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【完結】 Novel〜Lord's Soul〜
story97 憂鬱




親愛なるマーシャへ。


俺は今、初めてマーシャの大切さに気が付いたみたいだ。


マーシャがいないこの任務を、
俺は乗り越えられるかな。




「・・・はぁ。」


リオナは空に向かって大きなため息をはいた。


任務にでてからこの3日、
ストレスとストレスとストレスでいっぱいだ。


原因はこの2人。


クラッピーとナツだ。


もちろんクラッピーは想定内。


コイツがうるさくてわがままで泣き虫なのは今に始まったことじゃない。


問題はナツなんだ。


はじめは確かに気が合うかもとか仲良くなれそうとか色々思ったけれど、
3日も一緒にいると、だんだん本性が見えてくるもので。


たまに睨むようにこっちを見ていたり、
なにかと舌打ちをしたり、

なんというか・・・
俺とクラッピーを一歩離れた所から"監視"しているような。


とにかく不快。


「あーリオナまた眉間にシワが寄ってるッチョ!!つんつん♪」


リオナが考え事をしていると
クラッピーがいきなり顔をのぞかせリオナの眉間をつついてきた。


「・・・ばか。触るな。」


「リオナは冷たいッチョ。ねぇ〜ナッツン!」


ナッツンことナツは、嫌そうな顔をしながら[お前にだけな。]とからかうように呟いた。


こうみれば至って平和なんだが・・・。


・・・俺の気にしすぎか。


大体
俺のことを狙ってたヤツなんだから疑いたくもなる。


こういう時にマーシャがいれば・・・
きっと「気にしない気にしない」とか言って呑気な気分にさせてくれるのに。


って考えても仕方ない。


とリオナは自分の頬を一発叩いた。


[おいリオナ]


すると今度は悩みの渦中のナツがリオナの顔をのぞいてきた。


突然のことでリオナはビクッと体を跳ねさせた。


「ど・・・どうした?」


[いや、お前こそどうしたかなって。ずっと考え事してた気がしてさ。ボーッとしちゃって大丈夫かよ。]


心配、と言うよりも、訝しげな表情を浮かべているナツ。


「・・・大丈夫。たぶん久々の任務で体が鈍ってるんだと思う。」


[そ。ならいいけど。]


そう言って
少しリオナを見据えてからペースを落としてまた後ろへ行った。


・・・あ、ほら。
また睨んだ。


元から目付きが悪いのは知ってるけど、そうじゃない。


なんだか"殺気"を感じる。


だいたいおかしいと思ったんだ。


今までナツは俺の命を狙っていたのに
そう簡単に味方になるわけがない。


たぶんビットウィックスに説得されてついてきたんだろう。


俺が裏切らないように、ね。


「・・・信用されてないな。」


ショックというか、ムカつくというか。


まぁ苛立ちが8割か。


そんなことを考えていたら
遠くの方に何かが見えてきた。


緑色の塊・・・森だろうか。


おそらく
あそこが目的地だ。


「・・クラッピー、あそこ。見える?」


クラッピーはリオナの指差す方をじっと見る。


「う〜ん、う〜ん、あ!見えたッチョ〜!」

とたん嬉しそうに目を輝かせた。


ピョンピョン跳ねながらどんどん前に行く。


「うれしいッチョうれしいッチョ〜♪」


「・・待て、クラッピー。」


「なーに?」


今にも走りだしそうなクラッピーの腕をつかみ
引き寄せる。


「絶ッッッッッッ対に走るなよ・・・。俺より先に行ったら絶交だからな・・・」


不敵な笑みを浮かべながら
念を押すようにリオナは低くつぶやく。


「はい・・・ッチョ。」


「わかればいい。」


可哀想だがこれもクラッピーのため。


未知の土地にノコノコ入って行って何かあってからでは遅い。


リオナはしょんぼりしたクラッピーの手を引きながら目的地へむかう。


近づいていけば
なにやら入り口のようなものが見えた。


入り口には木でできた標識があり何かが書かれている。


ナツは近づいて
文字をじっと見る。


[森羅大帝国領地―神に捧ぐ・・・だと?変だな。]


眉を寄せ目を細める。


[森羅大帝国って神を信仰していたか?]


リオナも近づいてよくみてみる。


確かにナツの言う通りの事が書かれている。


「いや・・おかしいだろ。帝国協定を破ることになる。」


帝国協定は神の封印を誓うものもある。


なのにこのようなことを書き込んでいいのだろうか。


[まぁ・・誰かの悪戯か、または本当に信仰してるかだな。]


あっさりとしたナツのだした答えに、
リオナは少し眉を寄せる。


「・・・そんなんでいいのか?」


[だってこんなところでウジウジ考えても仕方ないだろ?どっちにせよローズ・ソウルは回収させてもらう。そうだろ?]


