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【完結】 Novel〜Lord's Soul〜
story78 光の使者




光妖大帝国


神の墓



静けさに満ちた部屋の中央には
だんだんと封印が解けかけているローズ・ソウルが2つ。


それを囲むように巨大な円卓があり
さらに回りにはフェイターたちが集まっていた。


人数は7人。


今までフェイターは13人いたが
ダーク・ホームのギリギリの戦力のせいで徐々に減りつつある。


もう1人は只今ダーク・ホームに潜入中。


"光の野獣"と呼ばれるヒュウだ。

かれこれ15年以上もダーク・ホームにいる。


「おい!!茶はないのか?」


真っ赤な髪をかきむしるのはフェイター1の暴れん坊、"光の弾丸"ランダー。


20歳の若き期待のエースで頼りになる兄貴分。


だが時々身勝手な発言も多々。


「ちょっとランダー!!アナタ少し場の空気をよんでくださらない!?」


この女性は"光の蝶"エルミナ。


かつてはフェイターにナタリアがいたが
今ではたった一人の女性となったことを悲しんでいる。


28歳という大人の美貌を振りまきながら
誰よりも神に忠誠を誓っている。


「自分もなんか食べたいッスー。なんか食べもんないッスカ?」


両手に肉を持ってモグモグと食べ続けているのは
"光の鉄壁"ビンス。


誰よりも細身の彼は誰よりも大食い。


常に何かを口にしていないと気が済まないらしい。


だが19歳でありながら冷静沈着な彼は皆から一目おかれている。


「そんなこ・と・よ・り☆見てみろ俺のキ・ラ・キ・ラ☆どう?可愛いでしょ☆」


シルクハットをかぶり誰よりも目立つ服を着ているのは
自称"光の王子"キッド☆である。


彼はマイペースを決して崩さず、結構面倒みがいいので評判。


だが極度のナルシストで誰よりも目立とうとする25歳のれっきとした大人。


だがそんな彼を尊敬するものも。


「王子!!すごいよ!!チャキもキラキラしたーい!!!」


まだ幼さを残す少年は
最年少7歳のフェイターである"光の芸術家"チャキ。


大きな瞳をウルウルさせながら
常にキッド☆の後ろをついて回っている。


スケッチブックをいつも持ち歩き
何か思いつくとところかまわず描きだす。


だが戦いになれば大人顔負けの実力で。


将来有望の少年だ。


ランダー
エルミナ
ビンス
キッド☆
チャキ


この5人をまとめるのが
アシュールの兄のカイだ。


"光の剣"と呼ばれる彼は
誰よりも強い剣術を備えていて、そしてフェイター最高指揮官である弟のアシュールと唯一対等でいられる者だ。


歳は26歳。


「まったく・・・」


そんなカイはまた始まったと頭をうなだれながら騒々しい言い合いを黙って見ていた。


「どいつもこいつも・・・・・元気な奴らだな。」


呆れてため息をつく。


「クスクス、皆仲良しだね。」


そんな彼の横では噂のアシュールが笑っていた。


"光の幻想"アシュール。


19歳の若き王。


カイから言わせればかなり変わった性癖の持ち主らしい。


「アシュール・・・笑ってる暇があるならアイツらを黙らせてくれ。会議ができん。」


「たまにはいいんじゃない?彼らのあーゆー戯れ言、嫌いじゃないんだ。」


ニコニコ笑うアシュールを
カイは冷めた目で見る。


「あのな・・・事態は急激に危ない方向に・・・」
「そうそう!聞いてよ兄さん!」


突然話を切られ
腑に落ちないが、カイは仕方なく一旦黙る。


「なんだ・・?」


「リオナのね、可愛い顔を思い出したんだ。それを紙に念写してそれで・・」


・・・またリオナの話か・・・


大体アシュールが楽しそうに話す時は必ずリオナの話。


確かに初めてリオナを見た時は
顔は整っているとは思ったが、
弟の執着心は異常だ。


「聞いてる?兄さん。」


「っ・・・悪い。リオナがどうしたって?」


「だから、どっちの写真がいいかなって。」


そう言って前に差し出された二枚の写真を見る。


どちらもリオナの写真だが
リオナの表情はどちらもいまいち。


