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【完結】 Novel〜Lord's Soul〜
story117 守りたいもの


世界政府


世界の均衡を守る機関。


ダーク・ホームとは表裏の関係であり、
現在は世界政府がフェイターと手を組んだことから関係は悪化している。


さらに、森羅大帝国もフェイターの配下となり、フェイターにローズ・ソウルも奪われてしまった。


結局、フェイターが所持するローズ・ソウルは3つとなり、
ダーク・ホームがローズ・ソウルとローズ・スピリットを1つずつ所持している状態だが、
未だに見つからないローズ・ソウルが1つ。


武錬大帝国のローズ・ソウルである。


UNKNOWN WORLD、通称UWにあると言われていたが、
誰かに奪われてしまったようだ。


世界政府には、昔から様々な疑惑がある。


以前からフェイターに加担していたのでは、
実は世界政府もフェイターではないのかなど、
疑惑は尽きることがない。


最近はダーク・ホームに監視役という名目でモリン=クィーガを送り込んできたくらいだ。


近々、
ダーク・ホームのスキを突いて攻撃をしかけてくるに違いない。


しかし、ダーク・ホーム側からすれば、
できれば無駄な戦いは避けたいのだ。


だから、
ダーク・ホームもスパイを送り込んだ。


優秀な2人を。


多分、優秀な、2人・・・・







世界政府、
委員会議


週に一度行われる政府内委員全員が参加する会議。


朝から大勢の委員が、
巨大会議ホールに集まり始めた。


皆、静かで落ち着いた、
いかにもガリ勉そうな者ばかり。


しかし、そんな中に、
異質な2人組がいた。


「ちょっとラード。あんたシャキッと歩きなさいよ!」


「ぁあ?ちゃんと歩いてるじゃねぇかよ。」


「ネクタイもしっかり締めなさい!まったくもう!折角真面目に見せる為に変装したのに台無しよ!」


「そーゆーユリスは肌露出しすぎだろ!?何が変装だ!」


ガミガミと喧嘩を繰り広げていたのは、
ダーク・ホームのスペシャルマスターの2人、
ラードとユリスだ。


世界政府の偽IDを作り出し、
メガネやカツラでインテリ風に変装までして忍び込んだはいいが、
2人が変装したところで決してインテリ風に見えるはずがない。


「マスターも酷いわよね。なんでアンタなんかと一緒にこんなことしなきゃいけないのよ・・・・」


「そりゃこっちのセリフだっ!!てか感謝くらいして欲しいもんだね!マーシャと行くのとどっちがいいよ?!」


「・・・・。ごめん、アンタの方がマシだったわね。」


「だろ!?リオナとしか相性が合わないマーシャなんかと一緒に行ったら絶対に痛い目にあう。」


「そうね・・・・仲良くしましょ、私たち。」


「おうよ。」


今回の任務は、世界政府とダーク・ホームの戦争を避けること。


世界政府は気づいていないだろうが、
フェイターは決して世界政府を仲間に迎え入れたわけではない。


フェイターの目的は、
ダーク・ホームとの潰し合いをさせることだ。


そんな無駄なことをしたくない。


なんとかして、そのことに気がついて貰わなければ。


2人は会議ホールに入ると、
中は信じられないくらい広く、
後ろからでは会議内容すらわからなさそうだ。


「どこに座るんだ?」


「先頭よ!最前列!」


「マジかよ・・・・バレたらどうするんだよ!モリン=クィーガもいるんだぞ!?」


「あんた、男のくせして肝が据わってないのね。バレたらバレたじゃない。戦うのみよ。」