「え・・・まぁ・・・そうなんだけど。」


[じゃあグダグダ考えてねぇでさっさと行こうぜ。]


ナツはそう言い切ると
さっさと村の中に入っていってしまった。


その後ろ姿をリオナは不満そうに見つめた。


「・・・ウジウジグダグダ考えんな、だってさ。俺そんなにウジウジグダグダしてないし。」


すると後ろからクラッピーがまわり込んできて。


「・・・なんだよ。」


「顔、怖いッチョよぉ?」


そう言ってリオナの両頬を引っ張ったりしだす。


「ぐーにぐーに♪」


「・・・。・・・ハニスンハヨ。」


゙何すんだよ゙と言おうとしたが間抜けな感じになってしまった。


「キャハハ!!リオナ可愛いッチョね♪」


「・・・うるさい。あーあ、またナツに言われるぞ。[グダグダしてっとおいてくぞ]ってね。なんかひっかかるよなぁ。」


「うーん。ナッツンって何考えてるかわからないッチョね。なんていうかー、上から目線ッ♪」


「上から目線って・・・あー偉そうってことね。」


クラッピーも少しは感じていたのだろうか。


ナツの"視線"を。


「やっぱナッツンはボクちんのことが好きッチョね!!」


「・・・は?」


いや・・感じていなかった。


「はぁ・・・・まぁいいや。早く行こ。」


リオナとクラッピーも村へ足を踏み入れた。


村の始まりは森。


というか村全体が森でできていて、
恐らくその森の中心に人々の生活の場があるのだろう。


「なんかキレーな森ッチョね♪」


確かに森自体はとても綺麗だ。


なんというか
葉の一枚一枚が緑じゃなく青い色をしていて、
神秘的な雰囲気をかもち出している。


いかにもクラッピーが好きそうな森だ。


けれどクラッピーはあまりいい顔はしていない。


さっきまで飛んで喜んでいたのに。


「・・どうしたんだよクラッピー。」


リオナは後ろからクラッピーの首に腕を回す。


「なんかこの森、森じゃないッチョ!」


こいつはまた何を言っているんだとリオナは珍獣を見るような目をする。


語意力が無いというか無知というか。


「その目はなんだッチョかリオナ。」


むすっと頬を膨らませて顔を近付けてくる。


「・・何でもないよ。近い近い。」


「とにかく森じゃないッチョ!!信じてッチョ〜!!」


地団駄を踏んで必死になるクラッピーが可笑しくて
笑いながら無視する。


「もぉ〜リオナぁ〜!!ねぇナッツンはわかってくれるッチョ!?」


すると前を歩いていたナツが顔だけ振り返り


[わかるよ。お前の言いたいこと。]


と小さく呟いた。


その言葉にリオナは口をポカンとあけてしまう。


「・・・なんで?」


「ほらほら!やっぱナッツンはボクちんの味方ッチョ〜!!!」


[別に味方とかじゃねぇし。ただ、この森は自然にできたものじゃないってことは確かだ。森羅の奴らは自然を操る力を持ってる。たぶんその力を使ってこの森を作ったんだ。]


なるほど・・・そういうことか。


最初からクラッピーもそう言ってくれればよかったのに。


でもまぁ・・・聞かなかった俺も悪い。


「・・・ごめんクラッピー。」


素直に謝ったのに
クラッピーは目を丸くしてリオナを見る。


しかもなぜか顔を真っ赤にさせて。


「べ・・・べべべ別に気にしてないッチョ!!!!さ、は・・早く行くッチョよー!!」


そう言って1人先に行ってしまった。


「・・・あ、おい待てクラッピー!なんなんだアイツは・・・」


訳が分からない。


リオナは困ったようにため息をつくと、
今度はナツがそんなリオナをじっと見ていた。


「・・・なに?」


[リオナさ、お前ホントにわかんないのか?]


一体何の話だ。


「え・・何が?」


[だから・・・、いや、やっぱなんでもない。きっとアッチも気付いてないだろうし。]


「は?え?ちょっとなに?気になるんだけど。」


こんな中途半端に言われて・・・


しかも突然なんなんだ。


一体誰の何のことを言っているんだ・・?