だって笑顔じゃなくて無表情だから。


「そうだな・・・俺はどっちでもいいと思うが。」


「兄さんはリオナが嫌い?」


笑顔で聞いてくるのがすごく怖い。


「別に嫌いじゃないが・・・リオナはいつもマーシャの邪魔をする。」


「邪魔をするだって?どーゆーこと?」


「マーシャがリオナに気をとられていて俺への復讐心を忘れかけている・・・。」


・・・俺が死ぬときは奴に倒された時


奴が俺をこえたときだ。


だから弱くなってもらっては困るのだ。


「兄さんは本当に戦い好きだよね。でも迷惑こうむってるのはコッチだよ。マーシャ=ロゼッティーがいるせいでリオナが楽しそうだ。」


「仕方ないだろ・・・・何回も言うがリオナはお前のことをまだ思い出してないだろうし思い出しても敵だとしか思わないぞ。」


「クスクス・・わかってるよ兄さん。」


その笑い方が不気味で
カイは身を震わせる。


とにかくもうそろそろ話し合いをはじめなければ。


だがランダーたちのいざこざはまだ続いていたよう。


カイは面倒くさそうに立ち上がり
騒がしい部屋に声を響かせた。


「いい加減にしないか!やる気のない奴は今すぐ手を挙げろ。俺が殺してやる。」


脅しと言うべき発言に
一同シーンと黙りこくる。


「クスクス・・・怖いよ兄さん。チャキが怖がってるじゃない。」


アシュールはびくびくしているチャキを手招きし
膝の上に乗せてやる。


「もう大丈夫だよ?チャキはいい子だもんね?」


「チャキ・・・いい子にしてる!!」


「クスクス。よしよし。」


なんだかカイが悪役みたいで。


カイは眉をピクピクさせながら怒りを抑える。


「・・でば最初にランダーとエルミナの森羅大帝国のローズ・ソウルの報告から。」


ランダーとエルミナがサッと立ち上がる。


「はいはーい。これ何回もいいますけどローズ・ソウルが隠されてるような所は見当たらないですよ?」


「わたくしたちが探せる所はすべて探したのですが・・・やはり他国に預けてあるのではと・・・。」


2人の話をアシュールは肘を突きながら聞いている。


何を思っているのかがまったくわからない。


「それで俺たち考えたんですけどぉ。これ脅すしかないんじゃないかって。森羅の皇帝脅して国でも潰せばローズ・ソウルのありかをいうんじゃないですかぁ??」


ランダーらしい考えである。


だがその発言でようやくアシュールが反応した。


アシュールは紫の瞳を輝かせ
ランダーに向かってニコリと笑いかけた。


「それいい案だね。じゃあ後で計画案を持ってきて。あ、俺にじゃなくて兄さんにね。」


・・・また俺かよ。


カイは肩を落とす。


「では次・・・ビンスとキッドと・・・」
「ちょっとカイさん!!!キッドじゃなくてキッド☆で・す・よ!!」
「・・・・。」


・・・・・めんどくせぇ。


イライラがつのるばかりのカイ。


「ビンスとチャキと・・・・キッド☆。UWのローズ・ソウルは見つかったか?」


すると隣でアシュールの膝の上にいたチャキが
足をパタパタさせながら応えた。


「なかったよぉ?なんかねぇ〜ぐちゃぐちゃ!」


「は・・・・・?」


幼い言葉ではよくわからず
カイは訝しげな表情を浮かべる。


だがすぐにそれを補うようにビンスが立ち上がった。


もちろん肉を食べながら。


「それがっすねぇ、ちょっとトラヴァースたちが爆弾仕掛けすぎたみたいでUW中が粉々なんスよ。それでも調べたんですがねぇ・・・」


ビンスが珍しく困った顔をしている。


まさか何かあったのか。


「いいから話せ・・。」


「はい・・。なんかもう・・ローズ・ソウルが誰かに持ち出されちゃったらしいっす・・。」


「なんだと・・・!?」


カイは目を見開いてビンスを見る。


ビンスはビクッとしながら目でキッド☆に助けを求める。


キッド☆はやれやれと肩を上げながらようやく口を開いた。


「最初はカイさんたちもはじめからローズ・ソウルがUWにはなかったって考えてたでしょ☆?ところがドッコーイ☆UWのお役人たちの話を聞いてみたらなんと爆破前までローズ・ソウルがあったと言うではないかぁ☆」


