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【完結】 Novel〜Lord's Soul〜
story119 ループホール

マーシャがビットウィックスの部屋にやってきた時には意思は固まっていた。

いつまでも逃げてはダメだ。

自分からも、マーシャからも。

結局、俺は1人になるのが怖かったんだ。

マーシャが俺から離れていくのを。

偽りでもいいから、
俺だけを見ていて欲しかった。

だけど、
それじゃダメなんだ。

マーシャが過去のしがらみから抜け出し、先に進むためにも。

マーシャ・・・・

マーシャが思ってるより、
俺はずっとマーシャに依存してるよ。

俺は、マーシャが好き。
愛してる。

たとえマーシャが想っていなくても。

それだけで十分だって、
心に決めたんだ・・・・





リオナはマーシャに近づき、
じっと瞳をみつめた。

マーシャは今、
何を思っているのだろう。

「リオナ?ねぇ、なんで泣いてるの。なんで俺から逃げるの。俺の過去を見たから?」

まるで尋問でもされている気分だ。

それほど、
マーシャの威圧がすごい。

「ああ、俺の本性知っちゃったからかな?」

「・・・・本性なんてわかってるよ。」

「じゃあなんで。」

マーシャの眉がピクッと動いた。

「・・・・マーシャの、マーシャの苦しむ顔を・・・もう、見たくない」

過去に囚われたマーシャを、
解放してあげたいんだ。

「なんで?俺、苦しんでなんかいないよ?リオナさえいれば、俺は生きていける。前にも言ったじゃん。」

だが、マーシャにはまだ伝わっていない。

俺の想いも、
隠された真実も。

だから、この手で、
この口で、
マーシャに伝えなければならない・・・・

「・・・ねぇマーシャ。マーシャが見てるのは、俺?それとも・・・・モナ?」

"モナ"という言葉に、
マーシャが反応した。

口元から笑みが消える。

代わりにリオナに向けられたのは冷ややかな視線。

「何、言ってんの。俺前にも言ったよね。リオナが一番だって。リオナがいなかったら今の俺はいないって。」

「・・・マーシャが、俺を必要としてくれてるのはわかるし、嬉しい。でも、マーシャ・・・・マーシャは、俺を見ていない。俺じゃなくて、モナを見てる。」

「だから、何言ってんだよ・・・そうやっていつもリオナは俺を信じない。あれだけ言ってもわからなかったわけ?俺が愛してるのはリオナで、モナはもう昔のことだ。たまたま夢で見ただけで、そうやってお前は俺を責めるのか?!」

だんだんとマーシャの口調が荒くなっていく。

リオナが逃げないように、
腕まで掴んでいる。

「・・・・そう言って、割り切れてない。全然。」

「いい加減にしろよリオナ・・・・」

マーシャの表情が一気に歪んだと思ったら、
ふと口元に笑みが戻った。

だが、
さっきとは違う。

「そう・・・・わかったよリオナ。口で言ってもわからないなら、カラダ全部使って教えてやるよ!」

マーシャが俺の腰を掴み、
グイッと引き寄せた。

しかしその瞬間、
ビットウィックスが素早くマーシャを押さえつけた。

リオナはシキに庇われるように
マーシャから離される。

「おいクソ悪魔・・・はなせ!」

「おやおや、口が悪いね。」

「てめぇ・・・・殺されてぇのか」

「キミみたいな脆弱な悪魔では私は殺せまい。」

「んだと・・!!」

マーシャはビットウィックスの腕を振り払い、
距離を置く。

「マーシャ、キミは間違っている。キミの言い方はまるでリオナを責めているようだ。」

「当たり前だろ?リオナに何が分かるんだよ。たかが俺の過去を垣間見ただけで偉そうにあーだこーだ言いやがって・・・・だから俺はリオナにだけは話したくなかったんだ!!」

胸の奥がズキズキする。

今、俺の目の前にいるのは、
俺の知っているマーシャじゃない。

でも、これが本当の"マーシャ"なんだ。

「俺がリオナとモナを重ねてるだって?んなわけあるか!頭の中はリオナでいっぱいなのに!・・・愛してるんだ!今回の雪合戦とやらでよーくわかった!俺はリオナを独り占めしたい。誰にも触らせたくない。リオナは俺だけを見ていればいい!部屋に閉じ込めて毎日愛し合って俺だけを求めればいいって。俺が死ぬ時は、リオナも殺してしまいたいとすら思ってる!」

マーシャの瞳が震える。

「俺の愛は歪んでる。そうだろ?リオナ」

歪んでる?