[悪い、気にすんな。まぁ・・・リオナも鈍感ってことだな。]


「なっ・・・」


言い返そうにも言い返せない。


ナツはそんなリオナを見てクスクス笑いながらクラッピーの後に続いた。


「なんなんだよもー・・・」


わけのわからない感情に苛まれながらも
リオナは重い足を動かした。


しばらく歩いていくと
なにやら人の声が聞こえてきた。


だんだんと村の中心に近づいてきているようだ。


[確かフリットとかいうジーさんが例の本をもってるんだよな。どうやって捜し出そうか。]


「・・そうだな。とりあえず親戚を装って村の人に聞くのが一番か。家さえわかればあとは脅すなり暴れるなりやりたい放題だ。」


[へぇ・・・お前って案外ワルだな。]


ナツがにやりと笑う。


「・・・そりゃあ、B.B.を助けたいからね。そのためならなんでもするさ。」


ふと頭にモリン=クィーガの顔が浮かぶ。


何度思い出しても嫌な顔だ。


[うまくいけばいいけどな・・・なんだか嫌な感じがするぜこの村。]


それはお前もだ。と言えたらどれだけ清々しいか!


とリオナは心で叫ぶ。


しばらくすると森が開け
家が見えてきた。


人もちらほら見える。


どう見ても普通の村だ。


「なんか大丈夫っぽいッチョね。」


「・・・そうだな。」


普通に子供が遊び
女性たちが楽しそうに道で会話をしている。


どこにでもある光景だ。


[全員で聞きに行くのはやめよう。一人のほうが疑われにくいだろ。]


「いい考えッチョ!!じゃあボクちんが」


「お前は駄目だ。」
[お前はダメだ。]


「・・・・。」


ちゃんと意志疎通ができて
なおかつ愛想がよくなければ。


そう考えるとナツもダメだ。


「・・・やっぱ俺が行くしかないか。」


[笑顔振りまいてこい。]


リオナは自分の頬を一発たたき気を引き締めて一歩踏み出す。


とりあえずこういうときはおしゃべりそうなおばさんを探すのが一番。


ちょうど向こうでべちゃくちゃ話している者がいる。


リオナは顔を気持ち悪いくらいの笑顔で固めた。


「あの、こんにちは。」


『あらー!旅の方?こんな村にめずらしーわね!』


おしゃべりおばさんは予想通り口が軽そうだ。


「旅というか、叔父を尋ねてきたんですが・・・叔父といってもだいぶ遠い親戚なんです・・・」


『叔父さん名前はなんていうのかしら?なんせ狭い村だからねぇ、大体の人は分かるわよ!』


よしきた。


リオナはさらに爽やかな笑顔を振りまきながら
いつも以上にオーバーアクションをする。


「フリットっていう叔父なんですが、わかりますかね?」


『フリットさん!?あらあらあの人にこんな美男子の甥っ子がいたなんてねぇ!!』


「ご存知ですか?」


『ええもちろん!!ついさっきここを通ったばかりなのよ?フリットさんどこに行ったのかしらねぇ。呼んできましょうか!』


それは困る。


なるべく鉢合わせないで¨本¨を奪いたい。


「大丈夫ですよ。家だけ教えてくださればそこで待ってますので。」


『そお?なんだか悪いわねぇ!フリットさんの家ならここを真っ直ぐ行った場所を右に曲がったところよ?真っ赤な家だからすぐにわかると思うわ。』


「わかりました。ありがとうございます。」


最後に最高の笑顔をさらし、
リオナはナツとクラッピーのところへ戻った。


「・・・あー疲れた。」


ナツたちのところまで戻ると
先ほどまでの笑顔を一気に崩し
いつもの無表情に戻る。


[最高のスマイルだったぜ?]


ナツはニヤニヤしながらリオナに親指をたてる。


「・・・そりゃどうも。」


なんだか一生分の笑顔を使いきった気がする。


自分もあんなに笑えるんだと少し関心。


「リオナもう1回笑ってッチョ!!」


「・・んでだよ。やーだ。」


「えー!!ケチィ。」


何かと引っ付いてくるクラッピーを引き剥がす。


[家はわかったか?]


「・・もちろん。コッチだ。」


なるべく人目につかないほうがいいだろう。


リオナたちは森を通ってフリットの家に向かう。


おしゃべりおばさんの言っていた通り
村の隅の方に真っ赤な家があった。


家の前まで行って中を確認する。


「誰もいないッチョよ?」


[それでいいんだよ。でもどうやって入るよ?窓突き破るか?]