「わかったよ!前行きゃいいんだろ!?」


完全に尻に敷かれるラード。


仕方なく最前列に座るが、
前の方は意見を言いたくてウズウズしているオヤジだらけで完全に座る位置を誤った。


けれどユリスからはそのオヤジ以上の熱を感じる。


「あ、あのよぉ、ユリス・・・・別に俺達は意見を言いにきたわけじゃないんだけど・・・・。」


「じゃあアンタ、今日の会議でダーク・ホームに攻撃が決まったら黙って見てるの?それをマスターに報告するわけ?」


「そうじゃねぇけど!でも見ろよ!あそこにモリンがいるんだぜ!?俺達のこと知ってるんだぞ!」


今回の議題がダーク・ホームへの攻撃についてだからか、
モリン=クィーガは斜め向かいに座っている。


鋭いあの目つきが気に食わない。


「大丈夫よ♪私、こんなこともあるかと思って、"名前"を登録してきたの。」


「は?」


「ダーク・ホーム調査団っていう団体があるのよ。そこに名前登録しといたから。もちろん偽名よん♪」


ユリスはラードに名札を手渡した。


「ああ!?俺、"アンリ"!?お前の弟の名前かよ!!」


「だって思いつかなかったんだもの。ちなみに私は"ユラン"よ♪実はこれが本名なの。」


「なんで"ユリス"にしたんだよ。」


「"ユリス"はママの名前。アンリが生まれてすぐに死んじゃったのよ。」


ユリスの表情が一瞬歪んだ気がした。


ダーク・ホームに入る者達は、
自ら入る者もいるが、
スカウトで入る者が大半である。


自らの意志で入ったリオナやマーシャとは違い、
ユリスとラードはスカウトだった。


スカウトの基準は、
戦闘能力が高いのは勿論だが、
生活の貧しさも注目される。


金がある者はあまり成長しない。


逆に貧しい者は、
金のためにあくせく働く。


「ママが亡くなってから、パパが働かなくなったから。アンリのためにも私が働かなきゃってね。そこそこ強かったしお金も無かったから、ダーク・ホームにスカウトされたのよ。アンリが一生安心して暮らせる保証と、お金をくれって言ったらとんでもない金額よこしてくるものだから、断れなかったわよ。」


「本当は、アンリと暮らしたかったんじゃないのか?」


「もちろん。アンリも寂しがってたし。ダーク・ホームで一緒に暮らしたいってアンリが駄々を捏ねたことがあってね、マスターもいいって言ったから連れて行こうと思ったけど、ジークに止められたの。」


「あー、あのホモ野郎か。」


「まっ、ダーク・ホームに来ちゃったら、自由きかないしね。これでよかったって思ってるわ。」


そう言ってユリスは笑うが、
きっと今でも故郷で暮らしたいと思っているのだろう。


ラードはそれ以上何も突っ込まなかった。


「ラードは?」


「は?」


「ラードはなんでダーク・ホームに入ったの?」


まさか聞かれるとは思わなかったラードは、
少し動揺したのか、
どもっている。


「あーいや、俺、そんな大した理由とか無いから。」


「なによ。はっきり言いなさいって。」


なんて強引な女だ!
とラードはため息をこぼした。


「俺、人殺しだったから。」


「そんなの今もじゃない。」


「っるせぇなぁ!!違うんだよ。俺、闇金に雇われた殺し屋だったの。」


金を借りて、返さないまま逃げたやつを殺す役目。


金が無かったから仕方なくやっていた。


「でも警察に捕まったんだよ。しかも死罪。そんなとこにダーク・ホームのスカウトマンがやってきたってわけ。死罪を取り消してくれる代わりにダーク・ホームに入れって言われたんだ。抜け目ねぇよなぁ。」


