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【完結】 Novel〜Lord's Soul〜
story01 逆の世界















真っ白い

















真っ白い

何もない部屋

















ここはどこ?

















出口もなければ入口もない

















あるのは"俺"と









一人の"少年"














キミは














目の前を楽しそうに走り回る

















キミは誰?

















キミは誰?


















するとキミはニコッと笑って答える


















「――――――――。―――――?―――――――――。」



















聴こえない。



















何にも聴こえない




















なぁ・・・なんて言ったの?




















もう一回・・・・言って?


















俺はキミの手をつかむ



















するとキミは消えてしまう


部屋も消えてしまう


まるで砂の城のように崩れていく


















そして残ったのは
























"俺"と"闇"だけ



























まぶしい



目を開けると、電球の光が見えた。

耳には騒がしいテレビの音。



リオナはクラクラする頭を抱えながらベッドから起き上がる。


部屋にはベッドが2つあり、机が1つとイスが2つ。

窓からは朝のきらきらした日差しが差し込み、部屋を明るく照らしている。



どうやらここはホテルかなにからしい。


窓の眺めからすると相当高いところにいるようだ。



見知らぬ部屋に
見知らぬ景色。

そして
見知らぬ男。


「よぉ少年。やっと起きたか。」

男は風呂から上がったばかりねようで、赤茶色の髪を濡らしている。


―・・・・この男は誰だ・・・?