ナツの顔が輝いている。


この破壊魔め。


「・・ガラスの割れた音でもきっと村の人たちに気付かれる。ここは・・・」


リオナは鍵穴に手をかざし
魔力を流し込む。


しばらくすると魔力は真っ白な固形物になり、鍵の形をかたどった。


[さすが魔法使い。やるやるやるー]


「・・・でも大体の鍵穴は魔術防止がかかっててできないんだけどね。」


鍵をひねってカチャリとロックを外し、
中へ入る。


扉を閉め、ついでに鍵穴の形も変えてしまう。


これで万が一フリットが帰ってきても少しは時間を稼げるだろう。


「・・よし。探そう。クラッピーわかってるか?<名もなき物語>っていう本だからな。」


「オッケーッチョ!探すッチョよ〜!!!!!」


ざっと部屋を見渡すが
本棚という本棚はない。


「・・2階はないのか?」


[見た感じ無いみたいだ。しかもここにベッドがあるからきっとこの一室だけだ。]


部屋はなんだか殺伐としている。


必要最低限の物しか置かれていないような。


「じゃあ俺はあの棚から・・・ってクラッピー・・・」


床に目を落とせば
クラッピーが這いつくばっていて、床板を一枚一枚剥がしている。


「チョッチョッチョッチョッチョッチョッチョ♪」


「・・・何してんの。」


「え?床を探してるッチョよ〜。ボクちんが隠すなら床だッチョ♪」


「・・あーはいはい。がんばってね。」


「うん!!頑張るッチョ!!」


きっと何を言っても聞かないだろう。


それになんだか頑張ってるみたいだし・・・・放っておくか。


リオナも棚をあけ
本を探す。


棚の中には気持ち悪いほどのサバイバルナイフが入っていた。


一本一本を大切に布でくるんである。


年寄りのわりに案外活発なのかもしれない。


[なぁリオナ。フリットって・・・・ホントにじーさんなんだよな?]


ベッドをいじっていたナツが何やら訝しげな表情を向けてきた。


「そうらしいけど・・なんで?」


[これ見ろよ。]


ナツはリオナに三冊の雑誌を投げてよこした。


それを受け取り
中を見れば・・・


「なっ・・・・・・!!!!」


リオナは顔を真っ赤にして
勢い良く雑誌を閉じる。


そんなリオナを見て
ナツはニヤニヤしながらさらに雑誌を投げてきた。


「こ・・・こんなものよこすなばか!!」


ナツが投げてきたのはいわゆるエロ本。


[リオナもまだまだだなぁ。エロ本読まないのか?]


「読むかそんなもの・・!!!」


[じゃあ何をオカズにしてるわけ?]


「オカズなんてないわッ!!!」


[え?もしかしてお前オナッて・・・]
「ばかばかばかばかそんなこと口に出すなぁ!!!!!」


顔がカァッとして
リオナは隠すように棚をあさる。


「えーリオナとナッツン何してるッチョか!?ボクちんも見たいッチョ!!」


今度はクラッピーが興味を示しだした。


リオナは慌てて雑誌を後ろにやる。


「・・ダメだ!!クラッピーにはまだ早い!!」


「仲間外れッチョかぁ〜!?ひどいッチョ!!!」


[いいじゃんリオナ。コイツだって男だぜ?こいよクラッピー。]


「・・・あーもー、勝手にしろよ。」


というか探せよ!
と思うが、そーゆー物に興味を示さない自分は異常なのだろうか。


クラッピーはアレを見てどう思うのかな。


とリオナはチラッとクラッピーを見る。


けれどクラッピーの反応は普通ではなく。


「なんでこの女の子たちは裸ッチョか??すごく寒そうッチョねぇ!」


まだまだガキでよかった・・・


リオナはホッと肩を撫で下ろす。


「あっそうだッチョリオナ!!本見つけたッチョ♪」
「・・・なんでそれを早く言わないんだよ!!!」


こいつの頭は好奇心重視なのか!?


というかホントに床にあったとは・・・


「・・・見せろ。」
「はいッチョ。」
「エロ本はいらねぇ!!そっちをよこせ!!!」
「痛いッチョ!!そんな怒らないでッチョ。」


手渡された本はかなり分厚い。


題名は確かに<名もなき物語>。


けれど中を見てみれば・・


「なにも・・・・書いてない。」


全ページ白紙。


まさかダミーとか?


[それ絶対ダミーだろ。]


いつの間にか横にいたナツも同じ事を呟く。


「じゃあ本物はどこに・・・」


その時だった。


バーンッ・・・・!!!