「あんたが殺し屋とか笑えるわね。」


「だから話したくなかったんだよ!!」


ラードが顔を背けると、
ますますユリスが笑だして。


いつもなら怒鳴り散らすラードも、場所が場所なだけ、ため息だけで済ませた。


「でも私たち、長い付き合いなのに今までこーゆー話したこと無かったわね。」


「そうだなぁ。今までは、なんだか暗黙の了解というか聞いちゃいけない感じがあったからな。」


「そう思うと最近はダーク・ホーム全体が柔らかくなったわよね。それもこれもビットウィックスのおかげかしら?」


「かもしれないなぁ。」


「あら。案外アッサリ認めちゃうのね。」


「だって本当のことじゃねぇか!!」


「はいはい。」


身の上話で盛り上がっていると、
ようやく会議が始まったようだ。


会場も静まり返っていく。


「ユリス」


「なに?」


「俺、ダーク・ホームを守りてぇんだよ。」


さっきまでやる気が見えなかったのに、
今のラードの目は闘志に燃えている。


「俺を変えてくれたのはダーク・ホームとお前ら仲間のおかげなんだ。だから、絶対守る。」


その言葉に、
ユリスは目を丸くするが、
自然と笑みが浮かぶ。


「私、アンタのそーゆーとこ好きよ。」


「なっ!マジかよ!」


「マジよ。もし、全部の戦いが終わった時、私に彼氏がいなかったら、私と結婚して。」


「はああ!?なんでだよ!!なんで今言うんだよ!!」


「ノリ。返事は?」


顔を真っ赤にさせるラードに詰め寄る。


真面目なユリスの視線に、
ラードは恥ずかしすぎて爆発寸前だ。


「わ・・・・わかったよ!結婚してやる!!その代わり、俺ぁ子供が3人欲しい!その条件でいいなら、お前をもらってやる!」


「もらってやるですって?貰われてあげるんじゃない。エラそうね。」


「はあ !?」


「ま、私も子供たくさん欲しいし、いいわ。約束よ?」


そう言って笑うユリスにドキッとしながらも、
ラードは気持ちを切り替えて前を向いた。


会議の始まりは各国の財政問題。


よくわからないワードが飛び交い、
2人は早速眠気に襲われそうになる。


しかし、すぐに眠気を吹き飛ばされた。


本題に移ったからだ。


『対ダーク・ホームについて。今回の決議で、ダーク・ホームへの攻撃の是非を決議しようと思う。では、モリン=クィーガから。』


議長に呼ばれ、
モリン=クィーガが立ち上がった。


相変わらず嫌な顔をしている。


「はい。私から、少々お話をさせていただきます。ダーク・ホームの存在意義についてです。彼らは正義の名の下に行動しているとしていますが、所詮は悪魔です。悪魔は"悪"でしかないのです!」


一瞬にして、歓喜の声が上がる。


この様子だと、
可決されるのは明らかだ。


「彼らはローズ・ソウルを集め、破壊し、世界の均衡を破壊した上で悪魔たちの新たな世界を築こうとしているのです!そんな彼らを、野放しにできません!私は断言します!彼らは敵です!必ず我々を破滅させます!今こそ制裁を与える時です!」


会場全体が湧き上がる。


多数決をとらずとも結果は見えた。


ユリスは唇を噛みしめる。


「・・・・何も知らない人間がッ」


ユリスの瞳が赤く染まった。


今にも飛び出して殺しに行きそうなユリスを、
一本の腕が阻んだ。


ラードの手だ。


「・・・・はなしなさいラード!」


しかしラードは黙ったまま、ユリスを押さえつけ、
代わりにラード自身が立ち上がった。


そしてゆっくりと手を上げた。


「ちょ・・・・ラード?!」


会場にいる全員の視線がラードに集まった。


シン、と静まり返る。


『君、意見かな?』


「はい。ラー・・・・じゃなくて、アンリといいます。」


いつになく落ち着いたラードの声に、
ユリスはハラハラしながら見つめた。


「確かにダーク・ホームは悪魔の組織ですけど、決して貴方がいうような事は企んでいません。ダーク・ホームがローズ・ソウルを集める目的は、神の完全消滅です。」


会場が一気にざわめき出す。


「知ってますか?ローズ・ソウルは今にも封印が解けようとしています。神の力は想像以上に強大です。そんな力が篭ったローズ・ソウルがすべて揃わないまま封印が解けてしまえば、世界の均衡なんて一瞬にして崩れ去ります。」


『結局は神を復活させなければならないじゃないか!!』


そうだそうだ!と野次が飛ぶ。


しかし、ラードが怯む事はない。


「その通りです。しかも、我々が生きているこの"時間"は、"仮時間"と呼ばれています。本当の"時"は時天大帝国壊滅時から止まっているそうです。本来の"時"を取り戻すためにも、神を復活させるしかありません。ここまではフェイターとダーク・ホーム、どちらも同じ目的だと言えます。しかし、フェイターは神を復活させて、人類を、世界を滅ぼすつもりです!神を倒さなければ、我々は何度も同じ道を辿ります!ダーク・ホームは、神を倒したからといって世界を征服するなど考えていないはずです!世界政府はフェイターと手を組んだなんて思ってはいけない!我々は所詮フェイターの捨て駒なんだ!フェイターが我々とダーク・ホームを潰し合わせてる事に気づいていください!本当に、ダーク・ホームを攻撃すべきでしょうか!」


