに住む悪魔ではない人々と、メイドたちに避難勧告が出されたのだ。

最終決戦に向け、
関係のない者達を巻き込まないために。

ビットウィックスなりの気遣いだろう。

それだけではない。

避難する人々の中に家族がいるエージェントにも許しが出たのだ。

多くの者がダーク・ホームからいなくなる。

そう思ったが、
予想外にも全員がダーク・ホームに留まると申し出た。

メイドたちも一緒に最後まで戦いたいと言い出して。

もちろん、エージェント達は誰1人としてダーク・ホームを去るという者はいなかった。

むしろ戦わせてくれと、
今までにないくらい士気が高まっている。

恐らく昨日まで行われていた雪見祭のお陰で、
エージェントだけではなく、メイドやその他の者達にも絆が生まれたのだろう。

そう思うと、
ビットウィックスの打算は大当たりのようで、それでもかなり酷なことをしている気もする。

けれどもしかしたら、
ビットウィックスは初めからこうするつもりだったのかもしれない。

"最後の宴"として、
"雪見祭"を行ったのかもしれない。

そんなこんなで、
朝からマスター・ルームではメイド達によるデモが起きていた。

"私たちは死ぬ気で奉仕する!"と。

しかしその暴動も、一瞬で幕を下ろすことになる。

マスターであるビットウィックスが、メイドたちに頭を下げたのだ。

マスターがメイドに頭を下げるなど前代未聞のこと。

「どうか安全な場所で、戦いを見守っておくれ。これが最後のお願いだよ。」

そう言われてしまえば、メイドたちもこれ以上は何も言えなかった。

結局、
ダーク・ホームに残るのは研究塔、救護塔、必要最低限の給仕と、エージェントだけとなった。

ダーク・ホームを去る者達は、
親戚の家や、
ダーク・ホームが用意する安全が保証された場所に移り住むことになっている。

そのため、メイドたちは早速荷物をまとめ始めているようで、
それぞれが別れを惜しんでいた。








そんな中、
ここにも別れを惜しんでいる者がいた。

「はぁ・・・・」

もう何度目になるかわからない深い溜息を吐き出すのは、
俺の一番弟子のシュナだ。

きっと、
メイドのコロナという少女のことを考えているのだろう。

恋、か・・・・

シキはニヤリと笑い、
愛弟子の顔を覗き込んだ。

「シュナは何を考えてるんだ?」

ちょっと意地悪な質問だったかもしれない。

でも、
シュナの反応がいちいち面白いから。

「あ、シキさんすみません・・!」

「別に謝らなくていい。ただ、あまりにも悩ましげだったから。」

「そうですか・・!?いや、たいしたことじゃないんです!」

「俺にはそうは見えないけどな。」

シキがそう言うと、
シュナは顔を一気に真っ赤にさせた。

「いや・・・・その・・・色々、考えたいことがあって」

シュナは昔から素直で、
すぐ顔に出る。

感情を外に出さないリオナと一緒にいると、尚更だ。

だから気になって仕方ない。

「シュナ、俺がいつも言っている言葉・・・覚えてるかい?」

「・・・・"もし迷っていることがあるなら、後悔しない選択をしなさい。"ですか?」

これは何度もシュナに言ってきた言葉。

おそらく、
耳が腐るほど聞いているだろう。

「でもシキさん・・・・俺は、どっちをとっても、きっと後悔する気がします・・・・」

「そうなのか?」

「・・・シキさんも気づいているとは思いますが、俺はコロナに多分特別な感情を抱いてます。でも、これが恋なのかどうかわかりません。ただ、リオナを思い続けているコロナが真っ直ぐで素敵で・・・憧れでもあったんです。そんな彼女に、俺の想いを、中途半端なこの想いを告げていいものかと・・・・でも告げなかったらそれはそれで後悔する気がします。」

シュナの深いため息が響き渡る。

それ程思いつめていたということだ。

「それだけじゃないんです。俺は、一応・・・・これでも、光妖大帝国の王でもあります。」

「一応だなんて。シュナは誰がなんと言おうがあの国の王だ。」

「あ、ありがとうございます・・!俺は光妖大帝国を絶対にフェイターには渡したくないんです。国を再生させたいんです。だから・・・・俺はけじめをつけなければならないと。」

「つまり・・コロナには想いを告げないのか」

いや、告げられないのだ。

王の妃になる者は、
相当な覚悟と努力が必要になる。

それを愛するものに背負わせたくないのだろう。

「・・でも、何も言わないままお別れなんて嫌だ・・・・後悔なんて、したくない・・・だけど・・・・イタッ!」

ウジウジと悩むシュナの頬をこれでもかと言うくらい引っ張りあげた。

大きな瞳が痛みで丸くなっている。

「なにするんですかああシキさん!」

「シュナはいい子すぎるんだ。」

「へ?」

「マーシャを思い浮かべてみろ。アイツなんかリオナの気持ちなんて構いもしないで自分の想いをひたすらぶつけてる。」

「だって・・・・それは相手がリオナだから。リオナはあれぐらい言わないと気がつかないし・・」

「気付く気付かないの問題じゃない。少しは図々しくなったっていいんじゃないか?」

「図々しく・・・・ですか」

「そう、図々しくだ。」

みるみる、シュナの表情が明るくなっていく。

それだけで、
俺の気持ちも穏やかになる。

「シキさん・・・やっぱり想いを伝えてきます。俺、別に恋人とかになれなくてもいいんです。それより、彼女の安全が大事だし、それに彼女がこれから幸せになれれば、それで十分なんです。」

ああ、忘れていた。

彼が根っからのお人好しだということを。

これがシュナなりの"愛の形"なのだ。

「ああ、行っておいで。」

「はい!いってきます!」

シュナは勢いよく部屋を飛び出して行った。

「シュナも大きくなったな・・・・」

つい最近まで、あんなに小さかったのに。

いつの間に大きくなったのだろう。

シュナと出会ったのは運命だ。

俺にはシュナを守る義務がある。

シュナがここを離れ、
王として光妖大帝国に戻るその時は、
俺も一緒に国へ戻る。

そしてシュナの手となり足となり、
彼を支えて生きていく。

それが、光妖大帝国を見捨てたフェイターの母と、ダーク・ホームを裏切った父と、その子供である俺の責任でもある。

別に苦じゃない。

シュナだから。

シュナだから俺は素直に側で支えたいと思える。

だから、
彼の幸せは、
俺の幸せでもあるんだ。

「恋か。冬なのに、みんな春みたいだな・・・・。そろそろ一発気合をぶち込んでやらなきゃな。」

その春のような温かい空気に
微笑みを浮かべた。




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