オイ、コタロー! 還しても還しても帰ってきくれないコタロー。 仕方なく出しっぱなしで一夜を過ごし、朝。 髪の毛を引っ張られ目を覚ました。 修業をしに行こうと街に出る。 まずは基礎体力をと言われて、走っては止まり、走っては止まった。 「もー走れないよう…。」 『 』 「わーんっ!」 尻尾で頭を叩かれながら走っていると、いつの間にか街の出口を出ていた。 街からは絶対に出るなと言われていたから、引き返そうとする。 『 !』 「だめだよう!街の外は危ないの。戻らなきゃ。」 コタローはメアエリスの背中を押す。 帰ろうとすれば叩かれるから、仕方なく進んだ。 野を越えて海岸沿いを歩いた。 ただで帰らせるなんて甘い事はしない。 「…魔物!!やっ!」 巨大な蟹が砂から現れた。 歩いている時、踏んでしまったのだろうか、怒っているようだ。 「コタロー!どうしたら……ひやっ!」 大きなハサミが砂を叩いた。 飛び込み回避をしたが、スカートの後ろの裾が切れる。 『 』 「チカラって…。わかんないよう!」 蟹はもう一度ハサミを振り上げた。 メアエリスは嫌だと払い、ぎゅっと目を閉じる。 「………やめて…。助けて…。………………?」 襲って来ない? メアエリスは伸ばしていた腕を縮こまらせて、ゆっくりと目を開けた。 すると、蟹は今にも動き出しそうな格好のまま、氷晶に閉じ込められている。 『 』 「…本当に……僕がやったの?」 コタローは波動弾をはいた。 氷晶と中身は砕け、融けかけた青い靄を纏う、アイスキューブの様な塊が浮き出る。 その結晶を手に取ると、風の輪がぶわっと広がった。 「………僕は…カノンの………。」 何かを思い出しそう。 呼吸が邪魔をした。 「…繋ぐ……わっ!」 メアエリスの周囲を取り囲む悪しき風を、清純な風の力でコタローは払いのける。 驚いて、何を思い出そうとしていたのかわからなくなった。 とりあえず、ステルメークへ帰る。 問題は解決していない。 破れたスカートと、汚れた自分。 どうしようか。 「コタローのせいだよ…。どうしよう………カノンに怒られちゃう。ニチカに……も怒られちゃうよね。海璽も絶対カノンに言うし…。」 悩んでいたら夕方に。 お腹もすいたし、お家に帰ろう。 今、思い出した事がある。 「朝ご飯も昼ご飯も食べてないや、僕…。」 グ〜ッと鳴らして気まずく帰った。 困ったなぁ。 【前n】/【章n】/【次n】 |