確かにマーシャの愛は歪んでる。

それでも、
俺のことは真っ直ぐに愛してくれていた。

もし、
マーシャの愛が歪んでいるのなら、マーシャの愛を歪ませたのは、
間違いなく、
この俺だ。

「・・・・マーシャに、言わなきゃいけない事がある。」

だから、これだけは伝えなくてはならない。

真実を、マーシャに・・・・・・・・

「・・・・マーシャの愛した"モナ"は、俺の母親だ。」

マーシャの瞳の震えが止まった。
まるで全ての時が止まったかのように。

「・・・・母親はモナ、父親はダンっていうんだ。」


マーシャが愛したモナと、兄のように慕っていたダンは、
俺の両親だ。

銀色の髪は父親から、
漆黒の瞳は母親から受け継いだもの。

両親の出会いは聞いていたものとは違うが、マーシャの過去にいたあの2人は、
間違いなく父さんと母さんだった。

「嘘だ・・・・嘘をつくな!!」

その途端、
マーシャはリオナに飛びかかった。

そのままリオナは床に押し倒されてしまう。

「モナは死んだんだ・・!あの日!ルナが殺した!!抱きしめたら・・・冷たくなってたんだ!」

「やめないかマーシャ!」

シキが無理矢理マーシャをリオナから引き離すが、
何度もリオナに飛びかかろうとする。

「証拠も何にもないくせに適当なことをぬかすな!!」

確かに、
証拠なんてない。

写真も証明書も何も無い。

あるのは俺の記憶だけ。

「・・・・マーシャの過去にいた父さんと母さんは、確かに俺の両親とは少し違った。父さんはあんなに真面目じゃない。俺の知ってる父さんはバカで呑気で子供っぽい。母さんももっと明るかった。」