会場のざわめきが増した。


ラードは睨むようにモリンを見ると、
モリンの表情は怒りで真っ赤に染まっていた。


状況は変わったはず。


『では、決をとる』


先ほどまで野次を飛ばしていた連中も、
ラードの意見に賛同し始めたのだ。


「どうよユリス、かっこよかっただろ?」


「もう完璧!愛してる!」


しかし、喜びは束の間だった。


『多数決の結果、ダーク・ホームへの攻撃を決行する。』


「・・・・嘘でしょ」


「マジかよ・・・・」


目の前が真っ暗になる。


勝利は目前だったはず。


会議ホールにいた委員たちは、
何事も無かったかのように立ち去って行く。


その時


「残念でしたね。」


目の前に、モリン=クィーガがいた。


彼の表情は満足げで、ラードとユリスに油を注ぐ。


「まさかスペシャルマスターの2人がいらっしゃるとは。大胆ですね。」


気がつかれていたのか・・・・


「まぁ、これであなたたちの敗北も決まったも同然です。もし、戦いをどうしても避けたいのなら、白旗を振ってくだされば我々もそれなりに・・・・」


その瞬間、
モリンが会議ホールの反対側まで吹き飛んだ。


壁に激突し、
その場に倒れこむ。


ユリスとラード、2人の怒りが爆発したのだ。


ラードは銃、ユリスは薔薇のムチを取り出すと、
モリンに近付いた。


「なっ・・・・!君たちわかっているのか!?こんなことをして・・・・私を殺したところで何も得られないぞ!」


モリンは後ずさるが、
壁がそれを阻んだ。


「ぁあ?んなこたぁわかってる。」


「でもねぇ私たち、ちょっと我慢できないのよね」


そう言って、
モリンに武器を向ける。


だがその時、
会議ホールの非常口から、
警備員の集団がやってきた。


まるで仕掛けられたように。


『侵入者だ!捕まえろ!』


掛け声と共に、
ラードとユリスに向かって走ってくる。


2人は咄嗟に武器を警備員に向けたが、
すぐに武器を下ろした。


ここで攻撃を加えたら、
結局こいつ等と何も変わらないからだ。


「ラード・・・・今日のところは引きましょう。」


「悔しいけど、仕方ねぇよな。」


2人は地面を蹴り上げ、
高く飛び上がった。


「はっ、悪魔のくせして逃げるのか?!」


モリンの暴言が耳に入るが、
怒りを抑えて聞かないふりをする。


しかし、次の言葉で、
ラードの怒りが沸点を越える。


「下劣な種族が・・・・リオナ=ヴァンズマンのように見境無く攻撃してみたらどうだ!」


ラードは天井からぶら下がる照明に足をつけると、
再び武器を抜いてモリンに向けた。


「てめぇ・・・・今何て言った」


「ラード・・・!ダメよ!」


「黙ってろ。」


ラードの額に、
血管が浮かぶ。


怒りに満ち溢れたラードの姿に、モリンは狂ったように笑い声をあげた。


「ははは!聞こえなかったのかい?君たちの仲間のリオナ=ヴァンズマンは力に溺れた哀れな悪魔だ!仲間を平気で殺せるまさに悪魔の中の悪魔といったほうがい・・・」


その瞬間、
ラードの銃から黒々しい光弾が放たれた。


弾は見事にモリンの頭を撃ち抜き、
モリンの体はビクともしなくなった。


殺してしまった。


いけないとわかっていたのに。


それでも、ラードの怒りは収まることがない。


「ふざけんな・・・・ふざけんじゃねぇ!!」


肩を震わせ、
唇を噛みしめる。


「リオナはそんな奴じゃねぇ・・・!仲間を侮辱する奴は全員ぶっ殺す!!」


「ラード・・・・」


今にも銃を乱射し始めそうなラードを、
ユリスは後ろから抱きしめた。


「・・・リッちゃんはそんな子じゃないわよね。でも、ここで暴れちゃダメよ。」


「でも・・・!」


「リッちゃんはそんなこと望まないでしょ!しっかり考えなさい!!お願いだから!」


ユリスの切実な願いが胸に響く。


仕方なく、
ラードは武器を下ろした。


「帰ろう・・・・」


直ちに
マスターに知らせなければ。


「ええ・・・」


必要のない戦いの火蓋が、
切って落とされたことを・・・



















光妖大帝国

光廊


≪はぁなぁせぇぇえぇぇ!!≫


「うさちゃん!暴れないで!」


目が覚めたら、
ガキがいた。


オイラを人形みたいに扱う嫌なガキ!