「では爆破時にローズ・ソウルが盗まれたと言うことか!?」


「そう☆」


カイは頭をうなだれる。


爆破時・・・確かにアソコに俺はいた。


トラヴァースとナタリア・・・


あと悪魔の女とリオナも・・・。


でもトラヴァース達はローズ・ソウルはないと言っていた。


あいつらは嘘をつけるたちではない・・・。


いや・・・だがリオナ達と逃げようとしていたくらいだ・・・。


リオナ達にローズ・ソウルを渡して俺に嘘をついた可能性もある・・・。


「くそ・・・信じた俺が悪かった・・・」

・・・やはりあの時、アシュールの命令を無視してでもリオナを捕えておけば・・・


「クスクス・・・仕方ないよ兄さん。」


「笑い事じゃないだろう・・・。」


森羅もUWもローズ・ソウルを奪えないなんて。


失態だ。


「まだリオナが持ってるとは限らないよ?」


「でもあの場にいたのはリオナだ。」


「そう?でも俺が最後にリオナの夢をいじったとき・・・たまたま聞こえた会話なんだけどね、リオナ達もまだUWのローズ・ソウル探してたよ。」


アシュールの能力は人に幻覚や夢を見させるもの。


最近ではリオナ達の会話まで聞けるのだから驚きだ。


「ではリオナじゃない可能性もあると・・・。」


「そーゆーこと。」


「今・・・リオナの夢に入ることはできないのか?」


「まだ力が戻ってないからね・・無理だよ。」


遠くはなれたリオナに幻覚を見せるのは相当な力が必要で。


一度使うと当分は力を使えないのだ。


「・・・仕方ない、か。」


カイは頭を抱えてうなだれる。


その光景をランダーたちは気まずげに見つめていた。


「カ・・・カイさん!!心配しないでください!!このランダーが必ずローズ・ソウルを持って帰りますから!!」


その言葉を何度聞いたことか。


だが今は信じるしかない。


「頼んだ・・。」


「じゃあ最後は俺からの話だね。」


アシュールは膝にのるチャキの頭を撫でながら
ようやく今日の会議の本題を話しはじめた。


「もうそろそろヒュウをダーク・ホームから引き上げさせようと思うんだ。」


その言葉にランダーが嬉しそうに立ち上がった。


「ってことはついにダークホームを潰しに行くんですか!!?」


「そうだね。今までダーク・ホームにはリオナがいたから攻撃できなかったけど・・今回は心おきなくできそうだね。」


「でもヒュウが帰ってくるってことはこの10年間の作戦が成功したっていうことか!?」


「そう。ダーク・ホームにかくされた秘密をすべて知れたし、シキをうまくヒュウの代わりに・・つまりフェイターに仕立てあげたみたい。シキはシュナのことや俺たちのこと、そしてダーク・ホームの秘密を知りすぎた。だから残念だけどシュナと同様に死んでもらうよ。」


楽しそうに笑うアシュールに対し
カイはとても不愉快そうな表情を浮かべていた。


「・・そううまくいくものか」


「大丈夫だって兄さん。シキの死刑はもう五日後に決まってる。今リオナたちがどこにいるかは知らないけど、どっちみち助けにはこないよ。」


その自信はどこからくるのやら・・


カイは呆れてものもいえない。


「・・・・。それで作戦はどうした?」


「そうそう。そこで今回のミッションだよ。今から五日後のシキの死刑の日にヒュウを迎えに行く。ついでにダーク・ホームも潰しに、ね。それで今回のミッションメンバーは俺とランダーとビンスがいいと思うんだ。兄さんとキッド☆には俺たちの国の会議があるからね。」