「じゃあ違うじゃねーかよ!」

「・・・・いや、違わない。証拠はないよ。でも、見ればわかる。」

「だからそんなもんでどう信じろって・・」

「俺の父さんと母さんだからだよ・・!」

その言葉に、
マーシャは押し黙った。

表情からは怒りが消え、
むしろショックを受けたような複雑な表情だ。

「・・・俺の知らない2人をマーシャは知っている。でも、それでも・・・・2人は俺の両親なんだ。」

涙が、
込み上げそうだ。

父さんも母さんも、
俺やウィキの前ではすごく明るかった。

でも、
本当は色々抱えていたのかもしれない。

マーシャのことを、
ずっと、ずっと、想っていたに違いない。

「・・・マーシャ、もう一度よく考えて欲しい。本当に俺が好きなのか。過去と向き合って、よく考えて・・・。」

これは、マーシャだけじゃない。

自分にも向けた言葉・・・・

自分も、ちゃんと向き合わなければならない問題がある。

B.B.・・・・そして、
ウィキ。

時が解決してくれるわけじゃない。
このままじゃ何も解決しない。

だから、
だから・・・・


リオナはそれだけを告げ
部屋を出ようとした。

しかしその時、

マーシャにギュッと腕をつかまれた。

マーシャの手が、
マーシャの瞳が、
俺を捕らえる。

「待ってよリオナ・・・・」

今にも泣きそうな声で、呼びかけてくる。

ああ・・・・やめて。

マーシャのそんな声、聞きたくないよ・・・

「ごめん・・・・・・リオナごめん・・・お前を、傷つけるつもりじゃなかった・・・」

「・・・・傷ついてなんかいないよ」

「聞いて・・・。俺の、俺の気持ち・・聞いてよ。ねぇ」

マーシャに腕を引かれるが、
さっきみたいに強引じゃない。

嫌なら振り払ってとでも言っているような、
そんな気がした。

「リオナ・・・・俺たち結局、本音で話せてないよ。今のがリオナの気持ちだっていうのは良くわかった。だけど・・・まだ俺の気持ち、言ってない。」

「・・・・」

マーシャの本音・・・・
確かに、
俺は一方的にマーシャを疑って、俺の気持ちだけ押し付けて・・・

結局、同じことの繰り返しじゃないか。

自分がこれ以上傷つきたくないから、
無意識に逃げて・・・

最悪だ。

「・・・聞きたい。マーシャの気持ち・・・・知りたい。」

「リオナ・・・・」

そういうと、
マーシャは一瞬リオナを抱き寄せようとするが、
何かをこらえるようにリオナから手を離した。

いったん落ち着くように、
深いため息を吐き出した。

「正直・・・・今、すごい混乱してる。モナが生きてて、リオナがモナとダンの息子だなんて・・・。」

もし自分がマーシャの立場だったら、信じることができただろうか・・・・いや、できないだろう。

「でもリオナがそう言うなら・・・・俺は信じる。それでもやっぱり、確証が欲しい。だからそのためにも・・・・」

マーシャは戸惑いながらも、
ゆっくりと口を開いく。

「ルナに・・会いに行ってくる。」

「マーシャ・・・・」

「よく考えれば、俺はルナと向き合ってなかった。一方的に恨んで・・・そのせいで気がつけなかったのかもしれない。だから、今度はちゃんと、ルナと、過去と・・・・決着をつける」

ああ、
俺はその答えを待っていたんだ・・

マーシャの全ての原点は、
あの日、あの時、あの瞬間、
ルナとの出会いだった。

モナを殺したルナを恨み、
衝動に突き動かされるままに生きてきた。

しかし、ルナはモナを殺してなんかいない。

だからこそ、
やらなくてはならないことが、
マーシャにはある。

過去のしがらみから抜け出すためにも・・・・


マーシャがようやくその答えにたどり着いたことが、何よりも嬉しかった。

これ以上、マーシャの苦しむ顔なんて見たくないから・・・・

「あとね、リオナ・・・」

「・・・・」

「何度も言うよ・・・俺は、お前を愛してる。俺がリオナとモナを重ねてるって言うけど、そんなこと絶対無い。」

さっきまでの不安そうな表情から一変し、
真剣な表情でまっすぐ見つめてくる。

「モナを愛してたのは事実だ。でも、それはずっと昔のことだ。リオナと出会ってから、ずっとずっと・・・今でも、お前のことで頭がいっぱいだ。モナのことより、リオナのことの方が何百倍もよく知ってるし・・・・想ってる。」

まるで熱でもあるように

マーシャの瞳が潤んでゆく。

「リオナは小さい頃からワガママなんて全然言わなかった。口数も少ないから周りの奴らはリオナを大人びてるだとかクールだとか言ってたけど、本当のリオナはそんなことない。リオナは好奇心旺盛でなんでもすぐに興味を持つ。任務先でも気づいたらいなくなってて店のショーウィンドーに張り付いてたりして"マーシャ!これすごいね"って目ぇ輝かせて言うんだ。"買ってやろうか?"って言うと絶対首を横に振る。見てるだけでいいって。手に入れて満足しちまうのが怖いからだ。あとリオナは寂しがりやだ。俺がいなくなると、すぐに俺を探す。見つけたら恥ずかしそうに笑って遠くから見つめてくるんだ。まだまだある。照れ屋で毒舌だけど本当は甘えん坊で・・・・」

どんどん出てくる、
マーシャしか知らない"本当の俺"

シキとビットウィックスもいるのに・・・・恥ずかしい

とにかく恥ずかしくなってきて、
思わずマーシャの口を右手で押さえつけた。

するとマーシャは俺の右手を掴み、
ゆっくり口から離した。

「これ、全部俺しか知らないリオナだよ・・・・俺だけが知ってるんだ。わかる?俺は独占欲が強い。本当のリオナを知ってるのは俺だけってだけですごい嬉しいんだ。逆に言えば、他の誰かに本当のリオナを見せたくない。」

マーシャはリオナの右手に唇を押し付けた。

その一つ一つの行為に、
心臓が飛び跳ねる。

「だから、今回の雪合戦でリオナがエージェントたちにベタベタ触られたりするの見て、すごい嫉妬した。リオナに触ってもいいのは俺だけなのに・・・・あんな楽しそうなリオナを見て、リオナを楽しませてるのが俺じゃないことに絶望もした」

「じゃあなんで・・・・なんで参加させたの・・・・・・・・俺は参加したくなかった。マーシャがいなきゃ、イヤだった・・・なのに無理矢理参加させたのはマーシャでしょ?」

「ああ・・・そうだよ。参加させたのは俺だ。俺は、いつ死ぬかわからない。きっとリオナよりも先に・・・・いなくなるだろ。その時、お前が1人になるのが心配だったんだ・・・・」

なんでそんなこと・・・・

そんなことより、
マーシャの気持ちを優先して欲しかったのに・・・

それでも、

マーシャはいつでも俺のことを考えてくれているということで・・・

改めて胸に染みてくる。

「結局その後体調壊してデヴィスに怒られたけど・・・・余計心配になったんだ。俺ばっかりがリオナを愛してて、本当にリオナは俺を愛してるのかって・・・・俺はお前を疑ったんだ・・・。そのままモナの夢を見て・・・過去にしがみついた。モナを愛してるって言ったのも・・・・心の何処かで逃げ道を作ってたのかもしれない。」