誰なんだこいつ!


≪お前だれだ!≫


「ぼく?ぼくはチャキって言うんだ。これでもフェイターなんだっ!」


フェイター!?
こんなガキが!?


まあ、リオナと契約した時、
リオナもこれくらいだったけど。


それにしても面倒な事になった。


ダーク・ホームから連れ去られ、
まさかフェイターの人質になるなんて!


でも、ようやくフェイターの魂胆がわかってきた。


こいつらはオイラを使ってリオナをおびき寄せるつもりだ!!


それでリオナを神の器みたいなのにするとかなんとか!


よくわかんないけどリオナが危ないってことはよくわかった!


≪お前なんてオイラの力でぇぇ!ってあれ?力が入らないんだけど!!≫


「そうだよぉ。これ魔封石だからね!」


魔封石!?


初めて聞いた。


ってこれじゃあ逃げようがない!


「お散歩疲れたから部屋に戻ろっ!うさちゃん!」


≪うさちゃんじゃないし!B.B.様だーい!≫


それにしても変な建物だ。


窓の外を見れば、
下の方にすごーく小さく建物が見える。


この建物が浮いてるみたい・・・


はっ!これはまさに空中要塞なのだ!


ダーク・ホームとは真逆に全部真っ白。


眩しくて仕方が無い。


「お兄ちゃんただいまー!」


そう言ってチャキとかいうガキが部屋に入った。


部屋中に折り紙が広がってて、
汚いったらありゃしない!


『チャキ?おかえりなさい。』


え、お兄ちゃん?


仲間か?


今更だが、思わず構えてしまう。


けど、
目に映った人物に、
オイラの目ん玉が飛び出しそうになった。


≪リオナ!?リオナああああ!!≫


リオナがいる!


なんでか知らないけど、
リオナだ!


オイラ嬉しくってリオナに飛びついたんだ。


≪会いたかったのだああああ!!≫


しかし、
すぐに違和感に気がついた。


・・・・あれ?


目の色が・・・・黒い!


バッと身体を離すと、
なんだか違和感を感じる。


それに、なんだか目も吊り目じゃない。


むしろ垂れてる。


あれ?あれ!?


すると、リオナは困ったように口を開いた。


『あの・・・・ぼく、リオナじゃないよ?』


ぼ、ぼぼぼぼく!?


なんなんだコイツ!


リオナじゃない!リオナなのにリオナじゃない!気持ち悪い!


≪お前!誰!?≫


直球で聞いてしまった。


だって、わからなかったんだもん!


『ぼくは・・・・リオナの弟の』
「ウィキっていうんだよ〜♪」


チャキが話に割り込んでくる。


というか、


ていうか、


ウィキだって!?!?


≪なんで!?なんでなんで!死んだんじゃないの!?ほんとにウィキ!?≫


「アシュール兄が生き返らせてくれたんだよ!ねーウィキ!」


『うん・・・・』


なんでだ?


そのアシュールってやつ、
たしかムジカを殺した・・・・



あ、もしかして、
このウィキというやつを使ってリオナを・・・・!


≪だめなのだ!ウィキ!お前ダメ!≫


『え?』


あーダメだ。


なんていえばいいんだろう。


こんなとこにいちゃダメだって言いたいけど、
このフェイターのガキが邪魔なのだ!


というかリオナ・・・・!!


リオナが危ないのだああ!!!


なんとしてでも、
ウィキを連れて逃げなければ。


しかし、今は大人しくしているしかない。

ヘタに動けばウィキが危ないし。

B.B.は"逃げる"というワードを頭から追い出し、
今はただ"我慢"と言い聞かせた。

できた試しもないのに・・・

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あきゅろす。
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