ランダーはヨッシャーと両手を振り上げて喜んでいる。


だが膝の上に乗っかっていたチャキは悲しそうにアシュールを見上げていた。


「え・・チャキは!!?チャキも行きたい・・!!」


大きな瞳を震わせて
今にも涙がこぼれ落ちそうだ。


そんなチャキをアシュールは優しく抱き締めてやる。


「チャキはまだ危ないよ。ダークホームには野蛮な悪魔がいっぱいだからね。」


「じゃあチャキは何すればいいの??黙って待ってるだけ!?」


「もちろんチャキにもミッションを与えるよ?」


アシュールは満面の笑みを向ける。


「実はヒュウがダーク・ホームでやっていた人体実験が成功してね。」


「じんたいじっけんって・・死んじゃった人を生き返らせるっていってたやつ?」


「そうだよ。その被験者第一号をフェイターの仲間としてむかい入れようと思うんだ。」


「そうなの!?仲間が増えるの!?」


「そう。だからエルミナと一緒にチャキはここで新しい仲間の為に準備をしておいてほしいんだ。俺がダーク・ホームからちゃんと連れて帰ってくるから。いい?」


「うん!チャキ準備する!!!」


「いい子。じゃあランダーとビンスは三日後に出発するからね。」
「ちょっと質問してもいいッスかぁ?」


すると今まで肉を食べ続けていたビンスが手をとめ
モグモグしながら話しだした。


「あの、人体実験て、なんでダーク・ホームでやったんスカ?俺いまいち理解できてないんスケド。」


「クスクス。ビンスはいつも食べてばっかで聞いてないんだから。」


「すんません。」


「あのね、僕たちは死んだ人間を生き返らせる人体実験をやってきたでしょう?でも人を生き返らせるには"真の神の力"が必要なんだ。」


「それってローズ・ソウルじゃないんスカ?」


「クスクス・・そうなんだけど違うんだよ。"真の神の力"は神の"核"なんだよ。まぁ心臓、みたいな?だよね兄さん?」


横でカイが頷く。


「・・・今まで俺たちはローズ・ソウルは5つだけだと思っていた。だが実際は神の精神が別に存在していたんだ。それが"真の神の力"だ。」


「兄さんのいうとおり。それでその"真の神の力"がね、ダーク・ホームにあったんだ。」


その言葉に
なぜかビンスだけでなく他のフェイター達も驚きの目を向けた。


一瞬にして騒がしくなる。


「ぇえ☆!?聞いてな・い・で・す・よ☆!!」
「わたくしもですわ!!」
「チャキにも教えて!」


だがそんなフェイターたちに対して
アシュールはたいして悪びれもなく笑っていた。


「クスクス・・・ごめんね。言うの忘れてた。でもほら、今言った。ね?許してね?クスクス・・」


・・えー


カイは我が弟の何ともいえない性格にほとほと呆れて
頭を机につけた。


「クスクス。とにかく"真の神の力"はダークホームにあったんだよ。」


「でもなんでダーク・ホームにその"真の神の力"があったんスカ?」


「それはさ、ダークホームが神の島にあるからだよ。昔神が住んでいた神の島にね。」


ああ、という一同の納得した声が響く。


「その"真の神の力"はヒュウのやつが回収したんスカ??」


「それがね、"真の神の力"は回収できるものじゃないんだよ。固形物じゃないんだ。その地に染み付いてしまっているんだ。」


「じゃあ回収できないんスカ・・・。」


「でも考えてみてよ。回収できなくてもさ、ダークホーム自体を乗っ取っちゃえばいいじゃない。それで神の島を・・・俺達の故郷を取り戻すんだ。」


不気味に引きつる口元。


他のフェイター達も静かに笑う。


「じゃあビンスとランダーは三日後にダーク・ホームに行くよ。シキの死刑を確認してヒュウと実験体を迎えに。あとはダークホームをメチャメチャにね。」


「了解ッス。」
「ラジャー!!」


「兄さんとキッド☆は国政をよろしくね。」


「わかった・・。」
「お・ま・か・せ・を☆」


「チャキとエルミナはお留守番しっかりね。」


「はい。」
「チャキ頑張る!!」


「じゃあ今日の会議はおしまい。次はヒュウと被験体が帰ってきてからね。かいさーん。」


そう言ってアシュールはチャキをおろし
カイと共に立ち上がった。


そしてスタスタと部屋を出ていった。


それを確認してランダーは思い切り伸びをしはじめる。


やはりあの2人の前では緊張するのだろう。


「さぁて!三日後にむけていっちょトレーニングにいくか!なぁビンス?」


「え、俺もッスカ?」


再び肉を食べていたビンスは少し嫌そうに振り返った。


「当たり前だ。待ちに待ったダーク・ホーム戦なんだ。それにお前食ってばっかじゃデブるぞ?」


「俺はちゃんと三日後に合わせて減量メニューがあるんッス。だからランダー1人でやってくださいッス。」


「そーいわずにさぁー。一緒にやろう?な?」