リオナは男のキレイな黄色い瞳を見つめて記憶をたどる。


―あっ・・・・そうだ・・・・国が襲撃にあって・・・・この男に連れられて・・・・


考え込むリオナを見て、男はリオナの頭をクシャクシャっと撫でる。


「あんま無理すんなって。あれからまだ5日しかたってねぇんだからさ。」


「い・・・・5日!?!?」


リオナは驚き
ついているテレビに目をやる。


日付は12/29


そして5日たった今でも、ニュースは大魔帝国壊滅事件で持ちきりだ。


『昨日の警備連合共和国の捜査によると、大魔帝国内の生存者はいないとのことです。これで大魔帝国は事実上の壊滅ということになりましたが・・・・』


リオナは画面に映る大魔帝国の崩れ去った光景を、
ただぼんやりと見つめていた。

ただ、
今は何もかもがこんがらがって何も考えられない。


男はそれを察して、すぐにチャンネルを変える。

テレビは先ほどとは打って変わり、陽気な音を流し始めた。

「お子様にはこーゆー番組が1番だよ。さて、お前も着替えろ。朝飯食いに行くぞー。」

「・・・・・・・・・・うん。」


ベッドの横には真新しい長袖の黒のシャツに長ズボンが丁寧に畳んで置かれていた。

キレイすぎて着るのがもったいない。

そうリオナは思った。

ボケェと服を見つめるリオナに対して、男は不思議そうに首を傾げる。

「お前・・・・もしかして1人じゃ服着れないのか?」

「・・・・はっ!?そんなわけないじゃん!!」

リオナは男をキッとにらむとさっさと着替え始める。

「あはは。だよなぁー驚かせんなって。ほらさっさと行くぞ?俺ぁ腹減って死にそうだ。」

そう言ってたんたんと歩いていく男の後に、リオナは慌ててついていった。




二人は部屋を出て、一階まで下がる。


リオナは建物内の綺麗な装飾品に思わず見とれてしまった。


一階のフロントを抜けて二人は街へ繰り出した。


外へ出た瞬間、ものすごい騒音でリオナは手で耳をふさいだ。


目の前を大量の車が行き来している。


空には大きな飛行機が飛び交う。


すべてが初めての光景で、
リオナは目を輝かせていた。


「この国はな、世界でたった五つしかない、唯一能力を持たない国なんだ。」

「・・・・・?」

「ほら、お前の国の住人たちは皆魔法が使えるだろ?でもこの国の住人たちは何の能力も持たない、ただの人間なんだ。」

「へぇ・・・・・。」

「だから他の国に劣らないように、機械やら兵器やらを作ってるんだってさ。結果的にこんな風に騒音で溢れちゃってるわけ。」

リオナは街を歩く人々に目をやる。

自分とは違う人間たち。

見た目じゃ大差ないのに。

彼らはどういう生活を送ってるんだろう。

何を思っているんだろう。


「おーい。ガキンチョ?大丈夫か?」

男はボケェと突っ立つリオナの目の前で手をひらひらさせる。

「・・・・・大丈夫。というか、ガキンチョじゃないし。」

「ははーガキンチョって"ガキンチョ"言うと怒るんだよなぁー。あはは単純。」

「・・・・・・・。」

男は再び歩き出す。

すると振り返ってリオナを見た。

「なんて言うんだ?」

「・・・・・は」

リオナはさっきから掴み所のない男に呆れた目を向ける。

「だから名前だって。」

「・・・・・・。オッサンには関係ないし。」


「はっ、オッサンねぇー。こうみえて俺22歳なんだけどなー。」

リオナに暴言を吐かれながらも男は怒る様子もなく、ただ歩みを進めていた。


―・・・・なんだコイツ。


リオナは怪訝そうな顔をしながらついて行った。














二人は"ファミレス コッコ"
とかかれた店に入る。

中は朝早いせいかポツポツとしか人がいない。


二人はテーブルに座り、男はリオナにメニューを見せる。


「ほれ。好きなの食べな?」

リオナはメニューに目を通した。

しかし、今まで野菜主食で生活してきたリオナにとって、初めて見る料理名ばかりで少し戸惑う。

「・・・・・・」

「・・・・?お前何が好きなの?」

「・・・・野菜?」

「まじかよ・・・ってそんなんじゃだめだっての!」

そういってリオナからメニューを取り、ウェイターを呼ぶ。

「オムライス大盛2つ。」

「・・・・おむらいす?」

「俺の大好物だ。これ食えば男らしくなるぞぉ―?」

「ふぅん・・・・・・。」


男は目の前におかれた水を一気に飲み干して、
一旦間をおいてから話し出す。

「んで。どーしたい、これから?お前の好きなようにさせてやるよ?」

「・・・・・・・。」

「親戚とかはいんのか?」

「しんせき・・・・・・・?」

「いないなら自分が暮らしたいって思う国があるならそこに連れてってやるよ。俺のオススメは"花の国"だなー。フラワー・カウンティーっていうんだけどよ。あそこはキレイだし癒されるぞ〜?」


男は一人で楽しそうに話し続ける。

しかし、それをリオナの冷たい声がさえぎった。

「ねぇ。・・・・・あんた何者?」

男は黙ってリオナの話を聞く。

「・・・俺を抱えて大魔帝国を出るとき・・・・・変な力使ってたよね・・?」


リオナはあの時の光景を思い浮かべる。







燃え盛る火を避けながら自分を抱えて走り続ける男。

しかし男の周りを白いコートを羽織った連中、光妖大帝国の人間が取り囲む。


すると男はいつの間にか手にナイフを何本も持ち、一瞬のうちに敵を斬りつけ倒してしまった。


その時の男は黒い煙のようなものに包まれていて、目の色は赤く染まっていたのをリオナはハッキリと覚えていた。








その話をすると、男は陽気な笑い声をあげた。

「あははー見られてたんだ。まぁいいけど。」

男はシャツの袖をめくり、腕を見せる。

そこには、黒く、サインのようなものが書かれていた。

「俺は"ダークホーム"っていう闇組織のメンバーなんだ。」

「・・・・・闇組織?」

「表にはあんま公表されていない、まぁ国のお偉いさん方しか知らないってやつかな。俺たちは悪魔と契約をしてるから普通の人間よりはるかに強いぜ?だから色んな裏の仕事をしてるってわけ。」