・・・同じだ。

同じだと思った・・・・。

マーシャも、俺も、
お互いの不安や本音を言い合えないで・・・
お互いに逃げて

そんなマーシャを、
逆に俺が疑ってしまったんだ・・・・・

「今まで、逃げてごめん。本当のことを黙っててごめん・・・・。リオナはモナとは全然違う・・・似てるなんて思ったこと一度もない。親子だろうがなんだろうが、リオナはリオナでしょ?リオナがモナに似てたら・・・・きっと好きにはなってない。俺はリオナだから好きになったんだ。」

マーシャはリオナを抱き寄せ、
耳に唇を寄せた。

「リオナが好きすぎる・・・・愛おしすぎる。愛してるなんて言葉じゃ足りない・・・・お前を独占したい。お前の気持ちを俺だけが知りたい。部屋に閉じ込めたい誰にも渡したくない。ずっと・・・・ずっと一緒にいたい。愛してるんだ・・・・」

ああ、
俺はなんて浅はかなんだろう。

マーシャの過去を垣間見て、
マーシャがモナに向ける真っ直ぐな愛に欲求し、
その愛を向けられたモナに嫉妬していたんだ・・・。

実の母親とわかりながらも、
母親に嫉妬した。

子供じみていたのは自分ではないか・・・

マーシャはこんなにも真っ直ぐ、
俺を愛してくれているのに。

「・・・・ごめんマーシャ」

恥ずかしくて、
顔をあげられない。

「なんでリオナが謝るんだよ」

「・・・俺、母親にヤキモチ焼いてた・・・・」

「モナに・・・?」

「・・・・うん。羨ましかった・・・あんなにマーシャに愛されて・・・・俺・・・・俺だって、本当のマーシャは俺しか知らないって思ってたから・・・知らないマーシャを見て、ショックだった。」

「リオナ・・・・」

「・・・マーシャは、俺がマーシャを愛してるか不安って言ったけど・・・俺だって同じだ。マーシャ、俺は自分が思っている以上に、マーシャが好きで好きでたまらない・・・・何をしてたって、頭の何処かでいつもマーシャを考えちゃうんだよ。俺・・・・口下手だしいつもマーシャに冷たくしちゃうけど・・・・本当は、本当はマーシャが甘やかせてくれるのとかすごい嬉しいしマーシャの全部が・・・・愛おしい」

「ほんとに?リオナの中で、俺が一番だって、リオナは俺だけのものだって、信じていいの?」

「・・・・信じて。マーシャの、ものだけにしてよ・・・」

マーシャの背中に腕を回す。

暖かくて、
もうこの熱から離れられそうにない。

「リオナ、これからは何でもちゃんと話す。不安なことも、全部。だから、リオナも話して・・・・お願いだから、1人で抱え込まないで。」

マーシャの願いに、
リオナはコクッと頷く。

「ちゃんと過去にけじめつけて、胸張ってリオナを愛したい・・・」

ようやく、
全ての壁が無くなったような気がした。

フェイターに言われた言葉も、
今となってはどうでもいい。

マーシャが愛してくれている。

愛は確かに存在しているんだ。

それだけでこんなに安心している自分がいる。

ふいに顎を掴まれ、
クイっと上げられた。

マーシャと目が合う。

「リオナ、目・・・・閉じて」

マーシャに言われ、
そっと瞳を閉じた。

ゆっくりと、
唇と唇が近づいてゆく。

しかし、
触れるか触れないかの寸前で、
盛大な咳払いが邪魔をした。

犯人はもちろん

「シィィキィィィ・・・・てめぇいいとこで邪魔しやがって!」

「場所をわきまえろ。マスターの前だぞ。」

シキはしたり顔でメガネをあげた。

しかし、
その表情はどこか安心したような、
すっきりとしたものだった。

「場所なんて関係ないだろ!空気を読め空気をッ!せぇっかくリオナと仲直りできたってのにお前は嬉しくないのかよ!」

「嬉しいさ。だがそれとこれとは話は別だ。ねぇ、マスター。」

「ん?私は構わないよ。キスでもなんでもしてくれ。むしろ興味がある。」

意外なビットウィックスの返答に、
シキは口をポカンと開けてしまう。

「え・・・・マスターちょっとさすがにそこは俺に合わせてもらわないと威厳というものがですね・・・」

「君は威厳威厳とよく言うけど、私にはその言葉の意味と意義がよくわからない。キスは愛の証だろう?それを否定するのはよくないよ。ああ、それともシキもしたいのかな?だったら私が君にしてあげようか?」