「えー・・」


そんなことを話ながら2人も部屋を出ていった。


「わたくしも部屋に戻りますわ。アシュール様のためにも素晴らしい飾り付けにしなければならないもの!」


1人意気込むエルミナに対して
キッド☆が不思議そうに首を傾げた。


「飾り付けってなんだい☆?」


「だから新しい仲間を迎える歓迎会の飾りですわ。アシュール様おっしゃっていたでしょう?"ここで新しい仲間の為に準備をしておいてほしいんだ。"って。」


「え・・でもそれはパーティーとかじゃなくてただたんに心の準備・・・・・って、もういないしッ☆」


キッド☆の言葉も聞かずにエルミナはいつの間にかいなくなっていた。


やれやれと肩をあげながら
キッド☆は未だに椅子に座っているチャキに近寄った。


「チャキ、俺たちも部屋に戻るよ☆」


「うん、ちょっと待ってて!」


「?」


なにやらチャキはいつも持ち歩いているスケッチブックに何か描いているようで。


「できた!!」


満面の笑みでチャキはキッド☆にスケッチブックを見せてきた。


そこには1人の少年が描かれていた。


「これは誰だい☆?」


「新しい仲間だよ?」


「まだ男の子とはか・ぎ・ら・な・い、だろ☆?」


「でも男の子がいいな!」


キッド☆は苦笑しながらチャキを抱き上げ部屋を出て自室に向かう。


チャキは幼いため
キッド☆が同室で面倒を見ているのだ。


「ねぇ王子?」


「なんだい☆」


チャキはキッドの腕の中でお絵描きをしながらつぶやく。


「リオナお兄ちゃんはいつくるの?」


チャキは以前からアシュールからリオナの話を聞き
リオナが来るのを楽しみにしているのだ。


「どうだろうね☆彼はまだ敵だ・か・ら・ね☆」


「でもチャキの仲間になるんでしょ?」


「うーん・・・それは・・・うーん・・・」


・・・はっきり言ってアシュールさんはリオナを仲間に迎え入れる気はない。


リオナを閉じ込めて完全に自分のものにするつもりだ・・。


「まぁ、いつかは絶対やってくるさ☆」


「チャキ楽しみだなぁ〜!リオナお兄ちゃんはどんな人かな!?ねぇ王子は見たことある?」


「あ・る・よ☆俺より輝いてなかった☆」


「それは王子がキラッキラだからだよー♪」


「そりゃね☆でも・・・」


キッド☆は少し暗い表情を浮かべる。


「王子?」


「いんや。なんでもない☆」


・・・リオナには輝きがない


だけどそれ以上に彼には・・・・













「幸せがあるね。」


部屋に戻ったアシュールはリオナの写真を眺めながらボソッと呟いた。


たまたま書類をとりにきていたカイが訝しげな表情を浮かべる。


「何がだ?」


「だから、リオナには幸せがあるって。」


不満そうに頬をつくアシュールに対し
カイはまたその話かと書類を漁りながらため息をつく。


「そりゃあリオナだって人間だ・・。幸せの1つや2つくらいあるさ。」


「それじゃあダメなんだよ。リオナにとっての幸せは常にウィキがいてこその幸せじゃなきゃ。じゃないとリオナ・・ウィキのこと忘れちゃうよ。そんなことになったらこの10年の作戦は水の泡だ。」


「忘れられたらどんなにいいか・・」


おもわず言ってしまったあとにマズいと気が付く。


「・・兄さん。それどーゆー意味。」


アシュールがいつになく不機嫌そうに呟く。


「別に。まぁそんなに心配なら早めにまたリオナに夢を見せることだな。"ウィキの夢"を。」


「そうしたいのは山々だけどね。今は三日後に備えてあんまり力は使いたくないんだ。全く・・・ヒュウももうちょっと早くしてくれたらよかったのに。」


アシュールはあくびをしながらベッドに横になる。


眠たげな彼を横目でみながら
カイはまとめた書類を抱えて部屋を出ようとする。


「ねぇ兄さん?」


「何だ?」


「リオナは・・・喜んでくれるかな?俺からのプレゼントに・・・」


カイは前を向いたまま黙りこくる。


「それはリオナにしかわからないだろ・・。」


「そう・・だよね。」


「まぁアレを見て喜ばないはずはないがな。」


「・・!!そうだよね!」


それだけいってカイは部屋をあとにした。


アシュールはベッドに転がりながら枕をギュッと抱き締める。


「リオナ・・・」



早く会いたいよ・・・



君の苦痛で歪む顔・・・悲鳴に似た鳴き声・・・痛みにもがく体・・・・



全部・・・俺にちょうだい・・・



君へのプレゼントもあるからさ



君が一番求めている"幸せ"だよ?



ねぇアイシテル・・・



だから心も体も・・・



俺が全部壊してあげる



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