「・・・・裏の仕事って?」

「それ以上は教えられないなー。話せるのはここまで。あとはヒミツ。話ずれたけど、これからどうしたいかは好きに決めて?なるべくなら今日中に決めてもらいたいんだけど。」

「・・・・・・うん。」


話しているうちにオムライスが運ばれてきた。

ふわっとした黄色い卵と真っ赤なケチャップの匂いが食欲をさそった。

初めて見る料理に不安を感じながらも、リオナはオムライスを口に運ぶ。

「どうよ?うまいっしょ?」

「・・・・・おいしい。」

初めてだけれど、この世で一番おいしいものに思えた。


しかし半分まで食べると、リオナはスプーンを置いてしまう。

「お前そんだけしか食べないの?」

「・・・・うん。」

なんて言ったって
今まで野菜主食の上に一日二食の生活。

このオムライスはリオナにとっては一日分だ。


「ダメだぁぁぁ!」

今までたんたんとしてきた男が急に立ち上がり、力を込めて話し始める。

「いいか少年!男たるもの食事を怠ってはだめなんだ!しかもお前今いくつだ!?」

「ろ・・・・・6歳」

「6歳だと!?さらにダメだ!いいか!?強くなりたいならオムライスをたいらげろ!とにかくオムライスを食え!腹が減ったらオムライス!苦しいときはオムライス!どんなときでもオムライス!そうすればあの子のハートをゲットするのも夢じゃない!!ってね。あはは」

あの子って誰?
と心に思いながらも仕方なくスプーンを手に取る。


しかし頭ではこれからのことを考え始めた。

そしてもう一人の自分が問いかけてくる。







どこに行きたい?








どこにも行きたくない。







何がしたい?









何もしたくない。









じゃあなんで生きてるの?











あの男に助けられたから。












死にたい?












二人は店を出て、
再び通りに戻る。


「おい。お前ホテルまでの帰り道覚えてるか?」

「・・・うん」

「俺ちょっとよるとこあるから先帰ってて。寄り道すんじゃねーぞ。」

そう言ってリオナの頭をなで、
手を振りながら人ごみに消えた。


リオナは元きた道を戻っていく。


すると再び、自問自答が始まった。










俺が帰るべき道はこっちだっけ?









ううん、違うよ。













このまま行けば何がある?

















あるのは虚無の世界だけ。
















じゃあどうすればいいの?


















こっちに行けばいいんだよ。











リオナは向きを変え、再び歩き出す。


意志ではなく、ただ本能のままに。







気がづいたら、あんなにいた人が一人もいない。

周りは高い壁がリオナを囲んでいる。


―・・・何してんだ俺・・・戻らなきゃ・・


我に返ったリオナはとにかく元の通りを目指し、歩きだそうとした。


すると目の前を何かがかすめる。


しかし目の前には何もない。


―・・・・?気のせいか・・・。


そう思って歩みを進めようとすると、
突然ものすごい力で体をなぎ倒された。


そして仰向けの状態のリオナに、何かが覆い被さってきた。


それは人間のようで人間でない。

目は黄色く妖しく光り、体全体は黒々しく、息をあらげる。
まるで人型をした怪物だ。


怪物は鋭い爪をした手をリオナの首に絡め、思いっきり力を入れた。



リオナは目を閉じる。







あぁ・・・・・この感覚だ・・・・・・俺が求めているもの・・・・・・・・・・・・・・・・・・・俺もやっと・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・













すると突然
怪物が悲鳴を上げ、もがきはじめた。


目を開けば怪物の体にはナイフが何本も突き刺さっている。


そしてそのナイフは黒々しい煙を放ち、怪物の体を引き裂いていく。


そのまま怪物は消滅し、跡形もなく消え去った。







「・・・・・たく・・・・寄り道すんなって言っただろ?」

声のする方へ顔を向ければ
さっき別れたばかりの男が立っていた。


男は困ったように頭をかいている。


「こいつはなぁー"化神"って言うんだ。ローズソウルの封印から漏れ出しちまった神の力が、心の弱い人間に憑依する。それが"化神"。化神となった人間は無差別に人を襲う。言葉も通じない。だから気をつけろ。」