鼓膜が破れそうなくらい巨大な音がした。


リオナ達は咄嗟に後ろを振り返る。


するとさっきまであった玄関扉は家の壁ごと無くなっていて、煙が上がっている。


何があったのかと三人が呆然と見つめていると
外から誰かが入ってきた。


入ってきたのは背の高い20代くらいの男。


『よおよおよお我が甥っ子たちよ。いい子にしてたかぁ?』


頭の半分は黄緑色、半分は黄色といった奇妙な髪型に、表情がわからない巨大なサングラス。


服装も派手でクラッピーに似ている。


そして両手にあるのは
サバイバルナイフ。


よくみればその男の後ろにはさっきのおしゃべりおばさんがニヤリと笑いながらコッチを見ていた。


まさか・・・


リオナはごくりと唾を飲みこむ。


『はじめましてだなぁ甥っ子たち。俺がフリットだ。』


リオナは目を丸くする。


どういうことだ。


これは誰の罠なのか。


ナツか?


でもナツも驚いた顔をしている。


ってことはビットウィックスか・・・!?


フリットと名乗る男はクルクルとサバイバルナイフを指で回しながら、こっちに近づいてくる。


『人んちに勝手に上がり込みやがって。まぁよくも荒らしてくれたなぁ?』


[あんた、ホントにフリットか?]


しかしナツは怯える様子もなく食いかかる。


『俺以外誰がいるってんだ。』


[ジジィじゃねーのかよ・・・]


ナツは聞いてないぞと言わんばかりの不満顔をリオナに向ける。


『あーその本は返してもらうぜ?大事な本なもんでね。』


フリットはサバイバルナイフの先でリオナの手にある本を指す。


「・・・・」


とりあえずこの<名もなき物語>はコッチの手中にある。


逃げてしまえばコッチの物だ。


リオナはナツに合図を送る。


その瞬間
ナツは真横の壁を吹き飛ばし
外へ飛びだした。


それに続いてリオナもクラッピーの手を引きながら飛び出す。


[森に行って巻くぞ!!]


3人は村を駆け抜けてもりに向かう。


「ははははやいッチョー!!!」


「・・・我慢しろクラッピー!!」


気が付けば村の住人すべてがこちらに襲い掛かってきている。


[こいつらマジで一般人かよッ!!]


村人をなぎ倒しながらナツは舌打ちをする。


この村はおかしい。


まるで仕組まれていたかのようだ。


罠だということには間違いない。


でも一体誰がしかけたものなのか。


「・・・クラッピーお前こいつらの時間止められないのか!?」


「でででできるッチョ!!でも」


「・・・頼むからやってくれ!!」


全力で走っても追い付かれそうだ。


「わわわわかったッチョ・・・!!!」


クラッピーは目を瞑り
パンッと手をたたいた。


その瞬間
村中に金色の光が広がる。


そしてすぐに村人達の動きがピタリと止まった。


リオナとナツは疲れと安心でその場に座り込む。


[なんだよこの展開。俺聞いてないぞ!?]


ナツは舌打ちをして近くにいた村人の足を蹴る。


「・・・やめとけナツ。まぁでもこれで逃げられるはず・・・・ってどうしたクラッピー?」


安堵の息をもらす二人の横で
なぜかクラッピーだけ息が荒い。


「ぁのッチョね・・・」


何か言いたいのかもじもじしている。


「・・・なんだよ早く言え。」


「あんまり・・・もたないッチョ。これ。」


そう言って村人たちを指差す。


よくみればだんだんと村人たちが動きだして・・・


「・・・やばい!!!」


リオナたちは再び走りだす。


同時に村人たちも。


「ごめんッチョリオナぁぁ!!!ごめんッチョ〜!!あんな大勢はやったことなかったッチョ〜!!!」


「いいからとにかく走れ・・・!!!」


「でも・・うぎゃあ!!!」


クラッピーの悲鳴がした。


横を見ればさっきまでいたクラッピーの姿が無い。


リオナとナツは慌てて振り返る。


「な・・・・クラッピー!!!」


最悪な事態だ・・・・


クラッピーはフリットに捕まってしまっていた。


いつの間に追い付いたのだろうか。


明らかに
強い。


リオナの額に嫌な汗が流れ落ちる。


『俺たちを舐めてもらっちゃあ困るよ甥っ子。ここをどこだと思ってる?』


「はな・・・はなしてッチョ!!」


『黙れ』


フリットはじたばた暴れるクラッピーの首にサバイバルナイフをあてがう。


『聞いて驚け見て喚け!!ここは森羅大帝国最強戦闘集団軍事基地だ!!泣く子も黙る鬼隊長とは俺のことよ!!!』


フリットの笑い声が響き渡る。


うそだろ・・・


リオナは唇をかみしめる。


誰の罠かなんて今はもうどうでもいい。


これはもう


ただのお使いじゃすまないみたいだ。


マーシャ





生きて帰れるのかな。




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あきゅろす。
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