「はぁあ!?け、結構です!!」

もう好きにしろ!
と、シキは顔を真っ赤にさせ、
そっぽを向いてしまった。

するとその瞬間、
再びマーシャが右手でリオナの顎を掴み、
左手で腰を引き寄せ、
強引に唇を奪った。

「は・・・・んぅ・・・・・・・・っ」

深く熱く激しく

キスは続く。

息がうまく吸えない上に、
甘い感覚に腰が抜けそうになる。

激しいキスに気絶しそうになるが、
マーシャはそれさえ許さないかのように、
さらに激しさを増す。

マーシャが求めてくれてる。

それだけで嬉しすぎて。

リオナもマーシャのキスに応えようとする。

「おやおや、本当にマーシャは獣みたいだねぇ。」

そんなビットウィックスのつぶやきが耳をかすめるが、
それ以上に快感が上回り反応すらできない。

しばらくして、
ようやく唇が離れた。

マーシャは最後の最後までリオナの唇を舐めあげると、
リオナはピクンと体をはねさせた。

「リオナ可愛い・・・・」

その一言で、
一気に熱が上がった気がした。

お互いに息も上がっていて、
頬も真っ赤に染まっている。

荒い息のまま、
マーシャはリオナの耳に口を寄せた。

くすぐったくて、
リオナは再び体を跳ねさせる。

「リオナをもっと・・・・可愛がりたい」

その言葉が意味することを、
リオナは知っている。

「もう我慢できないよリオナ」

マーシャの一言一言に、
いちいち反応するカラダが恨めしくて仕方が無い。

「早くリオナの全部を愛したい・・・・」

マーシャの手がいやらしく這いまわる。

まるで蛇のように、
滑らかに。

自分でも驚いたが、
返事の代わりに強く抱きつき、
マーシャの首筋に吸い付いた。

初めて付けたキスマーク。

これが今の、精一杯の愛の証。

「くそ・・・・沢山可愛がってやる」

マーシャがニヤリと笑った。

そのまま腕を引かれるが、
リオナは足を止め、振り返った。

「・・・・シキ」

そっぽを向いていたシキは、
リオナに呼ばれるとゆっくり振り返った。

「・・・シキ、ありがとう。」

シキがいなかったら、
きっとマーシャとはいつまでも分かり合えなかった。

何だかんだいいながら、
いつもシキが手を焼いてくれる。

感謝しきれない。

「お礼だなんて・・・俺は何もしてないよ。気にするな。またマーシャに傷つけられたらいつでもこい。その時はマーシャをぶっ飛ばしてやるから。」

笑顔で言うシキだが、
どこまで冗談かわからない。

でも、これがシキの優しさだ。

「・・・うん。ありがとう。ビットウィックスも、ありがとう。騒いでごめん。」

「元気になってよかったよ。さぁ、早く部屋へお戻り。君の後ろで涎を垂らした獣が今にも襲いかかろうとしているよ。」

「誰がケモノだッ!!悪魔に言われたくないね!」

マーシャとビットウィックスは火花を散らす。

いつもだったらビットウィックスが大人の対応で引き下がるのだが、
今日は珍しくマーシャが先に引き下がった。

「まぁ・・・・癪だけど・・・・お前らには感謝してる。ありがとよ」

「ほう。マーシャもありがとうという言葉を知っていたんだね。」

「てぇぇめぇぇえ・・下手に出てやりゃああああ!!」


再びビットウィックスに飛びかかろうとしたマーシャを、
シキが軽く突き飛ばした。

「ほら・・・さっさと部屋に戻って寝ろ。体調が整わないならルナに会いにいかせないからな。」

「くっそ!覚えてろよこの天然バカ悪魔!」

まるで子供の負け惜しみみたいな言葉を吐き捨てるマーシャに、
笑いがこみ上げてくる。

「リオナ今笑っただろ。」

「・・・そうかな。笑ってないよ」

「いーや笑ったね。覚悟、できてるだろうな・・・・」

再びいやらしい笑みを浮かべるマーシャにリオナは少し後ずさるが、
マーシャの手に捉えられてしまった。

強引に、それでも優しく腕を引くマーシャに
リオナも身を任せた。

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あきゅろす。
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