リオナは立ち上がり、冷たい目で男を見つめた。


「・・・・・・・何で助けたの・・・?」

「何でってお前が死にそうだったから。」

「俺なんか放っておけよ。」

「・・・・・・。」

「俺は行きたいとこなんてない。だからもう」

「放っておいたらお前死ぬじゃん。」

「・・・・・・・・・!」

男は屈んでリオナの顔を手で包み込んで、しっかりと目を見つめる。

「・・・・お前まだ6歳だろ?人生まだ始まったばっかじゃねぇか。家族を失ったからってな、人生終わったとか思うなよ。」

「・・・・・・・・・・。」

「お前のオヤジはお前に生きて欲しいから、知らない俺にでもお前を預けたんだ。お前はその思いを踏みにじるのか?・・・・・家族に会いたい気持ちは分かるが、それでお前が死んで家族が喜ぶと思うか?喜ばねぇだろ。だから死のうとか思うもんじゃねぇ。わかったか?」

「・・・・・・・・・うん。」

男はよしっと言ってリオナの頭をなでる。


「まぁ今は何か目的を持て。そうすればやる気になるって話。」

リオナは下にうつむく。



―・・・・・目的か・・・。



今自分がやるべきこと





すると自然に頭に浮かぶのは、クリスマスに起こった事件


なにが起こったか今は思い出したくないけれど・・・


忘れてはいけない・・・。


まだ敵は世界にいることを。




そう、今自分がやるべきことは・・・・・





リオナは歩き出した男の手をつかむ。


「・・・・・・?どうし」

「俺を強くしてくれ!」

「は?」

「強くなりたいんだ!もっともっと!」

「・・・・・・・・・。」

「強くなって・・・・あんな奴らを倒すんだ!」

「・・・・・・それで?」



「俺を・・・・ダークホームに入れてくれ!」

リオナは必死に男に訴える。

男は今まで無口だったリオナの口からまさかそんな言葉がでると思わず、驚きながらも困った表情を浮かべていた。


「あんたはすごい強い。俺もそうなりたいんだ!」

男をつかむリオナの手に力がこもる。


男はすがりつくリオナの目を見つめた。

その目は真っ直ぐで、強い。


「・・・・・・。・・・・・・・・・・辛いぞ?」

「何でもやるから!辛くても厳しくても何でもいい!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・闇組織だぜ?」

「何だっていい!」


男はリオナと向き合う。
そして今までとは違う鋭い視線を向ける。

「この世界に一歩でも足を踏み入れたら一生でられない。でる方法はただ一つ。死ぬしかない。だから俺たちに待っているのは孤独な死だけだ。それでもお前はくるのか。」


リオナは目を閉じ心沈め、
そして再び目を開く。

その目はさっきよりも強さを増していた。

「俺はその世界で生きるよ。」


「・・・・・・そうか。」


そう言って男は通りに向けて歩き出す。

表情はいつものように笑っていた。

「甘えは禁物、泣き言言ったらぶっ飛ばす。わかったかくそガキ。」

リオナは走って男の前にでた。

そしてくるっと振り返って
以前のようにいたずらっぽく笑った。

「"ガキンチョ"じゃない。リオナだよおっさん。」

男はフッと笑ってリオナの頭をぽんとたたく。

「リオナ、俺は"おっさん"じゃない。22歳の色男マーシャ様だ。」


二人は笑いあいながら、仲良く歩き出す。




「俺・・・・夕飯オムライスがいいな。」

「そっかそっか。おまえもようやく食べるようになったかぁ。よぉし。今晩は俺の手作りだぁー。」

「・・・・・やる気ある?」

「あっそれよく言われる。」






日はすでに真上をすぎ、
二人はやっとホテルへと戻っていった。


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